チラシの裏~弐位のゲーム日記
社会人ゲーマーの弐位のゲームと仕事とブログペットのことをつづった日記

 今日の十角館の殺人はどうかな?


 「あの3人は何者だ」
 傍らの警官に向かって、角島の現場検証から戻って来た警部は尋ねた。
 「ああ、彼らでしたら、大学のサークルの友達だとか。昼頃から事件の様子を聞きに来ていたのですが」
 「ふん」
 警部は3人の方へ向かった。
 「失礼。亡くなった学生諸君と同じサークルの方だそうですね」
 掛けられた声に二人の若者は慌てて目を上げた。
 「警察の者です。私-」
 「やあ、どうも御苦労さんだね」と言って、外を見ていたひょろ長い男がこちらを振り向いた。
 警部は小さく舌を鳴らして
 「やっぱりお前か。どこかで見た後ろ姿だと思ったら」
 「お知り合いなんですか、島田さん」
 若者の一人が驚いた尋ねた。
 「警察にちょっとコネがあるって、いつか言っただろう。コナン君、紹介しょう。県警捜査一課の島田修警部。お察しの通り、彼はうちの寺の次男坊なのさ」
 島田警部は大きなを一つして、自分とは正反対の体格をした弟の、取り澄ました顔を睨んだ。
 「何だってお前が、こんなところにいる」
 「少々わけがあってね、先週からこの2人と行動を共にしていたんだよ」
 島田潔は若者たちに目をやって
 「こっちはK大学のみすてり研究会の守須君と、元会員の江南君」
 「県警の島田です。ミステリというと推理小説ですな。私も若い頃は結構読んだものだが」
 「あのう、差支えのない範囲で、教えてもらえませんか」と江南が申し出た。
 「何が起こってみんな死んでしまったのか、少しでも知りたいんです」
 警部は弟のほうにちらりと目をやってから、軽く口元を引き締め
 「どうせあとで、奴に根掘り葉掘り聞かれるんですから、この程度のことはまあ、ここで話しても構わんでしょう」
 「お願いします」
 「死体はどれもひどい状態でしたが、1体を除いて全部が、火に焼かれる前に死んでいたものらしい。他殺の疑いも強い。残りの1体は焼死ってことですが、これはどうも自殺らしいんですね。自ら灯油を被っていて、しかもこいつの使っていた部屋が火元と思われる。あの仏さん、名前はなんて言ったかな」
 警部は手元のレポート用紙に視線を落としながら、
 「松浦純也、知っているでしょう、もちろん」
 守須と江南は息を呑んで頷いた。
 「本当に自殺なのかい」
 ちょっと呆気にとられたような声で、島田潔が聞いた。警部は鼻筋に皺を寄せて、じろりと弟をねめつけた。
 「まだ断定できん。他の人間も、何で死んだのか、詳しいところは解剖の結果待ちだ」と二人の若者に目を戻して、
 「この松浦純也とはどんな男だったのか、いちおう聞かせてもらえますかな」
 「どんな男と言われても困りますけど」
 守須のほうが答えた。
 「この4月から法学部の4回生で、成績は優秀。頭が切れて弁も立って、多少その、変わったところもありましたが」
 「なるほど、それとですね、守須君。彼らが角島へ行ったのは、研究会の合宿か何かだったわけですか」
 「合宿と言えば合宿ですね。でも、研究会の公式の活動からは離れたものでした」
 「ということは、彼らは会の中でも特に仲が良かったと?」
 「ええ、まあ、そうですね」
 そこへ先ほどの刑事がまたやってきて、島田警部に何事か耳打ちした。
 「よし、分かった」
 警部はコートのポケットに両手を突っ込みながら、のっそりと立ち上がった。
 「私はちょっと他があるので、近いうちに多分、研究会の諸君には集まってもらうことになるでしょうが、その時には元会員の君、江南君でしたか、君も都合をつけて来てください」
 「分かりました」と江南は神妙に頷いた。
 「それでは、また」
 弟に軽く目配せして警部は立ち去りかけたが、ふと思いなおしたようにもう一度、守須と江南のほうに身を傾けた。
 「さっきの松浦純也についてですが、仮に今回の事件が彼の仕業だったとして、ですね、何か動機に心当たりはありますか」
 「さあ」
 首をひねりながら、守須が答えた。
 「僕には信じられませんね、よりによってエラリイが、そんな」
 「誰ですと?」
 「あっ、あの、松浦のことです。エラリイっていうのは彼のニックネームみたいなもので」
 「エラリイというと、例の作家のエラリイ・クイーンと何か関係があるわけですかな」
 「何と言うか、うちの会の慣習みたいなものなんです。そんなふうに海外の有名作家の名前を付けた呼ぶのが」
 「ほう、メンバー全員にですか」
 「いえ、一部の者だけですが」
 「今回の角島行きに参加したのはみんな、そういうニックネームを持ってたメンバーなんですよ」と江南が注釈を加えた。島田警部は面白そうに目をしばたたかせて
 「江南君にも、研究会に入っていた自分にはあったんですかな、同じようなカタカナの呼び名が」
 「恥ずかしながら、ドイルです。コナン・ドイル」
 「ほほう、大家の名ですな。守須君はじゃあ、モーリス・ルブランあたりですか」
 守須はわずかに眉を動かしながら、「いいえ」とつぶやいた。
 それから、口元にふっと寂し気な微笑みを浮かべたかと思うと、やや目を伏せ気味にして声を落とした。


(注意!!!以下「衝撃の1行」です。ネタバレなので反転してます)
 ↓ ↓ ↓
 「ヴァン・ダインです」

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