今日の十角館の殺人はどうかな?
午前2時に部屋に引き上げたオルツィはすぐにベッドにはいったものの、うまく眠れないまま、光のない空間に目を凝らしていた。
中村千織は、オルツィにとってただ一人の友人だった。おなじ学部で、同じ年齢で、最初に大学の教室で出会った時から、何かしら自分に近しいものを感じていた。二人とも気が合い、互いの部屋を訪れたことも何度かあった。
わたしのお父さんは変わった人で、角島という島に離れて住んでいるの、といつだったか千織は話していた。
その千織が死んだ。そして、彼女が生まれ、彼女の両親が死んだこの島へ、自分たちはやって来た。
冒涜ではない、追悼だ。そう自分に言い聞かせていた。
目覚めは中途半端に訪れた。
枕元に外しておいた腕時計を見た。8時。
オルツィは身支度をして、洗面具を用意して、部屋を出た。
まだほかに誰も起きている気配はない。
きれいに片付けられた中央のテーブルの上に何か見覚えのないものがあることにオルツィは気づいた。
そして、そこに並べられているものを認めるや、息をのんでその場に立ち尽くした。
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