チラシの裏~弐位のゲーム日記
社会人ゲーマーの弐位のゲームと仕事とブログペットのことをつづった日記

 今日のかまいたちの夜 輪廻彩声はどうかな?


 雪国


 真理と二泊三日のスキー旅行へ来た透。
 列車を下りて、迎えに来ていたワゴン車に乗る。
 運転手は、真理の叔父の小林二郎さん。ペンション シュプールのオーナーだ。


 ゲレンデへ


 荷物を置くのもそこそこに、着替えを済ませ、スキー一式を借りた。
 小林さんは、もうじきお客さんが来るということなので、二人だけでゲレンデに行ってほしい、と言って、ワゴン車のキーを渡した。
 真理は何度も行ってるらしく、迷うことなく15分後にゲレンデにたどり着いた。
 12時を回っていたので、透は、先に昼飯、と言ったが、真理に、とりあえず1回滑ってから、と拒否されてしまった。
 スキーが初めての透は、1mごとに転び30分かかって初心者コースを降り切った。
 透が、お願いだから、昼飯にしよう、と頼むと、しぶしぶ食堂へ行くことを承知してくれた。
 遅めの昼食のあと、更なる特訓が待ち構えていたが、帰るころには、何とかボーゲンでゆっくりと降りてくることはできるようになっていた。
 日が落ちるにつれて、空は急に曇りはじめ、不穏な風も吹き始めたので、透が、そろそろ帰ろう、と懇願すると、空を見た真理は、「今夜は荒れるから、早めに帰りましょう」と答えた。
 駐車場を出るころには雪が降り始め、ペンションに付く前にすでに本降りになっていた。
 真理が突然、「こんな夜は・・・」と言い出すが、「何でもない」と言って止めてしまう。


 ペンション 『シュプール』


 ペンションにたどり着いてよく観察してみると、ログキャビン風の外観に、白を基調にしたおしゃれな内装で、隅々まで清潔にされていて、気持ちよさそうな宿だった。
 乾燥室へスキー一式を入れて、透と真理は中へ上がった。
 車の音を聞いて小林さんが、出迎えてくれた。
 その時、談話室に中年の夫婦が座ってこちらを見ていることに気が付いた。
 軽く頭を下げると、小林さんが、「自分が昔世話になった人で、大阪で会社をやっておられる香山さんと奥さんの春子さん、こっちは私の姪の真理と、大学の友人の透君です。」と紹介してくれたので、お互いに軽く挨拶をした。
 小林さんは、「夕食は7時からだから、着替えてシャワーでも浴びてくるといい」と言って、キッチンへ戻っていった。
 透と真理の部屋は当然別々だった。
 透は、部屋に付いているユニットバスで軽く汗を流して、服を着るとベッドに倒れ込んだ。
 うとうととまどろんでいると、ノックの音がし、真理が呼びに来てくれていたので、いっしょに談話室へ降りた。
 談話室にはさっきの香山夫妻に加えて、3人の女の子たちがいた。
 真ん中のカナちゃんと呼ばれているやせた髪の長い子が、左手に持った赤ペンで、情報誌に印をつけていた。
 向かって右側にいるのは、ケイコと呼ばれていたぽっちゃりしたかわいらしいショーとカットの女の子だ。
 左側にいるのは、大きなメガネをしており、アキと呼ばれていた。
 突然、真理に、「どの子が好みなの?」と聞かれた。
 透は、「違うって」と言い訳しようとすると、鳩時計が7時を告げた。
 反射的に腕のデジタル時計を見ると、18:55だった。
 舌打ちが聞こえたので、そっちを見ると香山さんが、高級そうな自分の腕時計を合わせていた。
 小林さんが、談話室へ入ってきて、「食事の用意ができました。どうぞ食堂の方へ」と声をあけた。
 食堂のテーブルには、談話室にいた香山さん夫妻とOL3人組に加えて、サングラスをかけた三十前後ぐらいの男が座った。
 アルバイトの女の子と小林さんの奥さんが、料理を運ぶ間、小林さんが、全員の名前を紹介し始めた。
 「こちらの3人は、東京からいらした、渡瀬可奈子さん、北野啓子さん、河村亜希さん。そちらの渋い男性は、田中一郎さんとおっしゃします。」
 三人組は頭を軽く下げたが、田中さんは無反応だった。
 食事はおいしく、そして十分な量があった。
 食後のコーヒーを飲み終えた田中さんは、そそくさと二階へ引き上げていき、残る全員が談話室へ集まった。
 しかし、みんなが腰を落ち着ける間もなく、突然すべての御借りがチカチカと瞬き、そして消え、女の子たちの悲鳴が飛び交った。
 誰かの手が、透の腕をまさぐりきゅっとつかんだ。真理だ。
 透は、安心させるように、自分の手を重ねた。
 闇に浮かぶ腕時計は、20:15を指していた。
 小林さんが、「落ち着いてください、すぐにロウソクを持ってきますから」と声を掛けた。
 小林さんが暗闇の中をスイスイと歩く気配がし、常備してあった懐中電灯を見つけて点けた。
 暗闇の中に小さな光が広がった。
 小林さんは、「今日子、いっしょに来てくれ」と、二人で談話室を出ていくと、再びあたりは闇に包まれた。
 三人組は、ささやきあっていたので、透は真理の手を触れながら、「大丈夫、すぐに元に戻るよ」と言った。
 懐中電灯の明かりが戻ってきた。小林さん夫妻がロウソクを持ってきてくれたようだ。
 広いテーブルの上で、それらを立てて火をともすと、何とか周りの人々の顔が見えるようになった。
 「風が強くなってきたようなので、どこかで送電線が切れたんだとしたら、今晩の復旧は無理かもしれません」と小林さんが申し訳なさそうに言った。
 「見たいテレビがあったのに」と亜希ちゃんが言った。
 小林さんは、「こんなことはめったにないんで、自家発電とかの用意をしていないんです」と言った。
 真理は立ち上がって、窓際に行き、カーテンをめくって外をうかがい、「雪がひどくなってるみたい」と言った。
 アルバイトのみどりさんと言う女の子が、「せっかくこんな雰囲気なんだがら、怪談話なんかするのもいいじゃないですか?」と言い出した。
 啓子ちゃんが嬉しそうに、「そういうの全然ダメなのー」と答える。
 俊夫さんも、「いいね」と賛同する。
 小林さんが、「部屋に戻りたい方がいたら、部屋まで送りますし、ロウソクもお貸しします」と訊ねたが、誰も名乗り出なかった。
 透は、大勢の中で怖い話を聞くのと、一人で暗い部屋にいるのと、どちらが怖いだろうか、と考えていた。
 切れた暖房を補うため、石油ストーブを焚き、みんなで毛布を体に巻き付けると、真理が「これは本当にあった話なんだけど」と話し出した。


 かまいたち


 真理と小林の先祖は、小林久左衛門といって、このあたりの大地主だったが、小作人からは搾り取れるだけ搾り取っていた相当ひどい人だった。
 この地方には、こんなふうに冷たい風の吹く吹雪の夜には、かまいたちで怪我をしたって人が大勢いたが、ほとんどは男性だった。
 だから、この地方では、不幸な死に方をした女の人の魂が、かまいたちになって恨んでいる男に切り付けるんだ、と言われている。
 久左衛門は、ひどい女たらしだったらしく、一度目をつけた女性は必ず手に入れていた。
 ある時、許嫁のいる村の娘に手を出し、娘は久左衛門を呪いながら、舌を噛んで死んだ。
 それ以来、久左衛門は外出するたびにかまいたちに襲われるようになり、ひどいときには服がボロボロになるほどだった。
 それで、久左衛門は、風の強い日には外出しないようになった。
 そして、一年後の女性の命日も、今日みたいにひどい吹雪の晩だった。
 久左衛門は、お屋敷の奥座敷から一歩も外へ出ず、食事も運ばせていたにもかかわらず、翌朝、女中が見に行くと、血の海の中で、喉を切られた久左衛門が死んでいた。
 久左衛門には全身に無数の切り傷があり、不思議なことに彼が寝ていた1畳ほどの部分だけ畳や布団もボロボロだった。


 突然、窓ががしゃんと開き、凍り付くような風と雪が吹き込み、ロウソクの炎が一瞬にして吹き消された。
 みんなの悲鳴が響いた。
 小林さんが、窓を閉め、再びロウソクに火がつけられた。
 小林さんは、「落ち着いて。きちんと閉まってなかったようです。偶然とはいえ、みんなを怖がらせる役には立ってようですね。」と言うと、真理は、「さっき窓のところに毛糸を輪にして結びつけておいたの。引っ張ると留め金が外れるようにね。さらに引くと、輪がはずれて手元に戻ってくるの。」と打ち明けた。
 その時、チカチカと瞬いて、部屋に白い光が充満した。電気が回復したのだ。
 今日子さんが、「お茶でも入れましょう」と声を掛けた。
 可奈子ちゃんが、「お手洗いに」と言い出すと、啓子ちゃんと亜希ちゃんも、「私も」と言って立ち上がった。
 みどりさんまで、一緒になってトイレに向かった。


 ティータイム


 全員がトイレから戻ると、お茶の用意ができていた。
 とてもいい香りのするお茶だ。
 今日子さんは、「ラベンダー・ティーなの」と言う。
 お茶を飲んで落ちついたところで、みどりさんが、真理に、「あれは本当の話なの?」と聞いてきたので、真理が、「本当よ、ね、叔父さん」と答えると、小林さんは眉をひそめながらうなずいた。
 小林さんは、「先祖の一人がひどい死に方をしたのは、昔調べたことがあるから、確かなことなんだ。ただ、かまいたちなど、女の恨みだのなんて信じちゃいないけどね。」と言った。
 亜希ちゃんが、「見たいテレビがあるんだった」と言い出したので、三人組は挨拶をして、部屋に戻ってしまった。
 小林さんが、「ゲームでもどうですか?」と声を掛けると、香山さんが、「若い人たちだけの方がいいから、自分たちは、これで失礼します」と言った。
 壁の鳩時計は、9時を回っていた。
 結局残ったのは、透、真理、みどりさん、俊夫さん、小林さん夫妻の6人だった。
 俊夫さんがトランプを持ち出したので、ナポレオンでひとしきり遊んだ。
 小林さんが、「11時になったから、そろそろお開きにしよう」と言ったので、透と真理は、挨拶をして、それぞれの部屋に戻った。
 シュプールの部屋は、基本的に一人部屋はないので、透と真理の部屋はツインだった。
 服を着替えて、ベッドに入ったとき、ビデオの時刻表示は、23:10だった。
 その数字を見ながら、透は眠りに落ちて行った。


 一夜明けて


 透は、誰かが名前を呼びながら、体をゆすっていることに気付いた。真理だ。
 どうやら鍵を掛け忘れたようだ。
 真理は、「もう8:40よ、朝食は8時半からよ」と言った。
 透がビデオの方を見るが、8:20だった。
 着替えのため真理を追い出し、急いで着替えて下へ降りた。
 テーブルには田中さん以外の全員がそろっていた。
 みどりさんに田中さんのことを聞いてみると、「何度ノックして起きなくて」と答えた。
 結局、田中さんは、みんなが食べ終わっても降りてこなかった。
 みんなで談話室へ移動した。
 窓の外を見ると、雪は相変わらずやむ気配はなかった。
 小林さんは、「予報では、夜中ぐらいまでは低気圧がいすわっているって話だよ。雪崩警報も出ている。」と教えてくれる。
 可奈子ちゃんは、「今日帰らないといけないのに。」と言うと、小林さんは、「危ないから、もう一晩泊まっていきなさい。お金は食事代だけでいいから。」と言った。
 啓子ちゃんと亜希ちゃんは、しょうがないと言うが、可奈子ちゃんは、明日3人とも休んだら、課長にヒステリー起こされる、と文句を言っていたが、結局泊まることにした。
 そして、今度は誰が会社に電話をするか、揉め始めた。
 小林さんは二階は上がっていったが、すぐに降りてきて、「お客さんが起きないんだ。いないのかしれない。」と言い出した。
 部屋には鍵がかかっているが、合鍵をあるとのことで、開けようか迷っているとのこと。
 鳩時計が10時を告げた。
 透の腕時計は、5分遅れの9:55を指していた。
 小林さんが、「一人でお客さんの部屋に入るのはまずいから、一緒に来てほしい」と透に頼んできたので、透は了承し、当然のごとくついてきた真理といっしょに、3人で二階へ上がった。
 「田中さん、いらっしゃいますか」と声を掛けながら、小林さんは、田中さんの部屋の扉をノックしたが、返事はなかった。
 小林さんは、あきらめたように鍵束を出し、ロックをはずした。
 小林さんは、首だけ中に入れたが、体がこわ張るのが分かった。
 小林さんは、中へ踏み込んだ。
 真理は、むせかえるような錆びた鉄のような臭いで、鼻と口を押えた。
 透が部屋に入ると、田中さんが窓に近い方のベッドに横たわっているのが見えた。


 泊り客の死


 田中さんは全身に切り傷を負って、血を流していた。
 一番出血がひどいのは、ぱっくりと開いた喉の傷だ。
 真理は悲鳴を上げて、部屋から飛び出した。
 小林さんが、かまいたち、とつぶやいた。
 真理の悲鳴を聞いて、人々が集まってきた。
 小林さんが、「今日子、そこにいるなら、警察に電話しなさい。泊り客が死んでいると。」とドアの向こう側に声を掛けると、誰かの押し殺した悲鳴が聞こえた。
 小林さんは部屋を出ると、再びドアに鍵をかけ、待ち受けていた人たちを追い立てるようにして、談話室へと降りた。
 フロントで受話器を持った今日子さんが、電話が通じない、と言い出したので、小林さんが受話器を受け取り、フックを何度も押した。
 電話線が切れているみたいだ、部屋の電話は?と小林さんが尋ねると、今日子さんが、寝室の電話も同じように何も聞こえない、と答えた。
 小林さんは、外を見ながら、麓まで下りるのは明日にならないと無理だ、と言った。
 透が、近くに電話を借りれないのかを訪ねると、車さえ動けばいいんだが、この吹雪の中歩くとなると、と首を振った。
 香山さんが、携帯電話があるんや、と言い出すが、小林さんが、このあたりは電波状況が悪くて携帯電話も入らない、と答えた。
 透が、問題は誰があの人を殺したか?その犯人は、まだこの辺りにいるかもしれない、と言い出した。
 透はそう言いながら、この吹雪の中、誰か別の人間が外からこっそり来て田中さんを殺し、またこっそり出て行った、ということは考えにくいから、犯人はこの中にいる?と疑惑を持ち始めた。
 透は、戸締りを確認しましょう、と提案すると、小林さんは賛同し、透、小林さん、香山さん、俊夫さんの4人で、戸締りの確認をすることになった。
 男性陣が確認している間、今日子さんとみどりさんは、女性陣のためにお茶を振舞うことになった。


 男性陣で田中さんの部屋に入る。
 窓には鍵がかかっていた。そして、外から入ったなら濡れた跡があるはずだが、それもなかった。
 透が、乾燥室を調べよう、と言い出した。
 外から来た人物が乾燥室で乾かしてから、ペンションに入れば、濡れることはない。
 乾燥室には鍵がついていないでの、さっきは調べなかったのだ。
 乾燥室の中に置いてあるみんなのスキー板と靴は、しずく一つついていなかった。
 外に通じるドア付近もまったく濡れていなかった。このドアには錠が付いていて、今はしっかりとかかっていた。
 小林さんは、どこからも誰も出入りなんかしていない、と言った。
 犯人はやなりこの中にいるのだ。


 談話室に戻ると、みどりさんがコーヒーを入れてくれた。
 小林さんが、誰かが出入りした様子がなかった、と告げた。
 みどりさんが、かまいたちにやられたのは本当ですか?と尋ねた。
 どうやら、真理がみんなにそう伝えたらしい。
 小林さんが、確かにひどい様子だったが、人間にやったに決まっている、かまいたちなんかいるわけない、と言い切った。
 みどりさんが、犯人は誰なんですか?と尋ねた。
 小林さんは、警察に調べてもらわないと、と答えると、みどりさんは、警察なんか来ないじゃない!それまで人殺しと一緒にいるっての!とヒステリックに叫んだ。
 俊夫さんが、この中に田中さんを知ってた人いますか?と尋ねた。
 小林さんは、宿帳には東京世田谷の田中一郎と書いてあったが、スキーをしに来たわけではなさそうだし、妙だと思っていた、と言い出す。
 それを聞いた俊夫さんは、偽名っぽい、と言った。
 透は、なぜこのペンションを選んだんでしょう?と言うと、小林さんは、何も言ってなかった、と答えた。
 小林さんが、田中さんは2泊したい、と言っていた、と言った。
 やりとりを聞いていた香山さんが、死体が腐る前に田中さんの持ち物を調べよう、と言い出した。
 このペンションの暖房は集中システムのため、田中さんの部屋だけ暖房を切ることができないのだ。かと言って暖房を切ると、全員が凍えてしまう。
 小林さんは、警察が来るまではそのままにしておこう、と答える。
 真理が、犯人は昨夜戸締りが完全になる前に入り込んでいたのでは?と言うと、小林さんも頷くが、出て行ったときにどうやって鍵をかけたのだろう?と尋ねると、真理は、出ていっていないかも、と答えた。
 真理は、車が動かせるようになってから、逃げ出すつもりかも、と言った。
 透は、もしそうなら犯人はできるだけ、警察に連絡するのを遅らせようとするんじゃない?と言った。
 どういう意味かわからない真理に向かって、透は、口を封じようとするかもしれない、と告げた。
 まさかみんな殺すっていうの、と話す真理に、透は、そこまでしないかもしれないけど、電話線を切るとか、と答えた。
 俊夫さんと透が、電話線を調べて繋げよう、というと、香山さんが、電話が通じてもこの天気では警察は来ないから、自分たちが犯人を捕まえよう、と言い出す。
 言い争いを遮るように、小林さんが、捜索だけはしよう、と言って、男性4人での捜索を提案した。


 再度ペンション内を捜索するが誰もいない。
 あとは田中さんの部屋だけになり、香山さんが、鍵がかかっていたし、窓も閉まってたのに、犯人はどこから出たんや?と言い出す。
 犯人は、ずっと田中さんの部屋の中にいたのか?と透が思っていると、小林さんは、ここの鍵は中のボタンを押しておけば自動的にロックされる、と言った。
 小林さんが持っていた鍵でロックを解除して、田中さんの部屋に入った。
 クローゼットの中、バスルーム、ベッドの下を調べたが、誰もいない。
 透は、田中さんの左手に目が行くと、高級そうなデジタルの腕時計をしていることに気付いた。
 表示が11:16、自分の腕時計も同じ時刻を表示している。
 備え付けのビデオは、11:05を示していた。
 不思議に思った透が、香山さんに時刻を聞いてみると、腕時計を見て11:05と答えた。
 誰もいないことを確認して、談話室へ戻った。


 犯人はこの中に?


 戻ってきたメンバーの表情を見た真理は、この中に犯人がいるのね?と言った。
 小林さんは、「今日一日助けを求めることもできないし、ここから出ていくわけにもいかない、人殺しといっしょにね。」と静かに言った。
 小林さんは、「すでに一人殺しているので、自分が逃げるためとなれば、もう一人殺すことだっていとわないだろう。だから私たちは、常に一緒にいる必要がある。」と続けた。
 透が、電話線は?と尋ねたので、小林さんはフロントへ行き、電話線を辿って差込口にちゃんと刺さっていることを確認し、公衆電話のほうも不通なんだし、外に出なきゃならん、と言った。
 香山さんが中に残り、透、小林さん、俊夫さんの3人で外へ出ることになった。


 透と俊夫さんがドアの外に出ると、先に外へでたはずの小林さんの姿が見えない。
 俊夫さんが、透を案内し、階段を下りていくが、途中で透は頭から転んでしまう。
 小林さんの声が聞こえたので、そちらのほうへ歩く透と俊夫さん。
 外壁のところにしゃがみこんでいる小林さんが、箱を指さしている。
 箱からから伸びたゲーブルがすっぱりと断ち切られていた。
 誰かが電話線を切ったんだ、と俊夫さんが言った。
 よく見るとケーブルの断面に茶褐色の汚れたついていた。血だ!田中さんの血だ!


 応急処置


 小林さんが、道具を取ってくれば応急処置ならできると思う、と言った。
 ペンション内に戻り、みんなに事情を説明した。
 今日子さんが入れてくれたホットチョコレートを飲み終わった小林さんは、道具入れを持って立ち上がって、「寒いから一人で行くよ。その代わり、私が外に出ている間、誰もここを出ないでもらいたい。」と言ってから、出て行った。
 その時、鳩時計が12時を告げた。
 透が腕時計に目をやると、11:55を示していた。
 今日子さんが、食事の用意はどうしましょう?と聞いてきたので、透が、小林さんが戻るまで待ちましょう、と答えた。


 小林さんが、何とかなった、と言いながら戻ってきた。
 今日子さんが、フロントの電話の受話器を取り上げて、通じてるみたい、と言った。
 そして、警察に繋がると、小林さんが代わって説明し始めた。
 電話が終わった小林さんは、吹雪が収まり次第来てくれると言っていた、と告げた。
 安心した瞬間、透の頭の中でもやもやしていた考えが、少しずつまとまってきて、「確認したいことがあります」と発言した。
 透は、テレビとビデオはどこに設置しているのかを、小林さんに尋ねた。
 小林さんは、自分たち夫婦の部屋とみどりさんの部屋、客間は、渡瀬さんたち3人組の部屋と透の部屋と田中さんの部屋だ、と答えてくれる。
 続けて透は、ビデオはみんな同じ型かどうかを確認すると、小林さんは、一括購入したから同じものだ、と答えた。
 さらに透は、ビデオのある部屋のある人で、ゆうべ誰かを部屋に入れた人を確認する、と全員が首を振って否定した。
 透は、部屋の時計についても確認すると、小林さんは、この鳩時計しかない、と答えた。
 最後に透は、117に電話をかけると、午後、0時、14分、10秒、とテープが流れた。
 透の腕時計はあっている。
 その瞬間、透は犯人は誰か見当がついた。
 電話を切った透は、みんなに向かって、持っていたら時計を見せてほしい、と言った。
 OL3人組は時計を持っていなかった。部屋に置いてあるケータイが時計代わりだとのこと。
 真理はスキーウェアのポケットの中だ、と答えた。
 小林さん、今日子さん、みどりさん、春子さんは腕時計を持っていなかった。
 腕時計をしていたのは、透、香山さん、俊夫さんだけだった。
 俊夫さんは、12:20:30だと答えた。
 香山さんは、12:04だと答えた。
 それを聞いた透は、さっき117で確認したから、今の正確な時間は12:15だと言ってから、犯人がわかった、と告げた。

拍手[0回]

この記事にコメントする
お名前:
タイトル:
文字色:
メールアドレス:
URL:
コメント:
パスワード:   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
- HOME -
Powered by   | 
カウンター
アクセスカウンター
プロフィール
HN:
弐位(にい)
性別:
非公開
職業:
中間管理職
趣味:
もちろんゲーム
自己紹介:
 大人になりきれない社会人ゲーマー。
 現在の夢:ゲームする時間の確保、サービス残業時間減少、年棒アップ
 将来の夢:がんばってお金を稼いで、ニートでゲーム三昧の日々を送ること
ブログ内検索
最新コメント
[08/01 NONAME]
[08/01 NONAME]
[07/31 弐位]
[07/31 NONAME]
[08/12 けんさん]
カテゴリー
アーカイブ
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
23
24 25 26 27 28 29 30
マルチMIDIプレイヤー
 ゲーム音楽がいっぱい!
 好きなタイトルを選んで、タイトル実行を押してください
最新TB
最新トラックバック
忍者解析(モバイル)
バーコード
フリーエリア
フリーエリア
ブログ内検索