チラシの裏~弐位のゲーム日記
社会人ゲーマーの弐位のゲームと仕事とブログペットのことをつづった日記

 今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?


 1週目クリア
 1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング№03~05
 2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング№10
 3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング№13・14
 4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング№03~05
 5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情のはざま→福沢エンディング№20~22
 6人目は新堂誠を選択→シナリオ:呪いのマンシール→新堂エンディング№06~08
 7人目はシナリオ:記憶のほころび→七話目エンディング№01~03


 2週目プレイ開始!
 1人目は岩下明美を選択→シナリオ:偽りの愛→岩下エンディング№01・02


 2人目は新堂誠を選択。


 新堂誠は、3年D組の生徒。


 お前がどうして新聞部に入ったのか教えてくれ
  1. なんとなく入りました
  2. 前から憧れてました
  3. 何かお勧めのクラブは?
 「ずいぶんと変わった部に憧れていたんたな、お前。何に興味を持つかは人それぞれだからな。
 それより俺みたいな奴が、こんな女子供が喜びそうな集会にいるのは場違いだって感じてんじゃねえか?」
  1. そんなこと思ってません
  2. はい、正直に言うと感じてます
  3. 何に興味を持つかは人それぞれです
 「それが本音なら、お前は肝っ玉が据わった男だな。まあ、たいていのやつら俺を怖がって、そういった上っ面の答えを返すんだ。お前の言葉が本物かどうか、これから試させてもらうぜ。
 それじゃあ、さっそく話を始めるとするか。ところで、この部屋、なんか怪しくねえか?
 霊ってのはよ、人間の気を敏感に察知するっていうからな。それでな、霊は恐怖心を持った奴の周りに集まるっていうじゃねえか。
 怖い話をしているとき、突然背筋にゾクって寒気が走る。あれはま、そいつの背中を霊が撫でてるんだぜ。
 坂上、お前、まさか怖がったりしてねえよな」
  1. 怖いです
  2. 怖くありません
 「そうか、怖いのか。正直でいいことだが、だったら、お前は霊の餌食だよ。霊に精神を食われないように、しっかりと自分を保つんだ。
 噂話って知ってるか?口裂け女とか、人面犬、トイレの花子さんや、メリーさん。そういう噂、お前は馬鹿にしているか?」
  1. している→新堂エンディング№02:高木ババアなんて怖くない
  2. していない→新堂エンディング№01:吉田の執念
  3. 何とも言えない
 
 「信じるのは馬鹿らしい。かといって、心のどこでは信じている自分もいる。そんなあやふやな感じってところか。」



 新堂のクラスメートに吉田達夫という男がいた。
 現実主義というか、アンチ・ロマンチストというのか、どにかく嫌な男だ。
 勉強はできたけど、それだけの男で、いつも気取っていて、殴ってやりたいタイプだった。
 吉田は、どんなに殴られようが絶対に抵抗しないが、きちんとそれを先生に報告していたので、いじめようとしてもいじめられない男だった。
 先生の間では、成績抜群で品行方正、先生には従順でなんでも従い、問題があるとすぐに報告するため、評判が良かった。
 吉田はそんな男だから、誰にも相手にされず、無視されていた。
 ところが吉田は、それを喜んでいるようだった。自分が選ばれた人間にでもなったつもりで、周りを見下しているのは見え見えだった。


 「お前はそんな奴には何かガツンと一発かましてやりたいと思うだろ?」
  1. はい→新堂エンディング№01:吉田の執念
  2. いいえ
「腹が立つ奴がいても、だんまりなのか?
 だとしたら、よほどの優等生か、逆に冷たい人間なんだな」


 そんな時、新堂はちょっとおもしろい話を聞いた。高木っていう名前のババアの話だった。


 「お前、聞いたことあるか、高木ババアの噂を」


  1. 知っている→シナリオ:呪いのマンシールへ
  2. 知らない

 「知らない、そうか。お前に話してやるぜ。高木ババアの話をよ」


 そのババは、ませたガキが好きそうなフリルのついた真っ赤なロングスカートをはいている。
 足が隠れて地面を引きずるほどのロングスカートのため、高木ババアのスカートの裾はボロボロだった。
 そのババアは腰まである伸ばし放題の髪の毛をいつも垂らしていて、顔を隠している。
 その顔を見た人の話では、すげえ厚化粧をしており、あの顔を見たら、二度と忘れらないとのこと。
 そして、上は白のブラウスを着ているのだが、お姫様が着てるようなヒラヒラのついたかわいらしいブラウスなのだが、ずっと着続けているせいか、元の色がわからないぐらい薄茶色に変色していた。
 ところどころ穴もあいているし、ツギハギだらで、すんげえ臭い。
 そして、ものすごいスピードでピョンピョン飛びながら歩いていた。


「時速100キロで、ピョコピョコ飛び跳ねながら走る厚化粧をした薄汚ねえババア。そんな奴に追いかけられたら、お前どうする?
 お前、笑ったか?今、笑ったんじゃねえのか?」
  1. 笑った→新堂エンディング№01:吉田の執念
  2. 笑っていない
 「引き攣った笑いだったのか?そんな話は嘘だって言いたいんだろう?」
 


 高木ババアが何でピョコピョコ飛び跳ねるのかは、片足がないからだ。
 なんでも、交通事故でトラックのタイヤに足を巻き込まれたらしいんだけど、そのとき家族も一緒にいて、息子夫婦に3人の孫、全員、即死だった。
 死体は原形をとどめておらず、ミンチみたいにグチャグチャになったらしい。
 トラックの運転手は酔っぱらっていたらしく、事故に気づかず、子供をタイヤに挟んだまま、10キロ以上走ったそうだ。
 それで高木ババアは発狂してしまい、その後、家族みんな死んだショックから立ち直れず、自宅の布団で、誰にも看取られずに死んだらしい。
 死後1カ月以上経って発見されたそうで、今現れる高木ババアは幽霊だ。
 幽霊だからこそ、時速100キロで走ることができるのだ。
 高木ババアが臭いのは死後1カ月以上経っているからで、あの服装は事故にあったときの服装とのこと。
 そして、高木ババアは、ある目的があって狙った奴の前に現れ、高木ババアに狙われると絶対に逃げられないため最後らしい。
 高木ババアは、最初は何気なく声をかけてくる。
 「身寄りのない年寄りの思い出話を聞いてくだされ」
 ついうっかり情けをかけて相手をしたら、もう最後だ。いきなり、あの時の事故の話を始めるのだ。
 「私には、人様のうらやむのうな家族がいましての。よくできた息子に、よくできた嫁。目に入れても痛くないほどのかわいい孫が3人。
 そりゃあもう、とても幸せな家族でした。仏様には毎日お礼を言いました。
 でも、ひどいもんです。仏様なんて、いやぁしません。私の家族はみんな死んでしまいました。
 交通事故でした。私を残して家族全員、トラックに轢かれちまったんでごぜえます」
 そんなこと言われたら、聞いているほうは、慰めないわけにはいかない。
 「その分、おばあさんが頑張って生きなきゃ」
 「ありがとうごぜえます。こんなババアに気を遣ってくださって。
 あんた様は、死んでいった家族たちのことがかわいそうだと思いますかのう?」
 「ええ」
 誰だって、反射的にそう答えるだろう。
 すると、高木ババアは、薄汚れたスカートをめくって、こう言う。
 「私しゃあ、そん時の事故で片足をなくしちまいました。私のなくなった片足、不憫だとは思いませんかのう?」
 (さあ、どうだ。お前の心は恐怖心でいっぱいだろう。さあ、おとなしく私に食われてしまうがいいよ)
 まるでそんなことを言っているように、醜く化粧されたシワだらけの顔をこっちに向けてニタニタと笑う。
 もう、走り出すしかない。
 走って走って、心臓が口からこぼれるほど走りまくって逃げる。
 そして、もうだめだ、走れない、と思って、ふらふらの足を休め、全身で息をして、ふっと顔を上げると、高木ババアがニタニタ笑いながら、目の前に立っている。
 「よくできた息子は、腹の上を裂かれて真っ二つ。内臓が飛び出て、どこにいったかわからなくなりましてのう。かわいそうだと思うなら、あんたの内臓をくださいな」
 また逃げる。逃げて、逃げて、逃げまくる。
 足が痙攣して転ぶ。
 後ろからゆっくりと足音が聞こえてきて、真後ろで止まる。
 「よくできた嫁は、両腕を轢き潰されてしにました。かわいそうだと思うなら、あんたの両腕くださいな。
 目に入れても痛くないほどかわいい3人の孫。
 一人は両足を潰されました。
 一人は首を潰されてしにました。
 そして、最後の一人は、タイヤに巻き込まれて体中の皮膚をひっぺがされて真っ赤になって死にました。
 家族はみんな、挽き肉みたいにグジャグジャになって、死んだんでごぜえます。
 かわいそうだと思うでしょう?
 だったら、あんたの体をくださいな」
 そして、首を絞め上げられ、ジ・エンド。
 死んだあと、死体は見つからない。全身は死んでいった家族に分け与えられるから。


 「この話を聞いた奴はよ、1週間以内に必ず高木ババアに会うっていうぜ。
 俺は、お前に話したんだからな。ここに集まっている残りの5人は関係ねえぜ。
 お前、笑っているのか?それとも、震えているのかよ。
 そう心配すんなよ。実は助かる方法もあるんだぜ」


 「助かる方法を知りたいか?」
  • 知りたい
  • 別に知りたくない
 「高木ババアに会わないですむ方法、それはな・・・
 1週間以内に誰でもいいから10人以上に高木ババアの話をするんだ。
 それも高木ババアの話を知らない奴にだぞ。知っている奴に話しても、だめだからな。
 それを守れなかったら、お前は死ぬぜ。
 それでな、吉田にもこの話をしてやったんだよ」


 「なあ、吉田、ちょっとおもしろい話があるんだけど、聞いてくれねえか?」
 吉田は気のない素振りで聞いていたが、話が進むにつれ、新堂の話に耳を傾けるのがわかった。
 新堂が話し終えると、吉田は馬鹿にしたようにせせら笑った。
 「君って子供。もし信じてたら、かわいそうだなあ」
 「お前が信じるも信じないのも勝手だけでよお。高木ババアを見たからって、俺のせいにするんじゃねえぞ」
 吉田は吹き出した。
 「ぷぷっ!もし本当に会えたら、すぐに君に知らせてあげるからさ。
 じゃあね、僕、君と違って塾があるから」
 そういって吉田は荷物を片付けると帰ってしまった。


 「悪いが俺はよ、こういう噂は信じてるもんでな。
 俺が高木ババアに話を聞いたときは、急いで10人に話だぜ。
 それで、吉田はどうなったと思う?俺の話を信じて、ちゃんと10人に話したと思うか?」
 「お前の勘が当たっているかどうかは、まあ続きを聞いてくれ」


 次の日、吉田は別に何気なくふるまっており、別に誰かに話をする風もなかった。
 日曜日には新堂は、吉田があせっていると思って電話した。
 「君、馬鹿じゃないの?悪いけど、僕は高木なんてババアの話は忘れてたよ。君、頭が変なんじゃないの?一度、病院行ったら?
 あのさ、君が何を思おうが僕には関係ないけどね、大切な僕の休養日に邪魔だけはしないでくれる?」
 言うだけ言って、吉田は一方的に電話を切った。
 新堂は、吉田の慌てるところを見てみたかったが、吉田が死ぬかどうか見極めることにした。


 そして、いよいよ明日で約束の1週間が終わるという日になった。
 いつも他人を見下した態度をとっている吉田が、その日に限って妙にしおらしい。
 愛想笑いなんか浮かべて、すれ違う奴らにペコペコあいさつしている。
 今までが今までだから、誰も吉田なんか相手にしない。
 吉田は、何か話したそうにしているが、誰も聞かない。
 吉田が、高木ババアの話を気にしており、誰かに話したくて仕方ないのに、誰も聞いてくれないのが、新堂にとっておかしくてしかたがなかった。
 吉田は頭を下げながら何人かに話し始めるが、すぐに逃げられてしまう。
 新堂のクラスメートは、もうみんな高木バアアの話を知っているのだ。
 新堂がニヤニヤしながら吉田を見ていると、それに気づいた吉田が、今にも泣きそうな顔で新堂の側に駆け寄ってきた。
 「なあ、新堂君」
 吉田は、泣き出しそうな声を出し、新堂の手を握り締めてきた。
 「あの話は冗談だよね?」
 「何の話だよ、お前、俺と口聞きたくなかったんじゃなかったっけ?俺、お前の大事な時間を邪魔しちゃ悪いからよぉ」
 突然、吉田は土下座して新堂に謝った。
 「ごめんよ。僕が悪かったよ。だから許しておくれよ。
 僕のこと助けて!!」
 新堂は、これ以上しらばっくれるのもかわいそうになり、土下座する吉田を助け起こした。
 「そんな高木ババアが怖いんだったら、話せばいいじゃねえか」
 それを聞いた吉田は大声で泣き始めた。
 「うわあああん!!みんな知ってるんだもの。みんな高木ババアの話を知ってるんだよ!
 まだ3人しか話せてないんだよ。お願いだよ!死ぬのはいやだよ!」
 「3人って誰に話したんだよ?」
 「お父さんとお母さん、それから親戚のおばさん。
 学校のみんなも、塾のみんなも、誰も聞いてくれないんだ。聞いてくれそうになった連中も、みんな知ってるんだよ。高木ババアの話をさ」
 「先公は?お前、ずいぶんと気に入られてたじゃねえか」
 「馬鹿にして、僕の話をまじめに聞いてくれない。
 それでも無理に話そうとすると、怒鳴るんだよ。お前はいつから、そんな馬鹿な事を言う生徒になったんだって、まじめに心配そうな顔をするのさ。
 もう、だめだ。もう、僕は死んでしまう。お願いだ。助けてくれよ」
 「あんなの冗談さ。高木ババアなんているわけねえだろう」
 新堂は、吉田がかわいそうに見えたので、心にもないことを言ってしまった。
 「本当に、あれは嘘だったんだね!」
 「ああ、冗談だよ、気にすんな」
 「ありがとう!その一言で僕は救われるよ。本当にありがとう」
 吉田は、落ち着いて帰っていった。
 しかし、新堂は、吉田が早めに10人に話しておけばこんなことにならなかったんだ、と思っていた。


 そして約束の1週間目がやってきたが、吉田は学校に来なかった。
 恐ろしくなった新堂は、話をした責任を感じ始めた。
 そして、放課後、新堂は吉田の家に電話したら、吉田は家にいた。
 「なんだ君か。どうしたの?」
 「お前、今日学校休んだじゃねえか。何かあったのかと思ってよ」
 「あっははは、何言ってんの、君?あれは冗談だんだろう?いやあ、僕としたことがちょっと取り乱しちゃったよ。君みたいな下等な人間に騙されるところだった。
 今日は、ちょっと疲れたから休んだだけさ。別に君に心配してもらう必要はない。
 あ、そうそう、前にもう僕の家に電話しないでくれって言ったよね?もう電話、しないでくれる?
 それから、君がした高木ババアに話、明日になったら先生に報告しておくつもりだから、覚悟しておくんだね。
 君のような奴を愉快犯っていうん・・・」
 そこまで聞いた新堂は、受話器を叩きつけた。
 腹が立った新堂は、そこら辺のものに当たり散らしたが、怒りは収まらない。
 仕方がないので、新堂は寝ることにした。


 電話のベルの音で、新堂は目覚めた。
 受話器を取ると、金切り声が聞こえてきた。
 「助けてくれよ、新堂君!!」
 電話の主は吉田だった。
 「ウソツキ、どうして嘘なんかつくんだよ。新堂君の責任だよ。僕が死んだら、新堂君の責任なんだ。どうしてくれるんだよ!
 高木ババアが出てきちゃったじゃないか!高木ババアが、あと6時間でお前を殺すっていうんだよ!殺されるよ!」
 「馬鹿言ってんじゃねえよ。俺はお前の時間を邪魔するつもりはないからよ」
 「お前の責任だ!あと6時間のうちに7人に話さないと俺は殺されるんだぞ!」
 「うるせえ!」
 そう言って新堂は、受話器を置いた。
 新堂が時計を見ると6時を回っていた。
 ちょうどその日、新堂の両親は法事で田舎に言っており、明日の朝まで家には、新堂一人きりだった。
 新堂は、念入りに戸締りをし、作り置きの夕食を食べた。
 8時を回ったころ、また吉田から電話があった。
 「見つからないよ!まだあと5人にも話なさきゃならないんだ!」
 「いい加減にしろ!」
 「いるんだよ!高木ババアが僕のことを見ているんだよ!どこに行っても追いかけてくるんだ」
 「死んじまえよ、クソ野郎!」
 新堂は、電話が壊れるかと思うほど、受話器を乱暴に叩きつけた。
 嘘をついているとは思えない雰囲気の吉田から恐怖を感じた新堂は、テレビのボリュームをいっぱいに上げた。
 何かほかのことを考えようとしても、吉田のことが浮かんで消えない新堂は、風呂に入ることにした。
 風呂に入っているときに、また電話のベルが鳴ったが、新堂は怖くて電話に出れなかった。
 ベルは20回ほどなってようやく切れたが、すぐにまたかかってきた。
 新堂は風呂を飛び出し、受話器をとってすぐに切った。
 それでも電話がかかってくるので、新堂は電話線を外した。
 そして、新堂はリビングのソファの上で足を抱えて、時計を見つめ、12時になるのをじっと待った。


 12時まであと5分ほどになったとき、「新堂」という声をともに、家のドアをぶち壊すような勢いでたたく音が聞こえた、
 吉田が、家にやって来たのだ。
 「新堂、もう時間がないんだ。俺は死ぬ!だから、お前も死ね!死んで責任をとりやがれ!」
 新堂は、急いで玄関に行き、中からドアを押さえつけた。
 「俺はなあ、道行く奴を呼び止めてまで、無理やり話を聞かせたんだよ!まるで狂人扱いさ!
 殴られもしなけどよぉ、話したよ!後ろには高木ババアがいるからよお!
 でも足りないんだよ!あと一人!もう時間がない。だから、お前を殺すんだ!」
 突然、ドアが激しく揺れて隙間に刃物の切っ先が垣間見えた。
 そして、吉田は諦めたのか、すぐに物音はしなくなった。
 その時、鼓膜が破れるようなものすごい音が鳴り響いた。リビンクからだった。
 新堂が目を向けると、リビングの一面を壁を覆っていた窓ガラスが粉々に砕け散っていた。
 「新堂!!」
 絨毯にまき散らされたガラスの破片の上に、土足の吉田が仁王立ちになっていた。手には包丁を持ち、体中から血を滴らせながら。
 顔は青く腫れあがって歪んでいた。無理やり見知らぬ通行人に高木ババアの話をしようとして殴られたのだろう。
 新堂は、吉田に殺される、と覚悟を決めた。
 その時、いきなり吉田が包丁を振り回しながら、見えない何かを必死に追い払うように、暴れ出した。
 吉田には高木ババアが見えているのだ。
 「やめろよ!もう少し時間をくれよ!こいつを殺してからにしてくれよ!ぎゃあ!!!」
 突然、吉田の腹が真一文字にパックリと割れた。
 吉田は苦しそうに目を細めると、ぱくぱくと口を開いた。
 「うわああ!」
 新堂は叫んで、階段を上がり、自分の部屋に逃げ込もうとした。
 「逃げるな」
 吉田は、新堂を追いかけてきた。
 足が震えてうまく階段を上がれず、つんのめった新堂の足首を、吉田の血まみれの手が掴んだ。
 新堂が慌てて振り返ると、吉田は新堂の足首を握りしめたまま、嬉しそうに包丁を振り上げていた。
 吉田の腹からは、腸がベロンとはみ出ており、ほかほかと湯気を立てていた。
 吉田は新堂めがけて包丁を振り下ろしたが、必死だった新堂は渾身の力を込めて足をけり出すと、見事吉田の腹に命中した。
 吉田はそのままもんどり打って、階段を真っ逆さまに転げ落ちて行った。
 腸が階段にぺちゃりと張り付いていたが、吉田は動いていた。
 「し・・・ん・・・どう・・・」
 ものすごい目で新堂を睨みつけるが、新堂は四つん這いになって這いずりながら階段を上がり、なんとか自分の部屋に逃げ込んだ。
 ドアの向こうから、ズルズルビチャビチャ階段を何かが這い上がってくる音が聞こえてくる。
 新堂は、鍵のないドアのノブに手をかけ、ドアが開かないように必死に体を踏ん張らせた。
 「新堂、開けろ。お前を殺してやんだからよぉ」
 そして、がりがりとドアを爪で引っかく音が聞こえる。
 「開けろ」
 突然、ドアを破って包丁を握った手を突き出てきた。
 包丁は、新堂の左腕の肉をそいだ。
 「新堂、見ぃつけた」
 その時、ドアに空いた穴から、汚れた白いブラウスを着た手が伸びてきた。
 高木ババアの手が、吉田の手を掴んだ。
 「やめてくれよ。もう少しであいつをのこと殺せるんだよ、うぎゃああ!」
 ドアの向こう側から吉田の悲鳴が聞こえてくるのと、穴に手が引きずり込まれるのはほとんど同時だった。
 そのあと一切の物音は聞こえなくなり、床には包丁だけが落ちていた。
 新堂が時計を見ると、針は12時を指していた。
 10分ほどして、新堂は慎重にゆっくりとあたりに気を配りながらドアを押し開いた。
 ドアの向こうに何もなかった。吉田の死体も、腹から引きずり出された腸も、血の跡さえも。
 痕跡といったら、ドアに空いた穴と、床に落ちた包丁だけ。
 新堂が1階に降りると、リビングの窓ガラスは割れたままで、カーテンが風にたなびいていた。
 そして、玄関に目をやると、そこにも包丁を立てた跡がくっきりと残っていた。
 確かに吉田は来たが、12時を過ぎると同時に忽然と姿を消してしまった。


 次の日、新堂はこっぴどく親に叱られた。
 本当のことを言っても信じてもらえないため、友達がきて大騒ぎしたって嘘をついて謝った。
 そして、必死に頼み込んで部屋に鍵をつけてもらった。


 学校にも吉田は来なかった。
 突然家出してしまったそうで、行方不明になった。


 「そういえばお前、さっき吉田は期限に間に合わなかったって言ったよな。ご名答だ。なかなか鋭い勘をしてるじゃねえか。
 お前、俺の話、信じようが信じまいが勝手だけどよ。なんで、お前だけに話をしたのかわかるか?
 ここに集まった残りの連中は、もう高木ババアの話を知っているから、お前に話してんだ。
 どうして、わざわざこんな話をしたのか不思議なのか?悪く思わないでくれ、俺も必死なんだ。
 毎晩、吉田の野郎が俺の夢の中に現れんだよ。手足をちぎられ、内臓をそっくり抜かれた血まみれの吉田がよ。
 そんで、毎週10人に高木ババアの話しろって脅かすんだ。俺がその約束を守り続けなければ、俺のことを殺しにやってくるんだってよ
 俺、死ぬのは怖いからよ。たとえ誰にどう思われようと、俺はこの約束を守らなきゃなんねえ」
 「ヒヒヒ、面白い話でしたね。あの、せっかくですので少し付け加えさせてもらえますか」
 突然そう言って口をはさんだのは、さっき話をしてくれた荒井だった。
 「高木ババアの話は僕も知ってますし、1週間以内に10人以上に話しましたから、話さなかったときに何が起こるかは知りません。
 ただ僕は知っているんですよ。新堂さんが吉田さんに借金があったことを。50万円という多額の借金がね。
 ああ、借金というより恐喝って言うんでしたっけ?吉田さんは返さなければ学校や親にばらすって、ずいぶんと新堂さんに詰めよっていたそうですね。
 そんな吉田さんが、突然行方不明になって学校に来なくなった。偶然って怖いですね、ヒヒヒヒヒ」
 

 新堂エンディング№05:吉田の真実
 CGギャラリー 18/124

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中間管理職
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もちろんゲーム
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 大人になりきれない社会人ゲーマー。
 現在の夢:ゲームする時間の確保、サービス残業時間減少、年棒アップ
 将来の夢:がんばってお金を稼いで、ニートでゲーム三昧の日々を送ること
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