今日の予言者育成学園Fortune Tellers Academyはどうかな?
期間順位8007位で、月のかけらをゲット。
特待生に編入して、250アメジストをゲット。
学級ランキング278位で、月のかけらX2をゲット。
個人ランキング1065位で、月のかけらをゲット。
称号:第6期学級首席をゲットして、レッドブレザーをゲット!
クイズに参加して、JOYSOUND MAXを、JOYSOUND Tシャツゲット!
桜吹雪ジャージをゲット!
イルザが、B→Aに進化!
称号:国家的討伐王をゲット!
アルテミス召喚で、ヴィスナ SSをゲット!
アルカナは、異界セフィロトから、この世界に侵入し、9割もの人間を喰らい尽くした人類史上最悪の敵である。
そして、すべての人間の中で、予言者だけが、この怪物の主となれる。
それが神の定めたこの世界の理だ。
男子学生のグループの前に、剣の3のアイセが出現した。
一人の男子生徒が、自分の使役アルカナを呼び出して、アイセに向かわせる。
使役アルカナは、主と認めた予言者のため、同胞でありアルカナと命を削り合い、自分のアルカナが全滅した時、次に死ぬのは、主である予言者だ。
FTAでは、アルカナとの実践訓練もカリキュラムに取り入れられているが、訓練で戦う敵性アルカナに、強敵は現れないはずだった。
最初に戦いを挑んだ生徒の使役アルカナは、瞬く間に地面に堕ちていった。
怖気づいて動けなくなった生徒をかばい、次の生徒があわてて自分の使役アルカナを呼び出すが、そのアルカナも一方的な敵の攻撃にさらされた。
「まずい、曜日属性持ちだ」
アルカナは、一定周期で能力が大幅に強化される日がある。その周期が7日に一度であることから、その現象は、曜日属性と呼ばれる。
同じグループの生徒たちが、自分の使役アルカナを矢継ぎ早に敵性アルカナに向かわせたが、能力の充実したアイセにかなうはずはなかく、使役アルカナたちは、次々に地面に叩き落されていった。
次のグループとして離れた位置にいた主人公とテオも、前のグループに起こった異変に気付いた。
ジャックマン教頭は、静かに戦況を眺めていた。そして、すぐ隣に座ったままのランディに、お前は行かないのか?と声を掛ける。
ランディは、立ち上がって、今行こうと思ってました、と答え、使役アルカナを呼び出した。
現れたのは、杖の8のフレアリートと、杖の9のアンテザートだった。
2体のアルカナは、アイセに迫り、真っ白な光が空を横切った瞬間、空から落ちてきたのはアイセだった。
ランディは、使役アルカナを自分の背後に下げると、討伐したアイセに近づき、捕獲を試みた。
精神を集中させるが、アイセの体は、粉々に砕けちり、風に巻かれて宙へと舞い上がった。
ジャックマン教頭が、なぜ2体しか出さなかった?と尋ねると、ランディは、2体で十分だと判断しました、と答える。
それを聞いたジャックマン教頭は、過信をするな!死にたくなければ、いかなる戦いにも全力で臨め、と言い放つ。
ジャックマン教頭の号令で、主人公たちのグループは、中庭の中央へと集まった。
ジャックマン教頭は、「今からこの場所に敵性アルカナを呼び出す。この戦いは、命を懸けた真剣勝負だ。よほどのことがない限り、学園側が手助けすることはない。」と宣言し、背負った剣を天に掲げて意識を集中すると、切っ先の一点に光が集まり始めた。
光の奥から現れたのは、聖杯の9のランプレヒトだった。
主人公たちは、順調に敵性アルカナにダメージを与え、戦勝した。
地面に落ちたランプレヒトに、生徒たちが捕獲を試みる。
皆が次々と失敗する中、主人公と目があったランオウレヒトの様子が変わった。
苦し気に倒れていたアルカナが、まるで主人の帰りを待ちわびた飼い犬のように、主人公の胸へと飛び込んできて、ランプレヒトは主人公の使役アルカナに加わった。
ココは、「こうなる未来を予想していた。なぜならば、主人公って、アルカナに好かれる不思議な体質だから。」と言い出し、リンリも同調する。
テオは、自分は捕獲確率98%でも、ちょくちょく失敗するのに、何か秘訣があるのか?と尋ねる。
主人公は、自分でもよくわからない、と答える。
ジャックマン教頭がやってきて、「学生らしい実直な戦いだった。今後もその調子で励んでくれ。」と感想を述べた。
その様子をランディがいぶかし気に見つめている。
FTAの生徒が利用する大食堂には、8人の腕利きのシェフがいる。
レシピはシェフに一任されておいて、作り手の個性が強烈に出るのが特徴だ。
生徒にはそれぞれ自分尾推しシェフがいるが、毎週火曜日、ペンネラおばさんがランチを担当する日は、生徒の行列が決まって2倍になる。
今日がその日で、大食堂は、空席が見つからないほど、生徒がごった返していた。
オルフィーが、びっくりしながら、「どうして国家英雄ともあろう方が、先生なんてしているでしょうか?」とチカに尋ねている。
国家英雄とは、ミシアレシア国が認定した特別な英雄のことだが、この爵位を持つ存命者は、ジャックマン教頭ただ一人しかいない。
歴史を遡ってみたところで、この爵位を与えられた人物は、たった4人しかいない。
この爵位は、国家を存亡危機から救った救国の英雄のみに与えられる、特別なものだ。
爵位を与えられた者は皆、教科書に載る歴史上の偉人ばかりだ。
ジャックマン教頭は、隣国である護ドラゼリア竜国との十年戦争を終結させた功績により、弱冠19歳でこの爵位を与えられた。
先に食べ終わって退屈そうにしていたテオが、ランディを見つけて、「アイツをミスリサ部に入れるって決めたから、一緒に勧誘に行こう」と返事を待たずに、主人公の手を引いて立ち上がる。
一人で食べているランディの前に立ったテオは、「お前、ミスリサ部に入らねえか?」と声をかける。
ランディは、「お前の記憶力はどうなってんだ?バカは嫌いだ。」と言った瞬間、主人公がいることに気づき、「あんたと話したいことがあるから、オレに少し時間をくれないか?」と言いだす。
主人公は、ランディに手を引かれ、人気のない方へと連れていかれた。
噴水広場まで来ると、ランディは周りに人がいないのを確かめ、「フォトグラフィックメモリーのことは覚えているよな?」と主人公に話しかけ、主人公はうなずいた。
「フォトグラフィックメモリーは、多くの視覚情報を一瞬で脳に定着させる技術で、珍しくは見えるが、使い道は少ない。本当に使えるのは、いくつもの事象を順番に記憶していく技術で、シネマティックメモリーといい、完璧に使いこなせる人間は限られている。もちろん、オレは使える。その証拠に、あんたのアルカナ捕獲確率は、普通の生徒のおよそ7~8倍で、偶然による偏りの範囲をはるかに逸脱している。つまり、あんたはアルカナを捕獲するための特別な能力を持っているということだ。」と、ランディは言う。
そして、「オレに教えてくれないか?あんたには、アルカナと心を通じ合わせる特別な能力があるんだろう?」と、ランディは言ってくるが、主人公は、「みんなから自分がアルカナに好かれる体質だと言われるが、理由はわからない。」と答える。
それを聞いたランディは、「自分が特別な能力の持ち主だとわかったら、その能力を持つに至った経緯や原因を知りたいと思うだろ?頼む、オレにあんたのことを調べさせてくれ!」と言い出す。
どうして?と主人公が尋ねると、「アルカナのことならどんなことでも知りたい。そのために、志願してこの学園に入学したんだ。アルカナに好かれる体質とは何なのかを調べせてくれ!」と答えるランディ。
ランディの勢いに負けて、主人公は思わずうなづいてしまう。
一番苦手なことは眠ることだった。
寝床に入り目をつむると、映像のような空想のような、とにかく同じ光景が脳裏に漂い始める。
それはこの日も同じだった。
12歳の誕生日。
生まれて初めて、大空に雲の線を描いた。
飛行中の小型飛行機の操縦桿を父が初めて握らせてくれた。
全身を興奮が駆け抜け、ランディは思わず大声を上げた。
父が、「ランディ、太陽に向かっては飛ぶな。」とランディの耳元で言った。
ランディが太陽の位置を確認すると、夕焼けの大きな太陽を背にした、鳥の群れのような黒い影が映った。それは、ランディの生まれ故郷の、まだ平和だったバルミラス地方を最初に襲ったアルカナの姿だった。
主人公の使役アルカナ、杖の2のブランシェは、地面に激しくたたきつけられた。
ちょっとストップ!と声をかけられたランディは、我に返った。
主人公は、あわてて、ブランシェの元に駆け寄り、全身でかばうように身を覆いながら、「このコはまだランクCなんだから、もっと丁寧に扱ってよ!」と抗議する。
ランディは、使役アルカナのランクAのゴンドラを自分の脇へと戻して、反射的に謝る。
「使役アルカナ同士で戦えるか見たいっていうから呼び出しただけのなに、ここもでしないでよ」と主人公が言うが、ランディはそれには答えず、ゴンドラを見上げた。
ゴンドラはランディに向かってひざまずき、主人への忠誠を示した。
ランディは、ゴンドラの頭に触れると、大発見だ!と言い出す。
ランディは、自分の使役アルカナの聖杯の3のヴィスナを呼び出した。
突然呼び出されてオロオロするヴィスナに、ランディはゴンドラをけしかけた瞬間、ヴィスナは叫び声を上げる間もなくその場に倒れた。
主人公は、あわててHP回復の呪文を使ったが、効果がなかった。
駆け寄るとヴィスナはすでに虫の息だった。
「ランディ、回復してあげて!使役アルカナには、自分の主人の呪文しか効かないんだよ!」と、主人公が言うが、ランディはゴンドラを見上げていた。
ゴンドラの全身から、オーラがあふれ出していた。
「味方のアルカナ同士で戦わせただけども、レベルを上げられるって知ってたか?これを利用するば、使えない弱っちい連中でも、みんな強いアルカナの栄養にしてしまえばいいってことだ。」とランディが言うと、主人公は、強い口調で、「使役アルカナをそんな風に扱っちゃダメだよ!」と答える。
「アルカナは、9割の人間を喰い散らかした人類共通の敵だぞ?そんなバケモノを丁寧に扱う必要がどこにあるんだ?」
「使役アルカナだけは別だよ。このコたちは、私たちを信頼して戦ってくれているだから。たとえアルカナでも、その信頼は裏切っちゃいけない。」
ランディは目を大きく開いたまま、「そんな考え、はじめて聞いた。あんたは変わり者だな。」と言うと、主人公は、「キミの方だと思うよ?」と答える。
アルカナとの実戦訓練カリキュラム。
ジャックマン教頭は、あたりを見渡すと、生徒たちに言った。
「今日の授業は、基礎体力の強化訓練に変更する。各自筋トレを済ませたのち、学舎と宿舎の周回コースを10周だ。」
主人公が腕立て伏せを始めようとしたとき、ジャックマン教頭が目の前に立って、「ランディはどこにいる?」と聞いてきた。
わかりません、と答えると、すぐに噴水広場の方へ向かって歩き始めた。
心を読まれた気分になって、主人公はあわてて、ジャックマン教頭の後を追った。
噴水広場で、ランディは3体の大柄な使役アルカナを見上げていた。
ジャックマン教頭が、今はアルカナとの実戦訓練中だと、ランディに声を掛ける。
ランディは、「訓練に出なかったことはすいません。だけど、それは僕なりに考えがあってのことです。」と答える。
「話してみろ。」
「この学園の教育は、時代錯誤してます。今は戦争中で、戦前と同じ教育でいいはずがない。学園は、今も生徒の予言者としての能力向上を重視していますが、本当に重きを置くべきはそれではないはずです。」
「ならば、何を重視すべきだと思う。」
「使役アルカナの強化です。敵性アルカナは目にも見えず、力も素早さも人間よりはるかに優れている。到底、人類の手に負える存在ではありません。ならば、もっとも重視すべきなのは、強いアルカナを持つことです。学園は、総力を挙げてアルカナの強化の手段を探すへきです。なのに、いつまでも旧態依然とした予言者の能力強化にこだわっている。ただそれは今の時代に適した優先順位ではないと主張してるんです。」
ジャックマン教頭が、「予言者はこの世界を救いうる最後の希望だ。諸君は、その人類の希望を実現すべく、この学園でアルカナと戦う教育を受けている。だが、学園のカリキュラムは、そのためだけにあるわけではない。諸君らは人類の希望であると同時に、まだ未熟な子供だ。成長期において心身の鍛錬を積むことは、人格形成のために欠くことができない。」と言うと、ランディは、「どんな高尚な話を聴かせてもらえるかと思ったら、国家英雄ってのは案外つまらないことを言うんですね。」と言ってしまう。
主人公が制止しようとするが、それを無視して、ランディは話し続ける。
「4年前、ジャックマン教頭が、護ドラゼリア竜国の英雄グライアーズ軍の奇襲を単独で退けた伝説。お父さんが、新聞の切り抜きをスクラップブックにまとめて、何度も読み聞かせてくれましたよ。それで、倒産は熱っぽく語った後に、決まってこう言うんです。お前も、英雄ジャックマンのような男になれって。」
ランディはどんどん熱くなっていき、「幼かった僕は、本気でこう思ったんです。僕も救国の英雄になろう、って。でも、先に地位を築いた者が後から来る者の活躍を妨害するというのは、割とよくわる話なんですよね。」と挑発的な物言いになる。
主人公が恐る恐るジャックマン教頭の顔を覗くと、無表情のままだった。
勢いづいたランディは、さらに「つまり、後から行く者は、先人と同じやり方ではダメだということです。やり方を変えなければ、同じ場所にたどり着くことはできない。だから、僕は、僕のやり方を信じます。人間同士が剣と魔法で戦争する時代は終わりました。今の人類の敵がアルカナなら、英雄になり得るのは強いアルカナを持つ者だけ。あいにく、僕は活躍の場を失った過去の英雄の言葉に従うつもりはありません。そのそもアルカナを使役できるのは予言者だけ。予知能力が必要ということです。ジャックマン教頭には、予知能力はあるんですか?」と言うと、ジャックマン教頭は、「多少な」と答える。
ランディは、ニヤリと笑いながら、「そういえば、ジャックマン教頭がアルカナを使っているところって見たことないですね。予知能力があるなら、使役アルカナもお持ちなんですよね。」と言うと、ジャックマン教頭は「ああ」と答える。
「だったら国家英雄と崇められるジャックマン教頭の使役アルカナを、僕に見せてくれませんか。」とランディが言うと、ジャックマン教頭が無言でマントの裾を引き寄せると、現れたのは、聖杯の1のエールだった。
「ランクCですか?」
「ああ」
「こいつは、学園に入学するときに生徒全員に配られるやつじゃないですか。」
「そうだな」
「ほかにはいないんですか?」
「オレの使役アルカナは、これだけだ」
「国家英雄ともなれば、使役アルカナの種別やランクにかかわらず強いんだって言いたいわけですね。お願いがあります。できたら、僕のアルカナと戦ってくれませんか?英雄の英雄たる所以を見せてもらえたら、僕だって黙るしかない。教頭先生の言うことにも、素直に従えると思うんです。」
ジャックマン教頭は、うなずいた。
二人に使役アルカナは、広場の中央で向かい合った。
使役アルカナが同時に駆け出し、お互いに激しくぶつかり合った。
勝負は一瞬で決した。
立っていたのは、ランディの3体の使役アルカナだった。
ジャックマン教頭のエールは倒れ、すぐに闇に取り込まれて空中に霧散した。
「本当に弱いだけのアルカナじゃないですか!この程度のアルカナ使いが、僕たち予言者にバトルを教えていたっていうんですか?」
「オレをどう評価するかは、お前たちの勝手だ。だが、お前たちがオレの生徒であることは変わらない。オレの命令には、無条件で従ってもらう。今はアルカナとの実戦訓練中だ、すぐに支度して、訓練に参加しろ。」
ジャックマン教頭は、そういうと、その場から立ち去った。
「時代に流れってのは、残酷なものだな。若くして国家英雄になったって、戦う相手が変わってしまったら、もう出る幕がないんだ。過去の実績で教頭に地位を与えられたんだろうけど、あの人は今じゃ単なる民間人でしかない。」
ランディの話を聴き終わると、主人公は、「どうしてランディは、そんなにアルカナのことを知りたいと思ったの?」と尋ねる。
明らかに動揺するランディに向かって、「人嫌いなキミが、私を調べたいと思ったのも、先生に盾つくのも、動機は同じでしょ?どっちもアルカナに対する強いこだわりから来てる。」と言うと、核心をついていたのか、ランディは返答できなかった。
「オレは、アルカナのことだけを知りたいわけじゃない。神様が与えてくれた特殊な記憶力に、この世界の森羅万象、すべてを詰め込みたいだけだ。」と言って、ランディは足早に去っていく。
機体をアルカナに取り込まれた小型飛行機は失速し、地面を何度がバウンドして麦畑に不時着した。
後部座席に乗っていた母と妹は、激しい衝撃で気を失った。
意識の残っていたランディと父は、ゆっくりと目を開き、戦慄した。
操縦席の窓の外に無数のアルカナがへばりつき、二人を見つめていた。
逃げ場がない、ということはランディにもはっきりわかった。
父は、ポケットから拳銃をおもむろに拳銃を取り出すと、後部座席で気を失っている母と妹の頭を躊躇なく打ち抜いた。
すぐに激しい破壊音が響き、アルカナたちが窓を割って操縦席に入り込んでくる。
アルカナはランディに体を軽々と持ち上げると、飛行機の外へと放り投げた。
ランディがあわてて上体を起こすと、アルカナの群れの中で、こめかみに銃口を当てる父の姿を見た。
そこでようやく、意識が途絶えた。
だから、ランディは今も知らない。父がそれからどうなったのか。そして、自分はなぜ生き延びたのか。
ランディは、大声を上げて跳ね起きた。
そして、割れるような痛みに頭を抱えて転げまわった。
しばらくベッドの上でのたうち回っていると、痛みは次第に薄らいでいった。
ランディは、むせび泣いた。
眠ることが大嫌いだった。あれから1年以上、眠れば必ずこの悪夢に見舞われるから。
ランディはしゃくりあげながらつぶやいた。
「なんで、オレのこと、ちゃんと殺してくれなかったんだよ。」
主人公がテオと一緒に廊下を歩いていると、ジャックマン教頭に、「ランディはどこにいる」と聞かれて、「あれから一度も会ってないので、わかりません」と答える主人公。
「ランディ、いなくなってんですか?」
「今日の朝から、姿を見た者がいない。」とジャックマン教頭は言い残して、去っていた。
テオに、ランディが行きそうな場所は知らないか?と聞かれて、ランディが、魔歪みを探していたことを思い出す主人公。
魔歪みは、異界との隙間だととかなんとかで、そこなら学園内に存在しないランクSやSSの強力な敵性アルカナに会えるはずで、そこで修行すればあっという間に強くなれるとかランディは言っていた。
「学園は敷地全体をプログレスR1障壁格で覆われているから、安全だろ?」と、テオを言うが、わからないと答える主人公。
結局、ミスリサ部のみんなに相談することになった。
グレゴアの白い森の奥深くは、すべてが真っ白な世界だった。
空は深い霧に覆われ、生い茂る木々は無機質な陶器のように生命感がない。
ランディは、森の道を一人歩いていた。
敵性アルカナがそこかしこに潜み、ランディの様子をうかがっている気配が伝わってくる。
最奥と思われる場所にたどり着くと、ランディは空を見上げた。そこには、一際背の高い2本の木がそびえ立っていて、その間に極彩色の光の帯が渦を巻いていた。
「こいつが魔歪みか」
ミスリサ部に戻って相談すると、オルフィが魔歪みについて書かれた古文書のことを知っていたので、皆でその書物を解析し、おおよその場所の突き止めたところで、全員部室を飛び出した。
ミスリサ部がランディのところへ着いたとき、ランディの目の前には、剣の騎士団長のイヴが立っていた。
レンヤは、イヴがランクSであることを見抜き、ランディの使役アルカナか?と尋ねると、ランディは、うなずき、「さっきこの場所で捕まえた」と答える。
「学園はこの場所をオレたち生徒に隠しているんだ。ここは敷地の中で、唯一異界の風が吹き抜ける場所。ここでなら、ランクSのアルカナとも出会うことができる。ここでなら、使役アルカナも、予言者自身も、ずっと効率的に成長できる。特別な才能を持つ一部の生徒には、この場所を解放すべきだ。そうすれば、人類はまた一歩ずつ勝利に近づける。」
ランディは話をしているため気づいていないが、ミスリサ部の部員は、イヴが右手の大剣を振り上げていることに気づいた。
テオが、「ランディ」と声を掛けて、全力でランディを突き飛ばした。
イヴの大剣が激しく地面を叩き、周囲にも地響きを伝えた。
テオの足から血が噴き出していた。
イヴは地面から大剣を抜き取り、再び頭上高く振り上げた。
あわててミスリサ部の部員が使役アルカナをその場に呼び出すが、イヴの一度の攻撃にさえ耐えられず全滅した。
かろうじて全滅を免れたリンリとレンヤも、到底劣勢を立ちなおせる状況ではなかった。
リンリが「私たちが引きつけるから、あんたたちは早く逃げなさい!」と叫ぶ。
イヴは、その身から想像もつかないほど俊敏は動きで、リンリとレンヤの前に移動し、大剣を大きく振り回した。
リンリとレンヤは後方に身を投げ出したが、指示を失った二人の使役アルカナは、なず術もなく切り捨てられた。
全員のアタマに死の予感がよぎったその時、イヴに向かって走っていく影があった。
ランディだった。
ランディはイヴの前に立ち、「イヴ、オレの姿をよく見ろ。オレはお前を捕獲した主人だ。命令に従え!」と叫ぶが、イヴはその場で高笑いした。
リンリが、「ランディ、そのアルカナは、あなたの使いこなせる範囲を超えているのよ。強いアルカナは、自ら育てることでしか使役させることができない。」と言った。
「どうやらそういうことらしいな。オレを主人だと認められないなら、オレのことは殺せばいいさ。だが、あそこにいる連中は、オレとは無関係だ。このまま帰らせろ。」と、ランディは、イヴを睨みつけながら言った。
イヴは、再び頭上高くに大剣を振り上げた。
イヴは全身の力を込めて大剣を一気に振り下ろした。
ランディは、思わずきつく目を閉じた。
金属同士が激しくこすれ合い軋む音がした。
ランディは、まだ生きていることに驚き、薄く目を開いた。
目の前にあったのは、ジャックマン教頭の背中だった。
ランディをかばうように立ったジャックマン教頭は、両手に持った剣で、自分の身の丈ほどもあるイヴの大剣を受け止めていた。
背中に一瞬力がこもったかと思うと、ジャックマン教頭はイヴの大剣を押し返して、自分の剣を振り切った。
ジャックマン教頭は、ランディに向かって、下がっていろといつもと変わらない抑揚の乏しい声で告げる。
ランディが後ずさりするのを見届けると、ジャックマン教頭はイヴを見上げた。
斬撃はことごとくジャックマン教頭の剣に弾き返され、火花を散らせるだけだった。
だが、力で勝る大剣は時折深く食い込み、ジャックマン教頭の体にはいくつか浅いキズを与えた。
連撃が鎮まったタイミングで、ジャックマン教頭がマントの裾を引き寄せると、その場に1体の使役アルカナが現れた。
それは、ランディと戦った時と同じ、聖杯の1のエールだった。
その時、背後から足音が迫るのが聞こえて、ミスリサ部の部員たちは振り返った。
ジャン先生は、「この場所はもう安全です」と告げる。
主人公は、「ジャックマン教頭がまだ戦っています」と言うと、ジャン先生は、「だから、もうこの場所は大丈夫なのです」と答える。
ジャックマン教頭のエールは、回復の特技でジャックマン教頭のキズを癒した。
チカが、「もしかしてあの子は、回復役ってこと?そーゆーアルカナの使い方ってあるんだ。」とつぶやく。
ジャックマン教頭は、スタスタとイヴの前まで歩いていき、右手に持っていた剣の切っ先をイヴの顔に向けて言った。
「オレがいる限り、お前らアルカナに人類が屈する日など、永遠に来ない。そう覚えておけ。」
挑発にいきり立ったイヴは、大剣を鋭く振り下ろしたが、ジャックマン教頭の姿はなく、イヴはあたりを見渡した。
「こっちだ」
背後からの声に反応したイヴがあわてて振り返ると、そこにもジャックマン教頭の姿はなかった。
イヴが元の向きに直ると、そこにようやくジャックマン教頭の姿があった。
ジャックマン教頭は、身の丈ほどもあるイヴの大剣を奪い取り、肩に担いでいた。
「戦いの最中に、自分の武器を手放すバカがいるか。」
ジャックマン教頭は、その剣を空中に放り投げると、自分の剣で真っ二つにへし折った。
ランディは、「生身でアルカナと戦っている?人類はアルカナには勝てないはずじゃ」とつぶやいている。
ジャン先生が、「この学園に入学してから、皆さんは繰り返しこう聞かされてきたはずです。この世界を救えるには、予言者だけ。その言葉は正しくもあり、間違いでもあるのです。」と答える。
「人類には、わずかながら、ああして直接アルカナと戦える能力を持つ者をいるのです。ただ、多大な犠牲を払った研究の結果、その能力を訓練で身に着けることは不可能という結論に至りました。つまり、『この世界を救えるのは予言者だけ』。この言葉の正確な意味は、『アルカナと戦う戦力として量産可能なのは、予言者だけ』。そういう意味なのです。」
武器を失い劣勢に追い込まれたイヴは空に向かって大声を上げた。
すると、剣の4のクレンがその場に現れた。
ジャックマン教頭は、ジャン先生に目配せした。
「2体同時にやって、事故りたくない。そっちは任せる。」
ジャン先生は、ほほ笑んで、ジャックマン教頭に手を振ると、ミスリサ部の部員の方を向いた。
「さあ、実践授業です。我こそはと名乗りあげる人はいませんか?」
部員たちが、ひきつった顔でお互いに見合っていると、ジャン先生は、主人公を指さした。
「では、ここは比較的元気がありそうな主人公さんにお願いしましょう。」
主人公が見事に勝利すると、ジャン先生は手を叩いて喜んだ。
「さすが、そつのなさにかけては定評のある主人公さん。見事な戦いっぷりでした。」
主人公があわてて、ジャックマン教頭の方を向くと、勝負の行方はすでに決していた。
ジャックマン教頭は、仰向けに倒れたイヴの頭に片足を乗せ、眉間に剣を突き付けて動きを封じていた。
「あいにくだが、オレにはお前を使いこなせる能力がない。故にここで死んでもらう以外、この戦いの幕引きの方法を知らない。だが、敵とはいえど、オレはお前に敬意を表する。お前が最期まで勇敢であったことは、我が魂と我が剣が永遠の記憶するだろう。」
そういわれたイヴは、観念したように瞳を閉じた。
ジャン先生が、「見たくない人は、目を閉じましょう。」と言ったが、主人公は反応が遅れ、目の前に展開する光景を凝視した。
ジャックマン教頭は、剣の切っ先をイヴの顔面に突き刺した。
悲鳴はほんの一瞬で、すぐに頭部が二つに割れ、そこから噴き出した血がジャックマン教頭の上体を赤黒く染めた。
イヴは全身を一度激しく痙攣させた後、完全に力を失った。
ジャックマン教頭は、剣を抜き取り、小さく祈る仕草をした。
ミスリサ部に部員たちが絶句していると、ジャックマン教頭は、ゆっくりとジャン先生の隣まで歩いてきた。
「オレが来るまで、よくぞ死なずに持ちこたえてくれた。」
その声がかすかに震えていた気がして、主人公は驚いた。
ジャックマン教頭の瞳には、涙が浮かんでいた。
「オレは、諸君よりも幼いころから、ずっと戦場で生きてきた。我が身に宿る命を守り抜いて、一日を終える。それだけが、オレの人生だった。だが、今は生徒諸君の命の一つ一つがオレの命だ。この手に届かない場所にいる者は、助けることができない。だから、それぞれが自分の命を守り抜いてほしい。そう願っている。」
「勝手なことをして、すいませんでした、あと、ありがとうございました。オレと友達の命を助けてくれて・・・」と、ランディは謝罪と謝意を述べる。
それを聞いて、テオが驚く。
ジャックマン教頭は、「お前は勇ましい。その勇気はいずれこの世界を救う礎となるだろう。生き急ぐな。お前の迷いに結論が訪れる日は必ず来る。生きてさえいればな。」とランディに告げる。
テオが、「これが最後だと思ってよく聞けよ?お前、ミスリサ部に入れよ。」とランディに言うと。ランディは、何度もうなずいた。
帰り道、一番後ろを歩く主人公は、先頭のジャックマン教頭に聞こえないように、小声でジャン先生に尋ねた。
「ジャックマン教頭があんなに強いこと、ジャン先生は知ってたんですか?」
ジャン先生は、ニコリとほほ笑んで、「もちろんです。全人類の最後の希望たるFTA。それを守る二つの砦。それはプログレスR1障壁格と、英雄ジャックマン。世間では、そのように言われています。」と答える。
チカも会話に加わり、「国家英雄で、それだけの実力もあるのに、なんでが学校のセンセーなんてやってるんだろう。もっと国の要人とかになっててもいいくらいじゃない?」と尋ねる。
「ジャックマン教頭は、自ら志願してこの学園に来たのです。おそらく彼は気づいたのでしょうね。たとえ局所戦に勝利できても、すべてのアルカナを駆逐することはできない。ならが自分の力は、予言者を守る、育成するために使う。それこそ全人類のためである、とね。」と楽しそうにジャン先生が話した。
グレゴアの白い森の出口まで来ると、ヴィスコンティ学園長が待ち構えていた。
「ジャックマン、こんなところで何をしているのだ。」
ココが、森の奥まで私たちを助けに来てくれたと、伝えると、学園長は、「愚か者が!」と一喝する。
「学園典範30条。教員は、庇護可能範囲にある生徒を庇護する義務がある。ただし、この続きを言えるか、ジャックマン。」
「庇護可能範囲を逸脱した生徒は、庇護してはならない。それは二次災害を招き、他の生徒を危険に晒す恐れのある行為である。」
「その通りだ。暴走した子供の庇護は、典範により明確に禁じられていよう。この程度のことも守られぬようでは、人類勝利の日など、永遠に訪れまいぞ。」
ジャックマン教頭は、より頭を深く下げながら、「申し訳ありません。」と言った。
業を煮やしたレンヤが、「ジャックマン教頭のしたことは、きわめて人道的な行為だ。その行為を生徒たちの前でしかりつけたのでは、お前の人格が疑われるぞ。」と言い出す。
ジャックマン教頭は、レンヤの話など聞こえなかったかのよう謝罪の言葉を続けた。
「今回の行為は私の過ちでした。私は生徒を助けるべきではなかった。同じ過ちは二度といたしません。なにとぞご容赦を。」
それを聞き届けると、学園長は無言で振り返った。ジャックマン教頭とジャン先生は、それに付き従うようにその場から去った。
称号:そつのなさに定評をゲット!
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