今日のひぐらしのなく頃に粋はどうかな?
祟り殺し編 #13 生きている?
圭一は昨日の出来事を思い返していた。
沙都子の叔父を殺すため、下見をし、計画を練り、穴を掘った。
そして夕方になって、学校まで行って電話であの男を呼び出した。
そしてあの男を待ち受け、襲い掛かった。
死体を埋める穴を掘るにはずいぶん苦労した。
その帰りに鷹野さんに出会った。
あの女との出会いさえなければ、全ては完ぺきだったのだ。
鷹野さんはワカッテイタ。俺が人を殺し、それを埋めて、疲れ切りながら、帰る途中だとわかってた。
「殺しとくんだった」
あの時は仕方なかった。疲れてた。
鷹野さんがいくら鋭い勘で推理しようとも、証拠はない。
よし、なし、なしだ。全部忘れる。昨日の出来事も全部、夢!
今は何時だろう。昼くらいだろうか。
今からでも学校に行こう。取り戻した美地上をすぐにでも復帰するために、今からでもすぐに学校へ行こう。
階下でお袋に、夕食に帰ってこれないときは必ず電話をしなさい、とお説教を食らった。
適当に笑いながらあしらい、すっかり日の高くなった表に出た。
もうすぐ昼休みが終わる、そんな時間だった。
みんな俺のことを、たぶん心配しているだろう。祭りにもいかず、今日も登校せず。
でも全部元通り。あの男が現れる前の生活に、全部戻る。
校門が見えてくる。
ちょうどその時、校長先生の振る昼休みの終わりを知らせる振鈴の音が聞こえてきた。
ぺた。圭一が不意に足を止めたから、足音がひとつ余計だった。
もちろん振り返っても誰もいない。
昨日、鷹野さんを見送ってから聞いた、ひとつ多い足音。
狂った夜だった昨夜の出来事なら、幻聴のひとつくらい大目に見ようとも思える。
だが、その足音が、昨日までとは断絶されたはずの今日にも聞こえたなら?
昨夜はまだ終わっていない。続いているのだ。まだ、狂った夜が、いつまでも。
昇降口で、みんなの靴箱をざっと見渡してみた。
北条沙都子、来ている。
欠けているクラスメイトは見当たらない。
脱いだ靴を下駄箱に突っ込み、上履きを取り出す。
すのこに上がって通り過ぎようとした時、上履きが一足だけ残っているのに気づいた。
北条悟史・・・
去年、失踪してからずっと登校してこない悟史。
「お前は登校できなかったが、俺はこうして登校できた。」と妙な親近感を感じる圭一。
廊下を進み、いつもの教室を目指す。
ふと、ある思いにとらわれる。
「北条悟史は、綿流しの数日後の沙都子の誕生日に消えた。
その日を越えても俺が居続けて見せなくては、悟史の二の舞を避けたとは言い切れない。
俺はまだ、狂った夜の中に居続けている。」
扉をガラリと開けると、教室にはまだ先生は来ていなかった。
「おはよう諸君。出迎えご苦労であるぞよ」と圭一が挨拶すると、魅音が「おはよう、今朝も飛ばしてるね」と返事する。
レナも「飛ばしてるね。まだお祭り気分が抜けていないのかもしれない。はぅ」と言い、梨花も「ボクの演舞、見ててくれましたですか?」と、祭りに行っていない圭一に話しかけてくる。
レナと魅音は、「ちゃんと見てたよ」と言い出す。
富田くんまでも、圭一に、射的屋対決の結果を聞いてくる。
梨花が、富竹がビリだった、と答えると、岡村くんも圭一の方を見ながら、うんうんとうなずく。
レナが、でっかいぬいぐるみをありがとう、と圭一に伝えるが、圭一には何の話だかさっぱり。
圭一は、夕べの祭りには行っていない、と言おうとして呑み込む。
みんなの話によると、昨日の綿流しのお祭りに、前原圭一は現れて、いつもの部活メンバーたちと一緒に騒ぎながら遊んで回った。そして射的屋にでっかいぬいぐるみがあるのを見つけ、みんなでそれを狙った。そして、圭一がコルク鉄砲は何丁も並べておいて、それを次々に撃って捨てるという大技で連射し、見事一番大きなぬいぐるみを打倒した。そして、その勝者の証で証であるぬいぐるみを、レナにプレゼントした。そこで、梨花の奉納演舞の時間になった。大勢の人ごみに揉まれ、仲間はばらばらになってしまったが、それぞれ梨花を応援できるポジションを陣取った。途中、奉納演舞を放ったらかしにして遊びに行こうと話しかけてきた詩音を断り、最期まで奉納演舞を見守った。
自分じゃない前原圭一が昨日雛見沢にいて、自分が沙都子の叔父を殴り殺していた頃、みんなと楽しく祭りの夜を過ごしていたのだ!
知恵先生がやってきて午後の授業が始まった。
圭一は、レナに、「昨日はすごく疲れてて、いまいち記憶がないんだが、いつ頃みんな合流したっけ?」と尋ねる。
言葉に詰まるレナの代わりに、魅音が、「境内でだよ。巫女さん姿の梨花ちゃんと楽しそうに話してた。」と答える。
それを聞いたレナも、「うん。それにレナも加わって、お持ち帰り~って」と答える。
絶対に祭りに行ってないし、梨花とも話していない圭一は、休み時間に梨花に昨日のことを確認すると、梨花は、「圭一と会ったのは、集会所から村長さんたちと出てきた時なのです。圭一は祭具殿の扉の前にいましたのですよ」と答えるが、圭一には祭具殿は知らない建物だった。
もう一人の前原圭一って、いったい何者なんだ!
放課後、さっさと帰ろうとする沙都子に、圭一は、部活をやらないか、と声を掛けが、沙都子は「放っておいてくださいまし」と答える。
圭一は、「みんなで遊んだほうが楽しいのは沙都子だってよく知ってるだろ?沙都子だって昨日、みんなでお祭りで騒いで楽しかったろ?」と言うと、沙都子は、「私がお祭りで楽しく、いつ遊んだって言うんですの?」と答える。
圭一が周囲を見渡すと、みんな俯いている。沙都子は、お祭りにはいかなかったのだ。
レナが、沙都子は叔父が家で待っているから、と言って、神社の直前で帰ってしまい、神社にはいかなかった、と話す。
沙都子は涙をこぼしながら、「私だって、部活がしないですわ!!みんなで楽しく大騒ぎして!!でも、今の私、そんなの!!」と叫ぶ。
思わず圭一は、「帰ってこないんだろ?お前の叔父は」と尋ねると、「何を言っていますの、圭一さんは。昨日だって、私にいっぱい意地悪して!わぁぁぁl!!」と沙都子は泣き出した。
「あいつが、いる?」
「今朝だって、朝ごはんの時は起こせって言われたから起こしたのに、怒られた!わぁぁぁl!!!」
梨花が沙都子に寄り添い、慰めの言葉を掛けるが、沙都子は梨花を突き飛ばした。
「にーにー!早く帰ってきてよ。うわぁああ!!!」と沙都子は泣きながら廊下に出て行ってしまい、慌てて梨花が追いかけて行った。
魅音が冷たい声で、「沙都子の叔父さんが帰ってこないって何?」と聞いてくる。
「おかしいよね、今朝も沙都子ちゃんの叔父さんはいるんだよ?なのになんで帰って来ないなんで言うのかな?かな?」とレナも続ける。
魅音が、「圭ちゃんは、沙都子の叔父さんがいると、何か都合が悪いことでもあるわけ?」と言うと、圭一は、沙都子の叔父なんか居ない方がいいに決まっている、と答える。
魅音が、「私も居なくなった方がいいヤツだと思うけど、居るわけだし、仕方ないじゃない?」と言うと、レナが、「仕方がなければどうするのかな?」と続ける。
圭一が、叔父殺しを口に出そうとした時、魅音が、「放っておきなよ、そのうち、解決しやうと思うし」と突き放したような発言をしたあと、「帰ろうよ、圭ちゃん」と声を掛けてくる。
「今日は久しぶりレナ、宝探しに行くつもりなんだ。魅ぃちゃんも来るんだよ」
「圭ちゃんも一緒に行こ、もちろん拒否権はないからね」
そのまま圭一は二人に連行されるみたいに下校することになった。
魅音とはいつもの場所で別れて、圭一の家の近くでレナといったん別れる。
「それじゃあ圭一くうん、レナすぐに迎えにいくから」
「俺、実はちょっと用事があるんだ」
「用事なら、なんで魅ぃちゃんがいるうちに言ってくれなかったの?魅ぃちゃんとはダム現場で待ち合わせてって言って別れちゃった後なのに」
「ごめん、ちょっと言い出すタイミングを逃がしちゃって。あの、俺、頭が痛いんだよ。風邪かもしれない。だから病院で薬をもらって来たいんだよ」
「なら、仕方ないね。診療所にいくなら、早く行った方がいいよ。あそこ、たまに早く閉まるから」
「ありがとう、そうするよ」
「必ず行くんだよ、病院」
「ああ、ちゃんと行くよ。何なら明日、病院のレシートを持って行ってもいい」
「必ずもらっておいてね。明日見るから」
圭一は平穏の日常に戻りたくて、叔父を殺したのに、いつの間にか前原圭一がもう一人いるし、薄気味悪い足音は聞こえる地、レナたちの様子もおかしい。
そして何よりあいつが生きている。
圭一はレナが病院に行くかを見張っているかもしれないという恐怖感から、本当に病院に行くことにした。
だが、その前に、忘れ物を取りに戻ったふりをして学校の教室に向かい、悟史のロッカーを確かめる。
このロッカーの中にあった悟史のバットで犯行を行い、沼に捨てた。今、ロッカーの中にバットはないはずだ。
もしここにバットがあったら、全部圭一の妄想だ。圭一は誰も殺してないし、祭りにも行った。
勢いよくロッカーを開けると、バットはなかった・・・
圭一は自分の頭がおかしくなったわけではなく、狂っているのは雛見沢のほうだ、と判断する。
入江診療所に迎い、受付を済ませる。
呼ばれて診察室に入ると、中には入江がいた。
入江は医者だった。
入江は圭一を診察し、「風邪ではないようですね。全身の擦り傷や切り傷の方が痛々しいくらいです。ほっとして、半そで半ズボンで藪の中にに入って遊びましたか?昨日のお祭りでははしゃぎ過ぎましたね」と言った。
ここでも自分が祀りに出たことになっていたので、圭一は、「監督も行ったんですよね?お祭り」と尋ねる。
「ええ、私、こう見えても綿流しの実行委員会の役員ですからね」
「俺に合いましたか?」
「実は私、本部テントでずーっと会長さんたちとお酒を飲んでいて、全然お祭りは見て回っていないんですよ。前原さんには合ってないと思います」
入江はからからと笑いながら答える。その様子から、入江は自分の知っている世界の入江で、この異常な世界の入江じゃない、と判断する圭一。
「あの、こんな話、きっと変だと思うんですけど。笑わないで聞いてほしいんです、俺と瓜二つな人間がいる、なんてありえますか?」
「迷信ですが、世界には自分とまったく同じ顔をした人があと二人いる、なんて話を聞いたことがありますね。あとおとぎ話にも自分の分身が登場する話がいろいろとありますよ。ドイツのおとぎ話に出てくるドッペルのオバケなどは有名です」
「ドッペルのオバケ?」
「ええ、自分の姿に瓜二つなんだそうです。不幸の前触れなんでそうで、これに会ってしまうと近いうちに死んでしまう、みたいな話らしいです」
「そのオバケが、雛見沢に出る、なんて話はありますか?」
入江は自分がからかわれたものだと思ったらしく、大仰に笑ってみせたが、圭一が笑わなかったので、次第にその笑いは小さくなっていった。
「何か気になることでもおありですか?」
「俺、昨日はお祭りに行っていないんです」
「そうでしたか、お祭りは来年もあります。その時、また」
「そうじゃなくて、俺は祭りに行っていないのに、みんなが言うには、俺は祭りに居たらしいんですよ」
「お話を整理しますね。つまり、前原くんは綿流しのお祭りに行ったけど、その記憶がない、ということですか?」
「いえ、違うんです、監督。俺は本当に祭りに行ってないんです」
「気を悪くしないでくださいよ前原さん。これまでに気づいたら見知らぬ場所にいたとこ、そういう記憶の欠落を経験されたことがありますか?」
「ないです。それに記憶を失ったとかそういうのじゃない。だって、その祭りに時間には、別の用事を確かにやっていましたから」
「その用事は間違いなく?大変失礼ですが、何かの思い込みではなくて?」
「間違いありません」
「お祭りの時間に、神社にいなくて、よそで別の用事をしていた。それをはっきりした形で証明できますか?」
叔父を殺害したことを立証することになるので、圭一は答えることができない。
「少し神経に昂りがあるようです。鎮静剤を注射して、少し目を瞑ってみませんか?」
「俺は異常者じゃない!!!」と声を荒げる圭一。
「気に障ったなら謝ります。ですからどうか、落ち着いて」
「俺は絶対に祭りには行っていない!それは本当に間違いないんです!」
「わかってますから、どうか落ち着いて深呼吸を」
「あんたは全然わかっていない!!!」
「わかっていますよ、前原さん。あなたは昨日お祭りにはこなかった。私は信じます」
入江がカルテに何かを小さく書く。
「あの時間に何をしていたのかを、全部話さないと信じませんか」
「いいえ、信じますから、どうか座ってください」
「俺が祭りの会場にいることはありえない。なぜなら、その時間に俺は、沙都子の叔父を、殺していたからです」
「あなたが、沙都子ちゃんの叔父さんを?」
「はい、俺が、昨日の夜、殺しました。沙都子を救う、もっとの直接的は方法だと考えるに至り、実行しました。だから、俺は、祭りに会場にいるわけがないんです」
「その体中の傷は、その時に?」
「そうです。沙都子の家を少し行ったところに、林道がありますよね?あそこで襲い、逃げるあいつを追い。町に至る一本道で殺すに至りました」
「それは、本当に?」
「本当です。悟史のバットで殴り殺しました。そのバットは、あいつが乗ってきたバイクと一緒に沼に捨てました。死体は、殺した場所に穴を掘り埋めました。全て、自分がひとりでやりました」
「沙都子ちゃんの叔父はバイクで通りかかったんですね?それを期待して延々と待ち伏せを?」
「電話で適当な嘘をしゃべって、あいつが出かけるように仕向けました」
「あなたの家と沙都子ちゃんの家は離れています。電話をしてからでは、とても待ち伏せに間に合わないのでは?」
「襲撃予定場所からもっとも近い電話として、学校の電話を使いました」
「当日は日曜日で、学校には施錠がされていて入れないのでは?」
「偶然、営林署の人が中に出入りしたんです。その隙に入りました」
入江は、いくつか事件についての質問を繰り返し。圭一の発言に矛盾がないかを丹念に探した。
「信じましょう。あなたが昨日したことは、夢とは思えない」
「でも、クラスのみんなが、昨日、確かに俺が祭りにいたと言います」
「あるわけがない。きっとクラスの皆さんはあなたによく似た誰かをあなたと見間違えたのでしょう」
見間違いのわけはない。魅音たちは、前原圭一と一緒に遊んだと言っているのだ。
入江が「罪の意識は、あるんですか?」と聞いてきた。
「ありません。あいつのいなかった平穏な時間を取り戻すために行いました。あいつが現れる前、沙都子がいつも見せてくれていたあの笑顔が戻った時、ようやく全ては終わります」
「犯行を誰かに目撃されたということは?」
「ないと思います」
「私は医者です。人間の命を奪うことを肯定する旨の発言はできません」と言ってから入江は、「沙都子ちゃんを救ってくれて、ありがとう」と言った。
しばらくの間、男二人が涙を湛え合った。
「でも、おかしいんです。確かに殺したはずなのに、あの男は、生きて家に帰ったらしいんです」
「状況にもよりますが、気絶や仮死状態など、素人が見ると死んだようにしか見えない状態もいくつかあります。その可能性は?」
「脈をとったはけではありませんが、確実に仕留めたと思います」
「前原さんが襲った時の状況を再現してもらってもいいですか?」と入江は、近くにあったポスターを丸めて圭一に渡した。
圭一は再現し、入江は打撃ぶちと状況から、叔父がとういう状態だったかを分析しようとしていた。
「死んだかどうか自信が持てなかったので、倒れた後も何度か殴りつけました」
「その時の反応は?」
「初めは殴るたびに身体が跳ねるような感じがありましたが、やがて何の反応もなくなりました」
「死んでいます、ほぼ間違いなく」
「でも、沙都子は生きていると!」
「これはとても恐ろしい想像なのですが、前原さんが殺した相手は別人である可能性は?」
「え!そんなはずはない!監督といっしよに沙都子の家の前で酒瓶の袋を運んだ時、窓から顔を出した男がいたんじゃなですか。あいつですよね?」
「ええ、あの男です」
他人を殺したという最悪の可能性を否定するために、圭一は入江の知る叔父の特徴を、圭一が殺した男の特徴を徹底的に比べてみたが、特徴にすれ違いはない。
入江のいう叔父の特徴は、間違いなく圭一が殺した男と一致する。
「もっと絶対にあいつだと識別できる特徴はありませんか?」
「沙都子ちゃんが昔、背中に虎だかの何だかの入れ墨がある、と言っていたようが気がします」
この時、この事実を確かめるのにもう一つの方法があった。それは叔父本人と直接面会する方法だったが、圭一にとって、もう一度死体を掘り返し、その背中を見る羽ことよりもはるかに恐ろしいことだった。
「一体、どういうことなのでしょう。前原さんはお祭りにも行かず、沙都子ちゃんの叔父さんを殺していたにも拘らず、お祭りにはあなたがいて、殺したはずの叔父さんも生きている」
「さっぱりわからないです。まるで俺が悪い夢を見ていて、実は殺人なんて存在しなかったんじゃないかと思えてしまう。でも、事実なんです」
「ちょっとこの話、もう少し真剣にやりましょう。ちょっと失礼して、紅茶でも入れてきてあげます。診療所も終わりの時間ですからね」
監督が立ち上がり、廊下へ出て行った。時計は、もうじき6時を指そうとしていた。
尿意を催した圭一が、お手洗いを借りようと診療室から出ようとした時、向こうの廊下の陰にいる入江と2人ほどの白衣を着た男の先生の姿を見えた。
入江が何か指示しているので、聞き耳を立てる圭一。
「睡眠導入剤を入れて。味はミルクと砂糖で胡麻化してください」
「急激な眠気に、不信感を抱く可能性もあります。興奮状態に陥って暴れ出す可能性も」
「その場合は取り押さえましょう」
「山狗が一人、それに私たちを含めて3人です」
「作り話か虚言の兆候があり、特に昨日の記憶が完全に混乱。虚実の区別の喪失。多重人格等の精神障害に酷似してます。先天的もしくは引っ越し前からそういう兆候があったのか。引っ越し前に精神科に通院例がないか調べたいところです。前原さんのご両親にも連絡しておいた方がよいですね。彼の自宅の電話番号を調べてください。」
入江の裏切られた涙を流す圭一。
そこへ局員が駆けてきて「大変です!鷹野さんが見つかりました!山中で焼死体で発見されたらしく・・・」と伝える。
「一体どういうことですか?」
「県警の発表では、他殺の可能性が極めて高いと」
「リサさんが死に、鷹野さんが死に。一体、雛見沢には何が起こっているというんですか。まさか、これが今年のオヤシロさまの祟りだ、なんて言うんじゃないでしょうね」
今度は看護師が、「入江先生、お電話です。興宮警察の大石さまです」と声を掛けてきた。
「悪いタイミングですね。出ます出ます」と言いながら、入江は電話に出るためその場を去った。
他の男達も紅茶の準備をするために湯沸かし室に向かった。
圭一は診療室の窓を開け、顔を出して駐車場を見渡すが、人影はない。
そっと這い出し窓を元のように閉め、自分の自転車に飛び乗り、家の前まで戻って来た。
途中から飴が振り出し、びしょぬれになるも圭一は、叔父の死体を掘り出して入れ墨を確認し、狂っているのが自分か雛見沢かの決着をつけようと考える。
物置からシャネルを取り出す。
ランタンを持ち出そうとして、死体を埋めた場所に置いてきたことを思い出す。
目的地の森についた圭一は、ランタンを見つけて、さっそく地面を掘り始める。
多少穴が深くなった頃、圭一を取り囲む影絵が動いた。
「大石・・・」
「目上の人には、その後に『さん』もつけるとなおよろしいかと思いますよ。んっふっふっふ」
大石だけでなく、雨合羽を着た男達5,6人はいた。
「私たちのことは気にされず、どうぞ穴掘りをお続けになってください」
取り囲む影絵たちの威圧感に負け、圭一は再びシャネルを泥中に突き刺す。
次第にに地面に突き刺す手ごたえは固く、重くなっていく。圭一はあの夜、こんなにも深くは掘っていない。
「いつまで、掘ればいいだよ」
「最近の若い人は体力がありませんねぇ。おい」
大石が合図すると、男たちがシャベルを一斉に引き抜き、圭一が掘った泥穴に下り、次々とシャベルを突き立て始めた。
「あの穴を掘ると、何が出てくるんですかな?」と言いながら、大石は、泥水を掻き出すのに使っていたバケツを取り、泥水を汲んで圭一の顔にぶっかけた。
その時、穴を掘っていた雨合羽の男が大石を呼んだ。
「これをみてください」
「何ですか、こりゃ」
「たぶん、古い排水管ではないかと。あそこの用水路につながっているようです。大石さん、もうかなり手ごたえが固いです。これより深くってことは、ありえないと思います」
「掘る場所を間違えました?」
「いえ、始めのうちは明らかに掘り返す感触でした。ですが、このくらいを掘ったころから急に固くなりまして。たぶん、元々掘った穴よりも。深く掘り進んだのだと思います」
「つまりなんですか。ここには穴があって、何もなくただそのまま埋め直された、と」
あの男の死体はどこへ?
俺は昨日何を?
大石と男たちは圭一を無視して去っていった。
TIPS:研究ノートⅡ
オヤシロさまについて。
オヤシロさまだが、どういう字で書くのかはあまり知られていない。
すべての時代に共通するのは、名称の読みに必ず『オヤシロ』の4文字が入るということだけ。
オヤシロさまと祀る高貴な血筋である古手家の人間には、オヤシロさまの地が流れているという。
そして古手家に伝えられる伝説では、八代続いて第一子が女子ならが、八代目のその娘はオヤシロさまの生まれ変わりである、というのだ。
この伝説に従うなら、オヤシロさまは『御八代さま』と書くのは正しいように思う。
村中の年寄連中に、目に入れても痛くないくらいに甘やかされている少女、古手梨花。
彼女がその八代目、『御八代さま』であるという噂がある。
古手家の家系図はわからないが、少なくとも、過去2代の間、第一子が女子であることは私も確認している。
雛見沢を見守る少女、古手梨花。
彼女の加護を村が失ったなら、どうなるのか?
再び、人食い鬼たちが跋扈する地獄が再現されるのか?
達成率:37.7%
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