今日のひぐらしのなく頃に粋はどうかな?
綿流し編 #8 レナの推理
翌朝、圭一は朝食の席で、3時まで梨花と沙都子を探していたと、母親に話す。
レナが家まで迎えに来てくれたので、一緒に学校へ向う。
魅音は二日連続徹夜で捜索をしていたので、さすがに今日はいない。
教室に入ると、知恵先生と校長が入ってきた。
校長は、梨花と沙都子が行方不明になったことを告げると、教室のあちこちから嗚咽が聞こえだす。
知恵先生は、しばらく登下校は保護者同伴か、保護者の都合がつきにくい生徒は集団登下校になると、告げる。
お昼の時間になるが、メンバーは圭一とレナだけだった。
レナは、夕べ圭一がいなくなっている間に、婦人会の人たちと一緒に味噌汁の炊き出しを手伝っていたときに聞いた話を始める。
警察のほうは、学校が終わって梨花と沙都子が自転車に乗って遊びに行ったことから、興宮で行方不明になったと結論づけたらしい。
それを聞いた圭一は、あの日、自分が梨花に祭具殿に忍び込んだと打ち明けたあと、そんな重要な話を聞いた梨花が遊びに行くはず無いと思った。
レナは、二人は雛見沢で行方不明になったと言い出し、お弁当箱を洗いに教室を出る。
レナを追いかけて、圭一もお弁当箱を持って教室を出て、二人は生徒の来ない裏の水飲み場へ行き、お弁当箱を洗い始める。
他の生徒の気配がないことを確認してから、レナは婦人会の人たちからいろいろ話を聞いたと話し始める。
富田豆腐店のおばあちゃんから、昨日、学校の帰り道の沙都子が豆腐を買っていったことを、レナは聞きだした。
昨日、梨花の家に入ったとき、ガス台にお鍋がかけてあって、中に豆腐が半丁くらい入った味噌汁が入っていて、残りの半分の豆腐は、冷蔵庫に中にあり、冷奴にするつもりで、お皿に開けてラップがかけてあった、とレナは圭一に伝える。
お味噌汁の豆腐は、最後の最後に入れるから、料理をしていた人間は夕飯の直前まであの場所で料理をしていたはず。
三角コーナーのゴミを見たらすごくぶきっちょだったので、夕飯を作っていたのは沙都子だろう、と。
つまり、沙都子は、遊びに行かず、夕食の準備をしていたのだ。
レナは、炊飯釜の中を見たら、2人分のご飯が炊けていたし、冷蔵庫の中には、冷奴のほか、夕飯用に作ったおかずが何皿かあってみんなラップがされていたと、続ける。
沙都子は直前まで、梨花と2人で夕食をとるつもりだったが、夕食を食べる前に何かがあって、夕食を翌朝に回すことにしたようだ。
レナは、冷奴を食べるつもりなのに、醤油の小瓶が空っぽだったことに気付き、流しの下にあるだろう醤油の大瓶を探したが、見つからなかったと話し、レナは自分の推理を話し始める。
夕食の準備をしていた沙都子は、味噌汁に豆腐を入れて、もうすぐ夕食というところで、醤油が切れていることに気付いた。
手の開いている梨花が、醤油の大瓶を持って、自転車に乗り、ご近所へ醤油を分けてもらいに行った。
梨花が戻ってこないので、沙都子は醤油を分けてもらいにいった家へ電話をかけた。
そこで、「食事の用意があるから、沙都子ちゃんもいらっしゃい。梨花ちゃんももう食べているよ。」と言われて、沙都子は、夕飯にラップをかけて冷蔵庫にしまい、自転車に乗って梨花のいる家に向った。
梨花は、沙都子が夕飯の準備がほぼ出来ているのを知っているから、他所で夕食を食べるはずはないし、普通の家では、余分な人数分の食事の支度はしないだろうから、自分の推理はおかしいと言って、レナは話を終え教室に戻っていく。
TIPS:スクラップ帳よりⅩ
<秘められた鬼について>
自らに鬼の血が流れると信じている雛見沢において、鬼という字はとても神聖に扱われている。
名前に鬼の字を使うことは、公由家と園崎家の当主だけに許された特権だったらしい。
園崎家の現当主の名前は、園崎お魎で、跡継ぎは園崎魅音。
後を継げなかったお魎の実の娘で、魅音の実母である園崎茜は、勘当前は蒐だった。
ちなみに村長は喜一郎だが、キ=鬼の意味するものであると考えられる。
また公由家の公由は、鬼の字を分解して作ったものだろう。
古手家は、代々神職で、吉凶を占う占い師だったことから、占手の名に鬼の角を加えて、古手にしたと考えられる。
園崎家は、綿流しの儀式を取り仕切る一族だったので、儀式の内容をそのまま苗字にしたものと思われる。
崎=裂きの読み替えで、園は、複雑な内容物から構成されるもの=生物の暗示であろう。
TIPS:請求却下
大石は、雛見沢の事件は、4人が祭具殿の中で消されるくらいの何かを見たからだと思っているので、祭具殿と園崎家への捜査令状を請求しているが、高杉課長は無理だと言い張る。
そこへ園崎県議がやってきて、古手神社への捜査令状を請求している件にたいへん怒っており、高杉課長を恫喝する。
集団下校中、最後になったレナと圭一の前に、大石が現れる。
レナを帰し、大石に促されて、車に乗り込んだ圭一は、捜査がどうなっているか聞くと、大石は、富竹と鷹野の事件は、進展なしと答える。
富竹が、自分の喉を掻き破って死んだことの説明がつかないので、何らかの薬物中毒を疑っているが検出されなかったとのこと。
鷹野の焼死死体は検死が困難で、首を絞められたあとガソリンをかけられたらしいが、管轄が隣の県警なので、情報が入ってこないとのこと。
富竹の犯行時間はお祭りが終わった直後で、鷹野のほうはあやふやだが、おそらく富竹と同時刻に殺害され山中に遺棄されたと考えられている。
続いて村長の事件。
村長が失踪した日の足取りは、朝一に、誰にも内緒で。痔の治療を受けに診察予約を入れていた鹿骨市内の大学病院の肛門科へ出かけ、午後1時ごろに診察を終えて病院内のレストランで軽食をとったことは、財布の中のレシートで確認済み。その後、夕方神社の集会所で会合の予定に間に合うよう帰ろうとしたが、電車で人身事故があって帰宅が遅れ、会合の直前に帰宅し、大慌てで会合に向ったのを家族が目撃。会合は、御三家と町会の主要役員が集り、今年も起こってしまった連続怪死事件の対応について協議してたらしい。その帰り道で、村長は行方不明になった。
それを聞いた圭一は、あの日、村長の行動は、集会所に姿を現すまでは秘密で、当然連絡がとれなかったことに気付く。
ところが、詩音は村長に祭具殿に入ったことを打ち明けたと、電話で言っていた。
詩音は、あの日の朝、はじめて事件を知った。
同じ日、村長は内緒で朝一で病院へ行き、電車の事故で帰宅が遅れ、帰宅直後に集会所へ向い、夜遅くまで会合をしていた。解散後から村長の目撃情報はない。
いったい詩音は、いつ村長に打ち明けることができたのだ?
大石から、祭具殿に4人で忍び込んだことはわかっているが、そこで何があったと聞かれる。
圭一は、何もなかったと答えるが、祭具殿に忍び込んだことは認めてしまう。
そこで、圭一は、昔の拷問道具がたくさんしまってあったと答える。
大石は、祭具殿に何か秘密があると思って捜査令状を請求したが、妨害工作があったので、実際に入った圭一に聞くしかないと話すが、圭一は、拷問道具だけだったと答える。
大石は、圭一だけが無事で、圭一以外が被害に遭うのは、どんな違いがあるのかを知りたいと言い出す。
詩音は、富竹たちが殺された翌日に失踪したと、大石は告げる。
それを聞いた圭一は驚く!毎晩、自分に電話をかけてきたのは誰なんだ?
詩音は、その日の気分で親類の家を泊まり歩いており、学校もよく休むため、所在不明が当たり前だったので、失踪したことに気付くのに時間がかかってしまったと、大石は話す。
綿流しの翌日、圭一が図書館で大石と会ったとき、詩音もいたが、あれが最後の目撃とのことで、あの日から、エンジェルモートでのバイトは、無断欠勤していると、大石が教えてくれる。
しかし、その晩も、その翌日である昨日も、詩音からの電話を圭一は受けた。一体誰からの電話だったんだ?
綿流し編 #9 自宅にひとり
両親が出かけており、自宅に一人でいる圭一。
時刻は夜の10時。詩音は失踪しているのに、また詩音からの電話がかかってくるのだろうか?
詩音そっくりにしゃべれる人間は、魅音しかいない。
そう思っていると電話が掛かってくる。
電話を取るかどうかを考えていた圭一だが、次の犠牲者は自分のはずだから、相手を探るために電話をとった。
電話の相手は、詩音だと名乗る。
詩音は、しばらく電話を取ってもらえなかったことから、圭一のほかに誰もいないことに気付き、それを指摘する。
圭一は否定し、逆に、梨花と沙都子の件を知っているかを尋ねると、詩音はあの後どうなったのか教えてほしいと答える。
圭一は、二人は見つからなかったと答えると、詩音は、圭一に気を落とさないようにと、気遣う言葉をかけてくれるが、圭一は、その言葉を信じることはできない。
圭一は、村長はさらわれた後どうなったかを、詩音に尋ねると、詩音は、殺されちゃったと思うと即答する。
詩音は、人間をさらってその状態を維持するのは難しいから、人質にでもしない限り、用が済んだら殺しちゃうだろうと、説明する。
ということは、梨花も沙都子も殺されているのだと、詩音が言っているのに気付いた圭一は、嘔吐感が込み上げてきた。
自分がみんなを殺したのも同然だと知った圭一は、涙を流しながら絶叫する。
詩音は、次に狙われるのは自分たちだから、しっかりしろ、と圭一に声をかける。
圭一は、ダム闘争はとっくに終わっているのに、いまだに綿流しの夜に、失踪と殺人が繰り返されるには何故だ、と詩音に詰問すると、詩音も、自分だってそれを知りたいと、大声で返す。
詩音は、村の何者かが、オヤシロさまの祟りを利用して、綿流しのたびに殺人と失踪を繰り返しており、今年は鷹野と富竹が犠牲になった、と言い出す。
圭一は、なぜ今年は、村長や梨花や、祭具殿のことは知らない沙都子まで、犠牲にならないといけないんだ、と詩音に尋ねると、詩音は、何がなんだかわからないと言って、泣き出す。
詩音は、祭具殿に忍び込んでからすべてが変わってしまった、と言い出し、詩音は話し始める。
あの夜、鷹野たちが死んですぐに、次は自分と圭一が狙われる立場になったことに気付いた詩音は、助けてもらおうと村長に祭具殿に入ったことを打ち明けた。
村長はにっこり笑いながら、詩音が反省しているなら、鬼隠しになんてならないと答えた、と。
それを聞いた圭一は、ふと疑問が沸き、詩音に、村長が痔をわずらっており通院していることを知っているか、と尋ねると、詩音は、村長の様子から、痔なのは知っていたが、病院のことは知らないと答える。
つまり、詩音は、村長がどこの病院に行ってのかを知らないのだから、病院に押しかけて打ち明けてはいなし、当然、途中の電車で村長と詩音が出会うはずもない。つまり、詩音が村長に打ち明ける機会があるのは、村長が病院から戻ってきたからのはずだが、電車が遅れて、会合の時間ギリギリ戻ってきた村長には、詩音の打ち明け話を聞く時間はなかった。
圭一は、詩音に、いつ、どこで村長に打ち明けたかを尋ねるが、詩音は嗚咽をもらすだけ。
圭一は、思い切って、村長が失踪した日は、詩音が村長に打ち明け話をする機会はなかったはずだ、と話し始める。
村長は、朝一で、誰にも言わずに大学病院へ痔の診察に出かけが、詩音はさっき病院のことは知らないと答えたから、詩音は、村長とは病院から戻ってくるまで接触できない。
しかも、電車が遅れたので、村長が戻ってきたのは、会合が始める直前で、打ち明ける時間はなかった。
詩音自身も、図書館に行った日以来、バイトを欠勤し、誰にも目撃されていない、つまり詩音は、綿流しの翌日に失踪している、と大石が判断している、と圭一は、詩音に伝える。
そして、圭一は、詩音が村長に会ったなら、それは村長が会合を終えた後、失踪する直後もしくは失踪後にしかありえない、と話すと、電話の向こうから狂ったような笑い声を聞こえてきて、電話が切れた。
TIPS:スクラップ帳よりⅨ
<双子の忌避について>
鬼ヶ淵村の御三家は当主跡継ぎに双子が生まれることを嫌い、文献では、双子が生まれたなら直ちに間引くべしと記されている。
それを思うと、園崎魅音と詩音の双子がこの世に生を受けていること自体興味深い。
もっともこの双子は公平に扱われず、跡継ぎの魅音は別格の扱いを受けているそうだ。
聞くところによると、魅音と詩音は酷似した外見を持ちながらも、才能のほとんどは魅音が持つと聞くが、私の知る両者のイメージではそんな偏りは感じられない。
伝承では、園崎家の当主は「鬼を継ぐ」と称して、背中に立派な鬼の刺青を彫るという。しきたりに従い、魅音にはこの刺青が入れられている可能性が極めて高い。
伝え聞く話では、現当主のお魎の背中にも、立派な鬼の刺青が入れられているそうである。
TIPS:雀荘「鈴」
貸し切りの雀荘に現れた大石を待っていたのは、大石の部下たちだったが、どの卓にも麻雀牌は出ていない。
大石は、署長が園崎系議員の恫喝に屈したので、近日中に、鷹野殺しは隣の県警に譲り、村長たちの失踪は行方不明扱いで生活科に委ねるようで、請求した令状がすべて却下された、と部下たちに報告する。
そして、大石自身も、来週から警視庁への研修命令が出ており、その後は余った有給を伊豆で消化しろと言われた、と続ける。
さらに大石は、退職金が惜しい方は、席ははずせと言ってから、各自に手元の資料を確認して、監視カメラの所在と死角を叩き込むように命令し、部下たちに役割を伝える。
綿流し編 #10 隠しごと
翌朝の朝食の席で、両親から、同じ学校の生徒が行方不明になっているから、しばらく休めば、と言われる圭一。
今日は木曜日で、綿流しのお祭りから4日しか経っていない。
あの時、強く断っていれば、こんなことにならなかったのに、と圭一が思っていると、玄関のチャイムが鳴った。
レナが迎えに来たので、両親に気を使ってくれてありがとう、と声をかけて、席を立つ圭一。
圭一は、迎えてに来てくれたレナに、しばらく学校を休む、と告げる。
レナは、圭一に引け目を感じることはない、と答えて、大事な連絡が書いてあるから、と言って、回覧板を手渡す。
回覧板のトップの紙には、村長と梨花と沙都子の失踪を告げ、情報を求める内容が書かれている。
圭一は、レナに、あの晩のことを問い詰めないんだと話すと、レナは、圭一たちが祭具殿に忍び込んだことについて、魅音がすごく怒っていた、と答える。
レナは、圭一たちが祭具殿に忍び込んだことより、それを隠していたことに怒っているだろう、という。
そして、レナは、圭一のほうから魅音に謝るべきだ、と指摘し、もし圭一が早くに罪を認めていれば、梨花と沙都子はいなくならなかったのか?と聞いてくる。
圭一がうなずくと、レナが平手で圭一の頬を殴り、圭一の手から回覧板が落ちて、挟まっていた紙が散らばる。
誰も圭一を叱らないと思うから、代わりに自分が圭一を叱る、とレナは宣言し、「悪いことをするのはとてもいけないことだけど、それを認めて謝らないことは、もっともっと悪いことだ」と圭一を諭す。
それを聞いた圭一は、自分が悪かったと謝る。
レナは、もう時間だから行くよ、と声をかける。
圭一は、散らばった紙を集めていて、ふとある文面に目が留まる。
「本場仕込みのお醤油たくさんあります。お気軽に園崎までどうぞ。」
書かれた文面を詳しく読んでみると、秋田で高級醤油の仕込みをしている遠縁がたくさんの樽に入った醤油を送ってくれたが、使いきれそうにないので、お裾分けを希望する人は、容器を持って気軽にお越しください、という内容だった。
圭一は、レナに向かって、知っていたのか?と尋ねると、うなずくレナ。
レナは、醤油の大瓶がなかった時点で、魅音を疑っていたのだ。
梨花は、醤油の大瓶を持って、魅音の家に行って、消された。
魅音の家に行ったまま梨花が戻ってこないので、沙都子は、魅音に電話し、呼び出されたのだ。
村長が出ていた会合には、園崎家の跡取りとして魅音も出ていて、帰ろうとする村長を、家に誘って消したのだ。
詩音は、家族だから予定は筒抜けだし、バイト先のエンジェルモートも園崎一族の経営だ。
圭一は、今から魅音のところへ謝りにいって、すべてを終わりにしてもらう、と告げると、レナは、自分もいっしょに行く、と言い出す。
圭一がレナといっしょに玄関を出ると、外に停まっていた車の中から大石が出てくる。
大石が警察の人間だと知ったレナは、すべてを話す気になり、圭一といっしょに大石の車に乗り込む。
圭一とレナがすべて話し終えると、熊谷から、魅音から学校を休むと連絡があった、と無線が入る。
それを聞いた圭一は、大石がとっくに魅音を疑っていたことに気付く。
レナは、令状がとれない大石が、圭一をたきつけて魅音のところへ向かわせて、圭一に何かあったら踏み込むつもりだろう、と指摘するが、大石は笑って流す。
レナは、今から自分たちが行って、魅音を自首させる、と大石に告げ、自分たちに何かあったらそれを口実に踏み込んでほしいから、犯人を取り逃がさないように魅音の家を包囲してほしいと、交渉する。
大石は了承し、熊谷に指令を送る。
綿流し編 #11 鬼を継ぐ者
いつも魅音と待ち合わせる場所で、車から降ろされる圭一とレナ。
園崎本家の自宅周辺には監視カメラをかなり配置しているから、ここまでだ、と大石は言い、死角に何人か待機させているし、指向性マイクで中をうかがっているので、大きな悲鳴を上げればすぐにかけつける、と言った。
道を進むと、路肩には金網がされ、金網の上は手前で折り返され、槍のように鋭く伸びている。さらに、その槍には有刺鉄線が巻き付けてある。
金網にはところどころ看板をくくりつけてあり、園崎家私有地につき立入厳禁!と書かれている。
レナは、基本的には園崎本家には魅音とお婆ちゃんの二人しか住んでいないから、誰も監視カメラで見張っていないが、魅音の父親がヤクザの大物なので、一族が集まるときは機能しているみたいだ、と話す。
やがて二人の目の前に、大きな門が現れた。
ブザーを鳴らしてだいぶしてから、門の向こうから砂利を踏みしめる足音が聞こえてきた。
カンヌキが開けられ、門が細く開かれると、隙間から魅音の姿が見えた。
魅音に案内され、本家に通される二人。
はじめは雑談で、明るく盛り上がっていたが、圭一が、「別にお茶を飲みに来たわけじゃない」と言ってしまったことで、みんなから笑みが消える。
圭一は、綿流しの晩、入ってはいけない場所と知りつつ、ちょっとした探検のつもりで祭具殿に入ってすまなかった、と、魅音に話して、土下座する。
魅音は、圭一が悪いことをしたと思ったならそれでいい、と答える。
魅音の態度が不真面目そうに見えて、それを不快に思ったレナは、全部話そう、と圭一に促す。
それで、圭一は、魅音に、おととい、梨花と沙都子をここへ呼んだかを尋ねると、魅音は、覚えがない、と答える。
レナが、根拠があると言い、夕食前、梨花が醤油の大瓶を持って、お裾分けしてもらいに来たはず、と続ける。
梨花の家には冷ややっこがあるの醤油がなく、流しの下にあるはずの醤油の大瓶も瓶ごとなかった。回覧板には、園崎家で醤油のお裾分けをする、と書いてたから、と。
冷蔵庫には2人分の夕食が、手つかずでラップに包まれて残っていたから、本当は、梨花で終わるはずだったのに、沙都子が、梨花がそちらへ行っているかを魅音に電話で確認したため、梨花の行方を知る沙都子も、食事を作りすぎたので食べに来ない?梨花はもう食べてるよ、とか言って誘い出した、とレナが断言すると、魅音は狂ったように笑いながら、参ったと言う。
圭一が、警察はとっくに魅音を疑っており、今も大石の部下が踏み込もうと様子をうかがっている、と話す。
魅音は姿勢を正して正座しなおし、畳に両手を突きお辞儀して、「園崎本家当主跡継ぎ、魅音でございます」と名乗り、私にお話しできることでしたら、包み隠さずお話ししたいと存じます、と言い出す。
レナが、どうして、こんなことを?と尋ねると、魅音が答え始める。
雛見沢村が、かつて鬼ヶ淵村と呼ばれていたころ、ご先祖様たちは、鬼の血を引く誇り高き仙人たちで、麓の村々の人たちは、彼らを崇め敬っていたが、明治になり、鬼ヶ淵村の名称は一方的に雛見沢村に改められると、鬼ヶ淵村の不可侵性は失われてしまった。
雛見沢に迷い込めば鬼隠しにあうから、近づくな、などの根も葉もない中傷により、かつて仙人と崇められた村人たちは奇異な目で見下されるようになり、鬼ヶ淵村出身だとわかるだけで、就職を断られたり、縁談を反故にされたり、不当な扱いを受けるようになってしまった。
しかし終戦後、闇市で大きな活躍をして富を築き上げた者が現れた。それが魅音の祖父で、お魎の夫の園崎宗平だった。
宗平は、中国大陸に出兵した際、食糧倉庫の管理をしていたが、撤退時に軍の缶詰をごっそりと盗み出し、それを闇市で高値で売りさばいて大きな富を得たのだった。
宗平は、その富の全額をお魎に託し、お魎は、すたれた雛見沢を復興させよう、村人すべては家族であり、この富は共有の財産である、と宣言した。
雛見沢という固い結束で結ばれた巨大な家族が、次々と事業を成功させ、次々と勢力を拡大していき、その中心となった園崎家は、雛見沢復興の名士として、長く讃えられることとなった。
しかし、昭和30年ごろ、宗平の上官だったと名乗る男が、宗平の調達した缶詰は食材を用いたものではなかった、と告白し、「缶詰疑惑」が起きた。
宗平のいた部隊は、戦地での困難な食糧調達に関する具体的な手法の研究を行っていた。それは、住人からの略奪から、見慣れる昆虫動植物の料理方法と言ったものまで、とても広義で、通常は食しないものを食材として扱う方法を研究していた。
晩年まで宗平は、世間の風評を否定し続けていたので、真偽は今も不明だが、缶詰疑惑により、再び村人たちはさげすまれるようになってしまった。
お魎は、一人に石を投げられたら、二人で石を投げ返せ、と村の子供に言い聞かせ、雛見沢の人々は連帯し、一人が受けた不当な差別を全員が受けたものとして戦い、ようやく雛見沢にも平和が戻った。
雛見沢村を再び鬼ヶ淵村のように、崇められるに足る神聖な存在に、は鬼ヶ淵村の末裔の悲願であり、園崎本家の鬼を継ぐ者の宿命だと、魅音が話すと、鬼を継ぐ者?と圭一が尋ねる。
魅音は、園崎本家は、代々当主の名に鬼の一字を加える習慣があることと、体にも鬼が刻まれている、と答えながら服を脱ごうするので、レナが、見せる必要はない、と止める。
そのやりとりで、圭一は、魅音の体に、鬼を継いだことを示す消せない印があることに気づく。
魅音が、この5年間の連続事件には、自分が直接関わったものもあるし、間接的に関わったものもあるが、すべての中心に自分がいた、と言うと、レナが、仲間だった梨花と沙都子を殺したのは魅音だ、批判すると、魅音は話し始める。
梨花も祭具殿を守るという古手家の役目を負っていたが、カンヌキが重いので軽いものに代えたいと言い出し、村長が梨花に同調し何かあったら責任を取ると言ったため、付け替えに反対だった魅音も強く言えず、結局は安っぽい南京錠に付け替えらえた。
綿流しの晩に祭具殿に賊が忍び込んだことは、祭りの最中の魅音の耳に入っており、その日のうちに4人の賊に手が下されることになった、と同時に、祭具殿に賊を許した古手家の梨花と公由家の村長にも責任を問わなければいけなくなった。
それを聞いた圭一は、自分のせいで、梨花と沙都子が殺されたことに気づき、泣き出す。
魅音は、本来は自分が園崎家の歴史を投げだしても、仲間を救うべきで、二人を殺したのは自分だ、と圭一を慰める。
レナは、魅音は自分の意志で圭一だけを殺さなかった、と話すと、魅音は、魅音のほうに殺したくない理由があったんだろう、といってごまかす。
レナが魅音に自首を勧めると、魅音は、もうここに戻ってこれないから、最後にわがままを聞いてほしい、と言い出し、30分だけでいいから、圭一と二人きりにしてほしい、と頼む。
圭一が了承すると、魅音は圭一を連れて玄関へ向かう。
綿流し編 #12 拷問
玄関にきた圭一に向かって、顔を真っ赤にさせた魅音は、腕、組んでもいいかな?と聞いてくる。
圭一が了承すると、ほくほく顔で、圭一の腕をとる魅音。
魅音は、詩音も圭一のことが好きだったみたい、と言い出す。
魅音は、森の中へ圭一を誘う。
突然、魅音は、詩音はまだ生きている、誰よりもむごたらしい死に方をさせてやろうとずっと考えて閉じ込めておいた、と言い出す。
そして、私の罪のすべてを見てほしいから、来て、と話す。
魅音は、圭一が見ないことを選んだなら、私の手ですべてを終わらせるから、ここで待っていて、と続ける。
魅音が自殺するかもしれないと思った圭一は、魅音についていくことに決める。
森の奥にトンネルがあり、中から鼻を突く異臭がしている。
魅音がトンネルの扉についていた鍵を外し、扉を開けると、中からおびただしい羽虫が飛び出てきて、死臭がした。
中に入ると、魅音は、圭一に、祭具殿の中の拷問道具は、鬼ヶ淵村の厳しい戒律を守るために作られ、戒律を破った者を見せしめにむごたらし殺して見せる道具だった、と話し出す。
本来は見せしめの儀式である綿流しは、御三家が取り仕切っていたが、時代の変化によって行うことが困難になった。
だから、園崎家は、現代でも綿流しの儀が行えるように秘密の場所を作った。
そういって、魅音は大扉を開くと、中は現在の祭具殿だった。
ここにあるものは、よく手入れされ、今すぐに使用できる状態に維持されていた。
部屋自体、血が飛び散ることを予見しているのか、壁も床もタイル張りになっていて、ゆるい傾斜の先には排水溝まで設けられ、壁際にはとぐろをまいたゴムホースが蛇口に取り付けられていた。
大昔の当主の書き物によると、血の飛沫ってのは、犠牲者に負担をかけない割にはインパクトがある。綿流しは見せしめのショーだから、自分のご先祖様は、様々なショーを考案してた、と魅音が言うと、圭一は、秘密部屋の奥が、畳敷きの座敷になっており、隅には座布団の山があることに気づく。
魅音は、鑑賞席だと言ってから、「みんなここで私が殺した。見てくれる観客はいなかったけど、綿流しを上手にやって見せた。」と打ち明ける。
魅音は、向こうを指さして、牢屋だと言うので、圭一は、詩音はそこにいるのか?と尋ねると、魅音はうなずく。
魅音が言う牢屋へ、二人が行くと、大空洞の中に格子の入った小部屋が設けられていた。
圭一は、みんなはどこに?と尋ねると、魅音は、虫が湧くのが嫌だったから、死体は井戸に捨てた、と答える。
その時、牢屋の一つから、音が聞こえてきた。
圭一が、詩音なのか?と声をかけると、圭ちゃん?と答えが返ってきた。
圭一が近寄ると、牢屋の中に詩音がいた。
詩音、と圭一が呼びかけると、詩音は、圭一の後ろにいる魅音に気づいて絶叫を上げる。
詩音は、もう誰の死を見るのも嫌!私が憎いなら早く殺して、殺して!と半狂乱になりながら
叫んでいる。
魅音は、あんたは殺さない、と言いながら笑いだす。
それを聞いた詩音は、圭ちゃんを殺さないで、殺すなら私を!と絶叫する。
魅音は、「そんなに死にたければ、この男を殺した後に、古式に則り、四肢の先端からゆっくりとひき肉にしてやる。あの肉挽き機はあんたのためにとっておいてあるから。それとも、それで圭ちゃんをミンチにして見せたほうが、面白いかな?」と言い放つ。
詩音が、圭ちゃん、逃げて、と絶叫し、圭一が魅音のほうを振り返ると、魅音は残酷な笑みを浮かべて笑っていた。
と、思った瞬間、圭一は意識は遠くなった。
詩音は、「魅音姉さま、お願いです。私をどういう風に殺しても構いませんから、どうか圭ちゃんだけでも、見逃してあげてください。」と哀れな声で、かつて小馬鹿にしていた姉に平服し、許しを請ていた。
それを冷淡に見下ろす魅音の顔には、明らかに愉悦の笑みが浮かんでいた。
「姉らしいこと、何にもしてやれなかったし、あんたがあまりにも面白い声で泣くものだから、何だか聞いてやってもいい気がしてきた」と、魅音が言うと、詩音は、ありがとうございます、と礼を述べる。
そして、魅音は、「これまでのことを謝ってみせたら、これまでのことをすっかり水に流してあげてもいい。そうしたら、圭ちゃんだけは見逃してあげなくもないよ。」と言い出す。
詩音は土下座するように這いつくばり、弱々しい声で謝罪の言葉を口にし始めた。
魅音は、これ以上ないくらい愉快な顔をして聞いていたにも拘わらず、不服だ、と告げ、「そんなので、私の積年の怨み辛みが償えると思っているわけ?こんなんじゃ駄目だね。やっぱり圭ちゃんから、挽き肉だ。」と宣言する。
それを聞いた詩音は、もう一度だけ!!!と絶叫する。
魅音は、一度だけ心に届く謝罪の仕方を教えてあげるが、一言一句でも間違えたらアウト、と
提案する。
二人のやりとりを聞いていた圭一は、すこしずつ自分の体の自由を取り戻しつつあることを感じ、また自分が知っている魅音が、こんな人間の尊厳を踏みにじって楽しむような卑劣な人間であるはずはない、と思い、魅音と詩音が入れ替わったのではないか?と疑問を持つ。
「園崎詩音は、魅音姉さまの足元にも及ばないくらい、醜く情け知らずな愚か者でございます。身の程をわきまえず、お姉さまに働いた数々の無礼を思えば、生意気だったこれまでを反省し、一生魅音姉さまに忠誠を誓います。」と、泣きながら謝罪する詩音を見て、魅音は大笑いながら、「圭ちゃんの悲鳴をたっぷり聞かせた後に、ちゃんとあんたは殺してあげる。」と言って、圭一を秘密部屋に引きずっていく。
圭一は、大の字に拘束台に縛り付けられ、指ばかりが厳重に、蝶番でぎりぎりと締め付けられて固定される。
殺さないで、という詩音の絶叫がずっと聞こえてきている。
いい加減にしろ、と圭一が魅音に話しかけると、魅音は、詩音に自分のせいで死ぬ大勢の人の悲鳴をたっぷりと聞かせてから殺す、と言い出す。
圭一は、お前は園崎魅音であるはずがない、と言うと、魅音は、自分は誰なわけ?と聞いてくる。
圭一が、「鬼だ。お前は魅音じゃない。俺の最高の友人だった魅音を返せ!」と答えると、魅音は、笑い転げながら、「魅音に殺されようとしている瞬間に、目の前にいる私を否定するんだ?」と言う。
圭一は、「お前が魅音だと認めない。魅音を返せ、鬼め。」と大声で言うが、魅音は笑うばかり。
圭一は、「がんばれ魅音、こんな鬼畜生に負けるな!戦え!」と叫ぶと、興奮が冷めた魅音が、一つだけ教えてあげる、と話し出す。
私の中に鬼が宿ったのはずいぶん前で、その鬼は私を蝕み凶行に駆り立てようとしたが、理性で押さえつけた。
鬼はおさまり、鬼はどこかへ行ってしまったと思い込んでいたが、私の中で眠っていただけだった。
その鬼は、ある小さなことをきっかけにまた目覚めてしまった。
それは何に原因があったと思う?
あんたが全てを狂わせてしまった元凶、あのとき、あんたがもらった人形を躊躇なく私に渡していたなら、全ては狂いださなかったかもしれない。
あんたが魅音を泣かさなかった、私は起きなくて済んだのに。
日曜日におもちゃ屋で部活をしたときにもらった人形?
俺のあの日の間違いが全てを狂わせてしまった?
レナに教えられて魅音に謝ったが、あれは詩音だった。
俺は今日まで魅音に一言も謝っていなかった。
後悔し涙を流す圭一の左の小指に、魅音は五寸釘の先端を当てた。
「それで魅音の鬼が治まるなら、気のすむようにやってくれ。俺が傷つけた魅音の痛みに比べれば、こんなの大したことじゃないんだろう?その代わりに二つ約束しろ」と、圭一は話し出す。
一つは、俺を気が済むまで痛めつけたら、詩音はゆるしてやれ。祭具殿に忍び込んだ罪には、それで充分に見合う仕打ちをしたはずだ。
もう一つは、気が済んだら、お前は消えて、その体を魅音に返してやってくれ。
三つめは、俺を殺すな、と。
それを聞いた魅音は、「私は鬼だから、約束を守らないよ。」と答え、金づちを置き、圭一の頬をやさしく撫でた。
そして、魅音は「三つめの願いだけは聞いてもいい。一つ目の願いの詩音を救うことは、鬼が殺してしまうので、無理。二つ目の願いのこの体を魅音に返すことも、今日を境に魅音が戻ってくることはないから、無理。もし今日以降、私の姿があったとしても、それは私の姿をした鬼だ。」と告げる。
地下祭具殿の鉄扉に大勢が体当たりしている音が聞こえてきた。
帰りが遅いから、レナが大石を呼んだのだ。
魅音は、スタンガンを圭一に見せる。さっき圭一がくらったのは、これだったのだ。
魅音が再び圭一にスタンガンを押し付けると、圭一は意識を失う。
綿流し編 #13 終劇
昭和58年6月、鹿骨市雛見沢村で、連続失踪事件が発生した。
容疑者は、園崎魅音。
容疑者は、6月19日から21日までの間に、雛見沢村住人5人(園崎お魎、園崎詩音、公由喜一郎、古手梨花、北条沙都子)を拉致、監禁して殺害した疑い。
23日午前中、園崎邸前を巡回していた警邏車両は邸内より悲鳴を聞き、緊急措置として邸内へ突入。
失踪中の容疑者の妹(園崎詩音)とクラスメイト2名(前原圭一・竜宮礼奈)を保護した。
容疑者は現場より逃走する。
失踪者たちを殺害したと思われる園崎邸内の離れ地下奥、秘密部屋からは、失踪者4人(園崎お魎・公由喜一郎・古手梨花・北条沙都子)の毛髪、皮膚片、血液などを発見し、秘密部屋屋内で失踪者たちが暴行を受けたものと断定した。
ただし、その遺体は依然、発見されていない。保護されたクラスメイトの証言から、現場となった園崎邸内の離れ地下にあるものと見て捜索を続けているが、容疑者の逃亡ルート共々、発見には未だ至っていない。
また、ほのめかしたとされる近年の連続怪死事件への関与も捜査が続けられているが、園崎魅音が直接または間接的に関わったという証拠は発見されていない。
事件の動機には今もなお不明な点が多く、また園崎家、雛見沢村住民の極度の非協力もあり、その解明には膨大な時間を要することが予想される。
地域に詳しい地元警察の見解では、雛見沢村内の信仰に対する冒涜行為を巡る内部懲罰、リンチ事件ではないかとみている。
地域性に根差した特殊な事件であることは間違いなく、県警本部は慎重な捜査を命じた。
容疑者の妹で、もっとも監禁期間の長いと思われる失踪者(園崎詩音)から重要な手掛かりを得られるのではないかと期待したが、事件後、精神に重度の後遺症を患い、今日まで正常な事情聴取に応じられる精神状態にない。精神科医は、ショックによる一過性のものと診断したが、その回復の目処じゃ今日でも立っていない。
圭一は、レナが呼んでくれた大石たちによって救い出された。
外傷は、スタンガンを受けたときにできた、小さな火傷の痕くらいだ。
圭一は、病院で検査を受けながら、大石に質問を受けたが、何を聞かれて、どう答えたかは
あまり記憶に残っていない。
魅音は、まだ捕まっていない。外へつながる隠し通路があったらしい。
詩音は無事に警察に保護されたが、心には大きな傷を負っており、見る影がみんな魅音に見えてしまうらしく、鹿骨市内の某所に引きこもっているが、魅音がやってくると恐れて、所在を転々と変えているらしく、正確な所在は実家ですら知りかねていた。
警察は今も園崎家の地下祭具殿を調べているが、ほかの犠牲者たちの遺体が見つからない。
圭一の自宅には、連日、魅音と詩音の両親が大勢の子分を連れて謝罪に来て、圭一の両親がいくら断っても、毎日慰謝料と称して百万円の札束を積んでいった。
慰謝料が二千万を超えたとき、手紙の入った封筒も渡され、両親は二晩話し込んで引っ越しを決めた。
園崎家が必死に隠していた事件も、雑誌社にすっぱ抜かれ、芋づる式に近年の連続怪死事件が取り上げられ、テレビのワイドショーは連日このニュースを取り上げた。
事件から解放されて、圭一が最初にいったのは、あのおもちゃ屋だった。
展示品以外はすべて売り切れてしまい、展示品は売らないと一度断られたが、圭一が例の事件の生存者Aだとわかると、すぐに承諾してくれた。
圭一は、いつでも渡せるよう机の上にあの人形を置いて、機会を待っている。
深夜2時、自宅で布団に入っていた圭一は、窓に小石がぶつけられる音に気づく。
カーテンの隙間から外をうかがうと、魅音だった。
圭一は、寝間着の上に上着を羽織って、あの人形を手に取り、表へ飛び出す。
苦しそうな表情をする魅音は、ここにはもういられないから、最後にお話ししたかった、と話し
だす。
「今日までがんばってきたけど、自分でもわかるの。もう限界。私のお迎えは、もうすぐ後ろまで来てる。」と話す魅音に、あの人形を渡そうとする圭一だが、魅音に腹を包丁で刺されてしまう。
狂ったように笑いながら、魅音は、「全部できた!私が殺したいヤツは、これで全員!」と言うのを聞きながら、圭一の意識はなくなっていく。
昭和58年6月28日、鹿骨市雛見沢村で、傷害事件が発生。
被害者は先の連続失踪事件の被害者でもある前原圭一。
午前2時ごろ、自宅を訪れた先の事件の容疑者(園崎魅音)に腹部を刃物のようなもので刺されて重傷。
起きだしてきた家人に発見され、診療所に搬送。一命をとりとめた。
犯人は逃走。
同日推定同時刻、鹿骨市上一色のマンションで、転落事件が発生。
被害者は先の連続失踪事件の被害者でもある園崎詩音。
同日深夜、被害者が何者かと大喧嘩するような騒動を隣人が聞き管理人に通報。
管理人が合鍵を使って室内に入り、8階のベランダから転落死した被害者を発見した。
室内は荒れ果て、争った形跡のようにも見えた。
隣人は園崎家に古くから出入りのある人間で、当時の騒動を姉妹喧嘩そっくりで、互いに罵り合う声を聞いたと証言する。
先に事件による容疑者による、同日に発生した雛見沢村での障害事件との関連性があるとみて、室内を徹底的に捜索したが、被害者以外の人間がいたことを示す痕跡を発見することができなかった。
被害者は真下にある植樹帯の植え込みに落下。首の骨を折り即死。着衣には乱れはあり、取っ組み合いをした形跡にも見られた。
だが、事件後の被害者の特殊な精神状態から、錯乱による自殺ではないかともみられている。
自殺と事件の両面から、慎重な捜査が行われている。