今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
1週目クリア
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング№03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング№10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング№13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング№03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情のはざま→福沢エンディング№20~22
6人目は新堂誠を選択→シナリオ:呪いのマンシール→新堂エンディング№06~08
7人目はシナリオ:記憶のほころび→七話目エンディング№01~03
2週目プレイ開始!
1人目は岩下明美を選択
岩下明美は3年A組の生徒。
「坂上君は、人に裏切られたことあるの?」
- あります
- ありません
- 答えたくないです
逆にあなたは今までに人を裏切ったことはあったと思うかしら?」
- あります
- ありません→シナリオ:命の値段
- 答えたくないです
あなたは人に裏切られ、同時にまた人を裏切っている。正直な人ね。でも、それが普通の人間だと思うわ。
人間は結構知らずに他人を裏切っているものよ。人が人を裏切るって簡単なことなのよ。そして良心は痛まないわ。うふふ。あなただって人の10人や20人平気で裏切っているんだから。例えば、両親の期待。あなたは裏切り続けたのじゃないかしら。でも、あなたの心は痛まないでしょ。それから友人。友人との約束を破ったあるんじゃなくて。
人間ってね、とても勝手な生き物だわ。裏切ることは簡単にやってのけるのに、裏切られることはとっても嫌いなのよ。
そして、裏切った事実は記憶の奥に消し去るくせに、裏切られた記憶はいつでも引き出せるよう引き出しの一番前にしまっておく。
きちんと、人を裏切ったことを認められる人間だもの、あなた、偉いわ。好きになってしまいそうよ、あなたのこと。
人によっては、裏切られることが美徳だと考える人もいるわね。私は、そういう人を偽善者って呼ぶことにしているわ。
だって、人に裏切られた喜んだり、すぐに許せてしまうような人間を、あなたは信じられる?そんな奴こそ、私は許せない。
私はね、裏切られることが大嫌い。もし私を裏切る奴がうようものなら、殺してやる。人を裏切るんだったら、死ぬ覚悟で臨まなくちゃね。
私ね、今までに人に裏切られたことないの。私はね、人に裏切られるくらいなら、先に裏切ってあげるの。だってそうでしょう?自分が嫌な思いをするのよ。だから、自分が嫌な思いをする前に、相手に嫌な思いをさせることにしているのよ。
相手が起こそうとしている間違いを、起こす前に教えてあげることは、とても正しい行為ね。
だから、私は相手を裏切ろうが傷つけようが心が痛んだこともないのよ。私は正しいことをしているんですもの。
あなた、汗をかいてるわ。私が拭いてあげましょう。逃げなくてもいいのよ。
親切で、言ってるの。あなたが私の親切を無碍にするということは、立派な裏切り行為よ。
私ね、生まれたからには、死ぬまで幸せで満足のいく人生を送りたいとおもっているの。
いいえ、思っているだけじゃなくて、私は実行するわ。私の幸せな人生を邪魔する奴だから、当然の報いとして死んでもらうの。
私の親切を無駄にしないでね。
そう、いい子ね。あなたの汗が一滴残らずなくなるまで、拭いてあげる。だから、おとなしくしていなさいね。
ほら、きれいになった。
いいこと、せっかく私が汗を拭いてあげたんだから、もう汗を流さないでね。あなたが汗を流すとね、私の親切が無駄になってしまうの。
せめて、私の話が終わるまでは汗なんか流さないで。あなたが私を裏切らないのなら、これから先あなたのこと、目をかけてあげてもいいわ。
だから、私を裏切らないで。これから私が話すのは、人を裏切ることなんかなんとも思っていない人間の話
そういえば、あなたは、人と付き合ったことある?
今あなたが付き合っているのなら、それとも、もしこれから誰かと付き合おうというのなら、いつか必ず別れというもおが訪れるでしょうね。その時、あなたから別れてあげるのよ。
ようは、あたが苦しまなければいいんですものね。愛すれば愛するほど、別れは辛くなるものよ。
私に興味ある?もちろん人を好きになったことも、お付き合いしたこともあるわよ。でも、私は人に裏切られたことが一度もないから。
相手が私の事を心から相手していることがわかったら、別れてあげるわ。私が泣くのは嫌ですもの。
だって、恋愛なんて必ずどちらかが傷つくのよ。私の場合、たまたま相手が傷ついているだけですもの。別れるのが嫌ならが、最初から付き合わなければいいんですもの。
相手を愛する気持ちが、強ければ強いほど、別れは悲惨になるものだから。でも、そういうのって、第三者として見ているのはおもしろいわね。
だから、私も近くに仲のいいカップルがいると、ついつい注目してしまうわ」
岩下のクラスの仲のいいカップルがいた。
名前を佐藤直之と本田佐知子といった。
「ねぇ、愛し合う二人に終止符が打たれる場合、あなたはどんな理由が多いと思うかしら?」
- 二人の誤解
- 性格の食い違い
- 気持ちが冷めたとき
「もちろん、そういうこともあるでしょうね。
でも、一番多いのはそうじゃないわ。どちらかの気持ちが冷めるときよ。
人間の感情ほど当てにならないものはないから、うふふ。そんなものを頼りに恋愛は始めるでしょう?
だから、愛情なんて簡単に冷めるわ。くだらないきっかけで燃え上がった愛情は、くだらないきっかけで冷めるものよ。
そのきっかけで一番多いものはね、心変わりというやつよ。
目の前に食べたこともない、おいしそうな食べ物があったら、あなたはどうする?とりあえず、食べてみるんじゃないかしら?
それで、食べたあとはその人次第ね。今まで食べていたものの方がおいしいと思う人いれば、新しい食べ物に心を奪われてしまう人もいる。
でもね、一番多いのは両方とも食べ続けたいと思う人ね。恋愛もそれと一緒よ。ただ、食べるものに感情という厄介なものがあるというだけの違いね」
岩下、佐藤、本田の3人は1年生の時、同じクラスで、その頃から、佐藤と本田は意識し合っていた。
1年生の3学期が始まったとき、新しいクラス委員を決めるのだが、本田が図書委員に決まった。
すると図書委員は各クラスに2名いるのだが、本田が2人目の図書委員に立候補した。
佐藤も本田も目立たない平凡な高校生だった。そんな本田が、図書委員に立候補するということは、一大決心だったに違いない。
それから、二人の仲は急速に進展していき、みんなも気づき始めて噂するようになった。
まわりが噂するようになってから、帰宅部の二人は一緒に登下校するようになった。
二人は人気者というわけじゃなかったが、みんなから嫌われているわけでもなかったので、誰もがごく普通に温かく見守り、放っておいたから、二人の仲は進展した。
佐藤と本田は、別に誰もがうらやむようなカップルというわけでなく、ごく普通の仲の良いカップルだった。
誰もがうらやむようなカップルとは、外見も経歴も非の打ち所のないようなカップルのことだ。
2年生になり、岩下、佐藤、本田はまた同じクラスになった。
ある日、佐藤の前に、及川由紀が現れた。
及川は人のものを欲しがる人間だった。幸い人のものは取ろうとしなかったけれど、いつもみんなのものを物欲しそうな顔で見ている卑しい人だった。しかも、その人が大事そうに使っていたり、大事そうにしているものを欲しがる。
本田はポーカーフェイスができない人だったので、佐藤と付き合っている時も幸せそうにしていた。
及川は、本田が幸せそうに付き合う佐藤を欲しくてたまらなくなってしまった。
及川は、派手な顔立ちをしており、男の扱いにも手慣れていた。ボーイフレンドは何人もいたけど、特定の彼氏はいなかった。
一つの食べ物じゃ満足できない典型的なタイプで、おいしいものをたくさんわまりに置いといて、食べたいものを食べたいときに食べるタイプだった。
ひと月も経たないうちに、及川は誰が見たってはっきりとわかるほど、あからさまに行動を始めた。
宿題が出されると、及川は本題がいようがお構いなしに、佐藤の側にいって、猫なで声で「この問題わかんないんだぁ」と言う。
別に佐藤は勉強ができるほうではなく、本当に勉強を教えてほしければ、ほかにいくらでもいるのにも拘らず、わざわざ佐藤を選んで、必要以上に身体をくっつけてスキンシップをとる。
本田は悲しそうな顔はするが、及川にやめてとも言えず、それを黙って受け入れている佐藤にだらしがないとも言えなかった。
及川は、本田がいないところでも佐藤にモーションをかけていたが、佐藤は落ちなかった。
簡単に手に入らなければ、なおさらそれが欲しくなる。だから、及川は二人の間にずれが生じるよう強硬手段に出た。
及川は、本田に佐藤からの偽の手紙を出した。
それには、もし本当に自分のことが好きだったら、髪の毛を赤く染めて耳にピアスをしてほしい、と書かれており、本田は佐藤のことを思い喜んでそうした。
でも、佐藤はそういうのが嫌いだったので、本田に対してとても怒ったし、先生にも注意された。
本田はすぐに髪の毛を黒く染め直したが、ピアスの穴は二度と戻らない。それから二人の仲はギクシャクし始めた。
本田は、もともと明るい子ではなかったが、このころから一層暗くなった。
佐藤は、本田にあまり近づかないようになり、及川といることのほうが多くなった。
そして、本田も二人に近づかなくなった。
それでも佐藤は、本田のことに未練があったのか、及川がいないときだけ、本田に申し訳なさそうに近寄って行った。
そんなある日、及川は、「本田さんのことが嫌いなんだったらはっきり言ってよ!あたし、こんなに佐藤くんのこと、好きなのに!」とみんなの前でそんなことを言って泣き出した。もちろんウソ泣きだろうけど。
そして、及川は本田のところに行き、「本田さん、あたしたち友達でしょ?佐藤くんのことはっきりしてよ。これじゃ、佐藤くんがかわいそう」と言った。
本田は何も答えず、佐藤も本田に声は掛けなかった。
二人の付き合った半年間は恋愛ごっこだった。
少なくとも佐藤にとっては、本当に相手のこと好きだったのではなく、人を好きになれるのであれば誰でもよかったのだろう。
だって、最初に行動を示したのは本田だったし、佐藤はその誘いに乗っただけ。
きっと佐藤は、自分をリードしてくれる人ならば誰でもよく、自分をリードしてくれる人がより魅力的な人であれば、すぐに鞍替えする男だった。
それから1週間も経たないうちに佐藤は行動を起こした。
皆の前で佐藤は本田に向かってきっぱりと「悪いけど、俺はもう君とは付き合えないから」と言ったのだ。
及川がそうしろって詰め寄ったのだろうが、今までの佐藤なら絶対にできなかったはずだ。
でも、簡単にやってのけたということは、佐藤は付き合う相手によって人間が変わるタイプだったのだ。
結局、本田は何も言えなかった。
それから、佐藤は本田のことなんか見向きもしなくなり、本田も佐藤には一切近づかなくなった。
及川が佐藤とべたついていたのも3日くらいだった。
傷ついたプライドも元に戻ったし、それまで放っておいた男友達を遊ぶ方がよっぽど楽しいことを思い出した及川は、付きまとう佐藤が疎ましくなり、手のひらを返したように冷たくなった。
及川にとっては、佐藤はあんまりおいしい食べ物じゃなかったのだ。見た目はすこぶるおいしそうに見えたのに、味見してみたら、どこにでもある味だった。
そして、佐藤は完全に捨てられらた。
佐藤が及川に捨てられてすぐのこと、本田がまた佐藤に接近し始めた。
本田は佐藤のことが真剣に好きだったので、及川に弄ばれた佐藤がかわいそうに思え、そんなときこそ自分がついていてあげなければならないという使命感でも芽生えたのだろう。
そして、佐藤はまた本田と付き合い始めた。
しかし、一度裏切りの味を覚えた飼い犬は、その味が忘れられず、その味を求めて同じ失敗を繰り返すものだ。
そして、及川もせっかく手に入れたものがまた離れてしまったので、おもしろくなかった。
学習できない及川は、今まで以上に仲良くなっていた佐藤と本田を、今まで以上に邪魔するようになったが、同じく学習できない本田も及川に何も言えなかった。
しかし、佐藤は少し学習したようで、及川に「俺が好きだったのは本田さんなんだ」と言った。
プライドが音を立てて崩れて行った及川は、怒りで本物の涙を浮かべ「ひどいよ!本気ですきだったのに!」と言って、教室を飛び出した。
岩下は、及川がどんな反撃をするのか興味津々だったが、次の日から及川はとことん二人を無視した。
それから2週間ほどして、今まで話しかけてきたことのない及川が、岩下に相談しに来た。
岩下にとって、人の悩みにを共有することは、その問題に巻き込まれるということなので、人の相談に乗ることは、死んでも嫌なことだった。だから、及川を無視していると、及川は嘘泣きで勝手に悩みを打ち明け始めた。
「私、子供ができちゃったみたいなの。佐藤くんの子供みたい。私、どうしていいかわかんないよ」
及川は、本田以外のクラスの女子全員に同じことを相談していた。
佐藤に真っ先に相談すればいい話を、他の人に打ち明けていることから、その話が嘘だっていうことは誰にでもわかったが、みんなは野次馬だった。
一瞬にして及川は悲劇のヒロインの地位を奪い取り、佐藤に極悪人という役を与えることにもなった。
クラスの女子は、責任をとるよう佐藤に詰め寄り、悪態を浴びせた。
思い当たる節があったのか佐藤は反論せず、本田も何も言わなかった。
その日の夜、佐藤は自分の部屋で首を吊って死んだ。自殺だった。
遺書には、及川の妊娠のことについては何も触れていなかったが、悪いのは自分だ、という類のことが震えた文字で書かれていた。
佐藤の性格からいって、責任をとらなればならないとい罪悪感に駆られたのだろう。
翌日、及川は、「私が悪いんじゃないわ!私は被害者なのよ!」と言いながら教室で泣きじゃくった。
及川の話を聞てい佐藤に詰め寄った女子たちは、自分たちのせいで佐藤がしんでしまった恐怖で、涙を流していた。
クラスで泣かなかった女子は、岩下と本田だけだった。
「大事な時にはっきりと自分の気持ちを伝えられなかった本田さん、騙されていることがわかっていながら誘いに乗ってしまった佐藤くん、自分の欲しいものはどんなことをしてでも手に入れたがる欲張りの及川さん。あなたは、誰が一番悪いと思う?」
- 及川由紀
- 佐藤直之
- 本田佐知子
でも、人を愛し、お互いが惹かれ合い付き合うようになれば、必ず別れが待っている。
人と付き合うならば、どんな結末が待っているにせよ、別れることを最初から考えておかなければならないのよ。
だから、こんな結果になってしまったけれど、付き合い始めた二人にも責任はあったんじゃないかしら?
もし、本田さんがあのとき図書委員に立候補していなければ、何もなかったし、何も起きなかった。
それに佐藤くんもその気にならなければ、死ななくてすんだんじゃないかしら。
あなたは、人を愛することができるかしら?たとえ、どんな結末が待っていたとしてもね。うふふふ。
私は、それでも、人を愛することができるわ。私が満足するためよ。
何なら、私の事好きになってみる?その愛に私が答えるかどうかは別としてね。うふふふ。
あなた、汗はかいてない?
ほら、額のところ。私がせっかく汗をふいてあげたのに。
私の親切を裏切るようなことはしないでね。
額に浮き出た玉の汗がもし流れ落ちようものなら、私はあなたに裏切られたことになるわ。せめて私の話が終わるまででいいから私を悲しませないでちょうだいね」
佐藤が死んで何週間か経ったあと、岩下は放課後の教室でぼんやりしていたら、肩を叩かれた。
振り向くと本田だった。
お互い興味がなかったので、岩下と本田が近寄ったのはこれが初めてだった。
「何かしら?私、自分の時間を邪魔されたくないのよ。用があるのならが、はっきりと言ってほしいんだけれど」と岩下は言った。
本田は無表情で岩下のことを見ていた。
普段の岩下は相手の顔を見るとたいていの場合、その人が何を考えているのかがわかるのだが、この時の本田が何を考えているかはわからなかったため、思わず警戒した。
「岩下さんって、ずうっと私たちのこと見てたでしょ?」
岩下は、本田のことを鈍くさい女の子と思っていたが、本田は岩下が観察していることに気づいていたのだ。
裏切られた気分になった岩下は、初めて本田に興味を示した。
「ええ、去年、あなたが図書委員に立候補する前からね」
すると、本田は笑った。佐藤と一緒にいるときの笑顔を岩下にくれた。
「知っていたわ。話したことがなかったけれど、私たち事、ずっと見守ってくれたのね。ありがとう」と言って、本田は頭を下げた。
岩下は、面倒な問題に巻き込まれたくなかったので、ただ見ていただけなのだが、本田は勘違いして、岩下に感謝していた。
「及川さんが妊娠したとき、女の子はみんな佐藤くんのことをいじめたわ。でも、岩下さんだけは佐藤くんをいじめなかった。本当にありがとう」と、また本田は頭を下げた。
「佐藤くんが死んだときも、女の子はみんな泣いたでしょ。あれは悲しくて泣いてくれたんじゃない。みんな、いつ自分が責任を取らされるのかが怖くて泣いていただけなのよね。
でも、その時も岩下さんだけは泣かないでくれた。私、嬉しかったわ。本当にありがとう」
岩下は、本田は馬鹿じゃない。少なくとも、ほかの女子よりもはるかに頭がいい女だ、と考えを改めた。
だから、岩下は本田のことがいろいろと知りたくなり、少しだけ微笑んだ。本田が、岩下がほほ笑むことですべてを理解してくれるはずだから。
本田は岩下のサインに応えて、言った。
「私はね、岩下さんが揉め事が嫌いなの知ってるわ。嫌な問題には、誰だって巻き込まれたくないものよね。私もそうよ。
でも、問題って自然に起きてしまうから。
それが運命っていうものでしょ。だから、できるだけ運命に逆らいたくないの」
驚いたことに岩下と本田は似たようなことを考えていた。
ただ一つ違ったところは、本田は運命を受け入れるタイプで、岩下は自分で運命を作るタイプだということ。
本田は、自分自身が行動することは最小限に食い留めて、あとは自然の成り行きに任せていた。だから、どんな結果になろうとも、それを現実として受け止める強さを持っていたのだろう。
本田にしてみれば、佐藤と付き合い始めたときから、どんな結果が待ち受けていようとも、それが運命だと割り切っていた。及川に邪魔されることも、佐藤が自殺することも、それは起こるべくして起きたことだと納得していた。
「あなた、頭良かったのね。どうして、馬鹿のふりをするの?」と岩下が質問した。
本田は、「馬鹿のふりなんかしてないわ。私、馬鹿だから、あまり物事を考えないようにしているだけなの」と答えた。
「あなたとは、いいお友達になれそうね。本田さん、用はそれだけ?それだけならばいっしょに帰らないこと?」
「岩下さんが揉め事が嫌いなのはわかっているわ。だから、迷惑はかけたくないの。
でも、どうしても岩下さんに立ち会ってほしいことがあるの。佐藤くんと私のことを温かく見守ってくれた岩下さんにだけは、どうしても見ていてほしいの」
「何を見るの?」
「手伝ってくれなんて言わないわ。もう準備もすませてあるのよ。
だから、見ているだけでいいの。絶対に迷惑はかけないわ」
「ええ、いいわ」
「来て」
本田は理科室に入っていった。理科室には誰もいなかった。
そして、本田は中から鍵をかけた。
理科室の奥には大きな机があり、そこに及川が寝かされていた。
「クロロホルムなの」と本田が言った。
及川は本当にぐっすりと眠っていた。
机の横には、メスやらハサミやらが並べられていた。
「私の家はね、産婦人科なの」
本田の一言で、岩下は、本田がこれから行おうとしているすべてを理解した。本田は、及川を手術してあげるつもりだった。
岩下は、言われた通り黙って見ることにした。
本田は、及川の着ているものをきれいに脱がせていった。そして、脱がせた服も、ていねいにたたんだ。
及川が生まれたままの姿になると、机に縛り付ける作業に移った。本田は、初めてとは思えないくらい手際が良かった。
準備が整うと、本田は適当なメスを一本手に取ると、岩下を見てにっこりと微笑んだ。
「本当はね、堕胎のときにはお腹を切り裂いたりしないのよ。でもね、今は仕方ないの」
本当は、頑張んなさいと言ってあげたかったが、声をかけることも手伝いをしたことになるから、ただの傍観者である岩下は、笑い返した。
本田は、及川の下腹部に赤いマジックで横線を引き、その線に沿ってメスを当てた。すぐに、ぷくっと赤い血玉が浮き出た。
その時、突然、及川が目を覚まし、「痛い!」と叫んだ。
及川はすぐに自分の状態に気付き、信じられないような顔をした。
本田は、「私が責任を持ってすべて解決してあげるから」と言って、メスを及川のお腹に押し当てた。
「やめてよ!」とガラスが割れるほど甲高い声で、本気で及川は取り乱して、もがいた。
「助けてよ!んぐ・・・」
わめく及川の口に、本田はさっき脱がしたスキャンティを押し込み、ガムテープで口を塞いだ。
「大丈夫よ、及川さん。私ね、これでも産婦人科の娘なのよ。だから、私がちゃんと処理してあげるから」
「んー!んうーー!」
「及川さん、何言ってるおかさっぱりわからない。ちょっと痛いかもしれないけど、安心して。私ね、及川さんのことをちっとも恨んでないのよ。逆に佐藤くんの赤ちゃんを宿してくれたことに感謝してるぐらいよ。
そうだ、ごめんなさいね、消毒するのを忘れていたわ」
本田は理科室の棚に目を止めると、嬉しそうに目を細めた。そして、その棚から大きな瓶を取り出し、及川の頭の横に運んできた。
「んーー!んー!」
その瓶を見て及川は金切声をあげた。その瓶は、大きな蛙のホルマリン漬けだった。
本田が瓶の蓋を開けると、強烈なホルマリンの香りがあたりに充満した。
本田は、瓶の中に手を突っ込むと、ホルマリンを掬いだして、及川のお腹に塗りたくった。
及川は、顔中ぐちゃぐちゃにして、鼻水まで垂らして、泣いていた。
「これで大丈夫よ。ちゃんと消毒できてるから。
あのね。私ね、佐藤くんの赤ちゃんが欲しいの。
及川さんはいらないんでしょ?
だからね、代わりに私がもらうの。私のお腹の中で育ててあげるの」
本田は、一気にメスをお腹に押し込んだ。
及川は、自分で自分の頭をがんがんと机にぶつけて暴れてた。
そのせいで、本田の手元が滑り、赤い線通りにメスを入れることができなかった。
脱脂綿を用意してしていなかったので、血がとめどもなくあふれ出た。
突然、本田が切れた。
「きいっ!もう、うるさいな!」
本田はメスを投げ出し、切り裂いた傷口に両手を突っ込むとそれを上下に引き裂いた。
及川は、ぎゃあぎゃあとわめいていた。
本田は、切り裂いた及川のお腹の手を突っ込んで、ごそごそいじくりまわしていたが、「邪魔だなぁ」と言って、腸を引きずり出した。
腸を引きずり出されても、及川はしぶとく暴れていたので、本田は「及川さん、そんなに暴れたら手術が失敗しちゃうよ」と声をかけていた。
「もう、いい加減におとなしくして!」と本田は言って、ホルマリンの瓶を持ち上げると、及川の顔にぶっかけた。
中の蛙も飛び出して、それを及川の顔に押し付けていた。
蛙のお腹が弾けると、本田は、蛙の内臓をつぶして、及川の顔に擦り付けていた。
その頃、ようやく及川はおとなしくなった。
仕事がやりやすくなった本田は、及川のお腹の中からいろんなものを取り除いて、机の上に並べて行った。
「これだわ」
本田が取り出して嬉しそうに抱きしめたのは、及川の子宮だった。
及川は妊娠なんかしていないのに、本田はあの中に佐藤の赤ちゃんが入っていると思い込んでいた。
「佐藤くんの赤ちゃんは、私が大事に育ててあげるの」と何度も繰り返しながら、本田はその子宮を食べてしまった。
食べ終わると、本田は本当に満足そうに何度も深いため息をつき、きれいな涙を流した。
そして、「及川さん、及川さん」と及川の肩に手をかけて揺するが、及川は何も答えなかった。
「気持ちよさそうに眠っちゃってる」と言った本田は、取り出した及川の内容物を元に戻し始めた。もちろん、元の位置に戻すことは不可能で、適当に押し込めていた。
一応、中にあったものを全部、本田の納得する位置に押し込んだから、ポケットから裁縫セットを取り出して、及川の裂けたお腹を縫い始めたが、本田は裁縫は得意じゃないみたいだった。
どうにかこうにか作業は終了したが、きちんと縫い合わせれていないから、ところどころ隙間ができていた。
本田は、及川の口からガムテープをはずし、口の中に押し込んだスキャンティを取り出した。そして、縛っていた縄を解き、脱がした服を全部きれいに着せてあげ、最後に蛙で汚れた顔をハンカチで拭いた。
その時、岩下は蛙がいなくなっていることに気付いた。内臓といっしょに及川のお腹の中に押し込まれたようだ。
「及川さん、子宮がなくなっちゃったから、もう赤ちゃんは産めなくなっちゃうけれど、ごめんなさいね。でも、あなただって少しは責任があるのよ。
岩下さん、待たせてしまって、ごめんなさいね」
その後、岩下と本田は一緒に帰ったのだが、本田は何度も「これで佐藤くんの赤ちゃんが産める。これで私も幸せになるわ」と言っていたが、返り血を浴びた真っ赤なセーラー服を着ていた本田は、一緒に帰る途中に捕まってしまった。
岩下も一緒に連れて行かれて、いろいろ質問されたが何も答えなかったし、本田も岩下のことは何も言わなかったので、岩下は共犯にされることはなかった。
岩下は、本田に脅かされて一緒に付き合わされたことになった。そして、黙っていたのも、精神的なショックで何もしゃべれなかったからということで解決した。
事件が事件だったので、本田は罪に問われなかったが、学校は辞めることになってしまった。
本田は今、精神の病気の治療をしているが、いつ治るかわからないそうだ。
本田は、頭が狂っているから、佐藤の赤ちゃんを妊娠しているから、大事をとって病院に入っていると思って、幸せな日々を送っている。
この前岩下がお見舞いに行ったら、本田は嬉しそうに、どんな名前を付けるか、どんな子に育てたいか、そんな未来なことばかり話していた。
「あと数か月経ってから、本田さんは佐藤くんの赤ちゃんを産むかもしれないわ。神様がいるならが、きっと本田さんの思いを叶えてくださるわ。この世に奇跡は、数えきれないほどあるんですもの。
だから、私も楽しみにして毎月一度は本田さんのお見舞いに行ってあげるのよ。
だって友達ですもの。
これで私の話は終わり。
あなた、汗びっしょりね。
私との約束、守れなかったわね。
私を裏切ったら償いをしてもらうから。
私ね、最初に裏切られたことが今までに一度もないって話したでしょ?
私を裏切った人はね、なぜか死んでしまうの。
私ね、時々記憶をなくしてしまうの。そうすると、私を裏切った人が死んでしまってるの。
裏切った人が死んでしまえば、誰も私を裏切ったことにならないでしょ。
だから、私は裏切られたことがないの。
私、死ぬまで絶対に人に裏切られたくないの。
せっかく、この世に生まれてきたんですもの。誰よりも、幸せな人生を送りたいわ、うふふふ」
岩下エンディング№01:偽りの愛
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21:赤ちゃん、私の赤ちゃん
22:赤ちゃんと引き換えに
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