今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?
シナリオ:カエルですか?ネズミですか?
松原さくらは、学校が大好きなのに保健室に通っていた。
彼女は生まれつき身体が弱く、重度の貧血で悩んでいた。
なので、中学生の時からほとんど体育も見学だったし、暑い日や寒い日は学校に来られてたとしても一日保健室で過ごしていた。
鳴神学園は生徒数が数千人を超えるため、保健室は小さな病院と思えるほど大きい。
ベッドは全部で十台以上あるし、診察室も3カ所あり、保健室の先生も何人もいる。
保健室の先生は、保健室に行かない限りほとんど関わらないため、入学してから卒業するまで一度も顔を合わせない生徒もいるのだが、さくらは、保健室の常連だったから、入学して1カ月もたたないうちに保健室の先生たちと仲良くなった。
特にさくらが慕っていたのは、葛城美和というまだ30歳くらいの若くて美しい女の先生だった。
葛城先生は、当時鳴神学園に来たばかりだったが、若くてきれいだったで、男子に相当人気があり、保健の先生のことは名前すら知らなくても、葛城先生のことだけは知っている男子生徒は少なくはなく、仮病を使って会いにいく男子もいたとのこと。
葛城先生は、男勝りで気が強かったので、下手な仮病を使う生徒はどんどん追い返していた。
いつも貧血で歩くだけで疲れてしまうさくらを葛城先生は、強い口調で咤激励してくれていて、さくらにとっても心強い存在だったのだろう。
さくらがつらい思いをしてまで学校に通ったのも、そういう理由があったのかもしれない。
残暑も厳しい9月のある日、身体がつらいさくらは、3時限目から保健室に登校した。
さくらが保健室の扉を開けて声を掛けたが、保健の先生は誰もいなかった。
急な用事が入ったのだろうと思い、さくらは勝手にベッドを使わせてもらうと保健室に入ったが、ふと机の引き出しからはみ出ている紙に目が留まった。
→ベッドに行く
→紙が気になる
さくらは、入口から一番近いベッドに向かった。
ベッドは10台以上あったけど、それぞれが白いカーテンで区切られているため、いちいちカーテンを開けて中を確認しなければならなかった。
さくらが、入口から一番近いベッドのカーテンを開けて中を覗くと、一人の女子生徒がすやすやと眠っていた。
さくらは、そっとカーテンを閉め、隣のベッドに行きそっとカーテンを開けたが、そこにも女子生徒が寝ている。
そっとカーテンを閉め、次のベッドへ行きまたカーテンを開けるが、そこにも同じように生徒が寝ている。
9月だというのに今日はとても暑い。この暑さでは熱中症になるのも無理はない。
さくらは次々とベッドを覗いていったが、ベッドは埋まっている。
しかも、そのすべてに青白い顔をした女子生徒が死んだように眠っている。もちろんみんな別人だ。
とうとう最後のベッドを覗いたが、そこも女子生徒が眠っていた。
すべてのベッドが使用されていたのは、今までに一度もなかった。
その時、さくらは突然息苦しさを感じ始めた。この部屋には嫌な気が満ちている。
とにかく窓を開けてこの悪い空気を入れ替えよう。
ふらつく足取りで窓際に立ったが、なぜか窓は開かなかった。
確認しても鍵はかかっていない。それなのに、何か強い見えない力が窓をしっかりと押さえているようで、ビクともしない。
さくらは、めまいを覚え、さすがに立っていられなくない、ソファに腰を下ろした。
葛城先生が、ここで横になって休んでいるのを何度か見たことがあったので、さくらは、ソファに横になり、目を閉じた。
突然、「おいでヨ」と誰かが呼ぶ声がした。
さくらは目を開け、辺りを見回したが、誰の姿もなかった。
もしかしたら、ベッドで寝ていた誰かが目を覚まして、呼んだのかも、と思ったさくらは、ゆっくりと立ち上がってベッドに歩み寄った。
このカーテン、開ける勇気がある?
→開ける
→開けない
さくらがそっとカーテンを開けると、そのベッドには先ほどと全く同じ姿勢のまま生徒が横たわっていた。
本当に生きているのだろうか、と思ったさくらは、生徒の頬に触れようとしたが、冷たい風がさくらの頬を舐め上げたため、手を引っ込めた。
風がどこから来たのかと、さくらが見回すと、窓を覆っているカーテンが風をはらんで大きく膨らんでいた。
その動きは、まるでカーテンの陰に人が隠れていてバタバタと暴れているようだった。
いつの間に窓があいたのだろうか?
さくらは、ゆっくりと窓に近づいていった。
→開ける→エンディング№363:カエルですか?ネズミですか?
→開けない
カーテンに掛けた手を引っ込めたさくらの背後から声が浴びせかけられた。
さくらが振り返ると、葛城先生だった。
「どこかのベッドで休もうと思ったのですが・・・」
「残念だけど、今は全部ベッドが埋まってしまっているの。もしよかったら、このソファ使う?」
→ソファを使う→エンディング№365:本当に命日?
→ベッドで寝ているのは?
→保健室を出る→エンディング№364:松原さくらは何人いるの?
さくらは疑問に思っていることを直接聞いてみることにした。
「あの、ベッドで寝ているのは誰なんでしょうか?」
葛城先生は少し眉をひそめて答えた。
「あなた、ベッドを覗いたの?まあ、ちょっとソファにでも座って。立ち話を続けるのも何でしょう?」
さくらがソファに腰を下ろすと、葛城先生はゆっくりと口を開いた。
実はね、今日はある女の子の命日なの。その子の名前は八戸安蘭さんといってね、写真部に在籍してたのよ。
私がまだこの学園にやってきたばかりの頃、相談に来てね、こんなことを言うのよ。
「先生、私困っているんです。私が写真を撮るとその人が死んでしまうんです。それでその人が幽霊になって現れるんです」
まだ新人の私をからかおうとしてるんだった思って、笑い飛ばしたのよ。
でもね、「本当なんです、お願いです。信じてください」って真に迫った顔で言うもんだから、私もムキになって言っちゃったのよ。
「それじゃあ私を撮ってみなさいよ。それで私が死んだら信じてあげるから」
彼女、困った顔をしていたけど意を決したのかカメラを取り出して。「先生を撮ることができませんから」と言って、自分にカメラを向けてパシャパシャとシャッターを切り始めたの。
そして突然、ばったりと彼女は意識を失ってしまったの。
慌ててベッドに寝かせて、隣接している鳴神病院に連絡したんだけど、彼女、そのまま亡くなってしまったわ。
それでね、それからというもの命日になると、彼女は幽霊になって私の目の前に現れるの。ベッドで寝ているのよ、彼女の幽霊がね。
「でも、先生。ベッドは全部埋まっていましたよ」
「そうよ、彼女、何枚も写真を撮ったでしょ。そのせいかわからないけど、彼女の幽霊は一人じゃないのよ。だからすべてのベッドで寝ているんだけれど、ベッドだけじゃ足りなくてね。あそこのカーテンの陰とか」
先生が指さしたのは、窓際のカーテンだった。
そういえば、さっきあのカーテンがざわざわと揺れていた。きっと窓は閉まっているはずだ。
それなのに、カーテンが揺れていたということは、まさか八戸さんの霊の仕業?
「それから、そのソファなんだけれど、イギリスの公爵が所有していたものなの。それって、素晴らしく美しい赤い色をしているでしょう。それはね、人間の血、公爵は美しいメイドを屋説くと、その度に惨殺してソファに血を吸わしていたんですって。そのおかげでね、そんな美しい色艶になったのよ。でもね、そういう所以のあるソファでしょ、怨霊がとりついているの。だから、そのソファを使うとだるくなったり、余計につかれたりするのよ。うふふ」
言われてソファを見ると、革張りの表面に何やら人の顔のような模様がいくつも浮き出ている。立ち上がろうとしても立ち上がれない。
「でもね、八戸さんがこの部屋で亡くなってから、そんなことがなくなったのよ。理由はこのカメラ」
そう言って葛城先生が取り出したのは年代物の写真機だった。
「これは八戸さんが所有していたカメラ。人を撮ると死んでしまうカメラよ。でも、これって他の使いかたもあったのよね。霊を撮ると、その霊が写真の中に封じ込められるの。おぁげでソファに棲みついている悪霊がおとなしくなってしまったね。写真に吸い取られるのは人間も幽霊も嫌みたい。うふふ」
そう言ってカメラをソファに向けると、確かに表面に浮かんだ人の顔に見える文様がスススッと隠れてしまった。
「それから八戸さんの霊だけど、このカメラがあるおかげで絶対に悪さをしてこないから、安心して横になってちょうだい」
そんな話を聞いてしまったら、恐ろしくてソファで寝られない。
「もう大丈夫です、失礼します」
そして、さくらは急いで保健室を後にした。
それからというもの、さくらはあまり保健室には寄り付かなくなってしまったんだけれど、食事療法を取り入れて、きちんとした食生活を心掛けることで、貧血がよくなったらしい。
それで卒業するころにはすっかり元気になって、今は社会人として元気に生活している。
「ところで、八戸さんが持っていたカメラは、葛城先生が隠していたのよ。それって証拠隠滅だと思うけど、警察にそんな話をしても誰も信用してくれないでしょうね。不思議なカメラだから見せてほしいっていったら、なんと葛城先生、私に預けてくださったのよ。それで私、いつも持ち歩いているんだけどさ。坂上君、見てみたいでしょ?なんじゃさぁ、このカメラって坂上君が持っていたほうが良さそうだね」
「え?なんで僕が?」
「なんかカメラの声が聞こえたっていうか、このカメラは坂上君にもっていてもらいたいような気がする。だから、これ預かったね」
「こんな恐ろしいカメラ、預かれないよ」
「それ葛城先生からの預かりものだから絶対に壊さないでね。それにどうしてもいらなければ、返せばいいだけのことだし」
「うん、わかったよ」
坂上は、とても大事に使われていただろう年代物のカメラを受け取った。
エンディング数 4/656 達成度0%
エンディング№366:霊を取り込むカメラ
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