チラシの裏~弐位のゲーム日記
社会人ゲーマーの弐位のゲームと仕事とブログペットのことをつづった日記

 今日のレイジングループはどうかな?


 3.黄泉 5月15日(木)Q.毒殺を止めよに巻き戻る。


 A:肩からぶつかる
 B:手頃な武器をとる


 無意識に手近にあった椅子に手を掛けた陽明は、そのまま凶器を持つ相手に突進し、倒れたかおりに椅子を押し付け動きを封じようを試みた。
 包丁を持つ手を椅子の下敷きにすると、かおりは包丁を取り落とす。
 すかさず千枝実が包丁を蹴とばす。
 最終的には、手ぬぐいやタオルで両手両足を縛り上げ、わめく口に猿轡を噛ませて、なんとかなった。


 食堂にかおりを閉じ込めたまま、食堂の外、霧が立ち込める広場に6名が立ち尽くす。
 多恵が、織部さんもよみびとになってしまった、とつぶやく。
 泰長は、そんなわけない、ちょっとおかしくなっているだけだ、と叫ぶ。
 泰長は、母は僕が責任を持って落ち着ける、と言ったが、清之介は、「霧の中のことは宴で決めるべきだ。でないとけがれるかもしれん」と答え、多恵も賛同したため、泰長も清之介に従うことになった。


 陽明がかおりを見張ることになり、多恵、房之介、泰長、千枝実、春、めー子で、宴を行うことになった。
 「かおりが危険だから、くくる」のに、清之介が1票入れた。
 泰長は、「李花子も危険だから、李花子に1票入れる」と答える。
 多恵は、先か後かはどっちでもいいが、どっちもくくるべき、と答える。
 千枝実は、頭が回っていない、と言って保留する。
 春は、李花子はもう化け物だからくくべき、と答える。
 めー子は、清之介から、「李花子を助けたいなら、かおりをくくれ」と言われたが、話がわからず結局保留。
 李花子は、獣と同じで話はできないし、投票もできない状態だ。
 泰長は、2対1で李花子をくくると言い出すが、清之介は、おおかみを全滅させるほうが先だ、と反論する。
 さらに、清之介は、「よみびとはおおかみではない」と言い出す。つまり、李花子はおおかみではないのだ。
 続けて「おおかみとは、よもつおおかみ。すでに黄泉のけがれを負った存在。おおかみがさらによみびとになるのか?」と言い出し、仮説を話し出す。


 清之介の仮説は、強いけがれをうければ取材者と義次のように惨死する。弱いけがれは狂気となり、狂った御護りがおおかみで、狂ったひとがよみびとになる。つまり穢れの罰は、おおかみにとっては惨死で、ひとには、よみびとと惨死の2通りがある、というものだった。
 もし、おおかみがけがれで狂うと、獣は毛むくじゃらな本性を現すはず。しかし、李花子はそうなってない。


 千枝実は、「こうして全てを手のひらの上でもてあそんでいる神様がこわい。こわいものと田戦わなきゃならなくて、戦うには武器が必要で、陽明さん」とつぶやき、なぜか泰長に確定票を投票し、自分の考えを述べる。
 

 清之介の言い分は半分正しい。この場はおおかみを探すために使うべき。
 自分と同じ優先順位を付けられる人は、清之介だけ。
 めー子は論外。
 春は、状況に関わらず、清之介のアンチと、泰長の味方をするはず。
 多恵は、信心深いので伝説中心で語るだろう。
 泰長は、かおりをくくられないため李花子をくくる話を進めているが、優先度はわかっているはず。「奇し黄泉人、亡きにせん」という言葉より、直接の脅威になり得るおおかみを探すべき。


 それを聞いた泰長は、清之介が適当なことを言って場をかき回したから、義次もモッチーも殺された。そして次は母さんだという、あなたが許せない、と叫ぶ。
 千枝実は、かおりが食事を出した時、泰長と春はいなかったから、あれで全滅してたら、残るはこの2人だった、あとは陽明。と話す。
 そして、泰長がおおかみだったら、とても楽な展開だよね、と続ける。


 トリカブトとかおりが採ったのは朝だろう。それ以外はヒマはなかったはず。
 かおりはその時からみんなを殺す気だった。夜の間に吹き込まれてたとするならね。
 おおかみは2人いる。
 かおりが、唯一残った息子のため1人でけがれを被る覚悟で残るひとの皆殺しを狙ったら、最期におおかみとひとが残っても投票にならないし、ひとである春は何もできない。


 泰長は、「母さんがおおかみなら義次が死ぬわけない。義次を生かすために僕を殺すのはありえたかもしれないけど。母さんは僕よりあいつのほうが好きだから。」と答える。
 千枝実は、「義次が殺されたとは言っていない。単に夜出歩いてけがれを受けただけかもしれない。それにかおりさんはおおかみじゃなくても、息子がおおかみだって知ったらけがれを厭わずに助けるかもしれない。」と話す。
 春は、千枝実が泰長をくくろうとしていることに猛反発し、「あの人に出会って、千枝ねぇが変わっちゃったの?」と言い出す。


 多恵→かおりに投票
 清之介→かおりに投票
 泰長→李花子に投票
 春→李花子に投票


 めー子はどうするのか?となった時、千枝実は「めー子ちゃんよく考えて、あなたの票でひとの勝ち負けがきまっちゃうかもしれないんだから」と言い出し、李花子がいなくなったらいやだよねと吹き込み、めー子はかおりに投票し、かおりがくくられることになった。


 一行がお堂から出てきた。
 めー子は陽明のもとに来た。
 他の一行は、食堂に入り、犠牲者を引きずり出す。
 猿轡が外れたのだろう、犠牲者の呻き声が急に鮮明になる。
 最後の時、母は息子の名前を叫んでいた。それは長男の名前であり、呼ばれた本人も母のことを繰り返し叫んでいた。
 最後、一瞬、犠牲者は別の人間の名前を呼んだような気がしたが。
 何か音がして、その後、叫び声は一切消えた。


 陽明は、めー子に向かって、明日一緒にここを逃げよう、と話しかけた。
 めー子を部屋まで送り届けて、「鍵をかけて、明日の朝、僕が迎えに来るまでしっとしているんだ」と陽明が声を掛けると、めー子は頷いた。


 部屋に戻った陽明は、住人たちが揃って禁忌とする霧の中の皿永下りの結構を検討し始め、仏舎利ロックに合わせて壁にケツアタックを連発しだすと、玄関ドア越しに千枝実の、うるさい!という怒号を響いた。
 陽明は、明日逃げよっか、とドア越しに千枝実に声を掛ける。
 まだ8時で、安全は時間のため、陽明はドアの鍵を開けた。


 何もない部屋に2人、あぐらをかいて対面する。
 陽明は、千枝実に今日の宴の内容を尋ねる。
 千枝実が、「人、殺しちゃった」と話すと、陽明は、「君は悪くないさ」と軽く答える。
 陽明が、かみさまについて話してほしい、と言うと、千枝実が話し出す。


 かみさまは不幸だ。
 かみさまがいるから、どうやってもわたしたちは幸せになれない。
 わたしたちはみんな見てるが、本質は、目に見えないものかも。
 陽明が、それは人間?と尋ねると、千枝実は小さく頷いた。
 休水の誰か?と陽明が尋ねると、千枝実は黙ったまま答えない。
 上藤良の人間?と続けると、千枝実は沈黙を守ったままだが、肩がわずかに震えている。
 「ちがう、ちがう、やっぱちがう!人間じゃない!人間をどうしたってかみさまはどうにもなかない!」と千枝実は大声をあげる。
 陽明が落ち着けと声を掛けると、千枝実は、「わたしを殺して!あなたの手ならわたし死ねる気がする!」と叫ぶ。
 しっかりしろと陽明が声を掛けると、千枝実は、「わたししっかりしている、わたしはけがれてない、わたしは狂ってない、おかしいのは藤良全部よ!おかしいのは、かみさまのほうよ!」と叫ぶ。
 陽明が、かみさまとは状態のことなのか?と声を掛けると、千枝実の視線が陽明の肩越しに久具付けになっていることに気付く。


 それは、いつからそこにいたのか。
 敷居の向こう側に立つ存在-人物-?人なのか?
 薄暗い中に浮かび上がったシルエットは、手足と頭を備えた人影ではあったが、その風体は異様と呼ぶしかなかった。
 全身を経文かなにか文字の書かれた布で覆った小柄な少年?少女?
 「ヨミノニオイニ、オオカミハキヤル。ミソギモノイミユメミセヨ。フシヨシノムスメ。」


 ばたん!という音がして、正面に向き直ると千枝実が倒れていた。
 陽明が揺り起こすと、千枝実は意識が朦朧となっている。
 「眠い、ごめん、帰るわ」と死んだような目をして、千枝実は立ち上がり玄関に向かう。
 このまま帰してはダメだと確信した陽明は、千枝実を抱きしめ、「絶対に連れて行く。捨てる命なら、僕にくれ。明日の朝、千枝実とめー子と連れてここを出る。」と言った。
 「君を連れてじゃないんだ」と千枝実が答えた。


 「君によろしくお願いされたから、その意は最後まで汲ませてもらう」
 「律儀なんだ?」
 「でしょ、実は子供を見殺しにするのは他よりも気分が悪いっている打算もあったりするんだ」
 「いつのまにか呼び捨てになってる」
 「嫌だった?」
 「嫌じゃないけど、けじめじゃないけど、区切りは欲しいな」
 「僕と付き合って」
 「いいよー」
 「だから一緒に逃げよう」
 「わかった。言っておくけど、一緒に死んでもいいって意味だから。」
 「まかせろ。あと他に希望者がいたら連れて行くから」
 「えー、わたしは特別扱いじゃないんだ」
 「特別扱いだよ。他は任意だけど、君とは付き合った以上、ふんじばってでも連れて行く」
 「陽明さん、ありがと」


 一気に声を潤ませる千枝実を陽明はいっそうきつく抱きしめた。
 「わたしが今夜おおかみに殺されたら、なんでもいいからどこか一部だけでも外に連れて行って」という千枝実に、「僕がいる」と陽明は、千枝実を励ます言葉を紡ぎ続けた。
 10分ほどで時間になったので、千枝実は自分の部屋に戻っていった。


 5月16日(金)


 無事に朝を迎えた陽明は、昨日の言葉を思い出す。
 「黄泉の臭いに、狼は来やる。禊ぎ、物忌み、夢見せよ、藤良の娘」
 意味的には、とっとと部屋に戻って寝ろ、というルールを握っている側からの注意喚起っぽい。
 申奈明神は、黄泉陣営とは敵対関係にあるから、メッセンジャーがよみびとであっていいはずはない。


 鍵の掛かった千枝実の部屋の扉を叩くと、千枝実はすぐに出てきて、狩猟用の鞘付きの大ぶりのナイフを陽明に渡す。
 春と泰長の部屋に行くと、どちらも鍵は開いており、中には誰もいない。


 陽明と千枝実は霧の中を進み、めー子が寝ている家に行ってみると、扉が開いており、誰もいない。
 陽明は、千枝実にナイフを返し、「実際に使える武器がいる」と言って、小屋に立てかけてあった棒切れを手に取る。


 千枝実の提案でお堂に向かうと、春、めー子、多恵、泰長がいた。
 つまり、清之介が殺されたのだ。
 めー子にこっちに来るよう促すと、春がめー子を止めたため、陽明は春に対し棒切れを振りかぶる。
 それ見た泰長が、右手に握った草刈鎌を陽明に向かって振りかざす。
 泰長は、陽明がけがれの元凶で、宴に混ぜないのは失敗だ。陽明をくくれば、みんな死なずに済んだ、と言い出す。


 オロオロしているのは千枝実とめー子だけ。つまりそれ以外は打ち合わせ済みだ。
 陽明は、千枝実にフォローを入れるため、と言って皆に話しかけた。


 誰がおおかみはさておいて、大事なことは2つ。
 まず、きのう、めー子に集落を脱出することを持ちかけたが、それは皆に聞かれたと考えるべき。
 村からの脱走は禁忌だが、村からの脱走をみすみす見逃す側も、けがれの対象になるかどうか問題になるので、めー子の身柄を押さえた。
 もう一つ、昨日、千枝実と泰長が対立関係になったので、今日の宴は両者の一騎打ちになるはずだろう。
 春の確定票を押さえている泰長が有利だろうが、多恵とめー子という浮動票がある以上確定ではない。
 だから、千枝実と和解して、部外者である僕を狙うのが一番安全確実だと踏んだんだよね?
 僕を黙らせるために、めー子を人質にとっている。


 それを聞いた泰長は、陽明がめー子を人質にとってひどい要求をすると思っている、と答える。
 陽明は、自分は宴に関わってない、と答えると、泰長は、それが間違いで、自分たちは大事な誰かを失っている。失っていないのは陽明だけだ、と感情論に訴えかけてきた。
 陽明は、「全ての悪事を僕のせいにすれは感情的にはおさまりがつくだろうが、泰長自身のキャラを大事にしなさすぎ。冷静沈着、年上の暴論にも理屈で抗するキャラを。ま、それは君をずっと見てきた村の方々が決めることだ。君が完全に理性を失って、僕というよそ者に怒りを向けているのか、あるいはとても冷静に僕をくくって今日の宴を空振りにさせ、自分の有利にことを運ぼうとしているのか。つまり昼の私刑を回避して得をする陣営の人間なのか、みんなに聞いてみよう。」と話すと、千枝実は、泰長に疑いの目を向ける。


 「僕のことをおおかみだと言えばよかったんだよ。僕のことをおおかみだとは言わずに元凶と言い続けるのは、自分がおおかみだと知っているから。嘘をつくのが苦手なんだろう?かといって勝負所じゃあ、つかなきゃならない嘘はつかなきゃダメなんだよ。」と陽明は畳みかけると、泰長は、「あんたに何がわかる!へらへらしているだけで、何もしなかったくせに!」と叫ぶ。
 陽明が、「自分で考える頭も持ってたくせに、早々と迷信におもねって弟と母親を見殺しにした君に対して、率直に怒っているんだぜ」と告げると、泰長は黙ってしまう。
 10秒ほどたって、泰長は、「確かに自分はおおかみだが、もう僕らは勝っている」と静かに言って、持っていた鎌を放り捨てた。
 そして、「もう一人のおおかみ、出てきてください」と告げると、多恵が名乗り出た。
 それを見た春は、歓喜の表情で泰長に抱き着く。
 春の元からめー子がこちら側へやってくると、多恵が話し始める。


 多恵が娘だったころ、上藤良のもんが山祭りで酔って、黄泉忌みの宴についての本当のお話をしていた。
 申奈明神が、ひとを助けるために5つの御護りを遣わしたというのは、聞いた話と同じ。
 そのうち4つが、ひとと組んでおおかみを謀殺したというのも同じ。
 本当のお話では、正当性を持つ側が、まるっきり逆だった。
 実は、最初に黄泉忌みの宴の時点で、ひとも、4つの御護りも、黄泉の側に寝返っていた、という。つまり、全員よみびとだった。
 そして、唯一最後まで抵抗したおおかみをよみびとは、数に任せて放逐することに成功する。つまり、この地はとっくによみびとの手に落ちていた。
 そこにおおかみ様を呼び戻したのは、他ならぬ申奈明神。
 休水の中の誰かにおおかみ様の加護を授け、休水をよみびとから解放せんとする、つまりおおかみ様による聖戦。それが黄泉忌みの宴の真実だ、と。
 

 多恵は「匠も苦しそうにしとったけれど、よみびとは救われんと、申奈さまは言われるのよ。」と言ったため、多恵は殺人による救済を信じた確信犯だった。
 千枝実は、そんな話知らない、とつぶやく。
 泰長は、加護を受けた時に知った、と答える。
 陽明は、黄泉忌みの宴の本質が、確信犯同士を殺し合わせるシステムであることに気付く。


 陽明は、泰長がおおかみだと知って喜ぶ春の姿を見て、春も正典を知っていることに気づき、「なぜ、春ちゃんは知ってた?」と尋ねると、春は、「おじいちゃんが死んだ日に、私の夢に出てきたおおかみ様が教えてくれた」と答える。
 おじいちゃんが死んだ日は、春が集落から逃げようとした前の夜だ。
 春は夢の内容を信じて、周りのほとんどがよみびとだという真実に絶望し、逃走を図ったのだ。
 春は、根拠の薄い啓示を信じ、自分の好きな男が、圧倒的少数派の正義であることを知り、ひとを裏切っておおかみにつくことを宣言した。
 おおかみである泰長は、3票手に入れて、「投票で僕を殺すことができないから、おおかみの勝ちです」と宣言する。
 「楽勝でした」と話す泰長に対し、「僕たちの負けだ」と告げる陽明。


 悪あがきをしたい陽明は、春に、「君は死ぬぜ。それでいいんだよな?」と声を掛ける。
「春ちゃんが正典を知っていたとしてもひと側であることに変わりない。つまり、正典を知ってしまっただけのひとだ。だから、ひとが負けるということは君も死ぬことだ。」と陽明が告げると春は動揺する。
 畳みかけるように陽明は、「おおかみはそういう役回りの人いることを知っており、春ちゃんが誘いに乗るかどうか試してしたんじゃないかな。」というと、泰長は、「それがどうした」と答える。
 泰長がここできっぱりと否定しなければ、春の死を知ったうえで利用した最悪の人間だと表明したことになるのだが・・・


 春が、艶めかしい陶酔の色がにじんだ屈託のない笑顔でうれしそうに「それがなんだってのかしらね。よみびとはくくられなきゃならない。けがれた、醜い、おぞましい私たちには、おおかみ様の渦と爪だけが救いなの。誰だってわかるわ、そんなこと。だから、兄ちゃんは、かおりさんを手にかけたんだもんね?お母さんをしあわせにするために。」と言った。
 「ああ」と泰長も答え、「その通り」と多恵も答える。
 「うふふ、兄ちゃん、春も幸せにして」としなだれかかえる春を、表情ひとる変えず抱きしめる泰長と、それを満足そうに見つめる多恵。
 陽明が、何なんだこいつらは、と思ったとき、泰長が千枝実に向かって、「大人しくするなら救ってあげる」と声を掛ける。
 陽明は、休水の狂気を甘く見過ぎていたことに気付くが、気付くのが遅すぎた。
 黄泉忌みの宴は、単なる確信犯同士を殺し合わせるシステムではなく、休水人の根本を形成するないかを粉々に破壊する狂気の歯車がそこにある!
 正典を有する者の、死による救済だったのだ。


 かみさまを恐れる千枝実と、救済を受け入れる彼らの根本的な類似点に気付くべきだった。
 しかし、泰長が、確定した勝利に似つかわしくない苛立たし気な表情をしている。
 それを見た陽明は、泰長の計画が狂気によって失われていないことにギリギリで気付くことができた。


 陽明は、千枝実の手を引っ張り、泰長に棒切れで殴りかかる。
 陽明は、春と多恵もぶん殴り、千枝実とめー子と連れて脱出した。
 早く逃げないと、彼が用意した唯一の好機が死ぬ。


 陽明は、泰長の真意に気付いたのだ。
 千枝実に惚れている泰長は、千枝実だけは手にかけたくなかった。
 そして、わずかでも千枝実を救う可能性があるのは脱出しかないと判断したが、おおっぴらに脱出を認めれば、他の全員にけがれが及ぶので、陽明が全員を叩きのめして無理矢理連れて行ったという形を取らざるを得なかった。
 陽明たちを逃がさない気なら、あの時鎌を捨てる必要などなかった。
 早く気付け、早く襲ってこい、と泰長は暗に示していたのだ。


 村の境界を越えて、崖を下っていく。
 霧が立ち込めているが、足元は丸石で、水音もするので、河原まで降りたのは間違いない。
 しかし、崖の上から葉擦れか何かの音が聞こえてきた。
 3人は走り出したが、数十分たっても川に着かない。
 ふいに千枝実が立ち止まって「もうだめだ、これ」と言い出す。
 陽明が「ちょっと休もう」と言ったが、千枝実は、「わたしがいたら、きっと川はこえられないんだ。だって、よみびとはわたしたちの方だって。」と話す。
 陽明が、「だから彼岸を渡れないとでもいうつもりか?」と声を荒げる。
 「わたしはけがれているから!見ないで!」という千枝実の腕を引いて、陽明が振り返った。
 褐色は黄色の疱疹にびっしりと覆われた千枝実の顔を至近距離で対面したが、驚きや嫌悪を感じる前に、陽明は千枝実に口づけてた。
 血と膿の混じった錆臭く甘ったるい味が陽明の口いっぱいに広がって、喉に落ちていく。
 やがて唇が離れた時、千枝実は、ごめんさないと連呼した。


 もう数時間歩いている気がするが、確実に弱っていっている千枝実は、謝り続けている。
 何が起きても、おかしくないかもしれない。
 千枝実が、「陽明さん、ありがとう、楽しかった」という言葉を最後に消失した・・・
 奇妙だった。手首だけはこうして握っているのに。
 体液がぶちまけられたような音と、四肢や内臓が落下したような音を最後に、腐りかけた手首だけを残して、千枝実はいなくなった。
 「なんでもいいからどこか一部だけでも外に連れて行って」という千枝実のお願いを思い出した陽明は、手首をジャケットのポケットに入れて、眠ったままのめー子を抱きかかえ直して、歩き始めた。


 しばらくして、めー子が目覚めて、自分で歩くと言い出したので、降ろした瞬間、めー子は霧の中に引き込まれた。陽明には毛むくじゃらの腕のように見えた。
 そして、人間離れした動物のような悲鳴が響く。
 走り出した陽明は、靴の底が不意に水の感触を捉えた。
 霧を割って、それはついに姿を見せた。
 霧の中、崖を下った時、自分たちの身体はこの世から消えてなくなり、引き返せないところまできてしまっていたのだ。
 千枝実の血肉を口にしてしまった陽明は、きっと逃げられない、と悟る。
 やがて、そいつの禍々しい鉤爪にずたずたに引き裂かれる運命を迎えた陽明は、せめて、休水の一員として、黄泉忌みの宴に参加していれば、と反省する。


 トロフィー:見るなタブーをゲット!
 KEY/04:彼岸に沈むをゲット!


 END/№1:千枝ねえと楽しい沢遊び


 ヒントコーナーへ。
 よりマシな結末を探すなら、積極的に宴に加わる方法を探すことが大事だ。
 KEY/04を握しめ、適切な場所である起点のふりだしに向かえ。
 新ルート潜入が探索可能になる。


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