チラシの裏~弐位のゲーム日記
社会人ゲーマーの弐位のゲームと仕事とブログペットのことをつづった日記

 

屍人荘の殺人 〈屍人荘の殺人〉シリーズ (創元推理文庫)
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 今日の屍人荘の殺人はどうかな?


 一通り腹が膨れ遠くの景色に意識を向けていると、不意にラジカセの音楽に隠れて重低音の進藤が森を揺らした。何かと思っていると、東から現れた3機のヘリコプターが編隊を組んで横切って行く。しかもそれが災害派遣などに使われる自衛隊機らしいもので、例のロックフェス会場のある山の向こう側へと高度を下げて行った。
 「何を考えているんだい」
 思考を断ち切ったのは比留子だった。
 「ただの食休みですよ」
 「じゃあ私もご一緒させてもらっていいかな」
 比留子はそう言うといきなりワンピースの胸元に手を突っ込んで、合宿のしおりを取り出した。
 「な、なんでそんなとこに入れてるんですか」
 「いつ必要になるかわからないもの。それに急にナイフで刺されても盾になるし。
 それにしても参加者は興味深い人ばかりだね。葉村君はもう全員の名前を覚えた?」
 「多分、苗字だけなら」
 「そう、私は覚えやすい名前が集まったと思ったけど」
 比留子は一人ずつと名前とその外見や特徴を列挙し始めた。
 「まずは部長の進藤歩。進むと歩むで、真面目そうで、几帳面っぽいところが表れている名前だね。
 次に演劇部で彼の恋人の星川麗花。星と川と麗しい花だよ。まったく美人のためにあるような名前だね」
 「もう一人の演劇部員、名張さんはどうです?」
 「名張純江だね。乗り物酔いと蜥蜴騒動の彼女だ。いかにも神経質そうじゃない。名張純江を縮めてナーバス、なんちゃって。
 次に高木凛。背も高いし、ポーイッシュで凛とした雰囲気もぴったりだ。
 それから静原美冬。大人しい感じが冬っていう言葉でうまく表現されているね。
 機器類を担当していた彼は重元充、理学部2回生だそうだ。小太りの外見が、重くと充ちるという感じにぴったり。
 それともう一人は下松孝子さんだったかな。彼女はなかなか強かな女性だよね。下と孝でしたたか。
 あとは適当。管理人の管野唯人さんはまんまだし。七宮兼光は親の七光り、立浪波流也は外見も名前もサーファーっぽいし、出目飛雄はぎょろっと目が飛び出している、以上」
 そこで、比留子は少し真面目な調子に戻った。
 「で、このしおり、ちょっと気づくことはないかい」
 彼女は部屋割りのページを開いた。管野から聞き出したのか、空白だった部屋にOB3人組の名前が書き加えられていたが、それ以外に変わった点は見当たらない。
 もう一度部屋割りを見直すと、立浪の204号室の隣に星川、七宮の301号室の隣に下松、出目の207号室の隣に名張の部屋がある。しかも建物の3つのエリアに分かれてそれぞれの部屋が配置されているのだ。もしかすると部屋割りにまでOBたちの意向が反映されているのではないか。
 そういえば、今日何度か高木に鋭い視線を向けられた。去年もこの合宿に参加したという彼女はそういった事情を承知していて男性すべてに警戒しているのかもしれない。


 やがてお開きになり、後片付けが始まった。
 葉村は洗い物を引き受けることにした。洗い場は広場の階段を上がった紫湛荘の横手にある。
 葉村が鉄網や鉄板を洗っていると、高木がやってきて、葉村の隣でタワシで汚れた鉄網の汚れを落とし始めた。
 「どうしてお前や明智はこの合宿に参加したんだ?」
 「脅迫状のことは聞いていますか?」
 「ああ、生贄だの書いてたやつだろう」
 ペンションでの合宿というミステリ要素の強い催しに明智が興味を持ったこと、脅迫状や去年起きた自殺のことを聞き知ったこと、比留子とセットで参加させてもらったことを説明する。
 「そういうことか、悪かったな、きつく当たっちまって。
 ただ剣崎って子には気を配っといてやれよ」
 「やっぱりこの面子が集められたのって、意図的なものですか」
 「おそらくな。七宮が進藤に圧力をかけて集めさせたんだろう。だから女子は綺麗どころ、男子は重元みたいな戦力外ばかり。まあ下松は就職のチャンスだとか騒いでいたけど」
 「それがわかっていて、どうして高木さんは参加したんですか?」
 「こんなくだらんイベントに後輩が巻き込まれてんだ。ほっとけないだろ」
 「それって静原さん?」
 小さく頷きが返ってきた。
 「汚い奴だよ、進藤は。特に七宮には頭が上がらない。脅迫状のせいで皆参加を取りやめちまって焦ったんだろうな。その穴を埋めるために、最初は自分の彼女を巻き込みやがった。
 けどさすがに彼女に手を出されるのは避けたかったんだろうな。躍起になって他の女子部員を参加させようとした。進藤は美冬が先輩からの頼みを断れない性格なのをわかってて言い寄ったんだ。あたしが気づいた時にはもう参加が決められていて。二度とここに来る気なんてなかったけど、あの子を見捨てられないじゃないか」
 「じゃあやっぱりこの部屋割りも?」
 「そういうこと。まあお前が隣っていうのが美冬にとっちゃ幸いだが」
 「もし俺が気の迷いを起こしたらどうなるんですか?」
 「蹴り潰す」と高木はニヤリを笑った。

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