今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
1週目クリア
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング№03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング№10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング№13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング№03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情のはざま→福沢エンディング№20~22
6人目は新堂誠を選択→シナリオ:呪いのマンシール→新堂エンディング№06~08
7人目はシナリオ:記憶のほころび→七話目エンディング№01~03
2週目プレイ開始!
1人目は岩下明美を選択→シナリオ:偽りの愛→岩下エンディング№01・02
2人目は新堂を選択→シナリオ:高木ババア→新堂エンディング№01~05
3人目は風間を選択→シナリオ:かぐわしきにおひ→風間エンディング№01
4人目は細田を選択→シナリオ:魅惑のトイレ→細田エンディング№01~03
5人目は荒井選択→シナリオ:ゲーマーの条件→荒井エンディング№01~02
6人目は福沢玲子を選択!
福沢玲子は1年G組の生徒。
「突然だけど、坂上君って宗教はなんなの?」
- 親と一緒
- あまり人に言いたくない
- 無神論者→岩下の話を聞いている場合はシナリオ:愛と友情の狭間
- 違う話を聞きたい
シナリオ:彼と彼女の秘密
八重樫と言う男子生徒がいた。
彼は甘いマクスで、アイドルみたいだって、入学当初からクラスで話題になっており、彼に恋い焦がれる女子も多かった。
女の子たちは、八重樫とお付き合いできたらどんなにいいだろうって、あれこれ頭の中で想像を膨らませていたが、実際にアクションを起こせる人はそんなに多くなく、自分に自信がある女の子だけが、八重樫に果敢にアプローチしていった。
その方法は、みんなの前で堂々と話すのではなくて、ラプレターだった。だから、八重樫の机や下駄箱には、しょっちゅう可愛い封筒のラブレターが入っていた。
そして、校舎裏あたりに呼び出された八重樫は、女の子たちからの真剣な告白を受けるが、八重樫にも細かい好みがあるらしく、なかなか応えてあげることができず、女の子たちは軒並み討ち死にだった。
しまいにはいったい誰と付き合うんだろう、って女の子間では噂になっていった。
その日も登校した八重樫が机の中を確認すると、ラブレターが入っていた。
そして日課のように、彼は放課後になると呼び出し場所に向かった。
そこで佇んでいたのは、同じクラスの美津見だった。
この瞬間、美津見はとりたてて美人というわけじゃないが、どこか惹かれる魅力を持っている女の子だと、八重樫は感じだ。
「一目見た時から好きでした。私と付き合ってください」
「ああ、いいよ」
晴れて恋人同士になった八重樫と美津見は、周囲に見せつけるようなことはなくて、初々しく健全な学生らしいお付き合いをしていた。
キスなんて当然してないし、手をつなぐこともない。そんな二人を周囲は静かに見守っていた。
八重樫にふられた子たちも、腹いせに嫌がらせをするとかもなく、美津見にとっては穏やかな、そして甘い時間を過ごすことができた。
実は八重樫は不良グループの一員だった。
彼は、表向きは優等生で通っていたが、裏ではケンカに万引き、不良が通る道は一通り済ませているっていうなかなかの不良だった。
そして、ケンカもなかなか強かった。
ルックスが爽やかな美少年だから、親や先生には全然バレず、暇さえあれば不良仲間とつるんでいた。
そんな八重樫だったが、美津見のために悪い連中とは縁を切ったほうがいいんじゃないか、と思い始めた。
八重樫は、美津見の告白を受けた時、自分が本当は不良だなんてことはもちろん言えなかった。
でも、そういうグループから抜けるのって、すごく勇気がいる。
暴力に訴えられなくても、悪い噂を流されるかもしれない。それも真っ赤な嘘じゃなくて、さんざん仲間と繰り返してきた真実だから、否定することは無理だった。
そんなことされたら、美津見に知られるどころか学校中に広まってしまう。
結局、八重樫は、美津見に不良グループのことを話せず、脱退する決意を持てず、そのままずるずると隠しながら付き合うことを続けた。
八重樫と美津見は休日になるたびに、つつましくデートを重ねていった。
でも、楽しい時間を過ごす一方で、八重樫は、このままでいいのだろうかって、複雑な気持ちだった。
不良ってことがバレたら、きっと美津見は悲しみ、怒る。そして、別れを切り出されてしまう。
それはなんとしてでも避けたいというのが、八重樫の一番の望みだった。
八重樫は、彼女ができてからは、不良連中と会う頻度を減らしていたが、最近付き合いが悪いことに、リーダーに気づかれてしまった。
「なあ、最近付き合い悪くね?」
「まあ、ちょっといろいろ忙しいもんで」
「まさか、女でもできなんじゃないだろうなあ?」
「いや、それは・・・」
「おいおい、図星かよ。それで、最近は呼んでも断ってきたんだな。
でよう、どんな彼女なんだ?」
「可愛っすよ」
「八重樫よ、彼女ができたからって、俺らと疎遠になるってことはないよな?」
「そんなことはないっす。彼女ができたのは初めてなんで、なるべく構ってやりたかったんですよ。これからはグループの付き合いもちゃんと参加させていただきますから」
八重樫はしばらく、美津見と彼氏と不良グループの一員という二足のわらじを、3対7くらいの割合で履いていた。
美津見は八重樫と一緒にいられる時間が少し減ったが、特に疑問に思わなかった。むしろ、短い時間で濃密なデートを求めようとした。
「手、繋いでみていい?」
「うん」
そっと握った美津見の手は、とても女の子らしい柔らかさと温かさがあって、ますます八重樫は美津見がいとおしくなった。
同時に、自分の秘密が明らかになることを恐れた。幻滅されたくない、この子に、自分が不良だということを、絶対に知られたくない、と。
不良仲間に気を遣って、つるんでいる時間をなるべく増やしていた八重樫だが、彼女と一緒にいるほうが楽しいし、この仲間から離れたい、と思っているせいか、思っていることが顔に出てしまっていた。
ある時、リーダーから「お前の彼女さ、俺たちに紹介してくれねえ?」と言われた八重樫だが、自分が不良だってことを誰よりも知られたくないので、無理に決まっていた。
けどリーダーは八重樫よりも大柄で腕っぷしも強かった。
「もし、あなたにそんな友達がいたら、どう思う?」
- そんな人には関わりたくない→福沢エンディング№24:悪魔の力を借りし者、福沢エンディング№25:彼女はオレが守る!、福沢エンディング№28:サイッテーな男
- 見て見ぬ振りをする→福沢エンディング№26:邪教の信徒
- わからない
福沢エンディング№27:不愉快な僕
CGギャラリー26/124 今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
1週目クリア
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング№03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング№10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング№13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング№03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情のはざま→福沢エンディング№20~22
6人目は新堂誠を選択→シナリオ:呪いのマンシール→新堂エンディング№06~08
7人目はシナリオ:記憶のほころび→七話目エンディング№01~03
2週目プレイ開始!
1人目は岩下明美を選択→シナリオ:偽りの愛→岩下エンディング№01・02
2人目は新堂を選択→シナリオ:高木ババア→新堂エンディング№01~05
3人目は風間を選択→シナリオ:かぐわしきにおひ→風間エンディング№01
4人目は細田を選択→シナリオ:魅惑のトイレ→細田エンディング№01~03
5人目は荒井選択→シナリオ:ゲーマーの条件→荒井エンディング№01~02
6人目は福沢玲子を選択!
福沢玲子は1年G組の生徒。
「突然だけど、坂上君って宗教はなんなの?」
- 親と一緒
- あまり人に言いたくない
- 無神論者→岩下の話を聞いている場合はシナリオ:愛と友情の狭間
- 違う話を聞きたい
シナリオ:彼と彼女の秘密
八重樫と言う男子生徒がいた。
彼は甘いマクスで、アイドルみたいだって、入学当初からクラスで話題になっており、彼に恋い焦がれる女子も多かった。
女の子たちは、八重樫とお付き合いできたらどんなにいいだろうって、あれこれ頭の中で想像を膨らませていたが、実際にアクションを起こせる人はそんなに多くなく、自分に自信がある女の子だけが、八重樫に果敢にアプローチしていった。
その方法は、みんなの前で堂々と話すのではなくて、ラプレターだった。だから、八重樫の机や下駄箱には、しょっちゅう可愛い封筒のラブレターが入っていた。
そして、校舎裏あたりに呼び出された八重樫は、女の子たちからの真剣な告白を受けるが、八重樫にも細かい好みがあるらしく、なかなか応えてあげることができず、女の子たちは軒並み討ち死にだった。
しまいにはいったい誰と付き合うんだろう、って女の子間では噂になっていった。
その日も登校した八重樫が机の中を確認すると、ラブレターが入っていた。
そして日課のように、彼は放課後になると呼び出し場所に向かった。
そこで佇んでいたのは、同じクラスの美津見だった。
この瞬間、美津見はとりたてて美人というわけじゃないが、どこか惹かれる魅力を持っている女の子だと、八重樫は感じだ。
「一目見た時から好きでした。私と付き合ってください」
「ああ、いいよ」
晴れて恋人同士になった八重樫と美津見は、周囲に見せつけるようなことはなくて、初々しく健全な学生らしいお付き合いをしていた。
キスなんて当然してないし、手をつなぐこともない。そんな二人を周囲は静かに見守っていた。
八重樫にふられた子たちも、腹いせに嫌がらせをするとかもなく、美津見にとっては穏やかな、そして甘い時間を過ごすことができた。
実は八重樫は不良グループの一員だった。
彼は、表向きは優等生で通っていたが、裏ではケンカに万引き、不良が通る道は一通り済ませているっていうなかなかの不良だった。
そして、ケンカもなかなか強かった。
ルックスが爽やかな美少年だから、親や先生には全然バレず、暇さえあれば不良仲間とつるんでいた。
そんな八重樫だったが、美津見のために悪い連中とは縁を切ったほうがいいんじゃないか、と思い始めた。
八重樫は、美津見の告白を受けた時、自分が本当は不良だなんてことはもちろん言えなかった。
でも、そういうグループから抜けるのって、すごく勇気がいる。
暴力に訴えられなくても、悪い噂を流されるかもしれない。それも真っ赤な嘘じゃなくて、さんざん仲間と繰り返してきた真実だから、否定することは無理だった。
そんなことされたら、美津見に知られるどころか学校中に広まってしまう。
結局、八重樫は、美津見に不良グループのことを話せず、脱退する決意を持てず、そのままずるずると隠しながら付き合うことを続けた。
八重樫と美津見は休日になるたびに、つつましくデートを重ねていった。
でも、楽しい時間を過ごす一方で、八重樫は、このままでいいのだろうかって、複雑な気持ちだった。
不良ってことがバレたら、きっと美津見は悲しみ、怒る。そして、別れを切り出されてしまう。
それはなんとしてでも避けたいというのが、八重樫の一番の望みだった。
八重樫は、彼女ができてからは、不良連中と会う頻度を減らしていたが、最近付き合いが悪いことに、リーダーに気づかれてしまった。
「なあ、最近付き合い悪くね?」
「まあ、ちょっといろいろ忙しいもんで」
「まさか、女でもできなんじゃないだろうなあ?」
「いや、それは・・・」
「おいおい、図星かよ。それで、最近は呼んでも断ってきたんだな。
でよう、どんな彼女なんだ?」
「可愛っすよ」
「八重樫よ、彼女ができたからって、俺らと疎遠になるってことはないよな?」
「そんなことはないっす。彼女ができたのは初めてなんで、なるべく構ってやりたかったんですよ。これからはグループの付き合いもちゃんと参加させていただきますから」
八重樫はしばらく、美津見と彼氏と不良グループの一員という二足のわらじを、3対7くらいの割合で履いていた。
美津見は八重樫と一緒にいられる時間が少し減ったが、特に疑問に思わなかった。むしろ、短い時間で濃密なデートを求めようとした。
「手、繋いでみていい?」
「うん」
そっと握った美津見の手は、とても女の子らしい柔らかさと温かさがあって、ますます八重樫は美津見がいとおしくなった。
同時に、自分の秘密が明らかになることを恐れた。幻滅されたくない、この子に、自分が不良だということを、絶対に知られたくない、と。
不良仲間に気を遣って、つるんでいる時間をなるべく増やしていた八重樫だが、彼女と一緒にいるほうが楽しいし、この仲間から離れたい、と思っているせいか、思っていることが顔に出てしまっていた。
ある時、リーダーから「お前の彼女さ、俺たちに紹介してくれねえ?」と言われた八重樫だが、自分が不良だってことを誰よりも知られたくないので、無理に決まっていた。
けどリーダーは八重樫よりも大柄で腕っぷしも強かった。
「もし、あなたにそんな友達がいたら、どう思う?」
- そんな人には関わりたくない→福沢エンディング№24:悪魔の力を借りし者、福沢エンディング№25:彼女はオレが守る!、福沢エンディング№28:サイッテーな男
- 見て見ぬ振りをする
- わからない
「ダメだ。彼女は関わらせたくない」
「なんだと?」
「俺はもう、このグループを抜けます。不良はもう辞めます」
「ふざけるな!おう、お前らやっちまえ!」
八重樫はあっという間に取り囲まれ、ボコボコにされて、病院に担ぎ込まれた。
「八重樫君、どうしてこんなことに」
何も知らずに見舞いにきた美津見は、涙を浮かべて聞いてきた。
「はは、ちょっとチンピラのケンカに巻き込まれて」
八重樫は、決して本当の理由を言おうとはしなかったが、美津見は疑ってかかった。
「この前から、何かに悩んでいる風だったよね。それが関係あるんじゃないの?」
「そんなことないよ」
「嘘つかないで。やっぱりそうなのね。わかった」
美津見はやけに悲壮な顔をして、何かを決意したみたいだった。
「私に任せて。あなたの悩み、取り除いてあげるから!」
そう言って美津見は病室を出て行った。
そして数日後、事件は起きた。
「これ、見て」
八重樫を見舞いに来た美津見が、とっても嬉しそうな顔をして新聞を持ってきた。
八重樫が言われるがままに記事に目を通すと、『集団自殺か』なんて見出しで、駅のホームで事故が起こったとあった。
鳴神学園の男子生徒数名が、いきなり手を繋いでそのまま線路に飛び込んで電車に轢かれたってことが書かれていた。
そこに書かれている名前は、あの不良グループのメンバーだった。
「もう、あなたを困らせて奴らはいないわよね」
「ああ」
そう言いかけて、八重樫はおかしいと思った。いつ、どうやって彼女は、自分と不良グループとの関係を知ったのかって。
「どうして君が、こいつらのことを」
そう質問すると、美津見は背筋が寒くなるような微笑みを浮かべた。
「私ね、学校に棲んでいる悪魔にお願いしたの。あなたの悩みを取り除いてほしいって」
「え?」
「前から、旧校舎に悪魔が済んでいるって噂は耳にしていたの。それと契約すれば、どんなことも思いのままだって。
噂は本当だったわ。儀式をしたら本当に悪魔が出てきて。私は迷わず、契約したよ。あなたを守るために」
「嘘だろう、そんなこと」
「嘘じゃないわ。契約内容はね、私の死後の魂を差し出すこと。
そして私は、あなたを苦しめていた連中の始末を頼んだわ。ふふ、確かな効果があったわ。
悪魔はね、他に人間の魂を差し出せば、また願いを聞いてくれるって言うのよ。
うふふ、これからも、悪魔の力であなたを守ってあげるからね」
「八重樫君は悪い仲間からは解放されたけど、彼女が悪魔に心を奪われちゃったわけ。邪教の信徒っていうのかな。
今も八重樫君は美津見さんと交際を続けているけど、別れるのは無理だよね。
そんなことしたら、悪魔の力で殺されちゃうんだもん。一生、彼女と一緒にいなきゃいけないんだ」
福沢エンディング№26:邪教の信徒
CGギャラリー26/12475:旧校舎で悪魔召喚
今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
1週目クリア
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング№03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング№10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング№13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング№03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情のはざま→福沢エンディング№20~22
6人目は新堂誠を選択→シナリオ:呪いのマンシール→新堂エンディング№06~08
7人目はシナリオ:記憶のほころび→七話目エンディング№01~03
2週目プレイ開始!
1人目は岩下明美を選択→シナリオ:偽りの愛→岩下エンディング№01・02
2人目は新堂を選択→シナリオ:高木ババア→新堂エンディング№01~05
3人目は風間を選択→シナリオ:かぐわしきにおひ→風間エンディング№01
4人目は細田を選択→シナリオ:魅惑のトイレ→細田エンディング№01~03
5人目は荒井選択→シナリオ:ゲーマーの条件→荒井エンディング№01~02
6人目は福沢玲子を選択!
福沢玲子は1年G組の生徒。
「突然だけど、坂上君って宗教はなんなの?」
- 親と一緒
- あまり人に言いたくない
- 無神論者→岩下の話を聞いている場合はシナリオ:愛と友情の狭間
- 違う話を聞きたい
シナリオ:彼と彼女の秘密
八重樫と言う男子生徒がいた。
彼は甘いマクスで、アイドルみたいだって、入学当初からクラスで話題になっており、彼に恋い焦がれる女子も多かった。
女の子たちは、八重樫とお付き合いできたらどんなにいいだろうって、あれこれ頭の中で想像を膨らませていたが、実際にアクションを起こせる人はそんなに多くなく、自分に自信がある女の子だけが、八重樫に果敢にアプローチしていった。
その方法は、みんなの前で堂々と話すのではなくて、ラプレターだった。だから、八重樫の机や下駄箱には、しょっちゅう可愛い封筒のラブレターが入っていた。
そして、校舎裏あたりに呼び出された八重樫は、女の子たちからの真剣な告白を受けるが、八重樫にも細かい好みがあるらしく、なかなか応えてあげることができず、女の子たちは軒並み討ち死にだった。
しまいにはいったい誰と付き合うんだろう、って女の子間では噂になっていった。
その日も登校した八重樫が机の中を確認すると、ラブレターが入っていた。
そして日課のように、彼は放課後になると呼び出し場所に向かった。
そこで佇んでいたのは、同じクラスの美津見だった。
この瞬間、美津見はとりたてて美人というわけじゃないが、どこか惹かれる魅力を持っている女の子だと、八重樫は感じだ。
「一目見た時から好きでした。私と付き合ってください」
「ああ、いいよ」
晴れて恋人同士になった八重樫と美津見は、周囲に見せつけるようなことはなくて、初々しく健全な学生らしいお付き合いをしていた。
キスなんて当然してないし、手をつなぐこともない。そんな二人を周囲は静かに見守っていた。
八重樫にふられた子たちも、腹いせに嫌がらせをするとかもなく、美津見にとっては穏やかな、そして甘い時間を過ごすことができた。
実は八重樫は不良グループの一員だった。
彼は、表向きは優等生で通っていたが、裏ではケンカに万引き、不良が通る道は一通り済ませているっていうなかなかの不良だった。
そして、ケンカもなかなか強かった。
ルックスが爽やかな美少年だから、親や先生には全然バレず、暇さえあれば不良仲間とつるんでいた。
そんな八重樫だったが、美津見のために悪い連中とは縁を切ったほうがいいんじゃないか、と思い始めた。
八重樫は、美津見の告白を受けた時、自分が本当は不良だなんてことはもちろん言えなかった。
でも、そういうグループから抜けるのって、すごく勇気がいる。
暴力に訴えられなくても、悪い噂を流されるかもしれない。それも真っ赤な嘘じゃなくて、さんざん仲間と繰り返してきた真実だから、否定することは無理だった。
そんなことされたら、美津見に知られるどころか学校中に広まってしまう。
結局、八重樫は、美津見に不良グループのことを話せず、脱退する決意を持てず、そのままずるずると隠しながら付き合うことを続けた。
八重樫と美津見は休日になるたびに、つつましくデートを重ねていった。
でも、楽しい時間を過ごす一方で、八重樫は、このままでいいのだろうかって、複雑な気持ちだった。
不良ってことがバレたら、きっと美津見は悲しみ、怒る。そして、別れを切り出されてしまう。
それはなんとしてでも避けたいというのが、八重樫の一番の望みだった。
八重樫は、彼女ができてからは、不良連中と会う頻度を減らしていたが、最近付き合いが悪いことに、リーダーに気づかれてしまった。
「なあ、最近付き合い悪くね?」
「まあ、ちょっといろいろ忙しいもんで」
「まさか、女でもできなんじゃないだろうなあ?」
「いや、それは・・・」
「おいおい、図星かよ。それで、最近は呼んでも断ってきたんだな。
でよう、どんな彼女なんだ?」
「可愛っすよ」
「八重樫よ、彼女ができたからって、俺らと疎遠になるってことはないよな?」
「そんなことはないっす。彼女ができたのは初めてなんで、なるべく構ってやりたかったんですよ。これからはグループの付き合いもちゃんと参加させていただきますから」
八重樫はしばらく、美津見と彼氏と不良グループの一員という二足のわらじを、3対7くらいの割合で履いていた。
美津見は八重樫と一緒にいられる時間が少し減ったが、特に疑問に思わなかった。むしろ、短い時間で濃密なデートを求めようとした。
「手、繋いでみていい?」
「うん」
そっと握った美津見の手は、とても女の子らしい柔らかさと温かさがあって、ますます八重樫は美津見がいとおしくなった。
同時に、自分の秘密が明らかになることを恐れた。幻滅されたくない、この子に、自分が不良だということを、絶対に知られたくない、と。
不良仲間に気を遣って、つるんでいる時間をなるべく増やしていた八重樫だが、彼女と一緒にいるほうが楽しいし、この仲間から離れたい、と思っているせいか、思っていることが顔に出てしまっていた。
ある時、リーダーから「お前の彼女さ、俺たちに紹介してくれねえ?」と言われた八重樫だが、自分が不良だってことを誰よりも知られたくないので、無理に決まっていた。
けどリーダーは八重樫よりも大柄で腕っぷしも強かった。
「もし、あなたにそんな友達がいたら、どう思う?」
- そんな人には関わりたくない
- 見て見ぬ振りをする
- わからない
翌日、八重樫は美津見を遊びに誘った。
「今日は友達を紹介したいんだ。そいつらも一緒に遊ぼうと思ってるんだけど、いいかな」
「わかったわ。初めての友達が一緒なら、おめかししていかないとね」
八重樫が美津見を連れて、待ち合わせ場所まで向かうと、すでに不良仲間たちは全員そろっていた。
ニヤニヤ笑いながら、不良たちは舐めるように美津見を品定めした。
美津見は、目つきは悪いし、髪を染めていたり、ピアスをしている不良たちをみて、ビックリしていた。
不良たちは八重樫と美津見を連れて、ゲーセンにカラオケと回ったが、誰にも憚らずタバコをふかしていた。
八重樫が美津見の顔を覗き見ると、あからさまに嫌そうな顔はしていなかったが、楽しそうな表情でもなかった。
リーダーが、アジトへ行くか、と声を掛けた。
不良たちは、人気の少ないところにある誰も使っていない廃墟をたまり場にしていた。
アジトに着くと、いきなりリーダーは八重樫を殴りつけて、「本当はグループを抜けたいって、顔に出まくりなんだよ。そんなこと許すわけねえだろうが!」と怒鳴った。
「俺らの子と内心バカにしてだんたろう?ああ」と他のメンバーもガシガシと蹴ってくる。
そして吉川は、「ナメた野郎には、お灸を据えてやらなきゃな。へへ、お前の目の前で、この女を・・・」と言って、美津見を無理やり地面に押し倒した。
「ねえ、八重樫君はこの状況で、いったい何をしたと思う?」
- 諦めた
- 諦めずに抵抗した→福沢エンディング№24:悪魔の力を借りし者
- 相手を脅した→福沢エンディング№25:彼女はオレが守る!
- わからない
あなた男の子としてサイテーだと思うな、私。
これ以上、あなたに話しても無駄だと思うな。私の話はこれまでね。」
福沢エンディング№28:サイッテーな男
CGギャラリー25/124 今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
1週目クリア
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング№03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング№10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング№13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング№03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情のはざま→福沢エンディング№20~22
6人目は新堂誠を選択→シナリオ:呪いのマンシール→新堂エンディング№06~08
7人目はシナリオ:記憶のほころび→七話目エンディング№01~03
2週目プレイ開始!
1人目は岩下明美を選択→シナリオ:偽りの愛→岩下エンディング№01・02
2人目は新堂を選択→シナリオ:高木ババア→新堂エンディング№01~05
3人目は風間を選択→シナリオ:かぐわしきにおひ→風間エンディング№01
4人目は細田を選択→シナリオ:魅惑のトイレ→細田エンディング№01~03
5人目は荒井選択→シナリオ:ゲーマーの条件→荒井エンディング№01~02
6人目は福沢玲子を選択!
福沢玲子は1年G組の生徒。
「突然だけど、坂上君って宗教はなんなの?」
- 親と一緒
- あまり人に言いたくない
- 無神論者→岩下の話を聞いている場合はシナリオ:愛と友情の狭間
- 違う話を聞きたい
シナリオ:彼と彼女の秘密
八重樫と言う男子生徒がいた。
彼は甘いマクスで、アイドルみたいだって、入学当初からクラスで話題になっており、彼に恋い焦がれる女子も多かった。
女の子たちは、八重樫とお付き合いできたらどんなにいいだろうって、あれこれ頭の中で想像を膨らませていたが、実際にアクションを起こせる人はそんなに多くなく、自分に自信がある女の子だけが、八重樫に果敢にアプローチしていった。
その方法は、みんなの前で堂々と話すのではなくて、ラプレターだった。だから、八重樫の机や下駄箱には、しょっちゅう可愛い封筒のラブレターが入っていた。
そして、校舎裏あたりに呼び出された八重樫は、女の子たちからの真剣な告白を受けるが、八重樫にも細かい好みがあるらしく、なかなか応えてあげることができず、女の子たちは軒並み討ち死にだった。
しまいにはいったい誰と付き合うんだろう、って女の子間では噂になっていった。
その日も登校した八重樫が机の中を確認すると、ラブレターが入っていた。
そして日課のように、彼は放課後になると呼び出し場所に向かった。
そこで佇んでいたのは、同じクラスの美津見だった。
この瞬間、美津見はとりたてて美人というわけじゃないが、どこか惹かれる魅力を持っている女の子だと、八重樫は感じだ。
「一目見た時から好きでした。私と付き合ってください」
「ああ、いいよ」
晴れて恋人同士になった八重樫と美津見は、周囲に見せつけるようなことはなくて、初々しく健全な学生らしいお付き合いをしていた。
キスなんて当然してないし、手をつなぐこともない。そんな二人を周囲は静かに見守っていた。
八重樫にふられた子たちも、腹いせに嫌がらせをするとかもなく、美津見にとっては穏やかな、そして甘い時間を過ごすことができた。
実は八重樫は不良グループの一員だった。
彼は、表向きは優等生で通っていたが、裏ではケンカに万引き、不良が通る道は一通り済ませているっていうなかなかの不良だった。
そして、ケンカもなかなか強かった。
ルックスが爽やかな美少年だから、親や先生には全然バレず、暇さえあれば不良仲間とつるんでいた。
そんな八重樫だったが、美津見のために悪い連中とは縁を切ったほうがいいんじゃないか、と思い始めた。
八重樫は、美津見の告白を受けた時、自分が本当は不良だなんてことはもちろん言えなかった。
でも、そういうグループから抜けるのって、すごく勇気がいる。
暴力に訴えられなくても、悪い噂を流されるかもしれない。それも真っ赤な嘘じゃなくて、さんざん仲間と繰り返してきた真実だから、否定することは無理だった。
そんなことされたら、美津見に知られるどころか学校中に広まってしまう。
結局、八重樫は、美津見に不良グループのことを話せず、脱退する決意を持てず、そのままずるずると隠しながら付き合うことを続けた。
八重樫と美津見は休日になるたびに、つつましくデートを重ねていった。
でも、楽しい時間を過ごす一方で、八重樫は、このままでいいのだろうかって、複雑な気持ちだった。
不良ってことがバレたら、きっと美津見は悲しみ、怒る。そして、別れを切り出されてしまう。
それはなんとしてでも避けたいというのが、八重樫の一番の望みだった。
八重樫は、彼女ができてからは、不良連中と会う頻度を減らしていたが、最近付き合いが悪いことに、リーダーに気づかれてしまった。
「なあ、最近付き合い悪くね?」
「まあ、ちょっといろいろ忙しいもんで」
「まさか、女でもできなんじゃないだろうなあ?」
「いや、それは・・・」
「おいおい、図星かよ。それで、最近は呼んでも断ってきたんだな。
でよう、どんな彼女なんだ?」
「可愛っすよ」
「八重樫よ、彼女ができたからって、俺らと疎遠になるってことはないよな?」
「そんなことはないっす。彼女ができたのは初めてなんで、なるべく構ってやりたかったんですよ。これからはグループの付き合いもちゃんと参加させていただきますから」
八重樫はしばらく、美津見と彼氏と不良グループの一員という二足のわらじを、3対7くらいの割合で履いていた。
美津見は八重樫と一緒にいられる時間が少し減ったが、特に疑問に思わなかった。むしろ、短い時間で濃密なデートを求めようとした。
「手、繋いでみていい?」
「うん」
そっと握った美津見の手は、とても女の子らしい柔らかさと温かさがあって、ますます八重樫は美津見がいとおしくなった。
同時に、自分の秘密が明らかになることを恐れた。幻滅されたくない、この子に、自分が不良だということを、絶対に知られたくない、と。
不良仲間に気を遣って、つるんでいる時間をなるべく増やしていた八重樫だが、彼女と一緒にいるほうが楽しいし、この仲間から離れたい、と思っているせいか、思っていることが顔に出てしまっていた。
ある時、リーダーから「お前の彼女さ、俺たちに紹介してくれねえ?」と言われた八重樫だが、自分が不良だってことを誰よりも知られたくないので、無理に決まっていた。
けどリーダーは八重樫よりも大柄で腕っぷしも強かった。
「もし、あなたにそんな友達がいたら、どう思う?」
- そんな人には関わりたくない
- 見て見ぬ振りをする
- わからない
翌日、八重樫は美津見を遊びに誘った。
「今日は友達を紹介したいんだ。そいつらも一緒に遊ぼうと思ってるんだけど、いいかな」
「わかったわ。初めての友達が一緒なら、おめかししていかないとね」
八重樫が美津見を連れて、待ち合わせ場所まで向かうと、すでに不良仲間たちは全員そろっていた。
ニヤニヤ笑いながら、不良たちは舐めるように美津見を品定めした。
美津見は、目つきは悪いし、髪を染めていたり、ピアスをしている不良たちをみて、ビックリしていた。
不良たちは八重樫と美津見を連れて、ゲーセンにカラオケと回ったが、誰にも憚らずタバコをふかしていた。
八重樫が美津見の顔を覗き見ると、あからさまに嫌そうな顔はしていなかったが、楽しそうな表情でもなかった。
リーダーが、アジトへ行くか、と声を掛けた。
不良たちは、人気の少ないところにある誰も使っていない廃墟をたまり場にしていた。
アジトに着くと、いきなりリーダーは八重樫を殴りつけて、「本当はグループを抜けたいって、顔に出まくりなんだよ。そんなこと許すわけねえだろうが!」と怒鳴った。
「俺らの子と内心バカにしてだんたろう?ああ」と他のメンバーもガシガシと蹴ってくる。
そして吉川は、「ナメた野郎には、お灸を据えてやらなきゃな。へへ、お前の目の前で、この女を・・・」と言って、美津見を無理やり地面に押し倒した。
「ねえ、八重樫君はこの状況で、いったい何をしたと思う?」
- 諦めた
- 諦めずに抵抗した→福沢エンディング№24:悪魔の力を借りし者
- 相手を脅した→
- わからない
八重樫は大声で怒鳴った。
でも結局、不良たちは全然止まらない。
突如として八重樫の目の前が、白くまぶしく爆発し、そのまま気を失った。
次に気づいた時、八重樫は自分の足で立っており、目の前の光景は様変わりしていた。
一面が血の海だった。不良たちが全員、首を掻き切られて倒れ死んでいた。
見れば、八重樫は彼らから受けた返り血で、真っ赤になっていた。どう考えてみて、殺したのは自分・・・
「うわああああ!」
あまりの不可解さに、八重樫が錯乱してしまうと、優しい女の声が聞こえた。
「八重樫君」
美津見が、血の海の真ん中に立っていた。彼女は何事もなく、衣服もまったく汚れていなかった。
「ありがと、八重樫君。私を助けてくれて」
惨状の中で美津見はうっとりと笑った。そこで、ついに八重樫が壊れた。
「そうだね、俺は君を守ったんだ。あははは」
「その後八重樫君は警察に逮捕されたよ。
たった一人で、どうやってここまで殺せるのかって、警察も頭を悩ませてみたいだけど、八重樫君があくまでも自分がやったって言い張ったから、そのまま彼は牢屋行き。
でも彼はね、今は病院にいるの。
八重樫君、ひたすら美津見さんのことをつぶやいているそうでさ。
ま、ある意味で幸せなのかな?あの愛する美津見さんのせいで、人生を台無しにさせられたってことを知らないで済むんだから。
不良を殺したのは、美津見さんが八重樫君を操ったからなんだよ。美津見さんの正体は悪魔なの。その悪魔の能力でもって、八重樫君に不良を殺させたんだ。
実はさ、事件があった時、私も現場にいたんだよ。
実は私も八重樫君に告白したことがあるんだけど、ふられちゃって。そのすぐあと、八重樫君は美津見さんと付き合いだしたの。で、納得がいかなかったから、あの二人を監視してたよの。
私が見ていた限りでは周囲が光ったかと思うと、次の瞬間には八重樫君が不良たちを殺しにかかっていてね。
それで私、はっきり見たんだ。殺戮を見守る美津見さんの影が、漫画で見るような悪魔の形になっているのを。
美津見さんは今もこの学校にいるけど、近づかないほうがいいよ。悪魔なんだから、何かの拍子に殺されちゃうかもしれないからね」
福沢エンディング№25:彼女はオレが守る!
CGギャラリー25/124
今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
1週目クリア
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング№03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング№10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング№13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング№03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情のはざま→福沢エンディング№20~22
6人目は新堂誠を選択→シナリオ:呪いのマンシール→新堂エンディング№06~08
7人目はシナリオ:記憶のほころび→七話目エンディング№01~03
2週目プレイ開始!
1人目は岩下明美を選択→シナリオ:偽りの愛→岩下エンディング№01・02
2人目は新堂を選択→シナリオ:高木ババア→新堂エンディング№01~05
3人目は風間を選択→シナリオ:かぐわしきにおひ→風間エンディング№01
4人目は細田を選択→シナリオ:魅惑のトイレ→細田エンディング№01~03
5人目は荒井選択→シナリオ:ゲーマーの条件→荒井エンディング№01~02
6人目は福沢玲子を選択!
福沢玲子は1年G組の生徒。
「突然だけど、坂上君って宗教はなんなの?」
- 親と一緒
- あまり人に言いたくない
- 無神論者→岩下の話を聞いている場合はシナリオ:愛と友情の狭間
- 違う話を聞きたい
シナリオ:彼と彼女の秘密
八重樫と言う男子生徒がいた。
彼は甘いマクスで、アイドルみたいだって、入学当初からクラスで話題になっており、彼に恋い焦がれる女子も多かった。
女の子たちは、八重樫とお付き合いできたらどんなにいいだろうって、あれこれ頭の中で想像を膨らませていたが、実際にアクションを起こせる人はそんなに多くなく、自分に自信がある女の子だけが、八重樫に果敢にアプローチしていった。
その方法は、みんなの前で堂々と話すのではなくて、ラプレターだった。だから、八重樫の机や下駄箱には、しょっちゅう可愛い封筒のラブレターが入っていた。
そして、校舎裏あたりに呼び出された八重樫は、女の子たちからの真剣な告白を受けるが、八重樫にも細かい好みがあるらしく、なかなか応えてあげることができず、女の子たちは軒並み討ち死にだった。
しまいにはいったい誰と付き合うんだろう、って女の子間では噂になっていった。
その日も登校した八重樫が机の中を確認すると、ラブレターが入っていた。
そして日課のように、彼は放課後になると呼び出し場所に向かった。
そこで佇んでいたのは、同じクラスの美津見だった。
この瞬間、美津見はとりたてて美人というわけじゃないが、どこか惹かれる魅力を持っている女の子だと、八重樫は感じだ。
「一目見た時から好きでした。私と付き合ってください」
「ああ、いいよ」
晴れて恋人同士になった八重樫と美津見は、周囲に見せつけるようなことはなくて、初々しく健全な学生らしいお付き合いをしていた。
キスなんて当然してないし、手をつなぐこともない。そんな二人を周囲は静かに見守っていた。
八重樫にふられた子たちも、腹いせに嫌がらせをするとかもなく、美津見にとっては穏やかな、そして甘い時間を過ごすことができた。
実は八重樫は不良グループの一員だった。
彼は、表向きは優等生で通っていたが、裏ではケンカに万引き、不良が通る道は一通り済ませているっていうなかなかの不良だった。
そして、ケンカもなかなか強かった。
ルックスが爽やかな美少年だから、親や先生には全然バレず、暇さえあれば不良仲間とつるんでいた。
そんな八重樫だったが、美津見のために悪い連中とは縁を切ったほうがいいんじゃないか、と思い始めた。
八重樫は、美津見の告白を受けた時、自分が本当は不良だなんてことはもちろん言えなかった。
でも、そういうグループから抜けるのって、すごく勇気がいる。
暴力に訴えられなくても、悪い噂を流されるかもしれない。それも真っ赤な嘘じゃなくて、さんざん仲間と繰り返してきた真実だから、否定することは無理だった。
そんなことされたら、美津見に知られるどころか学校中に広まってしまう。
結局、八重樫は、美津見に不良グループのことを話せず、脱退する決意を持てず、そのままずるずると隠しながら付き合うことを続けた。
八重樫と美津見は休日になるたびに、つつましくデートを重ねていった。
でも、楽しい時間を過ごす一方で、八重樫は、このままでいいのだろうかって、複雑な気持ちだった。
不良ってことがバレたら、きっと美津見は悲しみ、怒る。そして、別れを切り出されてしまう。
それはなんとしてでも避けたいというのが、八重樫の一番の望みだった。
八重樫は、彼女ができてからは、不良連中と会う頻度を減らしていたが、最近付き合いが悪いことに、リーダーに気づかれてしまった。
「なあ、最近付き合い悪くね?」
「まあ、ちょっといろいろ忙しいもんで」
「まさか、女でもできなんじゃないだろうなあ?」
「いや、それは・・・」
「おいおい、図星かよ。それで、最近は呼んでも断ってきたんだな。
でよう、どんな彼女なんだ?」
「可愛っすよ」
「八重樫よ、彼女ができたからって、俺らと疎遠になるってことはないよな?」
「そんなことはないっす。彼女ができたのは初めてなんで、なるべく構ってやりたかったんですよ。これからはグループの付き合いもちゃんと参加させていただきますから」
八重樫はしばらく、美津見と彼氏と不良グループの一員という二足のわらじを、3対7くらいの割合で履いていた。
美津見は八重樫と一緒にいられる時間が少し減ったが、特に疑問に思わなかった。むしろ、短い時間で濃密なデートを求めようとした。
「手、繋いでみていい?」
「うん」
そっと握った美津見の手は、とても女の子らしい柔らかさと温かさがあって、ますます八重樫は美津見がいとおしくなった。
同時に、自分の秘密が明らかになることを恐れた。幻滅されたくない、この子に、自分が不良だということを、絶対に知られたくない、と。
不良仲間に気を遣って、つるんでいる時間をなるべく増やしていた八重樫だが、彼女と一緒にいるほうが楽しいし、この仲間から離れたい、と思っているせいか、思っていることが顔に出てしまっていた。
ある時、リーダーから「お前の彼女さ、俺たちに紹介してくれねえ?」と言われた八重樫だが、自分が不良だってことを誰よりも知られたくないので、無理に決まっていた。
けどリーダーは八重樫よりも大柄で腕っぷしも強かった。
「もし、あなたにそんな友達がいたら、どう思う?」
- そんな人には関わりたくない
- 見て見ぬ振りをする
- わからない
翌日、八重樫は美津見を遊びに誘った。
「今日は友達を紹介したいんだ。そいつらも一緒に遊ぼうと思ってるんだけど、いいかな」
「わかったわ。初めての友達が一緒なら、おめかししていかないとね」
八重樫が美津見を連れて、待ち合わせ場所まで向かうと、すでに不良仲間たちは全員そろっていた。
ニヤニヤ笑いながら、不良たちは舐めるように美津見を品定めした。
美津見は、目つきは悪いし、髪を染めていたり、ピアスをしている不良たちをみて、ビックリしていた。
不良たちは八重樫と美津見を連れて、ゲーセンにカラオケと回ったが、誰にも憚らずタバコをふかしていた。
八重樫が美津見の顔を覗き見ると、あからさまに嫌そうな顔はしていなかったが、楽しそうな表情でもなかった。
リーダーが、アジトへ行くか、と声を掛けた。
不良たちは、人気の少ないところにある誰も使っていない廃墟をたまり場にしていた。
アジトに着くと、いきなりリーダーは八重樫を殴りつけて、「本当はグループを抜けたいって、顔に出まくりなんだよ。そんなこと許すわけねえだろうが!」と怒鳴った。
「俺らの子と内心バカにしてだんたろう?ああ」と他のメンバーもガシガシと蹴ってくる。
そして吉川は、「ナメた野郎には、お灸を据えてやらなきゃな。へへ、お前の目の前で、この女を・・・」と言って、美津見を無理やり地面に押し倒した。
「ねえ、八重樫君はこの状況で、いったい何をしたと思う?」
- 諦めた
- 諦めずに抵抗した
- 相手を脅した
- わからない
やっぱり諦めたくない。そう思った八重樫は、頭の血管が切れそうなほどに叫んで身をよじった。
でも、無駄な足掻きで、八重樫は頭を掴まれ、固い地面にガンガン叩きつけられ、頭が割れて血まみれになった。
もっと俺に力があれば、こんなことには・・・際限のない怒りが八重樫を支配したその時、周囲の気温がものすごく高くなっていった。
立ち上がった八重樫の瞳が、炎のように赤く燃え盛っていた。熱は彼の全身から発散されて、まるで砂漠の真ん中にでもいるかのようだった。
八重樫の全身が赤く燃えていた。
「てめぇら、許さねえ!」
次の瞬間、八重樫はリーダーをぶんなぐっていた。
リーダーは軽く10メートルは吹っ飛んで、口から血と折れた歯をまき散らして、そのまま失神した。
我先にと逃げ出す不良たちだが、八重樫はチーターみたいな瞬発力で回り込み、クマみたいなパンチで殴ると、誰も彼も一撃で地面に倒れて行った。
最後の一人を倒すと、リーダーから失神から目覚めた。
状況を理解したリーダーは、八重樫が何も言わないうちに、ものすごい勢いで土下座をした。
「やめてくれえええ!俺らが悪かった!」
八重樫はリーダーに近づくと、その頭を靴の裏でグリグリとした。
「なら、これから俺がリーダーだ。俺に忠誠を誓うか?」
「誓う!」
不良たちは順に目覚めていったけど、八重樫を同じように踏んづけて、自分に忠誠を誓わせていった。
そして、すべてを見守っていた美津見は、
「ありがとう、八重樫君。諦めず、私を助けようとしてくれて」
と言って、悪魔のような力をふるった彼氏に、何も恐れず寄り添った。
八重樫は大声で笑って、彼女の肩を抱き寄せた。
「俺、すごくいい気分だ。何か、不思議な力が宿ったような気がするぜ。これからも君を守ってみせるよ」
「ええ、頼りにしているわ」
「こうして八重樫君はグループの新しいリーダーになったの。今も彼らはつるんでいるわ。
私さ、八重樫君に告白したけどふられちゃって。それなのに、彼ってば、美津見さんと付き合したもんだから、納得できなくてさ。
それでいつも、二人を監視してたの。まさか、あんな場面がみられるなんてねえ。
その時私、しっかり確認したんだ。八重樫君に寄り添う美津見さんの影が、悪魔の形になっているのをさ。
多分、美津見さんは悪魔で、八重樫君が不良たちを叩きのめせたのは、美津見さんの能力を分け与えらえれたからなんだよ。
八重樫君のグループは、下手な暴力団よりも強くて、恐ろしい雰囲気を纏ってるって、噂されてる。きっと美津見さんの力がメンバー全体に伝染してるのよ。
多分、美津見さんは悪魔で、八重樫君が不良たちを叩きのめせたのは、美津見さんの能力を分け与えらえれたからなんだよ。
八重樫君のグループは、下手な暴力団よりも強くて、恐ろしい雰囲気を纏ってるって、噂されてる。きっと美津見さんの力がメンバー全体に伝染してるのよ。
このことを新聞に書いたら、坂上君が報復されるかもしれないねえ。」
福沢エンディング№24:悪魔の力を借りし者
福沢エンディング№24:悪魔の力を借りし者
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74:悪魔に逆らった男
今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
1週目クリア
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング№03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング№10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング№13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング№03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情のはざま→福沢エンディング№20~22
6人目は新堂誠を選択→シナリオ:呪いのマンシール→新堂エンディング№06~08
7人目はシナリオ:記憶のほころび→七話目エンディング№01~03
2週目プレイ開始!
1人目は岩下明美を選択→シナリオ:偽りの愛→岩下エンディング№01・02
2人目は新堂を選択→シナリオ:高木ババア→新堂エンディング№01~05
3人目は風間を選択→シナリオ:かぐわしきにおひ→風間エンディング№01
4人目は細田を選択→シナリオ:魅惑のトイレ→細田エンディング№01~03
5人目は荒井昭二を選択!
2年B組の荒井昭二が「怖い話が好きなんですか?」と聞いてきた。
- 好き
- 人並程度
- 嫌い
ところで、あなたはどうして鳴神学園を選んだのですか?」
- 自分の意思で
- 親の意思で→シナリオ:誕生日プレゼント
- 設備のよさです
- 答えたくありません
- 美人が多いからです
- 教師陣がすぐれているからです
- 友達を作りたかったからです
坂上君は、どうやって友達を作りたいと考えていますか?」
- 趣味を通じて
- 気の合う人間を探す
- アドバイスはありますか?
シナリオ:ゲーマーの条件
「確かに趣味を通じて見つけた友人とは話が合うでしょうね。
あなた、ゲームで遊びますか?
僕もね、多少はゲームをたしなむんですよ。ええ、自分もちょっとコンピュータを扱えますのでね。僕がたしなむのはパソコンのゲームです。
知ってますか、同人ソフトを即売会。
ゲーム好きな人たちが集まって作った自主制作したソフトなんですけどね、商売を考えるより先に、自分の作りたいものを作る傾向が強いんです。
ですから、僕はそういう即売会があると、暇を見つけては顔を出すことにしてるんです」
この学校の2年生の赤川哲也も同人ソフトマニアの一人で、荒井とは気が合い、即売会があれば一緒に出掛けている。
同人ソフトの即売会は年に数回大きなものが開かれ、かなりの同人サークルが集まり、大々的にソフトの販売が行われている。
数か月前、赤川がパソコン通信で、聞いたこともないサークルばかりが集まる即売会が行われて、しかも入場料が1万円もかかる、という情報を仕入れた。
高すぎる入場料のため乗り気でなかった荒井は、妙に乗り気だった赤川に仕方なくついて行くことになった。
会場はS駅からほど遠い古びたビルの6階だった。
入場料1万円がネックになっているのか、人気はなく閑散としていた。
受付には全身黒づくめの男が一人いるだけで、人形にように座っていた。
テーブルの上にはクッキーの缶が置かれており、中には何枚もの1万円札が入っていた。
荒井と赤川は、そこへ1万円ずつ入れて、会場へ入った。
会場の中に長テーブルが置かれており、全身黒づくめの男たちが身動きもせず座っていた。
そして、テーブルの上には茶封筒が置かれており、表にはタイトルと起動させるためのハード名が書きなぐられていた。
荒井たちより前に入ったマニアたちは、あからさまに不機嫌そうな顔で、さっさと会場を出て行ってしまった。
赤川がそのうちの一つの茶封筒を裏をひっくり返すと、6万円と書かれていた。
赤川は、最愛の恋人でに手に入れたように、その封筒を撫でまわしていた。封筒には、タイトルと機種と値段しかかかれていないのだが。
「『アクシデント』か。どんなゲームなんだろう?」と言いながら、赤川は、販売員に「これ、どんなゲームでしょうか」と尋ねたが、男は売る気がないのか何も答えなかった。
「もしあなたなら、この『アクシデント』というゲームを6万円で買いますか?」
- 買う→荒井エンディング№02:アクシデント
- 買わない
しかし、諦めきれなかった赤川は、他のテーブルを回り始めたが、どの茶封筒も6万円の値段がつけられていた。
そして、2時間ほど歩き回っていた赤川は、一つの茶封筒を握り締めた。
「いったいどんなゲームなんだろう?僕は一刻も早くこのゲームをプレイしたくてたまらないんだよ。ねえ、良かったら君も僕んちで一緒にやろう」
荒井は6万円もするゲームに興味があったので、赤川について彼の家に行った。
茶封筒には『スクール・デイズ』と書かれているだけで、何のゲームかさっぱりわからなかった。
茶封筒の中身を取り出すと、レポート用紙1枚とフローピーディスクが1枚だけだった。
赤川は、自分のパソコンにそのフローピーディスクを差し込んだ。
しばらくすると、立ち上がったウィンドウには画面中央に『スクール・デイズ』と書かれているだけで、BGMも流れていなかった。
赤川は、マニュアルを読みもせず、ゲームをスタートさせた。
画面に表示された内容を要約すると、どうも学校を作るというシミュレーション・ゲームらしく、プレイヤーは校長先生となり、学校を運営するようだ。
赤川は、マニュアルを読むと、ゲームを始めた。
かろうじて入口だと思われる場所をカーソルでクリックしてみると、次の画面が現れたが、真っ黒な画面に名前と生年月日文字を入力するように指示があるだけだった。
赤川は学校の名前を、パラダイス学園と名付けた。
このゲームは、先生や生徒の名前を入力することができたが、赤川は最初から使用できるものをそのまま使用し、一人を自分の名前に変え、もう一人を荒井の名前に変えて、プレイをした。
ゲーム画面を見ていた荒井は、イベントなどは細かく作ってあるようだが、決して面白そうなゲームではないな、と思い、「明日、ゲームの結果を教えてくれよ」と言って、家に帰った。
翌日、晴れ晴れとした顔の赤川に挨拶された荒井は、昨日のゲームのことを尋ねると、赤川は、「あれだけ面白いゲームは初めてだからね。今日も学校が終わるのが待ち遠しいよ」と答えた。
その言葉を聞いた荒井は、昨日買っておけば良かったと悔しくてたまらない気分になり、あのソフトを買わなかった自分が許せなくなってしまった。
放課後、塾をさぼった荒井は、ありったけ貯金の46万円をおろして、昨日の即売会の会場へむかったが、そのビルがあった場所は空き地になっていた。
荒井は、空き地の前の駄菓子屋で、ビルのことを尋ねると、5年以上前に取り壊された、と言われてしまった。
なんでも、そのビルの6階にコンピュータ・ゲームの会社が入っていたが、小遣いをあげるからとか、高いコンピュータに触らせるから、とか言って中学生や高校生を連れ込んで、ゲームを作らせていたとのこと。連れ込まれた子供たちは、不眠不休でゲームを作っていたが、子供が行方不明になっているとのことで、警察の捜査が入った。警察がビルに踏み込んだ時、何人かの子供が亡くなっており、生きていた子供たちも栄養失調で餓死寸前だったとのこと。
その会社の社員たちは逮捕される前に自決したのだが、その会社は悪魔を崇拝する怪しい組織だったとのこと。
駄菓子屋の話を聞いて、荒井は、昨日あそこにいたのは社員の幽霊で、死んだ少年たちが作ったゲームを売っていたのだ、と思った。
そして、あれはこの世にたった一つしかの存在しないゲームだと思うと、荒井は我慢ができなくなり、赤川の家に向かった。
赤川の部屋に通された荒井は、スクール・デイスで遊んでいる赤川の画面を見て驚いた。
美しいBGMに載せて美しいグラフィックが流れ、キャラクターが肉声聞き間違えるくらい鮮明な声でしゃべっていた。
赤川は、画面を見つめたまま、「『スクール・デイズ』は進化するゲームなんだ」と言った。
そして、赤川は荒井の方へ向き直り、「このゲームは、プレイヤーの上達に合わせて、システム自体がまるで魂を持ったように形態を変えていくのさ」と言った。
荒井は、「ここに46万円あるから、売ってくれないか?」と言ったが、赤川は鼻で笑った。
仕方がないので、荒井は、「頼む!言われた金額を必ず用意するから、金額を言ってくれ」と言ったが、赤川は、「いくら詰まれようが、そのソフトを売る気はないよ。さあ、帰ってくれ」と答えた。
その時、「生徒同士のケンカが発生しました。2年B組の赤川哲也と荒井昭二です」とコンピュータがしゃべった。
画面を見ると、まるで実写のようなグラフィックの教室の中で、赤川と荒井がにらみ合ったまま対峙していた。
「大変です。どちらかが死ぬまで、このケンカは終わりそうにありません」とコンピュータが言うと、ゲームの中の荒井と赤川が、今この場で実際に言いそう内容でなじり出した。
それを聞いた赤川は、「そんな風に思ってたんだ」と逆上し始めた。
再びコンピュータが「何と、赤川君は切り出しナイフを持っていました。これで、荒井君のことを刺すつもりです」と言うと、ゲームの中の赤川はナイフを取り出し、荒井の目の前にいる赤川も切り出しナイフを手にして「帰らないと、本当に刺すぞ」と言った。
コンピュータが「荒井君はチェーンで応戦します。さあ、死闘の始まりです」と言った瞬間、どこから現れたのか、画面の中の荒井と現実の荒井の手にチェーンが握られていた。
チェーンの方がリーチが長かったので、荒井の一撃が赤川の頬を撃ち、赤川は「痛いよ、やめてくれ」と言って戦意喪失した。
しかし、荒井は攻撃を止めず、無抵抗な赤川にチェーンを何度も振り下ろす。
やがて、赤川は動く無くなり、悲鳴も上げなくなった。
コンピュータが「決着はつきました。赤川君は荒井君に殺されて、ケンカは無事終了しました。死亡により、赤川君の存在は削除されます」と言った瞬間、荒井の足元に転がっていた赤川の死体が消えあてしまい、ゲームの中の赤川もいなくなった。
そして、荒井が握っていたチェーンも跡形もなく消えていた。
荒井は、『スクール・デイズ』を手にして、赤川の家を出た。
次の日から、赤川のことを知っている人は誰もいなくなった。
そして、スクール・デイズは初期化されてしまい、動かなくなってしまった。
荒井は、誰かがスクール・デイズを盗んだと思っており、ゲームを取り戻し、犯人を見つけて制裁を加えてやる、と言って話を終えた。
荒井エンディング№01:ゲーマーの条件
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47:ゲームの行方は
今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
1週目クリア
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング№03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング№10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング№13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング№03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情のはざま→福沢エンディング№20~22
6人目は新堂誠を選択→シナリオ:呪いのマンシール→新堂エンディング№06~08
7人目はシナリオ:記憶のほころび→七話目エンディング№01~03
2週目プレイ開始!
1人目は岩下明美を選択→シナリオ:偽りの愛→岩下エンディング№01・02
2人目は新堂を選択→シナリオ:高木ババア→新堂エンディング№01~05
3人目は風間を選択→シナリオ:かぐわしきにおひ→風間エンディング№01
4人目は細田を選択→シナリオ:魅惑のトイレ→細田エンディング№01~03
5人目は荒井昭二を選択!
2年B組の荒井昭二が「怖い話が好きなんですか?」と聞いてきた。
- 好き
- 人並程度
- 嫌い
ところで、あなたはどうして鳴神学園を選んだのですか?」
- 自分の意思で
- 親の意思で→シナリオ:誕生日プレゼント
- 設備のよさです
- 答えたくありません
- 美人が多いからです
- 教師陣がすぐれているからです
- 友達を作りたかったからです
坂上君は、どうやって友達を作りたいと考えていますか?」
- 趣味を通じて
- 気の合う人間を探す
- アドバイスはありますか?
シナリオ:ゲーマーの条件
「確かに趣味を通じて見つけた友人とは話が合うでしょうね。
あなた、ゲームで遊びますか?
僕もね、多少はゲームをたしなむんですよ。ええ、自分もちょっとコンピュータを扱えますのでね。僕がたしなむのはパソコンのゲームです。
知ってますか、同人ソフトを即売会。
ゲーム好きな人たちが集まって作った自主制作したソフトなんですけどね、商売を考えるより先に、自分の作りたいものを作る傾向が強いんです。
ですから、僕はそういう即売会があると、暇を見つけては顔を出すことにしてるんです」
この学校の2年生の赤川哲也も同人ソフトマニアの一人で、荒井とは気が合い、即売会があれば一緒に出掛けている。
同人ソフトの即売会は年に数回大きなものが開かれ、かなりの同人サークルが集まり、大々的にソフトの販売が行われている。
数か月前、赤川がパソコン通信で、聞いたこともないサークルばかりが集まる即売会が行われて、しかも入場料が1万円もかかる、という情報を仕入れた。
高すぎる入場料のため乗り気でなかった荒井は、妙に乗り気だった赤川に仕方なくついて行くことになった。
会場はS駅からほど遠い古びたビルの6階だった。
入場料1万円がネックになっているのか、人気はなく閑散としていた。
受付には全身黒づくめの男が一人いるだけで、人形にように座っていた。
テーブルの上にはクッキーの缶が置かれており、中には何枚もの1万円札が入っていた。
荒井と赤川は、そこへ1万円ずつ入れて、会場へ入った。
会場の中に長テーブルが置かれており、全身黒づくめの男たちが身動きもせず座っていた。
そして、テーブルの上には茶封筒が置かれており、表にはタイトルと起動させるためのハード名が書きなぐられていた。
荒井たちより前に入ったマニアたちは、あからさまに不機嫌そうな顔で、さっさと会場を出て行ってしまった。
赤川がそのうちの一つの茶封筒を裏をひっくり返すと、6万円と書かれていた。
赤川は、最愛の恋人でに手に入れたように、その封筒を撫でまわしていた。封筒には、タイトルと機種と値段しかかかれていないのだが。
「『アクシデント』か。どんなゲームなんだろう?」と言いながら、赤川は、販売員に「これ、どんなゲームでしょうか」と尋ねたが、男は売る気がないのか何も答えなかった。
「もしあなたなら、この『アクシデント』というゲームを6万円で買いますか?」
- 買う
- 買わない
「いったいどんなゲームなんだろう?僕は一刻も早くこのゲームをプレイしたくてたまらないんだよ。ねえ、良かったら君も僕んちで一緒にやろう」
荒井は6万円もするゲームに興味があったので、赤川について彼の家に行った。
茶封筒に入っていたのはフローピーディスクが1枚だけで、説明書が入っていないどころか、タイトルさえラベルされていなかった。
赤川は、自分のパソコンにそのフローピーディスクを差し込んだ。
しばらくすると、立ち上がったウィンドウには『accident』という単語のみが並んでいるだけだった。
かろうじて入口だと思われる場所をカーソルでクリックしてみると、次の画面が現れたが、真っ黒な画面に名前と生年月日文字を入力するように指示があるだけだった。
赤川が、そこに自分の名前と生年月日を入力し、エンターキーを押すと、ようやくメッセージ画面らしきものに辿り着いた。
黒い画面に白い文字が流れていく。
『カフク ハ アザナエル ナワノゴトシ コウフクノ カゲデ サイヤクハ コウカツナ ヘビノゴトク キミヲ マチウケテイル
アカガワ テツヤ キミノ ジンセイヲ ボウガイスル アクシデント ヲ トリノゾコウ』
どうやら主人公は赤川のようだ。
『タイカハ キミノ L・・・』
「L?なんだろうね?それに、どうしてここだけローマ字なのかなあ」
「さあ?」
先に進むためリターンキーを押すと、目の前に黄色の帯状のグラフィックが現れ、黄色の帯の下には、
『アカガワ テツヤ L 6800
L ヲ ツカイマスカ?
ハイ
イイエ』
と、書かれていた。「Lってなんのことだろう?」
ゲーム中には細かい説明はまったくなかった。
「使ってみますかっていうんだから、ポイントか何かじゃない?6800もあるんだから、もし失敗しても取返しがききそうだよ」
赤川は迷っていたが、結局『ハイ』を選択した。
すると、画面が変わり『デハ キミノ L ヲ モチイテ キミノ ジンセイヲ オビヤカス サイヤクヲ トリノゾコウ』と表示された。
しばらくモニタを見つめていたが、それ以上は何の変化もなかった。
「これだけ?」
「そうみたいだね」
赤川は大きなため息をついた。
翌日、学校で抜き打ち手荷物検査が行われた。
学校は自由な校風で抜き打ちの検査は滅多に行われることがなかったので、皆油断しており、禁止されていた私物はすべて取り上げられてしまった。
荒井も、たまたま持ってきていたベクシンスキーの画集を没収されてしまった。
ふと赤川を見ると涼しい顔をしている。普段ならパソコンの雑誌やパーツやらを常に持ち歩いているはずなのに。
さらにその日は、抜き打ちのテストがあったり、突然の食中毒騒ぎで学食が閉鎖になり、多くの生徒が昼食にあぶれたり、災難続きだった。
しかし赤川は、その日はたまたまテストに出たところを予習していたり、その日に限ってお弁当を持参してきたりて、難を逃れていた。
放課後、荒井は赤川に声を掛けた。
「今日は調子いいみたいだね」
「うん、なぜか昨日勉強しようかなって気分になったり、お母さんがお弁当をつくってくれたり、不要物も持ってこなくてよかったよ。ボクってついてるな」と赤川はにっこりと笑って言った。
それから、赤川が異常に運がいい男だと評判になった。
赤川がたまたま体調を崩して休んだ日の体育がハードな持久走だったり、急な雨に日もたまたま傘を持っていたり、他にも些細な幸運を上げればキリがなかった。
極めつけは、繁華街の交差点で横断中の歩行者にトラックが突っ込むという事件があったのだが、赤川だけが無傷で生き残った。
赤川が運が良いのは良いのだが、宝くじに当たるという彼だけが良い目を見るという運の良さではなく、まるで彼一人だけが災厄を逃れるという感じの運の良さだった。
赤川は次々と身に降りかかるアクシデントを回避していた。きっかけはあの『アクシデント』をプレイしてからだ。
しかし、荒井は赤川の変化に気づいた。
急激に赤川は髭が濃くなり、背が伸びてすっかり青年といった容貌になっていた。
そして即売会から1か月ほど経つと、赤川はすっかりフケてしまい、担任の先生より年上に見えるようになってしまった。
さらにしばらくたった頃、赤川の頭に白髪が混じり始め、赤川の父親だと紹介されても通用してしまいそうだった。
荒井は思い切って、自分の考えを赤川に伝えた。
『アクシデント』が赤川の身体の変化に関係ある、と。
その日、荒井は、赤川と一緒に彼の家に行ったが、途中で、二人の目の前で車がガードレールに突っ込んできたが、赤川といっしょにいた荒井はアクシデントを避けることができた。
その直後、赤川を見た荒井は、白髪が増えていることに気づいた。
そして、家に帰って『accident』を起動したところ、画面は『アカガワ テツヤ L 170』に変わっていた。
どうやらLという数値が減ることと、赤川の身体の変化には何か関係があるようだ。
おそらく、赤川はLを消費することによって、人生を脅かす災厄=アクシデントを取り除いていたらしい。
その時、激しい衝突音とともに窓から何かが飛び込んできた。
墜落していた小型セスナ機で、荒井の鼻先を掠めて、反対側の壁に激突して止まった。
荒井は「赤川君」と声を掛けたが返事がなかったので、瓦礫をかき分けて赤川を探し始めた。
そして、瓦礫に埋もれて横たわっていたすでに息絶え、カサカサのミイラ状の死体を見つけて気を失った。
やがて、荒井が気が付くと病室にいた。
「おそらくLはLife、生命のことでしょう。赤川君は、自分の身に起こるアクシデントを取り除いてもらうことと引き換えに、自分の命の最後の一滴までも搾り取られてしまったのです。
そうそう、あのゲームの行方なんですが、退院して家に戻ったら、僕の机の上にあの見慣れた茶封筒が置かれていたのですよ。表書きに『アクシデント』と殴り書きされてね。
どうでしょうか、これでもまだ何もアクシデントのない人生をお望みですか?
そう思うなら、あのゲームをお譲りしましょう。ただしあなたのその後の人生は、坂道を転がり落ちるように短いものとなってしまうでしょうけどね。いひひひひ」
荒井エンディング№02:アクシデント
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45:老いて行く体
46:受付の男
今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
1週目クリア
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング№03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング№10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング№13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング№03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情のはざま→福沢エンディング№20~22
6人目は新堂誠を選択→シナリオ:呪いのマンシール→新堂エンディング№06~08
7人目はシナリオ:記憶のほころび→七話目エンディング№01~03
2週目プレイ開始!
1人目は岩下明美を選択→シナリオ:偽りの愛→岩下エンディング№01・02
2人目は新堂を選択→シナリオ:高木ババア→新堂エンディング№01~05
3人目は風間を選択→シナリオ:かぐわしきにおひ→風間エンディング№01
4人目は細田友晴を選択!
「坂上君も楽しみにしていましたか?」
- 楽しみにしていた
- 特に気にしていない
- あまり乗り気ではなかった→風間と岩下の話を聞いていない場合はシナリオ:夜泣き石
そうかぁ、坂上君はそんなに気にしてないのかぁ、少し残念かも」
友達がいない細田は、坂上と友達になりアピールの長話をさんざんした後、自分は霊感が強い体質で、特にトイレで霊を強く感じるといった内容に長話をする。
「僕の話、退屈ですか?」
- 正直、退屈です
- 面白いですよ
- トイレ以外の話をしてください
「やっぱり僕の話なんて聞いても面白くありませんよね。
退屈な話だったら、やめたほうがいいですかね?」
- すいません、続けてください→細田エンディング№03:魅惑のトイレ、細田エンディング№02:パラレル・ワールドの細田
- やめたほうがいいですね
「そこまではっきり言われると、僕も何も言い返せなくなちゃうな。でも、一応日野さんに呼ばれたわけですし、役目だけは果たさせてください」
そう言うと、細田は何やらぶつぶつとトイレにまつわる怪談を話し始めたが、慌てているのか話が聞き取れない。
(やめてくれ、僕のほうが気が狂いそうだ)と思いながら話を聞かされている坂上。
「すいません、終わりました」
どうやら、終わったようだ。
坂上は細田から解放されたものの、まだいら立ちは収まらなかった。
細田エンディング№01:イラつく奴
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1週目クリア
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング№03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング№10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング№13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング№03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情のはざま→福沢エンディング№20~22
6人目は新堂誠を選択→シナリオ:呪いのマンシール→新堂エンディング№06~08
7人目はシナリオ:記憶のほころび→七話目エンディング№01~03
2週目プレイ開始!
1人目は岩下明美を選択→シナリオ:偽りの愛→岩下エンディング№01・02
2人目は新堂を選択→シナリオ:高木ババア→新堂エンディング№01~05
3人目は風間を選択→シナリオ:かぐわしきにおひ→風間エンディング№01
4人目は細田友晴を選択!
「坂上君も楽しみにしていましたか?」
- 楽しみにしていた
- 特に気にしていない
- あまり乗り気ではなかった→風間と岩下の話を聞いていない場合はシナリオ:夜泣き石へ
そうかぁ、坂上君はそんなに気にしてないのかぁ、少し残念かも」
友達がいない細田は、坂上と友達になりアピールの長話をさんざんした後、自分は霊感が強い体質で、特にトイレで霊を強く感じるといった内容に長話をする。
「僕の話、退屈ですか?」
- 正直、退屈です
- 面白いですよ→次の選択肢の1を選択したパターンへ進む
- トイレ以外の話をしてください
「やっぱり僕の話なんて聞いても面白くありませんよね。
退屈な話だったら、やめたほうがいいですかね?」
- すいません、続けてください
- やめたほうがいいですね
友達のいない細田は、休み時間はトイレの個室で過ごしていたのだが、細田が2年生になってすぐ、入ると不思議な感覚に襲われるトイレに入った。
気に入ってしまった細田は、休み時間になるとそのトイレで用を足すようになった。
細田は、自分をいじめる吉川と星野とは2年のクラス替えで一緒のクラスになりたくないと思っていたが、またクラスメートになってしまい、いじめられる日が続いていた。
ある日、吉川と星野は、細田に対し今日一日はトイレにいかないようにと命令した。
昼休みに尿意が我慢できなくなっている細田に気づいた吉川と星野は、細田をからかい、細田は漏らすまいと必死に我慢をした。
結局、細田は我慢できず、5時間目が終わるころに小便どころか大便までも漏らしてしまい、吉川と星野を大いに喜ばせた。
細田は泣きながら、例のトイレに駆け込んだ。
細田はおんおん泣きながら、一生トイレから出なくてもすむものならいいなあ、と思っていると、まるでトイレが細田を慰めてくれるような感覚に襲われた。母親の胎内にいるような暖かくて懐かしい気持ちにさせられたのだ。
どれくらいの時間が経ったのかわからないが、「細田君」と誰かがドアを激しく叩く音で、我に返った細田は、汚れていたはずのパンツもズボンを汚れが綺麗に取れていることに気づいた。
細田がドアを開けると担任の稲垣先生が立っており、「さあ、教室に戻ろう」と優しく声を掛けてくれて、細田を連れだした。
クラスメートがどういう風に自分を迎えてくれるのかと心配していた細田だったが、クラスメートは笑って暖かく迎え入れてくれた。
いじめた吉川と星野も愛想笑いしていた。
放課後、いつものように一人で下校しようとしていた細田は、吉川と星野から、「勉強を教えて欲しい」と頭を下げながら頼まれた。
吉川と星野は確かに成績は悪かったが、成績がビリである細田に頼んできたので、細田はどんないじめをするつもりなのかと身構えて、「今日は勘弁してほしい」と答えた。
細田は、断ったことで吉川と星野に殴られると思っていたが、二人は、「急にこんなことを頼んできて虫が良すぎた。ごめん」と言ってあっさりと引き下がった。
細田が唖然としていると、普段は絶対に細田に近寄ろうとしないクラスメートたちが、「一緒に帰ろう」と声を掛けてきた。
驚いた細田は、気を悪くさせないようできるだけ丁寧に「今日は独りでいたいんだよ。ごめんさない。勘弁してください」とみんなに告げて、その場から逃げるように帰った。
翌日、細田が学校に行くと、みんながニコニコしながら声を掛けてきた。
みんなの話によると、昨日、細田は漏らしていないことになっていた。昨日の5時間目に細田は気分が悪くなり、教室を出て行って、先生が迎えに行ったことになっていた。
そして、信じられないことだが、細田は勉強も運動もできるクラスの人気者になっており、友達が増えた。
それから細田は、トイレに時間を潰すようなことがなくなったため、あのトイレには行かなくなった。
しかし中間試験で細田は失敗して、成績が中間あたりになってしまった。
元いた世界の細田の成績はビリだが、今いる世界の細田は万年1位だったので、周囲の見る目が変わってしまった。
細田は、元いた世界の自分と今いる世界の自分が入れ替わっているのではないか、と思うようになった。
細田はみんなに失望される恐怖に怯えて、またトイレにこもるようになってしまった。
細田はあのトイレが異次元の扉だと推理し、あのトイレに入り浸るようになった。
「僕の推理は当たっているとは思いませんか?」
- そう思う→細田エンディング№03:魅惑のトイレ
- それは違うと思う
あのう坂上君ならどう推理するか教えてもらえますか?」
- 全部、夢
- 頭がおかしくなった
- ただの作り話
- 学校の七不思議ではないですよね
誰にも認められなくても、僕は僕だってわかっている。僕は僕なんだ!」
細田エンディング02:パラレル・ワールドの細田
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「坂上君も楽しみにしていましたか?」
- 楽しみにしていた
- 特に気にしていない
- あまり乗り気ではなかった→風間と岩下の話を聞いていない場合→シナリオ:夜泣き石
そうかぁ、坂上君はそんなに気にしてないのかぁ、少し残念かも」
友達がいない細田は、坂上と友達になりアピールの長話をさんざんした後、自分は霊感が強い体質で、特にトイレで霊を強く感じるといった内容に長話をする。
「僕の話、退屈ですか?」
- 正直、退屈です
- 面白いですよ
- トイレ以外の話をしてください
やっぱり僕の話なんて聞いても面白くありませんよね。
退屈な話だったら、やめたほうがいいですかね?」
- すいません、続けてください
- やめたほうがいいですね
友達のいない細田は、休み時間はトイレの個室で過ごしていたのだが、細田が2年生になってすぐ、入ると不思議な感覚に襲われるトイレに入った。
気に入ってしまった細田は、休み時間になるとそのトイレで用を足すようになった。
細田は、自分をいじめる吉川と星野とは2年のクラス替えで一緒のクラスになりたくないと思っていたが、またクラスメートになってしまい、いじめられる日が続いていた。
ある日、吉川と星野は、細田に対し今日一日はトイレにいかないようにと命令した。
昼休みに尿意が我慢できなくなっている細田に気づいた吉川と星野は、細田をからかい、細田は漏らすまいと必死に我慢をした。
結局、細田は我慢できず、5時間目が終わるころに小便どころか大便までも漏らしてしまい、吉川と星野を大いに喜ばせた。
細田は泣きながら、例のトイレに駆け込んだ。
細田はおんおん泣きながら、一生トイレから出なくてもすむものならいいなあ、と思っていると、まるでトイレが細田を慰めてくれるような感覚に襲われた。母親の胎内にいるような暖かくて懐かしい気持ちにさせられたのだ。
どれくらいの時間が経ったのかわからないが、「細田君」と誰かがドアを激しく叩く音で、我に返った細田は、汚れていたはずのパンツもズボンを汚れが綺麗に取れていることに気づいた。
細田がドアを開けると担任の稲垣先生が立っており、「さあ、教室に戻ろう」と優しく声を掛けてくれて、細田を連れだした。
クラスメートがどういう風に自分を迎えてくれるのかと心配していた細田だったが、クラスメートは笑って暖かく迎え入れてくれた。
いじめた吉川と星野も愛想笑いしていた。
放課後、いつものように一人で下校しようとしていた細田は、吉川と星野から、「勉強を教えて欲しい」と頭を下げながら頼まれた。
吉川と星野は確かに成績は悪かったが、成績がビリである細田に頼んできたので、細田はどんないじめをするつもりなのかと身構えて、「今日は勘弁してほしい」と答えた。
細田は、断ったことで吉川と星野に殴られると思っていたが、二人は、「急にこんなことを頼んできて虫が良すぎた。ごめん」と言ってあっさりと引き下がった。
細田が唖然としていると、普段は絶対に細田に近寄ろうとしないクラスメートたちが、「一緒に帰ろう」と声を掛けてきた。
驚いた細田は、気を悪くさせないようできるだけ丁寧に「今日は独りでいたいんだよ。ごめんさない。勘弁してください」とみんなに告げて、その場から逃げるように帰った。
翌日、細田が学校に行くと、みんながニコニコしながら声を掛けてきた。
みんなの話によると、昨日、細田は漏らしていないことになっていた。昨日の5時間目に細田は気分が悪くなり、教室を出て行って、先生が迎えに行ったことになっていた。
そして、信じられないことだが、細田は勉強も運動もできるクラスの人気者になっており、友達が増えた。
それから細田は、トイレに時間を潰すようなことがなくなったため、あのトイレには行かなくなった。
しかし中間試験で細田は失敗して、成績が中間あたりになってしまった。
元いた世界の細田の成績はビリだが、今いる世界の細田は万年1位だったので、周囲の見る目が変わってしまった。
細田は、元いた世界の自分と今いる世界の自分が入れ替わっているのではないか、と思うようになった。
細田はみんなに失望される恐怖に怯えて、またトイレにこもるようになってしまった。
細田はあのトイレが異次元の扉だと推理し、あのトイレに入り浸るようになった。
「僕の推理は当たっているとは思いませんか?」
- そう思う
- それは違うと思う
だから、トレイに感謝すれば、また同じようなことが起きるかもしれないと思い、あのトイレに入り浸って、トイレをピカピカに磨いているのだが、あの感覚が感じられない、と細田は言った。
2か月後の実力試験で、細田はビリになり、とうとう元居た世界の同じようにみんなから相手にされなくなってしまった上、吉川と星野からいじめられるようになってしまった。
細田エンディング03:魅惑のトイレ
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1週目クリア
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング№03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング№10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング№13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング№03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情のはざま→福沢エンディング№20~22
6人目は新堂誠を選択→シナリオ:呪いのマンシール→新堂エンディング№06~08
7人目はシナリオ:記憶のほころび→七話目エンディング№01~03
2週目プレイ開始!
1人目は岩下明美を選択→シナリオ:偽りの愛→岩下エンディング№01・02
2人目は新堂を選択→シナリオ:高木ババア→新堂エンディング№01~05
3人目は風間望を選択。
いきなり500円を要求してくる。
- は?
- お金、持っていないんですけど
- 10円ならありますが
- 日野先輩からもらってください
- 持っていても渡しません
「ボクはお客様なんだぜ。お客様にお話をお伺いしようってことなんだから、せめてケーキとジュースを用意して欲しかったね。
暑いよ。福沢さんを見てごらんよ。顔中汗だらけじゃないか。
はい、福沢さん、ハンカチ。
あのね、坂上君、君、これだけ言ってもわからないの?暑いの。ジュースでも買ってこい、って言ってるの、ボクは。
お金?お金は君が払うんでしょうが。
あ、ちょっと注文を聞かずに行くの?ちゃんと注文を聞いていきなさいよ。
ボクはペプシコーラとコカコーラね。
何?一人1本じゃないとダメ?
あ、ちょっと待ちなさいよ。人の話は最後まで聞いて行きなさいよ。
ボクはね、缶から直接飲むのが嫌だからね。だから、ちゃんと紙コップも買ってくるんだよ。
さあ、行った行った」
- コーラを買ってくる
- ホットコーヒーを買ってくる
- おしるこドリンクを買ってくる
- 青汁ドリンク
「えーと、そこのキノコ頭、荒井君って言ったっけ。君、暗いね。趣味は押入れでキノコの栽培してるとか?
君の瞳は灰色に曇っているね。本当は宇宙人が人間に擬態しているとか?あっはっは、冗談だよ」
そこへ坂上が戻ってくる。
「遅いよ、坂上君。
君があまりにも遅いから、僕はもう怖い話をしちゃったよ。嘘だよ、嘘!
飲み物を注ぎたまえよ。両方一緒に飲むんだからね、ペプシコーラとコカコーラ。
混ぜるなよ!別々のコップに注ぎたまえ。
そうそう、うまい、うまい。やっと準備が整ったよ」
風間は、今から利き酒の話をするからと前置きして、目の前にある二つのコップに入れられたペプシコーラとコカコーラの味の違いを、坂上に尋ねる。
坂上は、味見して両方ともぺプシだと答える。
そんなわけないと言って風間が味見をするも、風間も両方ともペプシコーラだと判断する。
坂上が買ってきたペットボトルをよく見ると、どちらもペプシコーラだった。
ワインの利き酒をする人は、味覚と嗅覚ががすぐれている。
嗅覚がすぐれている人は特に重宝されていて、調香師として会社から高い給与をもらっている場合もある。
君の特技は何?
- 勉強が得意
- 恋愛が得意
- 早食いが得意
風間のクラスの綾小路行人という生徒がいる。
いかにもいいところの出って感じだが、一般人だ。
綾小路は、顔はそこそこ良かったので、女子には人気があった。
そんな綾小路は、異常に鼻が良かった。弁当を持ってくると、まるで覗いてたかのように、ぴたり弁当の中身と当てるのだ。
綾小路は、ヘビースモーカーの松本先生の授業を受けている最中は、タバコの匂いに耐えられず、いつも気分悪そうにしていた。
常人たちにとって匂わない匂いは綾小路にとっては悪臭なため、彼はいつもマスクを付けていた。
ある日、いつものように学校に行った綾小路は、意味不明の頭痛に襲われた。
今まで嗅いだことのない強烈な臭いが近づいてきた。
それは先生が連れてきた転校生の体臭で、風間でさえ気づくほどの臭いだった。
転校生は、大川大介と名乗った。
先生は、大川の席は、綾小路の隣、と言ったので、クラス中が、大川と綾小路の動向に注目した。
大川は、授業中に鼻くそをほじり始めた。
「気分悪くならないの?」
- もうその話はやめてほしい
- 別に大丈夫
大川は、鼻くそを自分のズボンにこすりつけ、今度は、綾小路に「教科書を見せて」と声をかけた。
綾小路が無反応だったので、再度大川が声を掛けると、それに気づいた先生が、綾小路に教科書を見せるように言った。
大川が綾小路の机に、自分の机をくっつけた途端、綾小路は、声にならない悲鳴を上げて気絶した・・・
クラスメートの中には大川をいじめようとした奴もいたが、大川はいじめられると、嫌がったりせず、「きゃ~、やめて」と言いながら喜んでいたので、いじめにくかった。
またパシリにしようとしても、鼻くそほじった手で大川が買ってきたものを受け取るのは、無理があった。
「君も大川君と一緒なの?」
- 一緒じゃありません
- 似ているかもしれません
- もしかして大川は女の子?
大川から物を受け取るのは無理なので、お金を持って来さそうとしたが、大川は頭のネジが外れたように泣きわめいて拒否したため、誰も大川に手を出さなくなった。
綾小路は、先生に席替えを訴えたが、聞いてもらえなかった。
綾小路は鼻がいいので、姿が見えないが大川が近づいてくると、一目散に逃げるようになった。
綾小路が逃げるせいなのか、大川は恋女房のように大川を追いかけまわした。
とうとう、大川は実力行使に出た。授業中に綾小路に抱き着いたのだ。
綾小路は、学校中に響き渡るような悲鳴を上げて失神し、救急車で運ばれ、その後登校拒否になった。
すると大川は、家に見舞いに来るようになった。
綾小路は、家に臭いを付けたくないんで、とっとと帰ってもらうよう応対しないといけないのだが、会話すると臭いをかぐ羽目になった。
綾小路は、家だけは大川の臭いから死守したかったので、学校へ通うことにした。
大川が綾小路に抱き着いたので、やっと綾小路は席替えしてもらえた。
すると、大川は、綾小路が所属しているブラスバンド部に楽器もできないのに入部してきたのだった。
そして、綾小路が担当しているトラペットを希望してきた。
トランペットのリーダーだった綾小路は、大川の面倒を見る羽目になってしまった。
ある日、綾小路がトイレに行った戻ってくると、綾小路のトランペットがよだれまみれになっていた。
大川だった。練習用のじゃうまく吹けないので、高価なトランペットを吹いてみたかった、とのたまった。
匂いに敏感な綾小路は大川の臭いのついたトランペットなんてもっての他で、泣く泣く手放すことにしたが、誰も引き取りてがなくて、結局大川の手に渡った。
大川から逃げるため、綾小路はブラスバンド部を退部した。
そして、綾小路は、迷惑している旨を書いた手紙を、授業中に直接大川に渡した。
それを読んだ大川は、「僕のことがこんなに好きだなんて」と言って、手紙を食べてしまった。
綾小路は、嘘だ、と叫んだが、臭いのせいで、それ以上しゃべれなかった。
そして、みんなが面白がって、綾小路と大川のホモ達を噂しだした。
そんなある日、綾小路は下足室で、自分の上履きの匂いを書いている大川の姿を目撃してしまう。
その瞬間、綾小路の脳裏に、臭いは元から断たねば、という言葉が浮かんだ。
「君だって、誰かを殺したいと思ったことあるだろう?」
- 実はある
- そんなことない
- 今は風間さんを殺したい
誰だって人を殺したいと思うことはあるんだ。でもそれを実行に移す奴はいないだろ?移してしまったら、それは犯罪だろ」
綾小路は、確実に大川を殺すため、包丁で突き刺すことにした。
そのためには大川に近づく必要があり、どれだけ綾小路が息を止められるかにかかっていた。
綾小路は、5分息を止められるようになったら実行しようと誓って、学校が終わると大川の家に向った。
大川の家は高級住宅街の中にあった。
ここから風間のお金持ちアピールが始める。
「どうして、金持ちのボクがひがまなくちゃならないんだ」
- 本当は貧乏だから
- 自分より金持ちを許せない
- そういう性格だから
綾小路は、大川の臭いをたどるとアラビアンナイト風の御殿に辿り着いた。
何度も番地を確かめるも、本当にそこだった。
綾小路は、大川があんな性格になったのは両親のせいだ、と思い、家族全員が責任を取らなければという思いに駆られた。
しかし、大川にはボディガードが4人もついていた。
そこで綾小路は、家族全員を殺すには屋敷を燃やすしかない、と思い付き、火炎瓶を20本ほど作って敷地内に放り投げた。
ボディガードが出てきたので、綾小路は逃げたが、捕まることなく家に戻れた。
ところが、翌日の新聞やテレビニュースでは、大邸宅の火事の話は触れられなかった。
いつも通りに振舞うため、綾小路は学校へ行ったが、大川は普段通りに来ていた。
綾小路の机の中に手紙が入っていた。
読んでみると、大川からの手紙だった。
昨日放火魔によって物置が放火されたが、監視カメラに犯人が映っているはず。まだ誰もビデオを確認していないので、今日の放課後一緒に見よう。と書かれていた。
綾小路は、自分は傷つかずに大川を殺す方法を探し始めた。
- 黒魔術の力を借りる
- 呪いをかける
風間は、父親からもらった黒魔術グッズのことを綾小路に話したことがあったので、綾小路は、風間に大川との因縁を話して借りにきたので、風間は1回5万円で貸し出した。
「君だったら、悪魔にどんな願い事をする?」
- 殺したい奴を殺してもらう
- 金
- 権力
- 不老不死
真夜中の2時、風間の家の駐車場で、綾小路は魔法陣から悪魔を呼び出そうとしていた。
その横で、風間は小遣い稼ぎのため、悪魔召喚のビデオ撮影をしていた。
綾小路が呪文を唱えると、魔法陣から白い煙が上がり、何者かが出現した。
綾小路は、大川の魂を抜いてほしい、と声に訴えた。
すると、煙の中から大きな手が現れ、何語かで書かれた契約書を差し出した。
「大川大介の魂を抜いてくれますね」
「願いは一つ、大川大介の魂を抜くことで、異存はないな?」
「僕のクラスにいる大川大介ですからね」
「お前のクラスにいる大川大介だな」
「魂を抜いてくださいよ」
「ああ、わかった」
「魂を抜くってことは殺すってことですからね」
「殺してやろう」
「殺したけどゾンビになって追いかけてきたってのはなしですよ」
「ゾンビになって追いかけてくることはない」
よいか?お前がこの契約書にサインすれば、お前が死んだときその魂は私のものとなる。その魂は何に使われようと、構わぬな?」
「はい」
「それでは、この契約書にサインしてもらおう」
悪魔は綾小路の親指の腹を傷つけると、血が滲んだ。
「さあ、血のサインを押すがよい。それで契約は成立する」
綾小路は、言われるがままに親指を契約書にべったりと押し付けた。
契約は無事に成立し、悪魔の腕は契約書を持ったまま煙の中へ引っ込んだ。
それと同時に綾小路が喉を押さえて苦しみ始めた。
あたりは風間が悪臭だと感じるほどの臭いに満ちていたが、綾小路は契約のことしか頭になったので、契約が終わるまで悪臭に気づかなかったのだ。
煙が治まると、そこにいたのは、悪魔の手の形をしたマジックハンドを持っている大川だった。
「ありがとう、綾小路君、僕と契約してくれて。
僕が悪魔なんだよ。僕は君を気に入ってしまったね。何とか君を僕のものにしたかった。けど、まだ僕は低級な悪魔だから、君を手に入れるためには、悪魔として契約してもらう以外に方法がなかったんだ。
僕を殺すことが条件だって言いたいの?僕はとっくに死んでいるから」
大川がシャツのボタンを外すと、心臓のところにポッカリと穴が開いていた。
「これでも僕はまともな悪魔なんだよ。君が早死にしないようずっと見守ってあげるし、少なからず君が成功するように力を貸してあげるよ。
それで君が死んだら、君の魂は僕が責任を持ってかわいがってあげるから。
永遠の楽しい二人の時間を過ごそうね」
綾小路は一目散に逃げだし、それを大川が追っていった。
あれから二人はいつも通り学校に来ている。
大川は相変わらず綾小路を追いかけまわしているが、綾小路は諦めがついたみたいだ。
大川が相変わらず臭いが、綾小路が死にそうになったら絶対に助けてくれる。
綾小路は風間に、死後の世界が見えた時、必ず自分を助けようと手が差し伸べられるのだが、必死にその手をつかむと、手の主は大川だ、と話していた。
風間エンディング№01:かぐわしきにおひ
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今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
1週目クリア
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング№03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング№10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング№13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング№03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情のはざま→福沢エンディング№20~22
6人目は新堂誠を選択→シナリオ:呪いのマンシール→新堂エンディング№06~08
7人目はシナリオ:記憶のほころび→七話目エンディング№01~03
2週目プレイ開始!
1人目は岩下明美を選択→シナリオ:偽りの愛→岩下エンディング№01・02
2人目は新堂誠を選択。
新堂誠は、3年D組の生徒。
お前がどうして新聞部に入ったのか教えてくれ
- なんとなく入りました
- 前から憧れてました
- 何かお勧めのクラブは?
それより俺みたいな奴が、こんな女子供が喜びそうな集会にいるのは場違いだって感じてんじゃねえか?」
- そんなこと思ってません
- はい、正直に言うと感じてます
- 何に興味を持つかは人それぞれです
それじゃあ、さっそく話を始めるとするか。ところで、この部屋、なんか怪しくねえか?
霊ってのはよ、人間の気を敏感に察知するっていうからな。それでな、霊は恐怖心を持った奴の周りに集まるっていうじゃねえか。
怖い話をしているとき、突然背筋にゾクって寒気が走る。あれはま、そいつの背中を霊が撫でてるんだぜ。
坂上、お前、まさか怖がったりしてねえよな」
- 怖いです
- 怖くありません
噂話って知ってるか?口裂け女とか、人面犬、トイレの花子さんや、メリーさん。そういう噂、お前は馬鹿にしているか?」
- している
- していない→新堂エンディング№01:吉田の執念
- 何とも言えない→新堂エンディング№04:高木ババア、新堂エンディング№05:吉田の真実
「そうかい。そんなの子供だましだよって鼻で笑ってんだな、お前は。だとしたら、不幸だな」
新堂のクラスメートに吉田達夫という男がいた。
現実主義というか、アンチ・ロマンチストというのか、どにかく嫌な男だ。
勉強はできたけど、それだけの男で、いつも気取っていて、殴ってやりたいタイプだった。
吉田は、どんなに殴られようが絶対に抵抗しないが、きちんとそれを先生に報告していたので、いじめようとしてもいじめられない男だった。
先生の間では、成績抜群で品行方正、先生には従順でなんでも従い、問題があるとすぐに報告するため、評判が良かった。
吉田はそんな男だから、誰にも相手にされず、無視されていた。
ところが吉田は、それを喜んでいるようだった。自分が選ばれた人間にでもなったつもりで、周りを見下しているのは見え見えだった。
「お前はそんな奴には何かガツンと一発かましてやりたいと思うだろ?
- はい→新堂エンディング№01:吉田の執念
- いいえ
だとしたら、よほどの優等生か、逆に冷たい人間なんだな。
ま、俺は一度あいつの泣き顔を見てやりたかった。
そんな時、俺はちょっとおもしろい話を聞いたんだ。
お前、聞いたことあるか。高木ババアの噂を」
- 知っている→シナリオ:呪いのマンシールへ。
- 知らない
そのババアは、ませたガキが好きそうなフリルのついた真っ赤なロングスカートをはいている。
足が隠れて地面を引きずるほどのロングスカートのため、高木ババアのスカートの裾はボロボロだった。
そのババアは腰まである伸ばし放題の髪の毛をいつも垂らしていて、顔を隠している。
その顔を見た人の話では、すげえ厚化粧をしており、あの顔を見たら、二度と忘れらないとのこと。
そして、上は白のブラウスを着ているのだが、お姫様が着てるようなヒラヒラのついたかわいらしいブラウスなのだが、ずっと着続けているせいか、元の色がわからないぐらい薄茶色に変色していた。
ところどころ穴もあいているし、ツギハギだらで、すんげえ臭い。
そして、ものすごいスピードでピョンピョン飛びながら歩いていた。
「時速100キロで、ピョコピョコ飛び跳ねながら走る厚化粧をした薄汚ねえババア。そんな奴に追いかけられたら、お前どうする?
お前、笑ったか?今、笑ったんじゃねえのか?」
- 笑った→新堂エンディング№01:吉田の執念
- 笑っていない
高木ババアが何でピョコピョコ飛び跳ねるのかは、片足がないからだ。
なんでも、交通事故でトラックのタイヤに足を巻き込まれたらしいんだけど、そのとき家族も一緒にいて、息子夫婦に3人の孫、全員、即死だった。
死体は原形をとどめておらず、ミンチみたいにグチャグチャになったらしい。
トラックの運転手は酔っぱらっていたらしく、事故に気づかず、子供をタイヤに挟んだまま、10キロ以上走ったそうだ。
それで高木ババアは発狂してしまい、その後、家族みんな死んだショックから立ち直れず、自宅の布団で、誰にも看取られずに死んだらしい。
死後1カ月以上経って発見されたそうで、今現れる高木ババアは幽霊だ。
幽霊だからこそ、時速100キロで走ることができるのだ。
高木ババアが臭いのは死後1カ月以上経っているからで、あの服装は事故にあったときの服装とのこと。
そして、高木ババアは、ある目的があって狙った奴の前に現れ、高木ババアに狙われると絶対に逃げられないため最後らしい。
高木ババアは、最初は何気なく声をかけてくる。
「身寄りのない年寄りの思い出話を聞いてくだされ」
ついうっかり情けをかけて相手をしたら、もう最後だ。いきなり、あの時の事故の話を始めるのだ。
「私には、人様のうらやむのうな家族がいましての。よくできた息子に、よくできた嫁。目に入れても痛くないほどのかわいい孫が3人。
そりゃあもう、とても幸せな家族でした。仏様には毎日お礼を言いました。
でも、ひどいもんです。仏様なんて、いやぁしません。私の家族はみんな死んでしまいました。
交通事故でした。私を残して家族全員、トラックに轢かれちまったんでごぜえます」
そんなこと言われたら、聞いているほうは、慰めないわけにはいかない。
「その分、おばあさんが頑張って生きなきゃ」
「ありがとうごぜえます。こんなババアに気を遣ってくださって。
あんた様は、死んでいった家族たちのことがかわいそうだと思いますかのう?」
「ええ」
誰だって、反射的にそう答えるだろう。
すると、高木ババアは、薄汚れたスカートをめくって、こう言う。
「私しゃあ、そん時の事故で片足をなくしちまいました。私のなくなった片足、不憫だとは思いませんかのう?」
(さあ、どうだ。お前の心は恐怖心でいっぱいだろう。さあ、おとなしく私に食われてしまうがいいよ)
まるでそんなことを言っているように、醜く化粧されたシワだらけの顔をこっちに向けてニタニタと笑う。
もう、走り出すしかない。
走って走って、心臓が口からこぼれるほど走りまくって逃げる。
そして、もうだめだ、走れない、と思って、ふらふらの足を休め、全身で息をして、ふっと顔を上げると、高木ババアがニタニタ笑いながら、目の前に立っている。
「よくできた息子は、腹の上を裂かれて真っ二つ。内臓が飛び出て、どこにいったかわからなくなりましてのう。かわいそうだと思うなら、あんたの内臓をくださいな」
また逃げる。逃げて、逃げて、逃げまくる。
足が痙攣して転ぶ。
後ろからゆっくりと足音が聞こえてきて、真後ろで止まる。
「よくできた嫁は、両腕を轢き潰されてしにました。かわいそうだと思うなら、あんたの両腕くださいな。
目に入れても痛くないほどかわいい3人の孫。
一人は両足を潰されました。
一人は首を潰されてしにました。
そして、最後の一人は、タイヤに巻き込まれて体中の皮膚をひっぺがされて真っ赤になって死にました。
家族はみんな、挽き肉みたいにグジャグジャになって、死んだんでごぜえます。
かわいそうだと思うでしょう?
だったら、あんたの体をくださいな」
そして、首を絞め上げられ、ジ・エンド。
死んだあと、死体は見つからない。全身は死んでいった家族に分け与えられるから。
「この話を聞いた奴はよ、1週間以内に必ず高木ババアに会うっていうぜ。
俺は、お前に話したんだからな。ここに集まっている残りの5人は関係ねえぜ。
お前、笑っているのか?それとも、震えているのかよ。
そう心配すんなよ。実は助かる方法もあるんだぜ」
「助かる方法を知りたいか?」
- 知りたい
- 別に知りたくない→新堂エンディング№01:吉田の執念
1週間以内に誰でもいいから5人以上の右足を集めるんだ。お前が高木ババアの代わりをやればいいんだよ」
(高木ババアは、本当にいるのか?)
- いるわけない→新堂エンディング№02:高木ババアなんか怖くない
- きっといる
新堂さんが高木ババアの話をしてからというもの、僕はこの部屋に何か得たいの知れないものが漂っている気がしてならない。
僕は、もう高木ババアに取り憑かれてしまったのだ。僕はもう、助からないのか。
5人以上の右足を手に入れるなんて、僕にできるわけない。
ここにいるのは何人だ?6人いる。
奴ら、僕のことを見て笑っている。
そうさ、こいつらに犠牲になってもらおう。
1週間以内に、こいつらの右足を手に入れればいいんじゃないか。
よし、そうと決まれてば今は平然を装おう。何事もなかったように、この集会を終わらせればいい。ふふ、ふふふふふ)
新堂エンディング№03:六本の右足
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今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
1週目クリア
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング№03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング№10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング№13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング№03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情のはざま→福沢エンディング№20~22
6人目は新堂誠を選択→シナリオ:呪いのマンシール→新堂エンディング№06~08
7人目はシナリオ:記憶のほころび→七話目エンディング№01~03
2週目プレイ開始!
1人目は岩下明美を選択→シナリオ:偽りの愛→岩下エンディング№01・02
2人目は新堂誠を選択。
新堂誠は、3年D組の生徒。
お前がどうして新聞部に入ったのか教えてくれ
- なんとなく入りました
- 前から憧れてました
- 何かお勧めのクラブは?
それより俺みたいな奴が、こんな女子供が喜びそうな集会にいるのは場違いだって感じてんじゃねえか?」
- そんなこと思ってません
- はい、正直に言うと感じてます
- 何に興味を持つかは人それぞれです
それじゃあ、さっそく話を始めるとするか。ところで、この部屋、なんか怪しくねえか?
霊ってのはよ、人間の気を敏感に察知するっていうからな。それでな、霊は恐怖心を持った奴の周りに集まるっていうじゃねえか。
怖い話をしているとき、突然背筋にゾクって寒気が走る。あれはま、そいつの背中を霊が撫でてるんだぜ。
坂上、お前、まさか怖がったりしてねえよな」
- 怖いです
- 怖くありません
噂話って知ってるか?口裂け女とか、人面犬、トイレの花子さんや、メリーさん。そういう噂、お前は馬鹿にしているか?」
- している→新堂エンディング№02:高木ババアなんて怖くない
- していない→新堂エンディング№01:吉田の執念
- 何とも言えない
「信じるのは馬鹿らしい。かといって、心のどこでは信じている自分もいる。そんなあやふやな感じってところか。」
新堂のクラスメートに吉田達夫という男がいた。
現実主義というか、アンチ・ロマンチストというのか、どにかく嫌な男だ。
勉強はできたけど、それだけの男で、いつも気取っていて、殴ってやりたいタイプだった。
吉田は、どんなに殴られようが絶対に抵抗しないが、きちんとそれを先生に報告していたので、いじめようとしてもいじめられない男だった。
先生の間では、成績抜群で品行方正、先生には従順でなんでも従い、問題があるとすぐに報告するため、評判が良かった。
吉田はそんな男だから、誰にも相手にされず、無視されていた。
ところが吉田は、それを喜んでいるようだった。自分が選ばれた人間にでもなったつもりで、周りを見下しているのは見え見えだった。
「お前はそんな奴には何かガツンと一発かましてやりたいと思うだろ?」
- はい→新堂エンディング№01:吉田の執念
- いいえ
だとしたら、よほどの優等生か、逆に冷たい人間なんだな」
そんな時、新堂はちょっとおもしろい話を聞いた。高木っていう名前のババアの話だった。
「お前、聞いたことあるか、高木ババアの噂を」
- 知っている→シナリオ:呪いのマンシールへ
- 知らない
「知らない、そうか。お前に話してやるぜ。高木ババアの話をよ」
そのババは、ませたガキが好きそうなフリルのついた真っ赤なロングスカートをはいている。
足が隠れて地面を引きずるほどのロングスカートのため、高木ババアのスカートの裾はボロボロだった。
そのババアは腰まである伸ばし放題の髪の毛をいつも垂らしていて、顔を隠している。
その顔を見た人の話では、すげえ厚化粧をしており、あの顔を見たら、二度と忘れらないとのこと。
そして、上は白のブラウスを着ているのだが、お姫様が着てるようなヒラヒラのついたかわいらしいブラウスなのだが、ずっと着続けているせいか、元の色がわからないぐらい薄茶色に変色していた。
ところどころ穴もあいているし、ツギハギだらで、すんげえ臭い。
そして、ものすごいスピードでピョンピョン飛びながら歩いていた。
「時速100キロで、ピョコピョコ飛び跳ねながら走る厚化粧をした薄汚ねえババア。そんな奴に追いかけられたら、お前どうする?
お前、笑ったか?今、笑ったんじゃねえのか?」
- 笑った→新堂エンディング№01:吉田の執念
- 笑っていない
高木ババアが何でピョコピョコ飛び跳ねるのかは、片足がないからだ。
なんでも、交通事故でトラックのタイヤに足を巻き込まれたらしいんだけど、そのとき家族も一緒にいて、息子夫婦に3人の孫、全員、即死だった。
死体は原形をとどめておらず、ミンチみたいにグチャグチャになったらしい。
トラックの運転手は酔っぱらっていたらしく、事故に気づかず、子供をタイヤに挟んだまま、10キロ以上走ったそうだ。
それで高木ババアは発狂してしまい、その後、家族みんな死んだショックから立ち直れず、自宅の布団で、誰にも看取られずに死んだらしい。
死後1カ月以上経って発見されたそうで、今現れる高木ババアは幽霊だ。
幽霊だからこそ、時速100キロで走ることができるのだ。
高木ババアが臭いのは死後1カ月以上経っているからで、あの服装は事故にあったときの服装とのこと。
そして、高木ババアは、ある目的があって狙った奴の前に現れ、高木ババアに狙われると絶対に逃げられないため最後らしい。
高木ババアは、最初は何気なく声をかけてくる。
「身寄りのない年寄りの思い出話を聞いてくだされ」
ついうっかり情けをかけて相手をしたら、もう最後だ。いきなり、あの時の事故の話を始めるのだ。
「私には、人様のうらやむのうな家族がいましての。よくできた息子に、よくできた嫁。目に入れても痛くないほどのかわいい孫が3人。
そりゃあもう、とても幸せな家族でした。仏様には毎日お礼を言いました。
でも、ひどいもんです。仏様なんて、いやぁしません。私の家族はみんな死んでしまいました。
交通事故でした。私を残して家族全員、トラックに轢かれちまったんでごぜえます」
そんなこと言われたら、聞いているほうは、慰めないわけにはいかない。
「その分、おばあさんが頑張って生きなきゃ」
「ありがとうごぜえます。こんなババアに気を遣ってくださって。
あんた様は、死んでいった家族たちのことがかわいそうだと思いますかのう?」
「ええ」
誰だって、反射的にそう答えるだろう。
すると、高木ババアは、薄汚れたスカートをめくって、こう言う。
「私しゃあ、そん時の事故で片足をなくしちまいました。私のなくなった片足、不憫だとは思いませんかのう?」
(さあ、どうだ。お前の心は恐怖心でいっぱいだろう。さあ、おとなしく私に食われてしまうがいいよ)
まるでそんなことを言っているように、醜く化粧されたシワだらけの顔をこっちに向けてニタニタと笑う。
もう、走り出すしかない。
走って走って、心臓が口からこぼれるほど走りまくって逃げる。
そして、もうだめだ、走れない、と思って、ふらふらの足を休め、全身で息をして、ふっと顔を上げると、高木ババアがニタニタ笑いながら、目の前に立っている。
「よくできた息子は、腹の上を裂かれて真っ二つ。内臓が飛び出て、どこにいったかわからなくなりましてのう。かわいそうだと思うなら、あんたの内臓をくださいな」
また逃げる。逃げて、逃げて、逃げまくる。
足が痙攣して転ぶ。
後ろからゆっくりと足音が聞こえてきて、真後ろで止まる。
「よくできた嫁は、両腕を轢き潰されてしにました。かわいそうだと思うなら、あんたの両腕くださいな。
目に入れても痛くないほどかわいい3人の孫。
一人は両足を潰されました。
一人は首を潰されてしにました。
そして、最後の一人は、タイヤに巻き込まれて体中の皮膚をひっぺがされて真っ赤になって死にました。
家族はみんな、挽き肉みたいにグジャグジャになって、死んだんでごぜえます。
かわいそうだと思うでしょう?
だったら、あんたの体をくださいな」
そして、首を絞め上げられ、ジ・エンド。
死んだあと、死体は見つからない。全身は死んでいった家族に分け与えられるから。
「この話を聞いた奴はよ、1週間以内に必ず高木ババアに会うっていうぜ。
俺は、お前に話したんだからな。ここに集まっている残りの5人は関係ねえぜ。
お前、笑っているのか?それとも、震えているのかよ。
そう心配すんなよ。実は助かる方法もあるんだぜ」
「助かる方法を知りたいか?」
- 知りたい
- 別に知りたくない
1週間以内に誰でもいいから10人以上に高木ババアの話をするんだ。
それも高木ババアの話を知らない奴にだぞ。知っている奴に話しても、だめだからな。
それを守れなかったら、お前は死ぬぜ。
それでな、吉田にもこの話をしてやったんだよ」
「なあ、吉田、ちょっとおもしろい話があるんだけど、聞いてくれねえか?」
吉田は気のない素振りで聞いていたが、話が進むにつれ、新堂の話に耳を傾けるのがわかった。
新堂が話し終えると、吉田は馬鹿にしたようにせせら笑った。
「君って子供。もし信じてたら、かわいそうだなあ」
「お前が信じるも信じないのも勝手だけでよお。高木ババアを見たからって、俺のせいにするんじゃねえぞ」
吉田は吹き出した。
「ぷぷっ!もし本当に会えたら、すぐに君に知らせてあげるからさ。
じゃあね、僕、君と違って塾があるから」
そういって吉田は荷物を片付けると帰ってしまった。
「悪いが俺はよ、こういう噂は信じてるもんでな。
俺が高木ババアに話を聞いたときは、急いで10人に話だぜ。
それで、吉田はどうなったと思う?俺の話を信じて、ちゃんと10人に話したと思うか?」
- 話をした→新堂エンディング№02:高木ババア
- 期限が間に合わなかった
- 話さなかった→新堂エンディング№02:高木ババア
次の日、吉田は別に何気なくふるまっており、別に誰かに話をする風もなかった。
日曜日には新堂は、吉田があせっていると思って電話した。
「君、馬鹿じゃないの?悪いけど、僕は高木なんてババアの話は忘れてたよ。君、頭が変なんじゃないの?一度、病院行ったら?
あのさ、君が何を思おうが僕には関係ないけどね、大切な僕の休養日に邪魔だけはしないでくれる?」
言うだけ言って、吉田は一方的に電話を切った。
新堂は、吉田の慌てるところを見てみたかったが、吉田が死ぬかどうか見極めることにした。
そして、いよいよ明日で約束の1週間が終わるという日になった。
いつも他人を見下した態度をとっている吉田が、その日に限って妙にしおらしい。
愛想笑いなんか浮かべて、すれ違う奴らにペコペコあいさつしている。
今までが今までだから、誰も吉田なんか相手にしない。
吉田は、何か話したそうにしているが、誰も聞かない。
吉田が、高木ババアの話を気にしており、誰かに話したくて仕方ないのに、誰も聞いてくれないのが、新堂にとっておかしくてしかたがなかった。
吉田は頭を下げながら何人かに話し始めるが、すぐに逃げられてしまう。
新堂のクラスメートは、もうみんな高木バアアの話を知っているのだ。
新堂がニヤニヤしながら吉田を見ていると、それに気づいた吉田が、今にも泣きそうな顔で新堂の側に駆け寄ってきた。
「なあ、新堂君」
吉田は、泣き出しそうな声を出し、新堂の手を握り締めてきた。
「あの話は冗談だよね?」
「何の話だよ、お前、俺と口聞きたくなかったんじゃなかったっけ?俺、お前の大事な時間を邪魔しちゃ悪いからよぉ」
突然、吉田は土下座して新堂に謝った。
「ごめんよ。僕が悪かったよ。だから許しておくれよ。
僕のこと助けて!!」
新堂は、これ以上しらばっくれるのもかわいそうになり、土下座する吉田を助け起こした。
「そんな高木ババアが怖いんだったら、話せばいいじゃねえか」
それを聞いた吉田は大声で泣き始めた。
「うわあああん!!みんな知ってるんだもの。みんな高木ババアの話を知ってるんだよ!
まだ3人しか話せてないんだよ。お願いだよ!死ぬのはいやだよ!」
「3人って誰に話したんだよ?」
「お父さんとお母さん、それから親戚のおばさん。
学校のみんなも、塾のみんなも、誰も聞いてくれないんだ。聞いてくれそうになった連中も、みんな知ってるんだよ。高木ババアの話をさ」
「先公は?お前、ずいぶんと気に入られてたじゃねえか」
「馬鹿にして、僕の話をまじめに聞いてくれない。
それでも無理に話そうとすると、怒鳴るんだよ。お前はいつから、そんな馬鹿な事を言う生徒になったんだって、まじめに心配そうな顔をするのさ。
もう、だめだ。もう、僕は死んでしまう。お願いだ。助けてくれよ」
「あんなの冗談さ。高木ババアなんているわけねえだろう」
新堂は、吉田がかわいそうに見えたので、心にもないことを言ってしまった。
「本当に、あれは嘘だったんだね!」
「ああ、冗談だよ、気にすんな」
「ありがとう!その一言で僕は救われるよ。本当にありがとう」
吉田は、落ち着いて帰っていった。
しかし、新堂は、吉田が早めに10人に話しておけばこんなことにならなかったんだ、と思っていた。
そして約束の1週間目がやってきたが、吉田は学校に来なかった。
恐ろしくなった新堂は、話をした責任を感じ始めた。
そして、放課後、新堂は吉田の家に電話したら、吉田は家にいた。
「なんだ君か。どうしたの?」
「お前、今日学校休んだじゃねえか。何かあったのかと思ってよ」
「あっははは、何言ってんの、君?あれは冗談だんだろう?いやあ、僕としたことがちょっと取り乱しちゃったよ。君みたいな下等な人間に騙されるところだった。
今日は、ちょっと疲れたから休んだだけさ。別に君に心配してもらう必要はない。
あ、そうそう、前にもう僕の家に電話しないでくれって言ったよね?もう電話、しないでくれる?
それから、君がした高木ババアに話、明日になったら先生に報告しておくつもりだから、覚悟しておくんだね。
君のような奴を愉快犯っていうん・・・」
そこまで聞いた新堂は、受話器を叩きつけた。
腹が立った新堂は、そこら辺のものに当たり散らしたが、怒りは収まらない。
仕方がないので、新堂は寝ることにした。
電話のベルの音で、新堂は目覚めた。
受話器を取ると、金切り声が聞こえてきた。
「助けてくれよ、新堂君!!」
電話の主は吉田だった。
「ウソツキ、どうして嘘なんかつくんだよ。新堂君の責任だよ。僕が死んだら、新堂君の責任なんだ。どうしてくれるんだよ!
高木ババアが出てきちゃったじゃないか!高木ババアが、あと6時間でお前を殺すっていうんだよ!殺されるよ!」
「馬鹿言ってんじゃねえよ。俺はお前の時間を邪魔するつもりはないからよ」
「お前の責任だ!あと6時間のうちに7人に話さないと俺は殺されるんだぞ!」
「うるせえ!」
そう言って新堂は、受話器を置いた。
新堂が時計を見ると6時を回っていた。
ちょうどその日、新堂の両親は法事で田舎に言っており、明日の朝まで家には、新堂一人きりだった。
新堂は、念入りに戸締りをし、作り置きの夕食を食べた。
8時を回ったころ、また吉田から電話があった。
「見つからないよ!まだあと5人にも話なさきゃならないんだ!」
「いい加減にしろ!」
「いるんだよ!高木ババアが僕のことを見ているんだよ!どこに行っても追いかけてくるんだ」
「死んじまえよ、クソ野郎!」
新堂は、電話が壊れるかと思うほど、受話器を乱暴に叩きつけた。
嘘をついているとは思えない雰囲気の吉田から恐怖を感じた新堂は、テレビのボリュームをいっぱいに上げた。
何かほかのことを考えようとしても、吉田のことが浮かんで消えない新堂は、風呂に入ることにした。
風呂に入っているときに、また電話のベルが鳴ったが、新堂は怖くて電話に出れなかった。
ベルは20回ほどなってようやく切れたが、すぐにまたかかってきた。
新堂は風呂を飛び出し、受話器をとってすぐに切った。
それでも電話がかかってくるので、新堂は電話線を外した。
そして、新堂はリビングのソファの上で足を抱えて、時計を見つめ、12時になるのをじっと待った。
12時まであと5分ほどになったとき、「新堂」という声をともに、家のドアをぶち壊すような勢いでたたく音が聞こえた、
吉田が、家にやって来たのだ。
「新堂、もう時間がないんだ。俺は死ぬ!だから、お前も死ね!死んで責任をとりやがれ!」
新堂は、急いで玄関に行き、中からドアを押さえつけた。
「俺はなあ、道行く奴を呼び止めてまで、無理やり話を聞かせたんだよ!まるで狂人扱いさ!
殴られもしなけどよぉ、話したよ!後ろには高木ババアがいるからよお!
でも足りないんだよ!あと一人!もう時間がない。だから、お前を殺すんだ!」
突然、ドアが激しく揺れて隙間に刃物の切っ先が垣間見えた。
そして、吉田は諦めたのか、すぐに物音はしなくなった。
その時、鼓膜が破れるようなものすごい音が鳴り響いた。リビンクからだった。
新堂が目を向けると、リビングの一面を壁を覆っていた窓ガラスが粉々に砕け散っていた。
「新堂!!」
絨毯にまき散らされたガラスの破片の上に、土足の吉田が仁王立ちになっていた。手には包丁を持ち、体中から血を滴らせながら。
顔は青く腫れあがって歪んでいた。無理やり見知らぬ通行人に高木ババアの話をしようとして殴られたのだろう。
新堂は、吉田に殺される、と覚悟を決めた。
その時、いきなり吉田が包丁を振り回しながら、見えない何かを必死に追い払うように、暴れ出した。
吉田には高木ババアが見えているのだ。
「やめろよ!もう少し時間をくれよ!こいつを殺してからにしてくれよ!ぎゃあ!!!」
突然、吉田の腹が真一文字にパックリと割れた。
吉田は苦しそうに目を細めると、ぱくぱくと口を開いた。
「うわああ!」
新堂は叫んで、階段を上がり、自分の部屋に逃げ込もうとした。
「逃げるな」
吉田は、新堂を追いかけてきた。
足が震えてうまく階段を上がれず、つんのめった新堂の足首を、吉田の血まみれの手が掴んだ。
新堂が慌てて振り返ると、吉田は新堂の足首を握りしめたまま、嬉しそうに包丁を振り上げていた。
吉田の腹からは、腸がベロンとはみ出ており、ほかほかと湯気を立てていた。
吉田は新堂めがけて包丁を振り下ろしたが、必死だった新堂は渾身の力を込めて足をけり出すと、見事吉田の腹に命中した。
吉田はそのままもんどり打って、階段を真っ逆さまに転げ落ちて行った。
腸が階段にぺちゃりと張り付いていたが、吉田は動いていた。
「し・・・ん・・・どう・・・」
ものすごい目で新堂を睨みつけるが、新堂は四つん這いになって這いずりながら階段を上がり、なんとか自分の部屋に逃げ込んだ。
ドアの向こうから、ズルズルビチャビチャ階段を何かが這い上がってくる音が聞こえてくる。
新堂は、鍵のないドアのノブに手をかけ、ドアが開かないように必死に体を踏ん張らせた。
「新堂、開けろ。お前を殺してやんだからよぉ」
そして、がりがりとドアを爪で引っかく音が聞こえる。
「開けろ」
突然、ドアを破って包丁を握った手を突き出てきた。
包丁は、新堂の左腕の肉をそいだ。
「新堂、見ぃつけた」
その時、ドアに空いた穴から、汚れた白いブラウスを着た手が伸びてきた。
高木ババアの手が、吉田の手を掴んだ。
「やめてくれよ。もう少しであいつをのこと殺せるんだよ、うぎゃああ!」
ドアの向こう側から吉田の悲鳴が聞こえてくるのと、穴に手が引きずり込まれるのはほとんど同時だった。
そのあと一切の物音は聞こえなくなり、床には包丁だけが落ちていた。
新堂が時計を見ると、針は12時を指していた。
10分ほどして、新堂は慎重にゆっくりとあたりに気を配りながらドアを押し開いた。
ドアの向こうに何もなかった。吉田の死体も、腹から引きずり出された腸も、血の跡さえも。
痕跡といったら、ドアに空いた穴と、床に落ちた包丁だけ。
新堂が1階に降りると、リビングの窓ガラスは割れたままで、カーテンが風にたなびいていた。
そして、玄関に目をやると、そこにも包丁を立てた跡がくっきりと残っていた。
確かに吉田は来たが、12時を過ぎると同時に忽然と姿を消してしまった。
次の日、新堂はこっぴどく親に叱られた。
本当のことを言っても信じてもらえないため、友達がきて大騒ぎしたって嘘をついて謝った。
そして、必死に頼み込んで部屋に鍵をつけてもらった。
学校にも吉田は来なかった。
突然家出してしまったそうで、行方不明になった。
「そういえばお前、さっき吉田は期限に間に合わなかったって言ったよな。ご名答だ。なかなか鋭い勘をしてるじゃねえか。
お前、俺の話、信じようが信じまいが勝手だけどよ。なんで、お前だけに話をしたのかわかるか?
ここに集まった残りの連中は、もう高木ババアの話を知っているから、お前に話してんだ。
どうして、わざわざこんな話をしたのか不思議なのか?悪く思わないでくれ、俺も必死なんだ。
毎晩、吉田の野郎が俺の夢の中に現れんだよ。手足をちぎられ、内臓をそっくり抜かれた血まみれの吉田がよ。
そんで、毎週10人に高木ババアの話しろって脅かすんだ。俺がその約束を守り続けなければ、俺のことを殺しにやってくるんだってよ
俺、死ぬのは怖いからよ。たとえ誰にどう思われようと、俺はこの約束を守らなきゃなんねえ」
「ヒヒヒ、面白い話でしたね。あの、せっかくですので少し付け加えさせてもらえますか」
突然そう言って口をはさんだのは、さっき話をしてくれた荒井だった。
「高木ババアの話は僕も知ってますし、1週間以内に10人以上に話しましたから、話さなかったときに何が起こるかは知りません。
ただ僕は知っているんですよ。新堂さんが吉田さんに借金があったことを。50万円という多額の借金がね。
ああ、借金というより恐喝って言うんでしたっけ?吉田さんは返さなければ学校や親にばらすって、ずいぶんと新堂さんに詰めよっていたそうですね。
そんな吉田さんが、突然行方不明になって学校に来なくなった。偶然って怖いですね、ヒヒヒヒヒ」
新堂エンディング№05:吉田の真実
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今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
1週目クリア
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング№03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング№10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング№13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング№03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情のはざま→福沢エンディング№20~22
6人目は新堂誠を選択→シナリオ:呪いのマンシール→新堂エンディング№06~08
7人目はシナリオ:記憶のほころび→七話目エンディング№01~03
2週目プレイ開始!
1人目は岩下明美を選択→シナリオ:偽りの愛→岩下エンディング№01・02
2人目は新堂誠を選択。
新堂誠は、3年D組の生徒。
お前がどうして新聞部に入ったのか教えてくれ
- なんとなく入りました
- 前から憧れてました
- 何かお勧めのクラブは?
それより俺みたいな奴が、こんな女子供が喜びそうな集会にいるのは場違いだって感じてんじゃねえか?」
- そんなこと思ってません
- はい、正直に言うと感じてます
- 何に興味を持つかは人それぞれです
それじゃあ、さっそく話を始めるとするか。ところで、この部屋、なんか怪しくねえか?
霊ってのはよ、人間の気を敏感に察知するっていうからな。それでな、霊は恐怖心を持った奴の周りに集まるっていうじゃねえか。
怖い話をしているとき、突然背筋にゾクって寒気が走る。あれはま、そいつの背中を霊が撫でてるんだぜ。
坂上、お前、まさか怖がったりしてねえよな」
- 怖いです
- 怖くありません
噂話って知ってるか?口裂け女とか、人面犬、トイレの花子さんや、メリーさん。そういう噂、お前は馬鹿にしているか?」
- している→新堂エンディング№02:高木ババアなんて怖くない
- していない→新堂エンディング№01:吉田の執念
- 何とも言えない
「信じるのは馬鹿らしい。かといって、心のどこでは信じている自分もいる。そんなあやふやな感じってところか。」
新堂のクラスメートに吉田達夫という男がいた。
現実主義というか、アンチ・ロマンチストというのか、どにかく嫌な男だ。
勉強はできたけど、それだけの男で、いつも気取っていて、殴ってやりたいタイプだった。
吉田は、どんなに殴られようが絶対に抵抗しないが、きちんとそれを先生に報告していたので、いじめようとしてもいじめられない男だった。
先生の間では、成績抜群で品行方正、先生には従順でなんでも従い、問題があるとすぐに報告するため、評判が良かった。
吉田はそんな男だから、誰にも相手にされず、無視されていた。
ところが吉田は、それを喜んでいるようだった。自分が選ばれた人間にでもなったつもりで、周りを見下しているのは見え見えだった。
「お前はそんな奴には何かガツンと一発かましてやりたいと思うだろ?」
- はい→新堂エンディング№01:吉田の執念
- いいえ
だとしたら、よほどの優等生か、逆に冷たい人間なんだな」
そんな時、新堂はちょっとおもしろい話を聞いた。高木っていう名前のババアの話だった。
「お前、聞いたことあるか、高木ババアの噂を」
- 知っている
- 知らない
「知らない、そうか。お前に話してやるぜ。高木ババアの話をよ」
そのババは、ませたガキが好きそうなフリルのついた真っ赤なロングスカートをはいている。
足が隠れて地面を引きずるほどのロングスカートのため、高木ババアのスカートの裾はボロボロだった。
そのババアは腰まである伸ばし放題の髪の毛をいつも垂らしていて、顔を隠している。
その顔を見た人の話では、すげえ厚化粧をしており、あの顔を見たら、二度と忘れらないとのこと。
そして、上は白のブラウスを着ているのだが、お姫様が着てるようなヒラヒラのついたかわいらしいブラウスなのだが、ずっと着続けているせいか、元の色がわからないぐらい薄茶色に変色していた。
ところどころ穴もあいているし、ツギハギだらで、すんげえ臭い。
そして、ものすごいスピードでピョンピョン飛びながら歩いていた。
「時速100キロで、ピョコピョコ飛び跳ねながら走る厚化粧をした薄汚ねえババア。そんな奴に追いかけられたら、お前どうする?
お前、笑ったか?今、笑ったんじゃねえのか?」
- 笑った→新堂エンディング№01:吉田の執念
- 笑っていない
高木ババアが何でピョコピョコ飛び跳ねるのかは、片足がないからだ。
なんでも、交通事故でトラックのタイヤに足を巻き込まれたらしいんだけど、そのとき家族も一緒にいて、息子夫婦に3人の孫、全員、即死だった。
死体は原形をとどめておらず、ミンチみたいにグチャグチャになったらしい。
トラックの運転手は酔っぱらっていたらしく、事故に気づかず、子供をタイヤに挟んだまま、10キロ以上走ったそうだ。
それで高木ババアは発狂してしまい、その後、家族みんな死んだショックから立ち直れず、自宅の布団で、誰にも看取られずに死んだらしい。
死後1カ月以上経って発見されたそうで、今現れる高木ババアは幽霊だ。
幽霊だからこそ、時速100キロで走ることができるのだ。
高木ババアが臭いのは死後1カ月以上経っているからで、あの服装は事故にあったときの服装とのこと。
そして、高木ババアは、ある目的があって狙った奴の前に現れ、高木ババアに狙われると絶対に逃げられないため最後らしい。
高木ババアは、最初は何気なく声をかけてくる。
「身寄りのない年寄りの思い出話を聞いてくだされ」
ついうっかり情けをかけて相手をしたら、もう最後だ。いきなり、あの時の事故の話を始めるのだ。
「私には、人様のうらやむのうな家族がいましての。よくできた息子に、よくできた嫁。目に入れても痛くないほどのかわいい孫が3人。
そりゃあもう、とても幸せな家族でした。仏様には毎日お礼を言いました。
でも、ひどいもんです。仏様なんて、いやぁしません。私の家族はみんな死んでしまいました。
交通事故でした。私を残して家族全員、トラックに轢かれちまったんでごぜえます」
そんなこと言われたら、聞いているほうは、慰めないわけにはいかない。
「その分、おばあさんが頑張って生きなきゃ」
「ありがとうごぜえます。こんなババアに気を遣ってくださって。
あんた様は、死んでいった家族たちのことがかわいそうだと思いますかのう?」
「ええ」
誰だって、反射的にそう答えるだろう。
すると、高木ババアは、薄汚れたスカートをめくって、こう言う。
「私しゃあ、そん時の事故で片足をなくしちまいました。私のなくなった片足、不憫だとは思いませんかのう?」
(さあ、どうだ。お前の心は恐怖心でいっぱいだろう。さあ、おとなしく私に食われてしまうがいいよ)
まるでそんなことを言っているように、醜く化粧されたシワだらけの顔をこっちに向けてニタニタと笑う。
もう、走り出すしかない。
走って走って、心臓が口からこぼれるほど走りまくって逃げる。
そして、もうだめだ、走れない、と思って、ふらふらの足を休め、全身で息をして、ふっと顔を上げると、高木ババアがニタニタ笑いながら、目の前に立っている。
「よくできた息子は、腹の上を裂かれて真っ二つ。内臓が飛び出て、どこにいったかわからなくなりましてのう。かわいそうだと思うなら、あんたの内臓をくださいな」
また逃げる。逃げて、逃げて、逃げまくる。
足が痙攣して転ぶ。
後ろからゆっくりと足音が聞こえてきて、真後ろで止まる。
「よくできた嫁は、両腕を轢き潰されてしにました。かわいそうだと思うなら、あんたの両腕くださいな。
目に入れても痛くないほどかわいい3人の孫。
一人は両足を潰されました。
一人は首を潰されてしにました。
そして、最後の一人は、タイヤに巻き込まれて体中の皮膚をひっぺがされて真っ赤になって死にました。
家族はみんな、挽き肉みたいにグジャグジャになって、死んだんでごぜえます。
かわいそうだと思うでしょう?
だったら、あんたの体をくださいな」
そして、首を絞め上げられ、ジ・エンド。
死んだあと、死体は見つからない。全身は死んでいった家族に分け与えられるから。
「この話を聞いた奴はよ、1週間以内に必ず高木ババアに会うっていうぜ。
俺は、お前に話したんだからな。ここに集まっている残りの5人は関係ねえぜ。
お前、笑っているのか?それとも、震えているのかよ。
そう心配すんなよ。実は助かる方法もあるんだぜ」
「助かる方法を知りたいか?」
- 知りたい
- 別に知りたくない
1週間以内に誰でもいいから10人以上に高木ババアの話をするんだ。
それも高木ババアの話を知らない奴にだぞ。知っている奴に話しても、だめだからな。
それを守れなかったら、お前は死ぬぜ。
それでな、吉田にもこの話をしてやったんだよ」
「なあ、吉田、ちょっとおもしろい話があるんだけど、聞いてくれねえか?」
吉田は気のない素振りで聞いていたが、話が進むにつれ、新堂の話に耳を傾けるのがわかった。
新堂が話し終えると、吉田は馬鹿にしたようにせせら笑った。
「君って子供。もし信じてたら、かわいそうだなあ」
「お前が信じるも信じないのも勝手だけでよお。高木ババアを見たからって、俺のせいにするんじゃねえぞ」
吉田は吹き出した。
「ぷぷっ!もし本当に会えたら、すぐに君に知らせてあげるからさ。
じゃあね、僕、君と違って塾があるから」
そういって吉田は荷物を片付けると帰ってしまった。
「悪いが俺はよ、こういう噂は信じてるもんでな。
俺が高木ババアに話を聞いたときは、急いで10人に話だぜ。
それで、吉田はどうなったと思う?俺の話を信じて、ちゃんと10人に話したと思うか?」
- 話をした
- 期限が間に合わなかった
- 話さなかった
次の日、吉田は別に何気なくふるまっており、別に誰かに話をする風もなかった。
日曜日には新堂は、吉田があせっていると思って電話した。
「君、馬鹿じゃないの?悪いけど、僕は高木なんてババアの話は忘れてたよ。君、頭が変なんじゃないの?一度、病院行ったら?
あのさ、君が何を思おうが僕には関係ないけどね、大切な僕の休養日に邪魔だけはしないでくれる?」
言うだけ言って、吉田は一方的に電話を切った。
新堂は、吉田の慌てるところを見てみたかったが、吉田が死ぬかどうか見極めることにした。
そして、いよいよ明日で約束の1週間が終わるという日になった。
いつも他人を見下した態度をとっている吉田が、その日に限って妙にしおらしい。
愛想笑いなんか浮かべて、すれ違う奴らにペコペコあいさつしている。
今までが今までだから、誰も吉田なんか相手にしない。
吉田は、何か話したそうにしているが、誰も聞かない。
吉田が、高木ババアの話を気にしており、誰かに話したくて仕方ないのに、誰も聞いてくれないのが、新堂にとっておかしくてしかたがなかった。
吉田は頭を下げながら何人かに話し始めるが、すぐに逃げられてしまう。
新堂のクラスメートは、もうみんな高木バアアの話を知っているのだ。
新堂がニヤニヤしながら吉田を見ていると、それに気づいた吉田が、今にも泣きそうな顔で新堂の側に駆け寄ってきた。
「なあ、新堂君」
吉田は、泣き出しそうな声を出し、新堂の手を握り締めてきた。
「あの話は冗談だよね?」
「何の話だよ、お前、俺と口聞きたくなかったんじゃなかったっけ?俺、お前の大事な時間を邪魔しちゃ悪いからよぉ」
突然、吉田は土下座して新堂に謝った。
「ごめんよ。僕が悪かったよ。だから許しておくれよ。
僕のこと助けて!!」
新堂は、これ以上しらばっくれるのもかわいそうになり、土下座する吉田を助け起こした。
「そんな高木ババアが怖いんだったら、話せばいいじゃねえか」
それを聞いた吉田は大声で泣き始めた。
「うわあああん!!みんな知ってるんだもの。みんな高木ババアの話を知ってるんだよ!
まだ3人しか話せてないんだよ。お願いだよ!死ぬのはいやだよ!」
「3人って誰に話したんだよ?」
「お父さんとお母さん、それから親戚のおばさん。
学校のみんなも、塾のみんなも、誰も聞いてくれないんだ。聞いてくれそうになった連中も、みんな知ってるんだよ。高木ババアの話をさ」
「先公は?お前、ずいぶんと気に入られてたじゃねえか」
「馬鹿にして、僕の話をまじめに聞いてくれない。
それでも無理に話そうとすると、怒鳴るんだよ。お前はいつから、そんな馬鹿な事を言う生徒になったんだって、まじめに心配そうな顔をするのさ。
もう、だめだ。もう、僕は死んでしまう。お願いだ。助けてくれよ」
「あんなの冗談さ。高木ババアなんているわけねえだろう」
新堂は、吉田がかわいそうに見えたので、心にもないことを言ってしまった。
「本当に、あれは嘘だったんだね!」
「ああ、冗談だよ、気にすんな」
「ありがとう!その一言で僕は救われるよ。本当にありがとう」
吉田は、落ち着いて帰っていった。
しかし、新堂は、吉田が早めに10人に話しておけばこんなことにならなかったんだ、と思っていた。
そして約束の1週間目がやってきたが、吉田は学校に来なかった。
恐ろしくなった新堂は、話をした責任を感じ始めた。
そして、放課後、新堂は吉田の家に電話したら、吉田は家にいた。
「なんだ君か。どうしたの?」
「お前、今日学校休んだじゃねえか。何かあったのかと思ってよ」
「あっははは、何言ってんの、君?あれは冗談だんだろう?いやあ、僕としたことがちょっと取り乱しちゃったよ。君みたいな下等な人間に騙されるところだった。
今日は、ちょっと疲れたから休んだだけさ。別に君に心配してもらう必要はない。
あ、そうそう、前にもう僕の家に電話しないでくれって言ったよね?もう電話、しないでくれる?
それから、君がした高木ババアに話、明日になったら先生に報告しておくつもりだから、覚悟しておくんだね。
君のような奴を愉快犯っていうん・・・」
そこまで聞いた新堂は、受話器を叩きつけた。
腹が立った新堂は、そこら辺のものに当たり散らしたが、怒りは収まらない。
仕方がないので、新堂は寝ることにした。
電話のベルの音で、新堂は目覚めた。
受話器を取ると、金切り声が聞こえてきた。
「助けてくれよ、新堂君!!」
電話の主は吉田だった。
「ウソツキ、どうして嘘なんかつくんだよ。新堂君の責任だよ。僕が死んだら、新堂君の責任なんだ。どうしてくれるんだよ!
高木ババアが出てきちゃったじゃないか!高木ババアが、あと6時間でお前を殺すっていうんだよ!殺されるよ!」
「馬鹿言ってんじゃねえよ。俺はお前の時間を邪魔するつもりはないからよ」
「お前の責任だ!あと6時間のうちに7人に話さないと俺は殺されるんだぞ!」
「うるせえ!」
そう言って新堂は、受話器を置いた。
新堂が時計を見ると6時を回っていた。
ちょうどその日、新堂の両親は法事で田舎に言っており、明日の朝まで家には、新堂一人きりだった。
新堂は、念入りに戸締りをし、作り置きの夕食を食べた。
8時を回ったころ、また吉田から電話があった。
「見つからないよ!まだあと5人にも話なさきゃならないんだ!」
「いい加減にしろ!」
「いるんだよ!高木ババアが僕のことを見ているんだよ!どこに行っても追いかけてくるんだ」
「死んじまえよ、クソ野郎!」
新堂は、電話が壊れるかと思うほど、受話器を乱暴に叩きつけた。
嘘をついているとは思えない雰囲気の吉田から恐怖を感じた新堂は、テレビのボリュームをいっぱいに上げた。
何かほかのことを考えようとしても、吉田のことが浮かんで消えない新堂は、風呂に入ることにした。
風呂に入っているときに、また電話のベルが鳴ったが、新堂は怖くて電話に出れなかった。
ベルは20回ほどなってようやく切れたが、すぐにまたかかってきた。
新堂は風呂を飛び出し、受話器をとってすぐに切った。
それでも電話がかかってくるので、新堂は電話線を外した。
そして、新堂はリビングのソファの上で足を抱えて、時計を見つめ、12時になるのをじっと待った。
12時まであと5分ほどになったとき、「新堂」という声をともに、家のドアをぶち壊すような勢いでたたく音が聞こえた、
吉田が、家にやって来たのだ。
「新堂、もう時間がないんだ。俺は死ぬ!だから、お前も死ね!死んで責任をとりやがれ!」
新堂は、急いで玄関に行き、中からドアを押さえつけた。
「俺はなあ、道行く奴を呼び止めてまで、無理やり話を聞かせたんだよ!まるで狂人扱いさ!
殴られもしなけどよぉ、話したよ!後ろには高木ババアがいるからよお!
でも足りないんだよ!あと一人!もう時間がない。だから、お前を殺すんだ!」
突然、ドアが激しく揺れて隙間に刃物の切っ先が垣間見えた。
そして、吉田は諦めたのか、すぐに物音はしなくなった。
その時、鼓膜が破れるようなものすごい音が鳴り響いた。リビンクからだった。
新堂が目を向けると、リビングの一面を壁を覆っていた窓ガラスが粉々に砕け散っていた。
「新堂!!」
絨毯にまき散らされたガラスの破片の上に、土足の吉田が仁王立ちになっていた。手には包丁を持ち、体中から血を滴らせながら。
顔は青く腫れあがって歪んでいた。無理やり見知らぬ通行人に高木ババアの話をしようとして殴られたのだろう。
新堂は、吉田に殺される、と覚悟を決めた。
その時、いきなり吉田が包丁を振り回しながら、見えない何かを必死に追い払うように、暴れ出した。
吉田には高木ババアが見えているのだ。
「やめろよ!もう少し時間をくれよ!こいつを殺してからにしてくれよ!ぎゃあ!!!」
突然、吉田の腹が真一文字にパックリと割れた。
吉田は苦しそうに目を細めると、ぱくぱくと口を開いた。
「うわああ!」
新堂は叫んで、階段を上がり、自分の部屋に逃げ込もうとした。
「逃げるな」
吉田は、新堂を追いかけてきた。
足が震えてうまく階段を上がれず、つんのめった新堂の足首を、吉田の血まみれの手が掴んだ。
新堂が慌てて振り返ると、吉田は新堂の足首を握りしめたまま、嬉しそうに包丁を振り上げていた。
吉田の腹からは、腸がベロンとはみ出ており、ほかほかと湯気を立てていた。
吉田は新堂めがけて包丁を振り下ろしたが、必死だった新堂は渾身の力を込めて足をけり出すと、見事吉田の腹に命中した。
吉田はそのままもんどり打って、階段を真っ逆さまに転げ落ちて行った。
腸が階段にぺちゃりと張り付いていたが、吉田は動いていた。
「し・・・ん・・・どう・・・」
ものすごい目で新堂を睨みつけるが、新堂は四つん這いになって這いずりながら階段を上がり、なんとか自分の部屋に逃げ込んだ。
ドアの向こうから、ズルズルビチャビチャ階段を何かが這い上がってくる音が聞こえてくる。
新堂は、鍵のないドアのノブに手をかけ、ドアが開かないように必死に体を踏ん張らせた。
「新堂、開けろ。お前を殺してやんだからよぉ」
そして、がりがりとドアを爪で引っかく音が聞こえる。
「開けろ」
突然、ドアを破って包丁を握った手を突き出てきた。
包丁は、新堂の左腕の肉をそいだ。
「新堂、見ぃつけた」
その時、ドアに空いた穴から、汚れた白いブラウスを着た手が伸びてきた。
高木ババアの手が、吉田の手を掴んだ。
「やめてくれよ。もう少しであいつをのこと殺せるんだよ、うぎゃああ!」
ドアの向こう側から吉田の悲鳴が聞こえてくるのと、穴に手が引きずり込まれるのはほとんど同時だった。
そのあと一切の物音は聞こえなくなり、床には包丁だけが落ちていた。
新堂が時計を見ると、針は12時を指していた。
10分ほどして、新堂は慎重にゆっくりとあたりに気を配りながらドアを押し開いた。
ドアの向こうに何もなかった。吉田の死体も、腹から引きずり出された腸も、血の跡さえも。
痕跡といったら、ドアに空いた穴と、床に落ちた包丁だけ。
新堂が1階に降りると、リビングの窓ガラスは割れたままで、カーテンが風にたなびいていた。
そして、玄関に目をやると、そこにも包丁を立てた跡がくっきりと残っていた。
確かに吉田は来たが、12時を過ぎると同時に忽然と姿を消してしまった。
次の日、新堂はこっぴどく親に叱られた。
本当のことを言っても信じてもらえないため、友達がきて大騒ぎしたって嘘をついて謝った。
そして、必死に頼み込んで部屋に鍵をつけてもらった。
学校にも吉田は来なかった。
突然家出してしまったそうで、行方不明になった。
「ここに集まった残りの連中は、もう高木ババアの話を知っているから、お前に話してんだ。
どうして、わざわざこんな話をしたのか不思議なのか?悪く思わないでくれ、俺も必死なんだ。
毎晩、吉田の野郎が俺の夢の中に現れんだよ。手足をちぎられ、内臓をそっくり抜かれた血まみれの吉田がよ。
そんで、毎週10人に高木ババアの話しろって脅かすんだ。俺がその約束を守り続けなければ、俺のことを殺しにやってくるんだってよ
俺、死ぬのは怖いからよ。たとえ誰にどう思われようと、俺はこの約束を守らなきゃなんねえ」
新堂エンディング№04:高木ババア
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今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
1週目クリア
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング№03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング№10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング№13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング№03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情のはざま→福沢エンディング№20~22
6人目は新堂誠を選択→シナリオ:呪いのマンシール→新堂エンディング№06~08
7人目はシナリオ:記憶のほころび→七話目エンディング№01~03
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1人目は岩下明美を選択→シナリオ:偽りの愛→岩下エンディング№01・02
2人目は新堂誠を選択。
新堂誠は、3年D組の生徒。
お前がどうして新聞部に入ったのか教えてくれ
- なんとなく入りました
- 前から憧れてました
- 何かお勧めのクラブは?
それより俺みたいな奴が、こんな女子供が喜びそうな集会にいるのは場違いだって感じてんじゃねえか?」
- そんなこと思ってません
- はい、正直に言うと感じてます
- 何に興味を持つかは人それぞれです
それじゃあ、さっそく話を始めるとするか。ところで、この部屋、なんか怪しくねえか?
霊ってのはよ、人間の気を敏感に察知するっていうからな。それでな、霊は恐怖心を持った奴の周りに集まるっていうじゃねえか。
怖い話をしているとき、突然背筋にゾクって寒気が走る。あれはま、そいつの背中を霊が撫でてるんだぜ。
坂上、お前、まさか怖がったりしてねえよな」
- 怖いです
- 怖くありません
噂話って知ってるか?口裂け女とか、人面犬、トイレの花子さんや、メリーさん。そういう噂、お前は馬鹿にしているか?」
- している
- していない→新堂エンディング№01:吉田の執念
- 何とも言えない
「そうかい。そんなの子供だましだよって鼻で笑ってんだな、お前は。だとしたら、不幸だな」
新堂のクラスメートに吉田達夫という男がいた。
現実主義というか、アンチ・ロマンチストというのか、どにかく嫌な男だ。
勉強はできたけど、それだけの男で、いつも気取っていて、殴ってやりたいタイプだった。
吉田は、どんなに殴られようが絶対に抵抗しないが、きちんとそれを先生に報告していたので、いじめようとしてもいじめられない男だった。
先生の間では、成績抜群で品行方正、先生には従順でなんでも従い、問題があるとすぐに報告するため、評判が良かった。
吉田はそんな男だから、誰にも相手にされず、無視されていた。
ところが吉田は、それを喜んでいるようだった。自分が選ばれた人間にでもなったつもりで、周りを見下しているのは見え見えだった。
「お前はそんな奴には何かガツンと一発かましてやりたいと思うだろ?」
- はい→新堂エンディング№01:吉田の執念
- いいえ
だとしたら、よほどの優等生か、逆に冷たい人間なんだな」
そんな時、新堂はちょっとおもしろい話を聞いた。高木っていう名前のババアの話だった。
そのババは、ませたガキが好きそうなフリルのついた真っ赤なロングスカートをはいている。
足が隠れて地面を引きずるほどのロングスカートのため、高木ババアのスカートの裾はボロボロだった。
そのババアは腰まである伸ばし放題の髪の毛をいつも垂らしていて、顔を隠している。
その顔を見た人の話では、すげえ厚化粧をしており、あの顔を見たら、二度と忘れらないとのこと。
そして、上は白のブラウスを着ているのだが、お姫様が着てるようなヒラヒラのついたかわいらしいブラウスなのだが、ずっと着続けているせいか、元の色がわからないぐらい薄茶色に変色していた。
ところどころ穴もあいているし、ツギハギだらで、すんげえ臭い。
そして、ものすごいスピードでピョンピョン飛びながら歩いていた。
「時速100キロで、ピョコピョコ飛び跳ねながら走る厚化粧をした薄汚ねえババア。そんな奴に追いかけられたら、お前どうする?
お前、笑ったか?今、笑ったんじゃねえのか?」
- 笑った→新堂エンディング№01:吉田の執念
- 笑っていない
高木ババアが何でピョコピョコ飛び跳ねるのかは、片足がないからだ。
なんでも、交通事故でトラックのタイヤに足を巻き込まれたらしいんだけど、そのとき家族も一緒にいて、息子夫婦に3人の孫、全員、即死だった。
死体は原形をとどめておらず、ミンチみたいにグチャグチャになったらしい。
トラックの運転手は酔っぱらっていたらしく、事故に気づかず、子供をタイヤに挟んだまま、10キロ以上走ったそうだ。
それで高木ババアは発狂してしまい、その後、家族みんな死んだショックから立ち直れず、自宅の布団で、誰にも看取られずに死んだらしい。
死後1カ月以上経って発見されたそうで、今現れる高木ババアは幽霊だ。
幽霊だからこそ、時速100キロで走ることができるのだ。
高木ババアが臭いのは死後1カ月以上経っているからで、あの服装は事故にあったときの服装とのこと。
そして、高木ババアは、ある目的があって狙った奴の前に現れ、高木ババアに狙われると絶対に逃げられないため最後らしい。
高木ババアは、最初は何気なく声をかけてくる。
「身寄りのない年寄りの思い出話を聞いてくだされ」
ついうっかり情けをかけて相手をしたら、もう最後だ。いきなり、あの時の事故の話を始めるのだ。
「私には、人様のうらやむのうな家族がいましての。よくできた息子に、よくできた嫁。目に入れても痛くないほどのかわいい孫が3人。
そりゃあもう、とても幸せな家族でした。仏様には毎日お礼を言いました。
でも、ひどいもんです。仏様なんて、いやぁしません。私の家族はみんな死んでしまいました。
交通事故でした。私を残して家族全員、トラックに轢かれちまったんでごぜえます」
そんなこと言われたら、聞いているほうは、慰めないわけにはいかない。
「その分、おばあさんが頑張って生きなきゃ」
「ありがとうごぜえます。こんなババアに気を遣ってくださって。
あんた様は、死んでいった家族たちのことがかわいそうだと思いますかのう?」
「ええ」
誰だって、反射的にそう答えるだろう。
すると、高木ババアは、薄汚れたスカートをめくって、こう言う。
「私しゃあ、そん時の事故で片足をなくしちまいました。私のなくなった片足、不憫だとは思いませんかのう?」
(さあ、どうだ。お前の心は恐怖心でいっぱいだろう。さあ、おとなしく私に食われてしまうがいいよ)
まるでそんなことを言っているように、醜く化粧されたシワだらけの顔をこっちに向けてニタニタと笑う。
もう、走り出すしかない。
走って走って、心臓が口からこぼれるほど走りまくって逃げる。
そして、もうだめだ、走れない、と思って、ふらふらの足を休め、全身で息をして、ふっと顔を上げると、高木ババアがニタニタ笑いながら、目の前に立っている。
「よくできた息子は、腹の上を裂かれて真っ二つ。内臓が飛び出て、どこにいったかわからなくなりましてのう。かわいそうだと思うなら、あんたの内臓をくださいな」
また逃げる。逃げて、逃げて、逃げまくる。
足が痙攣して転ぶ。
後ろからゆっくりと足音が聞こえてきて、真後ろで止まる。
「よくできた嫁は、両腕を轢き潰されてしにました。かわいそうだと思うなら、あんたの両腕くださいな。
目に入れても痛くないほどかわいい3人の孫。
一人は両足を潰されました。
一人は首を潰されてしにました。
そして、最後の一人は、タイヤに巻き込まれて体中の皮膚をひっぺがされて真っ赤になって死にました。
家族はみんな、挽き肉みたいにグジャグジャになって、死んだんでごぜえます。
かわいそうだと思うでしょう?
だったら、あんたの体をくださいな」
そして、首を絞め上げられ、ジ・エンド。
死んだあと、死体は見つからない。全身は死んでいった家族に分け与えられるから。
「この話を聞いた奴はよ、1週間以内に必ず高木ババアに会うっていうぜ。
俺は、お前に話したんだからな。ここに集まっている残りの5人は関係ねえぜ。
お前、笑っているのか?それとも、震えているのかよ。
そう心配すんなよ。実は助かる方法もあるんだぜ」
「助かる方法を知りたいか?」
- 知りたい
- 別に知りたくない
1週間以内に誰でもいいから5人以上の右足を集めるんだ。お前が高木ババアの代わりをやればいいんだよ」
(高木ババアは、本当にいるのか?)
- いるわけない
- きっといる
新堂さんは、僕を驚かそうとしてこんな作り話をしているんだ。)
新堂エンディング№02:高木ババアなんて怖くない
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今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
1週目クリア
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング№03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング№10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング№13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング№03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情のはざま→福沢エンディング№20~22
6人目は新堂誠を選択→シナリオ:呪いのマンシール→新堂エンディング№06~08
7人目はシナリオ:記憶のほころび→七話目エンディング№01~03
2週目プレイ開始!
1人目は岩下明美を選択→シナリオ:偽りの愛→岩下エンディング№01・02
2人目は新堂誠を選択。
新堂誠は、3年D組の生徒。
お前がどうして新聞部に入ったのか教えてくれ
- なんとなく入りました
- 前から憧れてました
- 何かお勧めのクラブは?
それより俺みたいな奴が、こんな女子供が喜びそうな集会にいるのは場違いだって感じてんじゃねえか?」
- そんなこと思ってません
- はい、正直に言うと感じてます
- 何に興味を持つかは人それぞれです
それじゃあ、さっそく話を始めるとするか。ところで、この部屋、なんか怪しくねえか?
霊ってのはよ、人間の気を敏感に察知するっていうからな。それでな、霊は恐怖心を持った奴の周りに集まるっていうじゃねえか。
怖い話をしているとき、突然背筋にゾクって寒気が走る。あれはま、そいつの背中を霊が撫でてるんだぜ。
坂上、お前、まさか怖がったりしてねえよな」
- 怖いです
- 怖くありません
噂話って知ってるか?口裂け女とか、人面犬、トイレの花子さんや、メリーさん。そういう噂、お前は馬鹿にしているか?」
- している
- していない
- 何とも言えない
「そうか、お前は信じるのか。どうやら、お前の言葉は信じて良さそうだな」
新堂のクラスメートに吉田達夫という男がいた。
現実主義というか、アンチ・ロマンチストというのか、どにかく嫌な男だ。
勉強はできたけど、それだけの男で、いつも気取っていて、殴ってやりたいタイプだった。
吉田は、どんなに殴られようが絶対に抵抗しないが、きちんとそれを先生に報告していたので、いじめようとしてもいじめられない男だった。
先生の間では、成績抜群で品行方正、先生には従順でなんでも従い、問題があるとすぐに報告するため、評判が良かった。
吉田はそんな男だから、誰にも相手にされず、無視されていた。
ところが吉田は、それを喜んでいるようだった。自分が選ばれた人間にでもなったつもりで、周りを見下しているのは見え見えだった。
「お前はそんな奴には何かガツンと一発かましてやりたいと思うだろ?」
- はい
- いいえ
そんな時、新堂はちょっとおもしろい話を聞いた。高木っていう名前のババアの話だった。
そのババは、ませたガキが好きそうなフリルのついた真っ赤なロングスカートをはいている。
足が隠れて地面を引きずるほどのロングスカートのため、高木ババアのスカートの裾はボロボロだった。
そのババアは腰まである伸ばし放題の髪の毛をいつも垂らしていて、顔を隠している。
その顔を見た人の話では、すげえ厚化粧をしており、あの顔を見たら、二度と忘れらないとのこと。
そして、上は白のブラウスを着ているのだが、お姫様が着てるようなヒラヒラのついたかわいらしいブラウスなのだが、ずっと着続けているせいか、元の色がわからないぐらい薄茶色に変色していた。
ところどころ穴もあいているし、ツギハギだらで、すんげえ臭い。
そして、ものすごいスピードでピョンピョン飛びながら歩いていた。
「時速100キロで、ピョコピョコ飛び跳ねながら走る厚化粧をした薄汚ねえババア。そんな奴に追いかけられたら、お前どうする?
お前、笑ったか?今、笑ったんじゃねえのか?」
- 笑った
- 笑っていない
お前も吉田と同類だ。
さっきの話、覚えているか?この部屋には、無数の霊が集まっているって話をだよ。
吉田もいるぜ。そう、吉田はすでにこの世の人間じゃないからな。
さあ、目を凝らしてみろよ。見えんだろ?大きく見開いた目玉をぎらつかせている、血まみれになった吉田の顔がよ。
どうだ?見えたか?
この集会が終わった後、吉田はお前に憑いていくみたいだぜ。
お前が鳴神学園の七不思議に加わる日も、そう遅くなさそうだ」
新堂エンディング№01:吉田の執念
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今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
1週目クリア
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング№03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング№10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング№13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング№03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情のはざま→福沢エンディング№20~22
6人目は新堂誠を選択→シナリオ:呪いのマンシール→新堂エンディング№06~08
7人目はシナリオ:記憶のほころび→七話目エンディング№01~03
2週目プレイ開始!
1人目は岩下明美を選択
岩下明美は3年A組の生徒。
「坂上君は、人に裏切られたことあるの?」
- あります
- ありません
- 答えたくないです
- あります
- ありません→シナリオ:命の値段
- 答えたくないです
あなたは人に裏切られ、同時にまた人を裏切っている。正直な人ね。でも、それが普通の人間だと思うわ。
人間は結構知らずに他人を裏切っているものよ。人が人を裏切るって簡単なことなのよ。そして良心は痛まないわ。うふふ。あなただって人の10人や20人平気で裏切っているんだから。例えば、両親の期待。あなたは裏切り続けたのじゃないかしら。でも、あなたの心は痛まないでしょ。それから友人。友人との約束を破ったあるんじゃなくて。
人間ってね、とても勝手な生き物だわ。裏切ることは簡単にやってのけるのに、裏切られることはとっても嫌いなのよ。
そして、裏切った事実は記憶の奥に消し去るくせに、裏切られた記憶はいつでも引き出せるよう引き出しの一番前にしまっておく。
きちんと、人を裏切ったことを認められる人間だもの、あなた、偉いわ。好きになってしまいそうよ、あなたのこと。
人によっては、裏切られることが美徳だと考える人もいるわね。私は、そういう人を偽善者って呼ぶことにしているわ。
だって、人に裏切られた喜んだり、すぐに許せてしまうような人間を、あなたは信じられる?そんな奴こそ、私は許せない。
私はね、裏切られることが大嫌い。もし私を裏切る奴がうようものなら、殺してやる。人を裏切るんだったら、死ぬ覚悟で臨まなくちゃね。
私ね、今までに人に裏切られたことないの。私はね、人に裏切られるくらいなら、先に裏切ってあげるの。だってそうでしょう?自分が嫌な思いをするのよ。だから、自分が嫌な思いをする前に、相手に嫌な思いをさせることにしているのよ。
相手が起こそうとしている間違いを、起こす前に教えてあげることは、とても正しい行為ね。
だから、私は相手を裏切ろうが傷つけようが心が痛んだこともないのよ。私は正しいことをしているんですもの。
あなた、汗をかいてるわ。私が拭いてあげましょう。逃げなくてもいいのよ。
親切で、言ってるの。あなたが私の親切を無碍にするということは、立派な裏切り行為よ。
私ね、生まれたからには、死ぬまで幸せで満足のいく人生を送りたいとおもっているの。
いいえ、思っているだけじゃなくて、私は実行するわ。私の幸せな人生を邪魔する奴だから、当然の報いとして死んでもらうの。
私の親切を無駄にしないでね。
そう、いい子ね。あなたの汗が一滴残らずなくなるまで、拭いてあげる。だから、おとなしくしていなさいね。
ほら、きれいになった。
いいこと、せっかく私が汗を拭いてあげたんだから、もう汗を流さないでね。あなたが汗を流すとね、私の親切が無駄になってしまうの。
せめて、私の話が終わるまでは汗なんか流さないで。あなたが私を裏切らないのなら、これから先あなたのこと、目をかけてあげてもいいわ。
だから、私を裏切らないで。これから私が話すのは、人を裏切ることなんかなんとも思っていない人間の話
そういえば、あなたは、人と付き合ったことある?
今あなたが付き合っているのなら、それとも、もしこれから誰かと付き合おうというのなら、いつか必ず別れというもおが訪れるでしょうね。その時、あなたから別れてあげるのよ。
ようは、あたが苦しまなければいいんですものね。愛すれば愛するほど、別れは辛くなるものよ。
私に興味ある?もちろん人を好きになったことも、お付き合いしたこともあるわよ。でも、私は人に裏切られたことが一度もないから。
相手が私の事を心から相手していることがわかったら、別れてあげるわ。私が泣くのは嫌ですもの。
だって、恋愛なんて必ずどちらかが傷つくのよ。私の場合、たまたま相手が傷ついているだけですもの。別れるのが嫌ならが、最初から付き合わなければいいんですもの。
相手を愛する気持ちが、強ければ強いほど、別れは悲惨になるものだから。でも、そういうのって、第三者として見ているのはおもしろいわね。
だから、私も近くに仲のいいカップルがいると、ついつい注目してしまうわ」
岩下のクラスの仲のいいカップルがいた。
名前を佐藤直之と本田佐知子といった。
「ねぇ、愛し合う二人に終止符が打たれる場合、あなたはどんな理由が多いと思うかしら?」
- 二人の誤解
- 性格の食い違い
- 気持ちが冷めたとき
「もちろん、そういうこともあるでしょうね。
でも、一番多いのはそうじゃないわ。どちらかの気持ちが冷めるときよ。
人間の感情ほど当てにならないものはないから、うふふ。そんなものを頼りに恋愛は始めるでしょう?
だから、愛情なんて簡単に冷めるわ。くだらないきっかけで燃え上がった愛情は、くだらないきっかけで冷めるものよ。
そのきっかけで一番多いものはね、心変わりというやつよ。
目の前に食べたこともない、おいしそうな食べ物があったら、あなたはどうする?とりあえず、食べてみるんじゃないかしら?
それで、食べたあとはその人次第ね。今まで食べていたものの方がおいしいと思う人いれば、新しい食べ物に心を奪われてしまう人もいる。
でもね、一番多いのは両方とも食べ続けたいと思う人ね。恋愛もそれと一緒よ。ただ、食べるものに感情という厄介なものがあるというだけの違いね」
岩下、佐藤、本田の3人は1年生の時、同じクラスで、その頃から、佐藤と本田は意識し合っていた。
1年生の3学期が始まったとき、新しいクラス委員を決めるのだが、本田が図書委員に決まった。
すると図書委員は各クラスに2名いるのだが、本田が2人目の図書委員に立候補した。
佐藤も本田も目立たない平凡な高校生だった。そんな本田が、図書委員に立候補するということは、一大決心だったに違いない。
それから、二人の仲は急速に進展していき、みんなも気づき始めて噂するようになった。
まわりが噂するようになってから、帰宅部の二人は一緒に登下校するようになった。
二人は人気者というわけじゃなかったが、みんなから嫌われているわけでもなかったので、誰もがごく普通に温かく見守り、放っておいたから、二人の仲は進展した。
佐藤と本田は、別に誰もがうらやむようなカップルというわけでなく、ごく普通の仲の良いカップルだった。
誰もがうらやむようなカップルとは、外見も経歴も非の打ち所のないようなカップルのことだ。
2年生になり、岩下、佐藤、本田はまた同じクラスになった。
ある日、佐藤の前に、及川由紀が現れた。
及川は人のものを欲しがる人間だった。幸い人のものは取ろうとしなかったけれど、いつもみんなのものを物欲しそうな顔で見ている卑しい人だった。しかも、その人が大事そうに使っていたり、大事そうにしているものを欲しがる。
本田はポーカーフェイスができない人だったので、佐藤と付き合っている時も幸せそうにしていた。
及川は、本田が幸せそうに付き合う佐藤を欲しくてたまらなくなってしまった。
及川は、派手な顔立ちをしており、男の扱いにも手慣れていた。ボーイフレンドは何人もいたけど、特定の彼氏はいなかった。
一つの食べ物じゃ満足できない典型的なタイプで、おいしいものをたくさんわまりに置いといて、食べたいものを食べたいときに食べるタイプだった。
ひと月も経たないうちに、及川は誰が見たってはっきりとわかるほど、あからさまに行動を始めた。
岩下は噂話に聞いてきただけだで見たわけじゃなかったが、及川は佐藤と本田のデートにまで割り込んでいたみたいだ。二人ともあまり隠し事とかうまいほうじゃなかったから、及川の前でデートの約束でもしたのだろう。
そして、佐藤と本田は、今までのような楽しい顔をあまり見せなくなった。
別の女のに言い寄られてもはっきりとしない彼、ほかの女が言い寄ってきているのに何も言わない彼女。表面的には言葉にしないけれど、二人は本当に自分が愛されているのか、不安になったのだろう。
本田は、もともと明るい子ではなかったが、このころから一層暗くなった。
佐藤は、本田にあまり近づかないようになり、及川といることのほうが多くなった。
そして、本田も二人に近づかなくなった。
それでも佐藤は、本田のことに未練があったのか、及川がいないときだけ、本田に申し訳なさそうに近寄って行った。
そんなある日、及川は、「本田さんのことが嫌いなんだったらはっきり言ってよ!あたし、こんなに佐藤くんのこと、好きなのに!」とみんなの前でそんなことを言って泣き出した。もちろんウソ泣きだろうけど。
そして、及川は本田のところに行き、「本田さん、あたしたち友達でしょ?佐藤くんのことはっきりしてよ。これじゃ、佐藤くんがかわいそう」と言った。
本田は何も答えず、佐藤も本田に声は掛けなかった。
二人の付き合った半年間は恋愛ごっこだった。
少なくとも佐藤にとっては、本当に相手のこと好きだったのではなく、人を好きになれるのであれば誰でもよかったのだろう。
だって、最初に行動を示したのは本田だったし、佐藤はその誘いに乗っただけ。
きっと佐藤は、自分をリードしてくれる人ならば誰でもよく、自分をリードしてくれる人がより魅力的な人であれば、すぐに鞍替えする男だった。
それから1週間も経たないうちに佐藤は行動を起こした。
皆の前で佐藤は本田に向かってきっぱりと「悪いけど、俺はもう君とは付き合えないから」と言ったのだ。
及川がそうしろって詰め寄ったのだろうが、今までの佐藤なら絶対にできなかったはずだ。
でも、簡単にやってのけたということは、佐藤は付き合う相手によって人間が変わるタイプだったのだ。
結局、本田は何も言えなかった。
それから、佐藤は本田のことなんか見向きもしなくなり、本田も佐藤には一切近づかなくなった。
及川が佐藤とべたついていたのも3日くらいだった。
傷ついたプライドも元に戻ったし、それまで放っておいた男友達を遊ぶ方がよっぽど楽しいことを思い出した及川は、付きまとう佐藤が疎ましくなり、手のひらを返したように冷たくなった。
及川にとっては、佐藤はあんまりおいしい食べ物じゃなかったのだ。見た目はすこぶるおいしそうに見えたのに、味見してみたら、どこにでもある味だった。
そして、佐藤は完全に捨てられらた。
佐藤が及川に捨てられてすぐのこと、本田がまた佐藤に接近し始めた。
本田は佐藤のことが真剣に好きだったので、及川に弄ばれた佐藤がかわいそうに思え、そんなときこそ自分がついていてあげなければならないという使命感でも芽生えたのだろう。
そして、佐藤はまた本田と付き合い始めた。
しかし、一度裏切りの味を覚えた飼い犬は、その味が忘れられず、その味を求めて同じ失敗を繰り返すものだ。
そして、及川もせっかく手に入れたものがまた離れてしまったので、おもしろくなかった。
学習できない及川は、今まで以上に仲良くなっていた佐藤と本田を、今まで以上に邪魔するようになったが、同じく学習できない本田も及川に何も言えなかった。
しかし、佐藤は少し学習したようで、及川に「俺が好きだったのは本田さんなんだ」と言った。
プライドが音を立てて崩れて行った及川は、怒りで本物の涙を浮かべ「ひどいよ!本気ですきだったのに!」と言って、教室を飛び出した。
岩下は、及川がどんな反撃をするのか興味津々だったが、次の日から及川はとことん二人を無視した。
それから2週間ほどして、今まで話しかけてきたことのない及川が、岩下に相談しに来た。
岩下にとって、人の悩みにを共有することは、その問題に巻き込まれるということなので、人の相談に乗ることは、死んでも嫌なことだった。だから、及川を無視していると、及川は嘘泣きで勝手に悩みを打ち明け始めた。
「私、子供ができちゃったみたいなの。佐藤くんの子供みたい。私、どうしていいかわかんないよ」
及川は、本田以外のクラスの女子全員に同じことを相談していた。
佐藤に真っ先に相談すればいい話を、他の人に打ち明けていることから、その話が嘘だっていうことは誰にでもわかったが、みんなは野次馬だった。
一瞬にして及川は悲劇のヒロインの地位を奪い取り、佐藤に極悪人という役を与えることにもなった。
クラスの女子は、責任をとるよう佐藤に詰め寄り、悪態を浴びせた。
思い当たる節があったのか佐藤は反論せず、本田も何も言わなかった。
その日の夜、佐藤は自分の部屋で首を吊って死んだ。自殺だった。
遺書には、及川の妊娠のことについては何も触れていなかったが、悪いのは自分だ、という類のことが震えた文字で書かれていた。
佐藤の性格からいって、責任をとらなればならないとい罪悪感に駆られたのだろう。
翌日、及川は、「私が悪いんじゃないわ!私は被害者なのよ!」と言いながら教室で泣きじゃくった。
及川の話を聞てい佐藤に詰め寄った女子たちは、自分たちのせいで佐藤がしんでしまった恐怖で、涙を流していた。
クラスで泣かなかった女子は、岩下と本田だけだった。
「大事な時にはっきりと自分の気持ちを伝えられなかった本田さん、騙されていることがわかっていながら誘いに乗ってしまった佐藤くん、自分の欲しいものはどんなことをしてでも手に入れたがる欲張りの及川さん。あなたは、誰が一番悪いと思う?」
- 及川由紀→岩下エンディング№01:偽りの愛
- 佐藤直之
- 本田佐知子
どちらかを選ばないということは、二つのどちらも選べる可能性をいつまでも残しておきたいからでしょう?私だったらそんな男、絶対に許さない。
でも、そんなこと起こるわけないわ。だって、私がそんな男のことを好きになるわけないもの。だから、私は誰にも裏切られない。誰も私を裏切ることはできないのよ。うふふふ。
あた、あなた、汗をかいているのではなくて?せっかく私が汗が拭いてあげたというのに、私の事裏切るの?・・・そう、違うのね」
佐藤が死んで何週間か経ったあと、岩下は放課後の教室でぼんやりしていたら、肩を叩かれた。
振り向くと本田だった。
お互い興味がなかったので、岩下と本田が近寄ったのはこれが初めてだった。
「何かしら?私、自分の時間を邪魔されたくないのよ。用があるのならが、はっきりと言ってほしいんだけれど」と岩下は言った。
本田は無表情で岩下のことを見ていた。
普段の岩下は相手の顔を見るとたいていの場合、その人が何を考えているのかがわかるのだが、この時の本田が何を考えているかはわからなかったため、思わず警戒した。
「岩下さんって、ずうっと私たちのこと見てたでしょ?」
岩下は、本田のことを鈍くさい女の子と思っていたが、本田は岩下が観察していることに気づいていたのだ。
裏切られた気分になった岩下は、初めて本田に興味を示した。
「ええ、去年、あなたが図書委員に立候補する前からね」
すると、本田は笑った。佐藤と一緒にいるときの笑顔を岩下にくれた。
「知っていたわ。話したことがなかったけれど、私たち事、ずっと見守ってくれたのね。ありがとう」と言って、本田は頭を下げた。
岩下は、面倒な問題に巻き込まれたくなかったので、ただ見ていただけなのだが、本田は勘違いして、岩下に感謝していた。
「だからね、岩下さんにだけは教えてあげる。今ね、佐藤君は私のところにいるの」
「どういうこと?」
「来ればわかるわ。このことは誰にも話したくなかったんだけど、私たちのことを見ていてくれた岩下さんになら、教えていいと思ったの。だから、ね?」
岩下は都合のいい相手にされるのはごめんだと思ったが、一度だけ本田を信じてみることにした。
「ええ、いいわよ」
「うれしい!今日は一緒にかえりましょう」
「ええ」
そして、岩下と本田は一緒に学校を後にした。
「ねえ、聞いて。赤ちゃんができていたのは、及川さんだけじゃなかったの。私もね、うふふ。もう何カ月もアレが来ないのよ」
そう言って微笑みながら、本田は嬉しそうに自分のお腹を撫でた。
「佐藤君は死んでしまったけど、私にはこの子がいるわ。だから、大切に育てなければいけないの」
しばらく歩いているうちに、本田は岩下を一軒の家に案内した。人通りの少ない裏路地に面したその家は、壁にツタが這い、もう何年も使われていないかのように古びていた。
「ここは?」
「昔、私の家族が住んでいたところよ。でも、今は誰もいないの」
「そんなところに入ってもいいのかしら?」
「ここの大家さんはうちの親戚だから。ほら、鍵だって持ってるし」
本田はポケットから出した鍵で、玄関の扉を開けた。
「私たちの新居にようこそ」
玄関を入ってする、なんともいえない匂いがして、岩下は鼻を押さえた。
そして、室内には羽音がうるさいぐらいに大きなハエがたくさん飛び回っていた。
でも、本田は岩下の不快な反応など気にならないかのように、下駄箱からレースのついて可愛らしいスリッパを出して、岩下に勧めてくれた。
そして、本田は、奥の部屋に向かって、こう声をかけた。
「ただいま、佐藤君」
「えっ!」
「最初はびっくりするかもしれないけど」と言って、本田は暖簾をそっと上げて奥の部屋を見せてくれた。
天井から針金で吊るしてあるそれは、レインコートみたいな形に見えた。
でもそれは、全身から剥した皮だった・・・
本田は、変わり果てた姿の佐藤を針金から外して、胸に抱きしめた。
「告別式のとき、クラスみんなで佐藤君の家に行ったでしょ?あの後、私一人で戻って、佐藤君に会いに行ったんだけど、我慢できなくなっちゃった。
棺桶の中の佐藤君はね、とても苦しそうな顔をしていたの。きっと一人で寂しかったんでしょうね。だから、私、ここに連れてきてあげたの」
本田は、佐藤の家族の目を盗んで、お通夜の夜に死体を盗んできたのだ。
「ここなら、ずっと一緒にいられるわ。この子だって、パパがいた方が寂しくないもんね。
お肉は全部食べちゃった。私の血となり、肉となって、この子の栄養になるように。骨ははだ、とってあるわ。剥製ができたら、中に詰めるのよ。この子に見せてあげましょう」
皮は、背中できれいに切り開かれていた。
そして、本田は、まるで服でも着るかのように、佐藤の皮膚を腕に通して、自分の腕と顔に被った。
緑色に変色し、ひどい腐臭を放っていた佐藤の皮膚の下から、うっすらと本田の笑顔が透けて見えた。
あんなに楽しそうな本田を、岩下は学校では見たことがなかった。
「よかったわね」と岩下が言うと、本田は、「岩下さんなら、きっとわかってくれると思ってた」と言った。
突然、本田が着ていた皮を脱いで、言った。
「見つけた」
「何が?」
「蛆よ!」
本田は鬼のような形相になって、佐藤に湧いた蛆を潰し始めた。
岩下は、いつまでもそんなところにいるのは嫌なので、黙って帰ってしまった。
「本田さんは、今でも学校に通ってきているわ。お腹はなかなか大きくならないけど、今でも彼の子がいるって信じているみたいね。
あたなも私のクラスにきたら、誰が本田さんかすぐにわかるはず。彼女の身体からは、染みついて離れない腐臭がするからね。うふふふ」
『この女は、本田さんの様子を観察して楽しんでいるんだ。いっそ、この女に張り付いた皮をはがしてやろうか』
そんな強い不信感を坂上は持った。
岩下エンディング№02:二人だけの世界
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26:いつも一緒、ずっと一緒
今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
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4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング№03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情のはざま→福沢エンディング№20~22
6人目は新堂誠を選択→シナリオ:呪いのマンシール→新堂エンディング№06~08
7人目はシナリオ:記憶のほころび→七話目エンディング№01~03
2週目プレイ開始!
1人目は岩下明美を選択
岩下明美は3年A組の生徒。
「坂上君は、人に裏切られたことあるの?」
- あります
- ありません
- 答えたくないです
逆にあなたは今までに人を裏切ったことはあったと思うかしら?」
- あります
- ありません→シナリオ:命の値段
- 答えたくないです
あなたは人に裏切られ、同時にまた人を裏切っている。正直な人ね。でも、それが普通の人間だと思うわ。
人間は結構知らずに他人を裏切っているものよ。人が人を裏切るって簡単なことなのよ。そして良心は痛まないわ。うふふ。あなただって人の10人や20人平気で裏切っているんだから。例えば、両親の期待。あなたは裏切り続けたのじゃないかしら。でも、あなたの心は痛まないでしょ。それから友人。友人との約束を破ったあるんじゃなくて。
人間ってね、とても勝手な生き物だわ。裏切ることは簡単にやってのけるのに、裏切られることはとっても嫌いなのよ。
そして、裏切った事実は記憶の奥に消し去るくせに、裏切られた記憶はいつでも引き出せるよう引き出しの一番前にしまっておく。
きちんと、人を裏切ったことを認められる人間だもの、あなた、偉いわ。好きになってしまいそうよ、あなたのこと。
人によっては、裏切られることが美徳だと考える人もいるわね。私は、そういう人を偽善者って呼ぶことにしているわ。
だって、人に裏切られた喜んだり、すぐに許せてしまうような人間を、あなたは信じられる?そんな奴こそ、私は許せない。
私はね、裏切られることが大嫌い。もし私を裏切る奴がうようものなら、殺してやる。人を裏切るんだったら、死ぬ覚悟で臨まなくちゃね。
私ね、今までに人に裏切られたことないの。私はね、人に裏切られるくらいなら、先に裏切ってあげるの。だってそうでしょう?自分が嫌な思いをするのよ。だから、自分が嫌な思いをする前に、相手に嫌な思いをさせることにしているのよ。
相手が起こそうとしている間違いを、起こす前に教えてあげることは、とても正しい行為ね。
だから、私は相手を裏切ろうが傷つけようが心が痛んだこともないのよ。私は正しいことをしているんですもの。
あなた、汗をかいてるわ。私が拭いてあげましょう。逃げなくてもいいのよ。
親切で、言ってるの。あなたが私の親切を無碍にするということは、立派な裏切り行為よ。
私ね、生まれたからには、死ぬまで幸せで満足のいく人生を送りたいとおもっているの。
いいえ、思っているだけじゃなくて、私は実行するわ。私の幸せな人生を邪魔する奴だから、当然の報いとして死んでもらうの。
私の親切を無駄にしないでね。
そう、いい子ね。あなたの汗が一滴残らずなくなるまで、拭いてあげる。だから、おとなしくしていなさいね。
ほら、きれいになった。
いいこと、せっかく私が汗を拭いてあげたんだから、もう汗を流さないでね。あなたが汗を流すとね、私の親切が無駄になってしまうの。
せめて、私の話が終わるまでは汗なんか流さないで。あなたが私を裏切らないのなら、これから先あなたのこと、目をかけてあげてもいいわ。
だから、私を裏切らないで。これから私が話すのは、人を裏切ることなんかなんとも思っていない人間の話
そういえば、あなたは、人と付き合ったことある?
今あなたが付き合っているのなら、それとも、もしこれから誰かと付き合おうというのなら、いつか必ず別れというもおが訪れるでしょうね。その時、あなたから別れてあげるのよ。
ようは、あたが苦しまなければいいんですものね。愛すれば愛するほど、別れは辛くなるものよ。
私に興味ある?もちろん人を好きになったことも、お付き合いしたこともあるわよ。でも、私は人に裏切られたことが一度もないから。
相手が私の事を心から相手していることがわかったら、別れてあげるわ。私が泣くのは嫌ですもの。
だって、恋愛なんて必ずどちらかが傷つくのよ。私の場合、たまたま相手が傷ついているだけですもの。別れるのが嫌ならが、最初から付き合わなければいいんですもの。
相手を愛する気持ちが、強ければ強いほど、別れは悲惨になるものだから。でも、そういうのって、第三者として見ているのはおもしろいわね。
だから、私も近くに仲のいいカップルがいると、ついつい注目してしまうわ」
岩下のクラスの仲のいいカップルがいた。
名前を佐藤直之と本田佐知子といった。
「ねぇ、愛し合う二人に終止符が打たれる場合、あなたはどんな理由が多いと思うかしら?」
- 二人の誤解
- 性格の食い違い
- 気持ちが冷めたとき
「もちろん、そういうこともあるでしょうね。
でも、一番多いのはそうじゃないわ。どちらかの気持ちが冷めるときよ。
人間の感情ほど当てにならないものはないから、うふふ。そんなものを頼りに恋愛は始めるでしょう?
だから、愛情なんて簡単に冷めるわ。くだらないきっかけで燃え上がった愛情は、くだらないきっかけで冷めるものよ。
そのきっかけで一番多いものはね、心変わりというやつよ。
目の前に食べたこともない、おいしそうな食べ物があったら、あなたはどうする?とりあえず、食べてみるんじゃないかしら?
それで、食べたあとはその人次第ね。今まで食べていたものの方がおいしいと思う人いれば、新しい食べ物に心を奪われてしまう人もいる。
でもね、一番多いのは両方とも食べ続けたいと思う人ね。恋愛もそれと一緒よ。ただ、食べるものに感情という厄介なものがあるというだけの違いね」
岩下、佐藤、本田の3人は1年生の時、同じクラスで、その頃から、佐藤と本田は意識し合っていた。
1年生の3学期が始まったとき、新しいクラス委員を決めるのだが、本田が図書委員に決まった。
すると図書委員は各クラスに2名いるのだが、本田が2人目の図書委員に立候補した。
佐藤も本田も目立たない平凡な高校生だった。そんな本田が、図書委員に立候補するということは、一大決心だったに違いない。
それから、二人の仲は急速に進展していき、みんなも気づき始めて噂するようになった。
まわりが噂するようになってから、帰宅部の二人は一緒に登下校するようになった。
二人は人気者というわけじゃなかったが、みんなから嫌われているわけでもなかったので、誰もがごく普通に温かく見守り、放っておいたから、二人の仲は進展した。
佐藤と本田は、別に誰もがうらやむようなカップルというわけでなく、ごく普通の仲の良いカップルだった。
誰もがうらやむようなカップルとは、外見も経歴も非の打ち所のないようなカップルのことだ。
2年生になり、岩下、佐藤、本田はまた同じクラスになった。
ある日、佐藤の前に、及川由紀が現れた。
及川は人のものを欲しがる人間だった。幸い人のものは取ろうとしなかったけれど、いつもみんなのものを物欲しそうな顔で見ている卑しい人だった。しかも、その人が大事そうに使っていたり、大事そうにしているものを欲しがる。
本田はポーカーフェイスができない人だったので、佐藤と付き合っている時も幸せそうにしていた。
及川は、本田が幸せそうに付き合う佐藤を欲しくてたまらなくなってしまった。
及川は、派手な顔立ちをしており、男の扱いにも手慣れていた。ボーイフレンドは何人もいたけど、特定の彼氏はいなかった。
一つの食べ物じゃ満足できない典型的なタイプで、おいしいものをたくさんわまりに置いといて、食べたいものを食べたいときに食べるタイプだった。
ひと月も経たないうちに、及川は誰が見たってはっきりとわかるほど、あからさまに行動を始めた。
宿題が出されると、及川は本題がいようがお構いなしに、佐藤の側にいって、猫なで声で「この問題わかんないんだぁ」と言う。
別に佐藤は勉強ができるほうではなく、本当に勉強を教えてほしければ、ほかにいくらでもいるのにも拘らず、わざわざ佐藤を選んで、必要以上に身体をくっつけてスキンシップをとる。
本田は悲しそうな顔はするが、及川にやめてとも言えず、それを黙って受け入れている佐藤にだらしがないとも言えなかった。
及川は、本田がいないところでも佐藤にモーションをかけていたが、佐藤は落ちなかった。
簡単に手に入らなければ、なおさらそれが欲しくなる。だから、及川は二人の間にずれが生じるよう強硬手段に出た。
及川は、本田に佐藤からの偽の手紙を出した。
それには、もし本当に自分のことが好きだったら、髪の毛を赤く染めて耳にピアスをしてほしい、と書かれており、本田は佐藤のことを思い喜んでそうした。
でも、佐藤はそういうのが嫌いだったので、本田に対してとても怒ったし、先生にも注意された。
本田はすぐに髪の毛を黒く染め直したが、ピアスの穴は二度と戻らない。それから二人の仲はギクシャクし始めた。
本田は、もともと明るい子ではなかったが、このころから一層暗くなった。
佐藤は、本田にあまり近づかないようになり、及川といることのほうが多くなった。
そして、本田も二人に近づかなくなった。
それでも佐藤は、本田のことに未練があったのか、及川がいないときだけ、本田に申し訳なさそうに近寄って行った。
そんなある日、及川は、「本田さんのことが嫌いなんだったらはっきり言ってよ!あたし、こんなに佐藤くんのこと、好きなのに!」とみんなの前でそんなことを言って泣き出した。もちろんウソ泣きだろうけど。
そして、及川は本田のところに行き、「本田さん、あたしたち友達でしょ?佐藤くんのことはっきりしてよ。これじゃ、佐藤くんがかわいそう」と言った。
本田は何も答えず、佐藤も本田に声は掛けなかった。
二人の付き合った半年間は恋愛ごっこだった。
少なくとも佐藤にとっては、本当に相手のこと好きだったのではなく、人を好きになれるのであれば誰でもよかったのだろう。
だって、最初に行動を示したのは本田だったし、佐藤はその誘いに乗っただけ。
きっと佐藤は、自分をリードしてくれる人ならば誰でもよく、自分をリードしてくれる人がより魅力的な人であれば、すぐに鞍替えする男だった。
それから1週間も経たないうちに佐藤は行動を起こした。
皆の前で佐藤は本田に向かってきっぱりと「悪いけど、俺はもう君とは付き合えないから」と言ったのだ。
及川がそうしろって詰め寄ったのだろうが、今までの佐藤なら絶対にできなかったはずだ。
でも、簡単にやってのけたということは、佐藤は付き合う相手によって人間が変わるタイプだったのだ。
結局、本田は何も言えなかった。
それから、佐藤は本田のことなんか見向きもしなくなり、本田も佐藤には一切近づかなくなった。
及川が佐藤とべたついていたのも3日くらいだった。
傷ついたプライドも元に戻ったし、それまで放っておいた男友達を遊ぶ方がよっぽど楽しいことを思い出した及川は、付きまとう佐藤が疎ましくなり、手のひらを返したように冷たくなった。
及川にとっては、佐藤はあんまりおいしい食べ物じゃなかったのだ。見た目はすこぶるおいしそうに見えたのに、味見してみたら、どこにでもある味だった。
そして、佐藤は完全に捨てられらた。
佐藤が及川に捨てられてすぐのこと、本田がまた佐藤に接近し始めた。
本田は佐藤のことが真剣に好きだったので、及川に弄ばれた佐藤がかわいそうに思え、そんなときこそ自分がついていてあげなければならないという使命感でも芽生えたのだろう。
そして、佐藤はまた本田と付き合い始めた。
しかし、一度裏切りの味を覚えた飼い犬は、その味が忘れられず、その味を求めて同じ失敗を繰り返すものだ。
そして、及川もせっかく手に入れたものがまた離れてしまったので、おもしろくなかった。
学習できない及川は、今まで以上に仲良くなっていた佐藤と本田を、今まで以上に邪魔するようになったが、同じく学習できない本田も及川に何も言えなかった。
しかし、佐藤は少し学習したようで、及川に「俺が好きだったのは本田さんなんだ」と言った。
プライドが音を立てて崩れて行った及川は、怒りで本物の涙を浮かべ「ひどいよ!本気ですきだったのに!」と言って、教室を飛び出した。
岩下は、及川がどんな反撃をするのか興味津々だったが、次の日から及川はとことん二人を無視した。
それから2週間ほどして、今まで話しかけてきたことのない及川が、岩下に相談しに来た。
岩下にとって、人の悩みにを共有することは、その問題に巻き込まれるということなので、人の相談に乗ることは、死んでも嫌なことだった。だから、及川を無視していると、及川は嘘泣きで勝手に悩みを打ち明け始めた。
「私、子供ができちゃったみたいなの。佐藤くんの子供みたい。私、どうしていいかわかんないよ」
及川は、本田以外のクラスの女子全員に同じことを相談していた。
佐藤に真っ先に相談すればいい話を、他の人に打ち明けていることから、その話が嘘だっていうことは誰にでもわかったが、みんなは野次馬だった。
一瞬にして及川は悲劇のヒロインの地位を奪い取り、佐藤に極悪人という役を与えることにもなった。
クラスの女子は、責任をとるよう佐藤に詰め寄り、悪態を浴びせた。
思い当たる節があったのか佐藤は反論せず、本田も何も言わなかった。
その日の夜、佐藤は自分の部屋で首を吊って死んだ。自殺だった。
遺書には、及川の妊娠のことについては何も触れていなかったが、悪いのは自分だ、という類のことが震えた文字で書かれていた。
佐藤の性格からいって、責任をとらなればならないとい罪悪感に駆られたのだろう。
翌日、及川は、「私が悪いんじゃないわ!私は被害者なのよ!」と言いながら教室で泣きじゃくった。
及川の話を聞てい佐藤に詰め寄った女子たちは、自分たちのせいで佐藤がしんでしまった恐怖で、涙を流していた。
クラスで泣かなかった女子は、岩下と本田だけだった。
「大事な時にはっきりと自分の気持ちを伝えられなかった本田さん、騙されていることがわかっていながら誘いに乗ってしまった佐藤くん、自分の欲しいものはどんなことをしてでも手に入れたがる欲張りの及川さん。あなたは、誰が一番悪いと思う?」
- 及川由紀
- 佐藤直之
- 本田佐知子
でも、人を愛し、お互いが惹かれ合い付き合うようになれば、必ず別れが待っている。
人と付き合うならば、どんな結末が待っているにせよ、別れることを最初から考えておかなければならないのよ。
だから、こんな結果になってしまったけれど、付き合い始めた二人にも責任はあったんじゃないかしら?
もし、本田さんがあのとき図書委員に立候補していなければ、何もなかったし、何も起きなかった。
それに佐藤くんもその気にならなければ、死ななくてすんだんじゃないかしら。
あなたは、人を愛することができるかしら?たとえ、どんな結末が待っていたとしてもね。うふふふ。
私は、それでも、人を愛することができるわ。私が満足するためよ。
何なら、私の事好きになってみる?その愛に私が答えるかどうかは別としてね。うふふふ。
あなた、汗はかいてない?
ほら、額のところ。私がせっかく汗をふいてあげたのに。
私の親切を裏切るようなことはしないでね。
額に浮き出た玉の汗がもし流れ落ちようものなら、私はあなたに裏切られたことになるわ。せめて私の話が終わるまででいいから私を悲しませないでちょうだいね」
佐藤が死んで何週間か経ったあと、岩下は放課後の教室でぼんやりしていたら、肩を叩かれた。
振り向くと本田だった。
お互い興味がなかったので、岩下と本田が近寄ったのはこれが初めてだった。
「何かしら?私、自分の時間を邪魔されたくないのよ。用があるのならが、はっきりと言ってほしいんだけれど」と岩下は言った。
本田は無表情で岩下のことを見ていた。
普段の岩下は相手の顔を見るとたいていの場合、その人が何を考えているのかがわかるのだが、この時の本田が何を考えているかはわからなかったため、思わず警戒した。
「岩下さんって、ずうっと私たちのこと見てたでしょ?」
岩下は、本田のことを鈍くさい女の子と思っていたが、本田は岩下が観察していることに気づいていたのだ。
裏切られた気分になった岩下は、初めて本田に興味を示した。
「ええ、去年、あなたが図書委員に立候補する前からね」
すると、本田は笑った。佐藤と一緒にいるときの笑顔を岩下にくれた。
「知っていたわ。話したことがなかったけれど、私たち事、ずっと見守ってくれたのね。ありがとう」と言って、本田は頭を下げた。
岩下は、面倒な問題に巻き込まれたくなかったので、ただ見ていただけなのだが、本田は勘違いして、岩下に感謝していた。
「及川さんが妊娠したとき、女の子はみんな佐藤くんのことをいじめたわ。でも、岩下さんだけは佐藤くんをいじめなかった。本当にありがとう」と、また本田は頭を下げた。
「佐藤くんが死んだときも、女の子はみんな泣いたでしょ。あれは悲しくて泣いてくれたんじゃない。みんな、いつ自分が責任を取らされるのかが怖くて泣いていただけなのよね。
でも、その時も岩下さんだけは泣かないでくれた。私、嬉しかったわ。本当にありがとう」
岩下は、本田は馬鹿じゃない。少なくとも、ほかの女子よりもはるかに頭がいい女だ、と考えを改めた。
だから、岩下は本田のことがいろいろと知りたくなり、少しだけ微笑んだ。本田が、岩下がほほ笑むことですべてを理解してくれるはずだから。
本田は岩下のサインに応えて、言った。
「私はね、岩下さんが揉め事が嫌いなの知ってるわ。嫌な問題には、誰だって巻き込まれたくないものよね。私もそうよ。
でも、問題って自然に起きてしまうから。
それが運命っていうものでしょ。だから、できるだけ運命に逆らいたくないの」
驚いたことに岩下と本田は似たようなことを考えていた。
ただ一つ違ったところは、本田は運命を受け入れるタイプで、岩下は自分で運命を作るタイプだということ。
本田は、自分自身が行動することは最小限に食い留めて、あとは自然の成り行きに任せていた。だから、どんな結果になろうとも、それを現実として受け止める強さを持っていたのだろう。
本田にしてみれば、佐藤と付き合い始めたときから、どんな結果が待ち受けていようとも、それが運命だと割り切っていた。及川に邪魔されることも、佐藤が自殺することも、それは起こるべくして起きたことだと納得していた。
「あなた、頭良かったのね。どうして、馬鹿のふりをするの?」と岩下が質問した。
本田は、「馬鹿のふりなんかしてないわ。私、馬鹿だから、あまり物事を考えないようにしているだけなの」と答えた。
「あなたとは、いいお友達になれそうね。本田さん、用はそれだけ?それだけならばいっしょに帰らないこと?」
「岩下さんが揉め事が嫌いなのはわかっているわ。だから、迷惑はかけたくないの。
でも、どうしても岩下さんに立ち会ってほしいことがあるの。佐藤くんと私のことを温かく見守ってくれた岩下さんにだけは、どうしても見ていてほしいの」
「何を見るの?」
「手伝ってくれなんて言わないわ。もう準備もすませてあるのよ。
だから、見ているだけでいいの。絶対に迷惑はかけないわ」
「ええ、いいわ」
「来て」
本田は理科室に入っていった。理科室には誰もいなかった。
そして、本田は中から鍵をかけた。
理科室の奥には大きな机があり、そこに及川が寝かされていた。
「クロロホルムなの」と本田が言った。
及川は本当にぐっすりと眠っていた。
机の横には、メスやらハサミやらが並べられていた。
「私の家はね、産婦人科なの」
本田の一言で、岩下は、本田がこれから行おうとしているすべてを理解した。本田は、及川を手術してあげるつもりだった。
岩下は、言われた通り黙って見ることにした。
本田は、及川の着ているものをきれいに脱がせていった。そして、脱がせた服も、ていねいにたたんだ。
及川が生まれたままの姿になると、机に縛り付ける作業に移った。本田は、初めてとは思えないくらい手際が良かった。
準備が整うと、本田は適当なメスを一本手に取ると、岩下を見てにっこりと微笑んだ。
「本当はね、堕胎のときにはお腹を切り裂いたりしないのよ。でもね、今は仕方ないの」
本当は、頑張んなさいと言ってあげたかったが、声をかけることも手伝いをしたことになるから、ただの傍観者である岩下は、笑い返した。
本田は、及川の下腹部に赤いマジックで横線を引き、その線に沿ってメスを当てた。すぐに、ぷくっと赤い血玉が浮き出た。
その時、突然、及川が目を覚まし、「痛い!」と叫んだ。
及川はすぐに自分の状態に気付き、信じられないような顔をした。
本田は、「私が責任を持ってすべて解決してあげるから」と言って、メスを及川のお腹に押し当てた。
「やめてよ!」とガラスが割れるほど甲高い声で、本気で及川は取り乱して、もがいた。
「助けてよ!んぐ・・・」
わめく及川の口に、本田はさっき脱がしたスキャンティを押し込み、ガムテープで口を塞いだ。
「大丈夫よ、及川さん。私ね、これでも産婦人科の娘なのよ。だから、私がちゃんと処理してあげるから」
「んー!んうーー!」
「及川さん、何言ってるおかさっぱりわからない。ちょっと痛いかもしれないけど、安心して。私ね、及川さんのことをちっとも恨んでないのよ。逆に佐藤くんの赤ちゃんを宿してくれたことに感謝してるぐらいよ。
そうだ、ごめんなさいね、消毒するのを忘れていたわ」
本田は理科室の棚に目を止めると、嬉しそうに目を細めた。そして、その棚から大きな瓶を取り出し、及川の頭の横に運んできた。
「んーー!んー!」
その瓶を見て及川は金切声をあげた。その瓶は、大きな蛙のホルマリン漬けだった。
本田が瓶の蓋を開けると、強烈なホルマリンの香りがあたりに充満した。
本田は、瓶の中に手を突っ込むと、ホルマリンを掬いだして、及川のお腹に塗りたくった。
及川は、顔中ぐちゃぐちゃにして、鼻水まで垂らして、泣いていた。
「これで大丈夫よ。ちゃんと消毒できてるから。
あのね。私ね、佐藤くんの赤ちゃんが欲しいの。
及川さんはいらないんでしょ?
だからね、代わりに私がもらうの。私のお腹の中で育ててあげるの」
本田は、一気にメスをお腹に押し込んだ。
及川は、自分で自分の頭をがんがんと机にぶつけて暴れてた。
そのせいで、本田の手元が滑り、赤い線通りにメスを入れることができなかった。
脱脂綿を用意してしていなかったので、血がとめどもなくあふれ出た。
突然、本田が切れた。
「きいっ!もう、うるさいな!」
本田はメスを投げ出し、切り裂いた傷口に両手を突っ込むとそれを上下に引き裂いた。
及川は、ぎゃあぎゃあとわめいていた。
本田は、切り裂いた及川のお腹の手を突っ込んで、ごそごそいじくりまわしていたが、「邪魔だなぁ」と言って、腸を引きずり出した。
腸を引きずり出されても、及川はしぶとく暴れていたので、本田は「及川さん、そんなに暴れたら手術が失敗しちゃうよ」と声をかけていた。
「もう、いい加減におとなしくして!」と本田は言って、ホルマリンの瓶を持ち上げると、及川の顔にぶっかけた。
中の蛙も飛び出して、それを及川の顔に押し付けていた。
蛙のお腹が弾けると、本田は、蛙の内臓をつぶして、及川の顔に擦り付けていた。
その頃、ようやく及川はおとなしくなった。
仕事がやりやすくなった本田は、及川のお腹の中からいろんなものを取り除いて、机の上に並べて行った。
「これだわ」
本田が取り出して嬉しそうに抱きしめたのは、及川の子宮だった。
及川は妊娠なんかしていないのに、本田はあの中に佐藤の赤ちゃんが入っていると思い込んでいた。
「佐藤くんの赤ちゃんは、私が大事に育ててあげるの」と何度も繰り返しながら、本田はその子宮を食べてしまった。
食べ終わると、本田は本当に満足そうに何度も深いため息をつき、きれいな涙を流した。
そして、「及川さん、及川さん」と及川の肩に手をかけて揺するが、及川は何も答えなかった。
「気持ちよさそうに眠っちゃってる」と言った本田は、取り出した及川の内容物を元に戻し始めた。もちろん、元の位置に戻すことは不可能で、適当に押し込めていた。
一応、中にあったものを全部、本田の納得する位置に押し込んだから、ポケットから裁縫セットを取り出して、及川の裂けたお腹を縫い始めたが、本田は裁縫は得意じゃないみたいだった。
どうにかこうにか作業は終了したが、きちんと縫い合わせれていないから、ところどころ隙間ができていた。
本田は、及川の口からガムテープをはずし、口の中に押し込んだスキャンティを取り出した。そして、縛っていた縄を解き、脱がした服を全部きれいに着せてあげ、最後に蛙で汚れた顔をハンカチで拭いた。
その時、岩下は蛙がいなくなっていることに気付いた。内臓といっしょに及川のお腹の中に押し込まれたようだ。
「及川さん、子宮がなくなっちゃったから、もう赤ちゃんは産めなくなっちゃうけれど、ごめんなさいね。でも、あなただって少しは責任があるのよ。
岩下さん、待たせてしまって、ごめんなさいね」
その後、岩下と本田は一緒に帰ったのだが、本田は何度も「これで佐藤くんの赤ちゃんが産める。これで私も幸せになるわ」と言っていたが、返り血を浴びた真っ赤なセーラー服を着ていた本田は、一緒に帰る途中に捕まってしまった。
岩下も一緒に連れて行かれて、いろいろ質問されたが何も答えなかったし、本田も岩下のことは何も言わなかったので、岩下は共犯にされることはなかった。
岩下は、本田に脅かされて一緒に付き合わされたことになった。そして、黙っていたのも、精神的なショックで何もしゃべれなかったからということで解決した。
事件が事件だったので、本田は罪に問われなかったが、学校は辞めることになってしまった。
本田は今、精神の病気の治療をしているが、いつ治るかわからないそうだ。
本田は、頭が狂っているから、佐藤の赤ちゃんを妊娠しているから、大事をとって病院に入っていると思って、幸せな日々を送っている。
この前岩下がお見舞いに行ったら、本田は嬉しそうに、どんな名前を付けるか、どんな子に育てたいか、そんな未来なことばかり話していた。
「あと数か月経ってから、本田さんは佐藤くんの赤ちゃんを産むかもしれないわ。神様がいるならが、きっと本田さんの思いを叶えてくださるわ。この世に奇跡は、数えきれないほどあるんですもの。
だから、私も楽しみにして毎月一度は本田さんのお見舞いに行ってあげるのよ。
だって友達ですもの。
これで私の話は終わり。
あなた、汗びっしょりね。
私との約束、守れなかったわね。
私を裏切ったら償いをしてもらうから。
私ね、最初に裏切られたことが今までに一度もないって話したでしょ?
私を裏切った人はね、なぜか死んでしまうの。
私ね、時々記憶をなくしてしまうの。そうすると、私を裏切った人が死んでしまってるの。
裏切った人が死んでしまえば、誰も私を裏切ったことにならないでしょ。
だから、私は裏切られたことがないの。
私、死ぬまで絶対に人に裏切られたくないの。
せっかく、この世に生まれてきたんですもの。誰よりも、幸せな人生を送りたいわ、うふふふ」
岩下エンディング№01:偽りの愛
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21:赤ちゃん、私の赤ちゃん
22:赤ちゃんと引き換えに
今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情の狭間→福沢エンディング20~22
6人目は新堂誠を選択→シナリオ:呪いのマンシール→新堂エンディング06~08
結局7人目は現れなかったので、みんなは部室を出ようと席から立ちあがる。
坂上は、「待ってください」とみんなに声を掛ける。
「僕が怖い話をします。七不思議は七つ揃わないと終わりませんから。皆さんに気に入ってもらえるような怖い話ができるように頑張りますから、どうか席に戻ってもらえないでしょうか」
坂上の言葉に一同は顔を見合わせると、ぞろぞろと席に戻った。
昔、この付近に大きな団地があったが、老朽化のため10年くらい前に取り壊されてしまって、今はない。
その団地にある少年が住んでいた。
彼は引っ越してて来たばかりでまだ友達がおらず、いつも団地の隅にあるブランコで遊んでいた。
そんなある日、誰かが少年に声を掛けてきた。
「お前、一人で何してんだよ」
少年に声を掛けてきたのは、少年と近い歳の活発そうな少年だった。
「俺たちと一緒に遊ばねえか?仲間にも紹介してやるよ」
そう言って、彼は少年の手を引っ張って、公園の茂みの中に連れて行った。
少年が連れていかれた場所には、少年と近い歳ごろの子供たちが数人おり、思い思いに遊んでいた。
「こいつも今日から仲間だ」と紹介されると、他の子どもたちは素直に受け入れてくれた。
「皆この団地に住んでいる奴らなんだぜ。お前も今日から俺たちに仲間だ。これからは一緒に遊ぼうぜ」
「うん、よろしく」
こうして一人ぼっちだった少年に友達ができ、その日から7人は何をするのも一緒に行動した。
ある夏の暑い日のこと。
リーダー格の少年が、みんなにある提案をした。
「学校に行ってみたくねえか?」
少年は、学校についてよく知らなかった。
他の子どもたちは小学校はいつも行っているところとのことで、夏休みで誰もいない近くにある高校へ探検に行く、とのことだった。
子供たちは興味津々で探検に出かけた。
子供たちがやってきたのは、鳴神学園だった。
リーダー格の少年の案内で、破れたフェンスを潜り抜けて校内に侵入した子供たちは、木造の旧校舎にやってきた。
この頃、旧校舎はすでに立ち入り禁止だったが、入り口に立ち入り禁止のテープが貼られているだけで、子供たちが侵入するには簡単だった。
リーダー格の少年は、「探検するにはぴったりの場所だろ?今から探検しよーぜ」と言った。
嫌がる子供もいれば、乗り気の子供もおり、結局、子供たちは旧校舎に入ることにした。
旧校舎の中は、昼間でも薄暗く、木の匂いに満ちていた。
そして、子供たちが歩く度、床はぎいぎいと音を立てた。
最初は、その音に怖がっていた子供たちだったが、だんだんと恐怖が薄れていき、好き勝手に遊び回り始めた。
「これから、みんなで何かして遊ぼうぜ」
彼はどんな遊びをしたと思いますか?
- かくれんぼ→引っ越してきた少年→七話目エンディング02:さよなら、思い出達還る
- かくれんぼ→他の誰か→七話目エンディング03:僕の還る場所
- 宝探し
よーし、じゃあ決まりだな。それど宝物だけど、お前らなにか持ってるか?」
リーダー格の少年に促され、皆は自分のポケットを探ってみた。
「あの、これはどうかな」
そう言って、少年が持ち出したのは一つのオルゴールだった。
そのオルゴールは、少年の父親の出張先のおみやげで、彼はそれをとても大切にしており、いつも肌身離さずポケットの中に忍ばせて、暇なときにはオルゴールの音色を聞いたりして、楽しんでいた。
少年はせっかくなので、みんなにオルゴールの音色を聞かせてあげた。
「いいんじゃないか。じゃあお前、これをどっかに隠して来いよ」
リーダー格の少年に言われ、少年は自分の宝物を隠すために、旧校舎を歩き回った。
少年は2階にある教室の窓際の机の中にオルゴールを隠すことにした。
少年はオルゴールを隠し終わると、皆の元に戻った。
「じゃあ、宝探し始めようぜ」
皆は、少年が隠したオルゴールを探すため、それぞれが思い思いの場所を探し始めましたが、どこを探しても見つけることができませんでした。
「俺たちの負けだよ。一体どこに隠したんだよ」
少年はオルゴールが見つからなかった皆を得意そうに見ていた。
「案内するね」
少年は皆を引き連れて、自分がオルゴールを隠した場所へ案内した。
「あれ、ない・・・」
少年が2階の教室の窓際の机の中に手を入れてみたところ、どういうわけか隠したオルゴールがない。
「本当にここに入れたのかよ。違うところに隠したのを間違えたんじゃねえのか」
「どこ行っちゃったんだろ?」
「ねえ、他の場所も探してみよう」
子供たちは旧校舎を探し回ったが、オルゴールは見つからなかった。
「そうだ、この中の誰かが盗ったんだろ!僕のオルゴールを!」
「そんなことするわけねえだろ」
「何でオルゴールが無いんだよ!返せ!僕のオルゴールを返せ!」
少年はそう言うとリーダー格の少年に掴みかかった。
「何するんだよ、離せ!」
リーダー格の少年は掴みかかった少年を突き飛ばした。
「付き合ってらんねーぜ。皆、行こうぜ」
「ボクを泥棒呼ばわりするなんて、とんでもないね」
「皆で探して無かったんだからしょうがないじゃん」
「そんなに大事なものなら、宝探しなんかに使わなければいいでしょ」
子供たちは、自分たちを泥棒呼ばわりする少年を置いて、出て行ってしまった。
一人残された少年は、一人でオルゴールを探し続けた。
彼にとって、オルゴールはとても大事なものだった。今はもう死んでしまった父親からの最後の贈り物だったから・・・
「そして少年は、今でもオルゴールを探し続けているんです・・・」
「坂上君・・・そんな・・・」
「君は、修一なのかい?」
「でも。彼はあの日以来、行方不明のはずでは・・・」
「僕は長い間探し続け、そして確信した。やっぱり、皆の中の誰かが嘘を吐いていたんだって。だから僕は待っていた。みんながここへ帰って来るのを。ほら、聞こえる・・・あのオルゴールの音色が・・・持ってるんじゃないか。ひどいなあ。僕は、ずっとそのオルゴールを探してたんだよ。ずっと。ずーーーーっと」
皆はこわばった表情で坂上を見ていた。
(そんな表情をするのは、後ろめたい気持ちがあるからだ。全部吐き出させて徹底的に探さないと)
坂上は、皆を部室の壁まで追い詰めた。
その時、細田が一気に駆けだした。
「逃げるな!」
坂上の言葉に、細田は体をビクっとこわばらせて、床に倒れ込んだ。
坂上は、倒れてピクピクと震えている細田に馬乗りになると、彼の身体を仰向けにして、その腹の中に手を突っ込んだ。
「あぎゃああああ!」
豚が泣くような悲鳴をあげながら、細田がジタバタを暴れた。
他の皆は、そんな細田を見つめながら、ただ呆然と立ち尽くしていた。
肉を、骨を、臓物を、全てひっくり返して見たが、オルゴールは見つからなかった。
空っぽになった細田を置いて、坂上は残りの皆に向き合った。
「本当に、持ってないのよ」
「ダメだよ、君たちの言葉はもう信じられない。僕がきちんと、全員を隅々まで調べさせてもらうよ」
結局、隅々まで調べたが、誰もオルゴールを持っていなかった。
赤く染まる部室を後にして、坂上は部屋を出た。
見つからない僕の宝物。きっと、誰かがまだ、隠し持っているに違いない。誠兄ちゃんたちが持っていないなら、この学園の誰かが持っているはずだ。先生、生徒・・・片っ端から調べていけばきっと見つかるよね。
さあ、行こう。僕の、宝物を探しに。
七話目エンディング01:宝物を探しに
今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情の狭間→福沢エンディング20~22
6人目は新堂誠を選択→シナリオ:呪いのマンシール→新堂エンディング06~08
結局7人目は現れなかったので、みんなは部室を出ようと席から立ちあがる。
坂上は、「待ってください」とみんなに声を掛ける。
「僕が怖い話をします。七不思議は七つ揃わないと終わりませんから。皆さんに気に入ってもらえるような怖い話ができるように頑張りますから、どうか席に戻ってもらえないでしょうか」
坂上の言葉に一同は顔を見合わせると、ぞろぞろと席に戻った。
昔、この付近に大きな団地があったが、老朽化のため10年くらい前に取り壊されてしまって、今はない。
その団地にある少年が住んでいた。
彼は引っ越してて来たばかりでまだ友達がおらず、いつも団地の隅にあるブランコで遊んでいた。
そんなある日、誰かが少年に声を掛けてきた。
「お前、一人で何してんだよ」
少年に声を掛けてきたのは、少年と近い歳の活発そうな少年だった。
「俺たちと一緒に遊ばねえか?仲間にも紹介してやるよ」
そう言って、彼は少年の手を引っ張って、公園の茂みの中に連れて行った。
少年が連れていかれた場所には、少年と近い歳ごろの子供たちが数人おり、思い思いに遊んでいた。
「こいつも今日から仲間だ」と紹介されると、他の子どもたちは素直に受け入れてくれた。
「皆この団地に住んでいる奴らなんだぜ。お前も今日から俺たちに仲間だ。これからは一緒に遊ぼうぜ」
「うん、よろしく」
こうして一人ぼっちだった少年に友達ができ、その日から7人は何をするのも一緒に行動した。
ある夏の暑い日のこと。
リーダー格の少年が、みんなにある提案をした。
「学校に行ってみたくねえか?」
少年は、学校についてよく知らなかった。
他の子どもたちは小学校はいつも行っているところとのことで、夏休みで誰もいない近くにある高校へ探検に行く、とのことだった。
子供たちは興味津々で探検に出かけた。
子供たちがやってきたのは、鳴神学園だった。
リーダー格の少年の案内で、破れたフェンスを潜り抜けて校内に侵入した子供たちは、木造の旧校舎にやってきた。
この頃、旧校舎はすでに立ち入り禁止だったが、入り口に立ち入り禁止のテープが貼られているだけで、子供たちが侵入するには簡単だった。
リーダー格の少年は、「探検するにはぴったりの場所だろ?今から探検しよーぜ」と言った。
嫌がる子供もいれば、乗り気の子供もおり、結局、子供たちは旧校舎に入ることにした。
旧校舎の中は、昼間でも薄暗く、木の匂いに満ちていた。
そして、子供たちが歩く度、床はぎいぎいと音を立てた。
最初は、その音に怖がっていた子供たちだったが、だんだんと恐怖が薄れていき、好き勝手に遊び回り始めた。
「これから、みんなで何かして遊ぼうぜ」
彼はどんな遊びをしたと思いますか?
- かくれんぼ
- 宝探し
リーダー格の少年がそう提案し、皆はかくれんぼすることにした。
かくれんぼで誰が鬼になったと思いますか?
- 引っ越したきた少年→七話目エンディング02:さよなら、思い出達
- 他の誰か
鬼が数を数える声と同時に、子供たちは散り散りに走り出し、それぞれが思い思いの場所に身を潜めた。
少年は、近くの教室にあった掃除道具入れに身を隠すことにした。
少年が道具入れのドアを閉めると、目の前には完全な闇が広がっていた。
完全な闇の中で、少年はひたすら扉が開くまで待っていた。
けれど、扉は一向に開かれることはなかった。
それどころか、外からの声が一切聞こえてこなかったが、少年は扉が閉まっているからだと多い、さして気にも止めなかった。
そうこうしている内に、少年はだんだんと眠くなってきて、そのままうとうとと眠りに落ちてしまった。
次に目が覚めた時、少年は途端に怖くなり、「怖いよ!出して!!」とがむしゃらにあちこち叩いた。
途端に扉が開いて、少年は勢いよく放り出されて、床に膝を強く打ち付けた。
「痛いよぉ、お母さん・・・」
少年のすすり泣く声が教室に響いたが、誰もそれを聞いている人はいなかった。
少年が掃除用具入れから出た時には、外はすっかり日が落ち、空には丸い月が煌々と光っていた。
少年は痛む膝をさすりながら立ち上がり、よろよろと廊下に出た。
月明かりのみで照らされた廊下は、端まで光が届かず暗い闇が横たわっていた。
少年は、泣きそうになるのを必死に堪えながら、一歩踏み出した。
お母さんのところに帰りたい・・・その思いだけが少年を突き動かしていた。
その時、前方の闇の中、さらにその闇よりも濃く、濃縮された漆黒の何かが少年に近づいてきていた。
目を凝らしてみると、それを一本の腕で、なめらかに動きながらこちらに手招きしていた。
「ねえ、僕、お母さんのところに帰りたいよ。僕をおうちにかえしてよ」と少年は、手に母親のところに帰りたいと訴えてみた。
すると、手はぴたりと動きを止め、少年に囁いた。
「ダメよ。あなたはまだかくれんぼの途中でしょ。見つけてもらわなければ帰れないわ」
「じゃあ僕はどうしたらいいの?」
「こっちへいらっしゃい。私と一緒に待ちましょう。見つけてもらえれば、あたなはおうちに帰れるわ。さあ、私の手を取って」
少年は、その言葉を信じて、その漆黒の手を取った。
「少年は、ずっと皆が来るのを待っていました。けど、いつまでたっても皆は、少年のことを探しに来てはくれませんでした」
福沢「そんな、噓でしょ」
新堂「お前、修一って、まさか」
「誠にいちゃん、皆、どうして僕を探しに来てくれなかったの?」
新堂「修一、違うんだ。俺たちはお前のことを探したんだ。でも、いくら探しても、お前は見つからなくて、だから先に帰っちまったもんだと思って、帰っちまったんだよ。決して、お前をさがしてなかったわけじゃねえ!」
風間「そうさ、皆、お前のことをとても心配したんだ。本当だよ」
風間さん・・・望にいちゃんが恐れおののいた目で、僕のことを見ていた。
「僕知っているんだ。あの手が教えくれた。皆は僕がいなくなったことを、お母さんたちに言わなかったって」
荒井「言っても信じてもらえないと思ったんですよ。旧校舎はしらみつぶしに調べましたし、神隠しなんて非現実的なことがあるわけないと思ってましたから。だから修一君は、かくれんぼに飽きて、どこかに行ってしまったと思ったんです」
「僕はこの集会で誰かが僕の話をしてくれるんじゃないかって期待してたんだ。でも、皆は僕のことを欠片も話してくれなかった。皆、僕の事、忘れたかったんでしょ?なかったことにしたかったんでしょ?」
細田「違う!みんなはどうか知らないけど、僕は修ちゃんのことを忘れたことないよ!だって、数少ない友達だったもの。けど、あのあと団地は取り壊されることになって、皆とも離ればなれになっちゃって、だから、気付くのが少し遅れちゃっただけだよ!」
皆の言葉は嘘にまみれていた。皆から出るのは、取り繕った嘘ばかりだ。
岩下「私たちをどうするの?」
明美ねえちゃんがぼそっと呟いた。
「どうもしないよ。皆の気持ちがわかったから、僕はもう行くよ」
皆を背にして、坂上は歩き出した。 部室を出ると、そこには見慣れた闇が広がっていた。そして、その暗がりの中から、黒い美しい手が現れた。
「お友達に会えてよかったね」
「うん、でも皆、僕のことを忘れてたんだよ」
黒い手は優しく僕を抱きしめた。
「人間なんてそんなものよ。あいつらは忘れるようにできている生き物なの。でも、私は違うわ。還りましょう、私たちの居場所へ」
「うん」
手を繋いで僕らは、歩き出した。
僕は、また還っていく。この常闇の深淵へと。
七話目エンディング03:僕の還る場所
CGギャラリー:12/124
77:還ろう、あの場所へ
78:泣かないで・・・
「人間なんてそんなものよ。あいつらは忘れるようにできている生き物なの。でも、私は違うわ。還りましょう、私たちの居場所へ」
「うん」
手を繋いで僕らは、歩き出した。
僕は、また還っていく。この常闇の深淵へと。
七話目エンディング03:僕の還る場所
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77:還ろう、あの場所へ
78:泣かないで・・・
今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情の狭間→福沢エンディング20~22
6人目は新堂誠を選択→シナリオ:呪いのマンシール→新堂エンディング06~08
結局7人目は現れなかったので、みんなは部室を出ようと席から立ちあがる。
坂上は、「待ってください」とみんなに声を掛ける。
「僕が怖い話をします。七不思議は七つ揃わないと終わりませんから。皆さんに気に入ってもらえるような怖い話ができるように頑張りますから、どうか席に戻ってもらえないでしょうか」
坂上の言葉に一同は顔を見合わせると、ぞろぞろと席に戻った。
昔、この付近に大きな団地があったが、老朽化のため10年くらい前に取り壊されてしまって、今はない。
その団地にある少年が住んでいた。
彼は引っ越してて来たばかりでまだ友達がおらず、いつも団地の隅にあるブランコで遊んでいた。
そんなある日、誰かが少年に声を掛けてきた。
「お前、一人で何してんだよ」
少年に声を掛けてきたのは、少年と近い歳の活発そうな少年だった。
「俺たちと一緒に遊ばねえか?仲間にも紹介してやるよ」
そう言って、彼は少年の手を引っ張って、公園の茂みの中に連れて行った。
少年が連れていかれた場所には、少年と近い歳ごろの子供たちが数人おり、思い思いに遊んでいた。
「こいつも今日から仲間だ」と紹介されると、他の子どもたちは素直に受け入れてくれた。
「皆この団地に住んでいる奴らなんだぜ。お前も今日から俺たちに仲間だ。これからは一緒に遊ぼうぜ」
「うん、よろしく」
こうして一人ぼっちだった少年に友達ができ、その日から7人は何をするのも一緒に行動した。
ある夏の暑い日のこと。
リーダー格の少年が、みんなにある提案をした。
「学校に行ってみたくねえか?」
少年は、学校についてよく知らなかった。
他の子どもたちは小学校はいつも行っているところとのことで、夏休みで誰もいない近くにある高校へ探検に行く、とのことだった。
子供たちは興味津々で探検に出かけた。
子供たちがやってきたのは、鳴神学園だった。
リーダー格の少年の案内で、破れたフェンスを潜り抜けて校内に侵入した子供たちは、木造の旧校舎にやってきた。
この頃、旧校舎はすでに立ち入り禁止だったが、入り口に立ち入り禁止のテープが貼られているだけで、子供たちが侵入するには簡単だった。
リーダー格の少年は、「探検するにはぴったりの場所だろ?今から探検しよーぜ」と言った。
嫌がる子供もいれば、乗り気の子供もおり、結局、子供たちは旧校舎に入ることにした。
旧校舎の中は、昼間でも薄暗く、木の匂いに満ちていた。
そして、子供たちが歩く度、床はぎいぎいと音を立てた。
最初は、その音に怖がっていた子供たちだったが、だんだんと恐怖が薄れていき、好き勝手に遊び回り始めた。
「これから、みんなで何かして遊ぼうぜ」
彼はどんな遊びをしたと思いますか?
- かくれんぼ
- 宝探し
リーダー格の少年がそう提案し、皆はかくれんぼすることにした。
かくれんぼで誰が鬼になったと思いますか?
- 引っ越してきた少年
- 他の誰か
少年は百数えたあと、近くの教室から順々に探して回ったが、誰一人として見つからなかった。
やがて、校舎に茜色の陽が差し込み、周囲をオレンジ色の染め上げていく頃、少年は皆を探すことを諦めて、泣きながら家路についた。
団地に着くと、ちょうど少年の母親が買い物袋を提げて歩いているところに出くわした。
少年は母親に抱きついて、たどたどしい言葉で一部始終を母親に伝えた。
「そう、かくれんぼの途中でお友達が帰っちゃったの」
「一生懸命探したのに、見つからないんだもん。あ!」
気が付けば、少年の前方に自分を置き去りにした子供たちが楽しそうに公園ではしゃぎまわっていた。
「お母さん、あの子たちだよ。あの子たちがかくれんぼの途中で僕を放って帰っちゃったの」
「どの子かしら?」
ところが少年の母親は、彼が指さした方を見ても、首を傾げるばかり。
「お母さん、あそこだよ」
「誰もいないけど・・・」
少年は驚いて母親の顔を見た。
そして、もう一度公園を見ると、さっきまではしゃいでいた彼らはいなくなっていた。
「変な子ねえ。もうすぐご飯だから家に入りましょ」
母親はそう言うと、少年を抱きかかえて家に入った。
それからです。
少年に他人には見ることができない。不思議な彼らとのつながりができたのは。
その後、少年は父親の転勤が決まり、団地から引っ越した。
けれど引っ越した先でも、彼らは少年の前に姿を現した。
しかも、彼らは、少年が成長するにつれて同じように成長していった。
少年は、彼らとは気づかず、成長した彼らとまた友達になって、そして、そんなことを何度も繰り返した。
けれど少年は、歳をとるにつれて、それは幻だということを悟った。少年にしか見えない彼らは、少年の妄想の産物だった。そして、少年は坂上自身だった。
「そう、あなた方は、僕が生んだ幻影なんです」
「お前、何言ってるんだよ」
新堂が呆れた顔で、坂上を見る。
「今日の集会ですけど、本当は今日じゃなくて明日だったんだ。だけど僕は、今日が集会の日だと思い込んでいた。そして、扉を開けるとみんながいた。会が進むにつれて、僕は集会が今日じゃなくて明日だということを思い出した。けれど語り部はまだここにいる。皆に会いたい気持ちが、僕の記憶に妙な綻びを与えるんです。
僕はみんなことが本当に大好きだから、離れたくなかった。でも、もうそれも終わりにしなかならないんだ」
坂上の頬に涙が伝った。
「皆さん、僕はもう一人でも大丈夫です。あの時みたいな子供じゃないですから。一人でも、大丈夫ですよ。さよなら」
坂上は静かに瞳を閉じた。
・・・瞳を開けると、もうそこには皆はいなかった。
「お前、何してんだよ?」
「日野先輩」
扉を開けると、新聞部の先輩の日野がいた。
「部室の前を通ったら、灯りがついているから、誰かいるかと思って。明日の準備か?」
「なんでもないんです・・・」
「お前、何泣いてるんだ?どこか痛いのか?」
坂上はまた瞳を閉じた。
さよなら、僕の思い出達。
七話目エンディング02:さよなら、思い出達
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今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情の狭間→福沢エンディング20~22
6人目は新堂誠を選択。
新堂誠は、3年D組の生徒。
お前がどうして新聞部に入ったのか教えてくれ
- なんとなく入りました
- 前から憧れていました
ところで、お前気づいているか?この部屋、なんか怪しくないか?
霊ってのはよ、人間の木を敏感に感知するっていうからだ。
よく、怪談をすると霊が集まるというだろ?
怖い話をしているどk、突然背筋がゾグって寒気が走る。
あれはな、そいつの背中を霊が撫ででいるからだぜ。
まさか怖がったりしてねえよな。
まさか怖がったりしてねえよな。
- 怖いです→新堂エンディング07:首なし童子
- 別に怖くありません
でもよ、怖がっているのがお前じゃないとしたら、他の誰かが怖がってるのか?それを察知して霊があつまって来たのか。
だとしたら、もっと厄介だぜ。この霊たちは、これから起きる何かを予測して集まってきたことになる。この集会で何かが起こるってことさ。
シナリオ:呪いマンシール開始!
呪いのマンシールとは、子供の頃に流行ったチョコのおまけに入っているシールで、中のシールだけ欲しくて、肝心のチョコを捨ててしまって大人に怒られりしたものだ。
そのシールには天使、悪魔、神様の3種類あったが、神様のシールはキラと呼ばれており、少ししか入っていないことから、当たったらみんなで大騒ぎしてもんだった。
呪いのマンシールにある噂があった。それは、悪魔シールには数万枚に1枚、本物の悪魔を呼び出せるシールがあるというものだ。なんでも呼び出された悪魔は、呼び出した人間の願いを、その力で叶えてくれるそうだ。
お前、こんな噂信じられるか?
- 信じられる→新堂エンディング07:首なし童子
- 信じられない→新堂エンディング06:心に潜む悪魔
- そういう事もあるかもしれない
1年生の森永が、部屋を掃除したら出てきた、と言って、呪いのマンシールがコレクションされたアルバムを学校に持ってきた。
みんなが小学生の時に流行っていたので、クラスメートたちは口々に懐かしいと言っていた。
「あ、首なし童子」もあんじゃん」
「このシールってさ、ガキ相手のオモチャなのに、キャラクターのデザインがヤバいって、どっかのPTAがメーカーに文句いって生産中止になったんだろ?」
「それはガゼだぞ。本当は販売していた会社の社長が変な宗教にハマったのだ原因だってよ」
「それこそガゼじゃん」
そんな感じで、みんなで盛り上がっていたら、千葉裕樹っていう、クラスではあまり目立たないヤツが話しかけてきた。
「森永君、お願いがあるんだ。このアルバムを僕に売ってくれないか」
それで、森永はからかい半分に、5万円で売ってやるよと言った。
千葉は躊躇なく5万円を森永に渡すと、そそくさとアルバムを持って帰ってしまった。
千葉は、呪いのマンシールのコレクターだったのだ。
千葉の両親は医者だったので、安い買い物だったのだろう。
千葉の家にはアルバム十数冊におよぶ呪いのマンシールのコレクションがあったそうだ。
帰宅した千葉は、森永から買い取ったアルバムから呪いのマンシールを一つずつ丁寧に取り出し、うっとりとした表情で眺めて楽しんでいた。
「これで全種類コンプリートだ」
森永から買い取ったコレクションには、千葉がまだ持っていなかったシールが何点かあったのだ。
ふと、千葉はおかしなシールがあることに気づいた。
森永から買い取ったシールの一つに、シールの隅に小さく何か指示す手のマークが入っていた。
その時、千葉は、悪魔を呼び出せるシールの噂を思い出した。
「まさかね。でもまるで、この方向にめくれって、言っているみたいだな」
千葉がそのシールについて思いめぐらせていると、家の電話がなった。両親が不在のため、千葉が応対した。
「おい、てめえ、千葉。ふざけるんじゃねえ!」
「誰?」
「森永だ」
なぜかマジ切れしている森永に千葉が戸惑っていると、森永がこう言い出した。
「詳しいヤツに聞いたぞ。お前に売った俺のシールの中にmマニアの間では数十万えで取引されているシールがあったんだってな!!」
「どのシールの事?」
「首なし童子だよ!」
千葉が、さっきまで悪魔を呼び出せるのではないかと考えていたシールが、その首なし童子のシールだった。
だが、千葉は森永に冷静に説明した。
「それは呪いのマンアイスの方の首なし童子のことだよ。森永君から買った首なし童子はチョコの方だから。特に高値で取引されるシールじゃないんだ」
その言葉に森永は激怒した。
「嘘つけ!テメェは俺が何も知らないと思ってて、俺から安く買い叩いたんだ!」
「嘘じゃないって!それに僕は換金目的で集めているワケじゃないから、誰かに売るとか考えたこともないよ」
「テメェは信用できねえ!!」
まったく聞く耳を持たない森永に、だんだん腹が立ってきた千葉は、売り言葉に買い言葉できつく言い返してしまった。
「変な言いがかりはやめてよ。大体5万円でって言ったのは、君じゃないか」
「俺は何も知らなかったからだ!お前は、そんな俺をだましたんだ」
「話にならないね。あれはもう僕のものだから、返す気なんてないよ。もう切るね」
そう言って、千葉は電話を切った。
部屋に戻った千葉は、悪魔を呼び出せるシールをどうやって使えばいいか再び考え始めた。
お前だったら、どうするよ?シールをはがしてみる?
- はがしてみる
- 怖くてできない→新堂エンディング06:心に潜む悪魔
千葉がその呪文を唱えると、背筋を撫でられるような不気味な感覚が襲ってきた。
千葉が窓の外を見ると、さっきまでは晴れていたのに雨が降っていた。
呪文を最後まで唱えると、遠くて大きな雷鳴が響き、思わず千葉は目を閉じた。
千葉が目を開けると、着物を着た、首から上を切り取られた子供が立っていた。
噂通りシールから召喚された悪魔は、千葉の心に語り掛けてきた。
「問おう!お前の望みはなんだ」
お前だったら、こんな時は何を願う?
- 自分の未来を教えてくれ→新堂エンディング07:首なし童子
- 森永を殺してくれ
- わからない
「その願い、聞き入れた」
首なし童子をそういうと煙のように消えた。
窓の外を見ると、先ほどまでの雷鳴と打って変わって青空が広がっていた。
千葉は次の日、学校へ向かった。
教室に入った千葉の耳に入ってきたのは、森永が自殺らしい、という話題だった。
なんでも駅のホームにフラフラと入っていくのを通行人が目撃し、そのままホームに飛び込んで電車にはねられたらしい。
「首がね、まだ見つかってないらしいわよ」
「噂は本当だったんだ。これでもう僕の邪魔をするやつをいなくなったんだ。僕の呪いのマンシールコレクションは完璧になったんだ!」
学校から帰った千葉が呪いのマンシールのアルバムを見ていたとき、再び首なし童子が現れた。
「願いを聞き入れた代償として、お前の一番大事なものをもらおう」
「そんな、聞いてないよ!」
「聞かなかったお前が悪い。我が何の代償もなしに、お前に力を貸すとでも?」
千葉は困った。
一番大事なもの・・・そう考えて、千葉は自分の中に大事なものがないことに気づいた。
両親は自分が幼いころから、自分を操り人形のように扱い、自分の意思を尊重してくれることなど、一度もなかった。感謝よりも憎しみのほうが強いくらいだ。
千葉がさんざん考えた結果、自分の一番大事なものは、目の前にある呪いのマンシールのコレクションだった。
「だめだ!このコレクションは僕の命より大事なものなんだ」
「ならば、お前の首をもらうことにしよう」
「え?」
千葉が声を発した同時に鮮血があたりに舞った。
斜めになった視界に先に、自分の首のない体があった。
そして、それを最期に千葉の意識は途絶えた。
夜、いつまで経っても部屋から出てこない千葉を心配した母親が部屋に入ると、首のない千葉の死体だけが転がっていたそうだ。
そして、その片隅には、見たこともない呪いのマンシールが落ちていた。そのシールの顔は、どことなく千葉の顔に似ていたそうだ。
結局7人目は来なかったな。
新堂エンディング08:呪いのマンシール千葉
今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情の狭間→福沢エンディング20~22
6人目は新堂誠を選択。
新堂誠は、3年D組の生徒。
お前がどうして新聞部に入ったのか教えてくれ
- なんとなく入りました
- 前から憧れていました
ところで、お前気づいているか?この部屋、なんか怪しくないか?
霊ってのはよ、人間の木を敏感に感知するっていうからだ。
よく、怪談をすると霊が集まるというだろ?
怖い話をしているどk、突然背筋がゾグって寒気が走る。
あれはな、そいつの背中を霊が撫ででいるからだぜ。
まさか怖がったりしてねえよな。
- 怖いです→新堂エンディング07:首なし童子
- 別に怖くありません
でもよ、怖がっているのがお前じゃないとしたら、他の誰かが怖がってるのか?それを察知して霊があつまって来たのか。
だとしたら、もっと厄介だぜ。この霊たちは、これから起きる何かを予測して集まってきたことになる。この集会で何かが起こるってことさ。
シナリオ:呪いマンシール開始!
呪いのマンシールとは、子供の頃に流行ったチョコのおまけに入っているシールで、中のシールだけ欲しくて、肝心のチョコを捨ててしまって大人に怒られりしたものだ。
そのシールには天使、悪魔、神様の3種類あったが、神様のシールはキラと呼ばれており、少ししか入っていないことから、当たったらみんなで大騒ぎしてもんだった。
呪いのマンシールにある噂があった。それは、悪魔シールには数万枚に1枚、本物の悪魔を呼び出せるシールがあるというものだ。なんでも呼び出された悪魔は、呼び出した人間の願いを、その力で叶えてくれるそうだ。
お前、こんな噂信じられるか?
- 信じられる→新堂エンディング07:首なし童子
- 信じられない
- そういう事もあるかもしれない
ところが、いたんだよ。鳴神に昔、その悪魔を呼び出すシールを持ってた奴がな。
俺が話すのは、その悪魔のシールを手に入れた男が辿った末路だ。
1年生の森永が、部屋を掃除したら出てきた、と言って、呪いのマンシールがコレクションされたアルバムを学校に持ってきた。
みんなが小学生の時に流行っていたので、クラスメートたちは口々に懐かしいと言っていた。
「あ、首なし童子」もあんじゃん」
「このシールってさ、ガキ相手のオモチャなのに、キャラクターのデザインがヤバいって、どっかのPTAがメーカーに文句いって生産中止になったんだろ?」
「それはガゼだぞ。本当は販売していた会社の社長が変な宗教にハマったのだ原因だってよ」
「それこそガゼじゃん」
そんな感じで、みんなで盛り上がっていたら、千葉裕樹っていう、クラスではあまり目立たないヤツが話しかけてきた。
「森永君、お願いがあるんだ。このアルバムを僕に売ってくれないか」
それで、森永はからかい半分に、5万円で売ってやるよと言った。
千葉は躊躇なく5万円を森永に渡すと、そそくさとアルバムを持って帰ってしまった。
千葉は、呪いのマンシールのコレクターだったのだ。
千葉の両親は医者だったので、安い買い物だったのだろう。
千葉の家にはアルバム十数冊におよぶ呪いのマンシールのコレクションがあったそうだ。
帰宅した千葉は、森永から買い取ったアルバムから呪いのマンシールを一つずつ丁寧に取り出し、うっとりとした表情で眺めて楽しんでいた。
「これで全種類コンプリートだ」
森永から買い取ったコレクションには、千葉がまだ持っていなかったシールが何点かあったのだ。
ふと、千葉はおかしなシールがあることに気づいた。
森永から買い取ったシールの一つに、シールの隅に小さく何か指示す手のマークが入っていた。
その時、千葉は、悪魔を呼び出せるシールの噂を思い出した。
「まさかね。でもまるで、この方向にめくれって、言っているみたいだな」
千葉がそのシールについて思いめぐらせていると、家の電話がなった。両親が不在のため、千葉が応対した。
「おい、てめえ、千葉。ふざけるんじゃねえ!」
「誰?」
「森永だ」
なぜかマジ切れしている森永に千葉が戸惑っていると、森永がこう言い出した。
「詳しいヤツに聞いたぞ。お前に売った俺のシールの中にmマニアの間では数十万えで取引されているシールがあったんだってな!!」
「どのシールの事?」
「首なし童子だよ!」
千葉が、さっきまで悪魔を呼び出せるのではないかと考えていたシールが、その首なし童子のシールだった。
だが、千葉は森永に冷静に説明した。
「それは呪いのマンアイスの方の首なし童子のことだよ。森永君から買った首なし童子はチョコの方だから。特に高値で取引されるシールじゃないんだ」
その言葉に森永は激怒した。
「嘘つけ!テメェは俺が何も知らないと思ってて、俺から安く買い叩いたんだ!」
「嘘じゃないって!それに僕は換金目的で集めているワケじゃないから、誰かに売るとか考えたこともないよ」
「テメェは信用できねえ!!」
まったく聞く耳を持たない森永に、だんだん腹が立ってきた千葉は、売り言葉に買い言葉できつく言い返してしまった。
「変な言いがかりはやめてよ。大体5万円でって言ったのは、君じゃないか」
「俺は何も知らなかったからだ!お前は、そんな俺をだましたんだ」
「話にならないね。あれはもう僕のものだから、返す気なんてないよ。もう切るね」
そう言って、千葉は電話を切った。
部屋に戻った千葉は、悪魔を呼び出せるシールをどうやって使えばいいか再び考え始めた。
お前だったら、どうするよ?シールをはがしてみる?
- はがしてみる→新堂エンディング07:首なし童子
- 怖くてできない
でもな、千葉もそのシールをめくらなかったんだ。
千葉の理由は、シールをめくると価値がなくなるからだった。
首なし童子自身の価値も高かったが、収集家の間ではプリトントミスしたシールは、さらに高値で取引されていた。
結局、千葉はそのシールを、コレクションの一つとして、大事にアルバムに仕舞うことにした。
次の日、学校に登校した千葉は真っ先に森永から声をかけられた。
「おい、千葉」と言った森永は、千葉の机に5万円を投げ捨てた。
「金は返す。だから俺に呪いのマンシールを返せ!」
「取引はもう成立した。あれはもう僕のものだ。君がお金を返すと言ったところで、返す気はないよ!」
森永はいきなり千葉の胸蔵を掴んだ。
千葉も負けじと森永をにらみ返した。
誰かが職員室までちくりに行ったらしく、あわてた先生が2人を生徒指導室へ連れて行き、事情を聞いた。
森永は、自分の呪いのマンシールのアルバムを千葉に5万円で売ったが、次の日に返してほしいともちかけて、断られたことを先生に話した。
事態は思わぬ方向に動いた。
先生たちは、森永が千葉を恐喝して、呪いのマンシールを5万円で売りつけたとして退学処分にした。
森永は呪いのマンシールは手元に戻ったが、自分は退学処分になってしまい。両親はカンカンで、家庭は滅茶苦茶になってしまった。
驚いたのは千葉も同じだった。
森永から手に入れた呪いのマンシールを没収され、手元には代金の5万円だけが残った。
どうやらこの一件には千葉の両親が絡んでおり、学校に圧力をかけて、森永を辞めさせたらしい。
事件から少しして、千葉を家に帰ると、母親が千葉の部屋を片付けていた。
「掃除よ。余計なものは捨てておきましたからね」と母親が言うのを聞いた千葉は、呪いのマンシールをコレクションしたアルバムがなくなっていることに気づいた。
「母さん、この棚にあったアルバムは?」
「捨てましたよ。こんなものばかり集めているからほかの子になめられるのよ。捨てて正解よ、あんなゴミは!」
千葉にとって、呪いのマンシールの収集は自分のすべてと言ってもよかった。
親にいわれたまま、ただ勉強だけを黙々としてきた千葉にとって、唯一、自分で選んだものだった。
それを否定されることは、自分を否定されることと一緒だった。
部屋には母親が生けたらしい高価そうなガラスの花瓶があった。
千葉をそれを両手に持って、母親の後頭部に思いっきり叩きつけた。
悲鳴をあげ、前のめりになった母親に馬乗りになり、千葉は何度も花瓶を叩きつけた。
「ゴミだと!僕の大事なコレクションをゴミ呼ばわりするお前のほうがゴミだ!死ね!僕の前から消えろ!」
千葉は、これまで押さえつけられていたうっぷんをはらすかの如く、長い間母親を殴り続けた。
しばらくして、気持ちが落ち着いた千葉は、自分がとんでもないことをしたことに気づいた。
「これも全部、あいつのせいだ!あいつが大人しく、僕に呪いのマンシールを譲っていれば」
ぶつぶつをつぶやきながら、千葉はゆっくりと立ち上がった。
千葉は、探していた森永を見つけた。
森永は画工にいた頃に比べて、頬はやせこけ、目はくぼんでおり、死神のように見えた。
そして、森永の右手には金属バットが握られていた。
そう、森永も自分の学生生活を滅茶苦茶にした千葉に復讐してやろうと思っていたのだ。
お互い発した言葉は同じだった。
「死ね!」
しばらくして、現場を通りかかった通行人が見たのは、心臓に出刃包丁が刺さった森永と頭蓋骨が陥没し、脳みそが飛び出した千葉の死体だった。
そして、傍らには、首なし童子のシールも・・・
悪魔なんて出てこなかった?
悪魔を呼び出すシールってのは当たってたと思うぜ。
そう、人の心の中の悪魔を呼び出す・・・な。
結局7人目は来なかったな。
新堂エンディング06:心に潜む悪魔
今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング03~05
5人目は福沢玲子を選択→シナリオ:愛と友情の狭間→福沢エンディング20~22
6人目は新堂誠を選択。
新堂誠は、3年D組の生徒。
お前がどうして新聞部に入ったのか教えてくれ
- なんとなく入りました
- 前から憧れていました
ところで、お前気づいているか?この部屋、なんか怪しくないか?
霊ってのはよ、人間の木を敏感に感知するっていうからだ。
よく、怪談をすると霊が集まるというだろ?
怖い話をしているどk、突然背筋がゾグって寒気が走る。
あれはな、そいつの背中を霊が撫ででいるからだぜ。
まさか怖がったりしてねえよな。
- 怖いです
- 別に怖くありません
霊に精神を食われないように、しっかりと自分を保つんだ。
シナリオ:呪いマンシール開始!
呪いのマンシールとは、子供の頃に流行ったチョコのおまけに入っているシールで、中のシールだけ欲しくて、肝心のチョコを捨ててしまって大人に怒られりしたものだ。
そのシールには天使、悪魔、神様の3種類あったが、神様のシールはキラと呼ばれており、少ししか入っていないことから、当たったらみんなで大騒ぎしてもんだった。
呪いのマンシールにある噂があった。それは、悪魔シールには数万枚に1枚、本物の悪魔を呼び出せるシールがあるというものだ。なんでも呼び出された悪魔は、呼び出した人間の願いを、その力で叶えてくれるそうだ。
お前、こんな噂信じられるか?
- 信じられる
- 信じられない
- そういう事もあるかもしれない
1年生の森永が、部屋を掃除したら出てきた、と言って、呪いのマンシールがコレクションされたアルバムを学校に持ってきた。
みんなが小学生の時に流行っていたので、クラスメートたちは口々に懐かしいと言っていた。
「あ、首なし童子」もあんじゃん」
「このシールってさ、ガキ相手のオモチャなのに、キャラクターのデザインがヤバいって、どっかのPTAがメーカーに文句いって生産中止になったんだろ?」
「それはガゼだぞ。本当は販売していた会社の社長が変な宗教にハマったのだ原因だってよ」
「それこそガゼじゃん」
そんな感じで、みんなで盛り上がっていたら、千葉裕樹っていう、クラスではあまり目立たないヤツが話しかけてきた。
「森永君、お願いがあるんだ。このアルバムを僕に売ってくれないか」
それで、森永はからかい半分に、5万円で売ってやるよと言った。
千葉は躊躇なく5万円を森永に渡すと、そそくさとアルバムを持って帰ってしまった。
千葉は、呪いのマンシールのコレクターだったのだ。
千葉の両親は医者だったので、安い買い物だったのだろう。
千葉の家にはアルバム十数冊におよぶ呪いのマンシールのコレクションがあったそうだ。
帰宅した千葉は、森永から買い取ったアルバムから呪いのマンシールを一つずつ丁寧に取り出し、うっとりとした表情で眺めて楽しんでいた。
「これで全種類コンプリートだ」
森永から買い取ったコレクションには、千葉がまだ持っていなかったシールが何点かあったのだ。
ふと、千葉はおかしなシールがあることに気づいた。
森永から買い取ったシールの一つに、シールの隅に小さく何か指示す手のマークが入っていた。
その時、千葉は、悪魔を呼び出せるシールの噂を思い出した。
「まさかね。でもまるで、この方向にめくれって、言っているみたいだな」
千葉がそのシールについて思いめぐらせていると、家の電話がなった。両親が不在のため、千葉が応対した。
「おい、てめえ、千葉。ふざけるんじゃねえ!」
「誰?」
「森永だ」
なぜかマジ切れしている森永に千葉が戸惑っていると、森永がこう言い出した。
「詳しいヤツに聞いたぞ。お前に売った俺のシールの中にmマニアの間では数十万えで取引されているシールがあったんだってな!!」
「どのシールの事?」
「首なし童子だよ!」
千葉が、さっきまで悪魔を呼び出せるのではないかと考えていたシールが、その首なし童子のシールだった。
だが、千葉は森永に冷静に説明した。
「それは呪いのマンアイスの方の首なし童子のことだよ。森永君から買った首なし童子はチョコの方だから。特に高値で取引されるシールじゃないんだ」
その言葉に森永は激怒した。
「嘘つけ!テメェは俺が何も知らないと思ってて、俺から安く買い叩いたんだ!」
「嘘じゃないって!それに僕は換金目的で集めているワケじゃないから、誰かに売るとか考えたこともないよ」
「テメェは信用できねえ!!」
まったく聞く耳を持たない森永に、だんだん腹が立ってきた千葉は、売り言葉に買い言葉できつく言い返してしまった。
「変な言いがかりはやめてよ。大体5万円でって言ったのは、君じゃないか」
「俺は何も知らなかったからだ!お前は、そんな俺をだましたんだ」
「話にならないね。あれはもう僕のものだから、返す気なんてないよ。もう切るね」
そう言って、千葉は電話を切った。
部屋に戻った千葉は、悪魔を呼び出せるシールをどうやって使えばいいか再び考え始めた。
お前だったら、どうするよ?シールをはがしてみる?
- はがしてみる
- 怖くてできない
千葉がその呪文を唱えると、背筋を撫でられるような不気味な感覚が襲ってきた。
千葉が窓の外を見ると、さっきまでは晴れていたのに雨が降っていた。
呪文を最後まで唱えると、遠くて大きな雷鳴が響き、思わず千葉は目を閉じた。
千葉が目を開けると、着物を着た、首から上を切り取られた子供が立っていた。
噂通りシールから召喚された悪魔は、千葉の心に語り掛けてきた。
「問おう!お前の望みはなんだ」
お前だったら、こんな時は何を願う?
- 自分の未来を教えてくれ
- 森永を殺してくれ
- わからない
「その願い、聞き届けた。これがお前の未来だ」と首なし童子は、千葉の額に手を当てながら言った。
「何これ?真っ暗で何も見えないんだけど・・・」
「そうだ、お前には未来がない」
千葉は、人間は最後には死ぬからだと思い、再度願った。
「じゃあ、30年後どう暮らしているか教えてくれよ」
「その願い、聞き入れた」
結果は同じだった。30年後にはもう死んでいる?
開き直った千葉は、どんどん見せてもらえる時期を下げて行った。
「10年後は?」「5年後は?」「畜生!なんで見えないんだよ」「それじゃあ1年後は?」
見える未来は真っ暗だった。
「嘘だろ!僕には1年後すらないってことかよ!」
「そうだお前には、1年後すらない」
「1か月後は?」「1週間後は?」「明日は?」
しかし、見える未来は真っ暗のままだ。
「今だ!今の僕を見せてくれ」
「その願い聞き入れた」
今度は千葉には、はっきりと自分の姿が見えた。
千葉の背後で鬼のような形相の森永が、自分の頭上で鎌を振り下ろす姿を・・・
千葉がどうなったかは俺は知らねえ。ダチから聞いた話だからな。
首なし童子のシールは俺も持ってるぜ。今度見せてやるよ。
そうそう呪いのマンシールには、もつ一つの噂があってな。それは天使シールには数万枚に1枚、本物の天使を呼び出せるシールがあるって話だ。
呼び出された天使は、呼び出した人間を幸福にしてくれるそうだぜ。
千葉も呼び出したのが悪魔じゃ、ロクな目に遭わないろうからな。
結局7人目は来なかったな。
新堂エンディング07:首なし童子
今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
1人目は荒井昭二を選択→シナリオ:誕生日プレゼント→荒井エンディング03~05
2人目は風間望を選択→シナリオ:五百円硬貨→風間エンディング10
3人目は細田友晴を選択→シナリオ:夜泣き石→細田エンディング13・14
4人目は岩下明美を選択→シナリオ:命の値段→岩下エンディング03~05
5人目は福沢玲子を選択。
福沢は1年G組の生徒。
坂上君は宗教は何なの?
- 親と一緒
- あまり人には言いたくない
- 無神論者
- 他の話が聞きたい
私と一緒だ。
私、神様信じてないもん。
そりゃあ、神頼みくらいはするけど。
私のお父さんの話なんだけどぅ、実話だよ実話。
私のお父さんはね、N証券っていう大きな証券会社に勤めているんだよね、そこの部長さん。
すごいでしょ、えへへ。
でね、ある日自分の部下が大真面目な顔でやってきて、一緒に行ってほしいところがあるって言うんだってさ。
お父さん、親身になって聞いてあげたんだってさ。
彼ったら何にも言わないんだって。ただ一緒に行って欲しいところがあるってそればっかり言うんだってさ。
それでね、次の日曜日、お父さんは彼のために一日あげたの。
そしてらさぁ、どこに連れて行かれたと思う?
公園だよ。公園でね、何人も集まって落ちているゴミを拾うの。ボランティアだよ。
それでさ、それが終わったあと、ボランティアの人たちが全員で輪になって、自分たちがいかに幸せかを語り合うんだって。
それさ、何とかっていう変な宗教だってさ。
ゴミを拾ったり、駅を掃除したり、そうすることによって人徳を高めていくんだって。
お父さん、帰ってきたら怒ってたよ。
ボランティアのときに、猫の絵を描いてあるエプロンをつけさせられてね。
それが、その宗教のシンボル・マークだって言うからしょうがないけどさ。通りすがりのカップルとかが馬鹿にして、笑っていくんだって。
それに子供がわざわざお父さんの前にゴミを捨てたりしてね。それでお父さんが怒ったら、その子のお母さんに誘拐魔扱いされちゃってさ。
それでボランティア活動が終わったら、みんなで毎週来るように誘われちゃって、お父さん、真剣に怒ってたよ。
なんでもその部下の人がね、会社では無口で暗いのに、その時はもうニコニコしちゃってすんごく明るかったんだって。
お父さん、怒った後悩んでいたもん。
どうして会社では暗いんだって。
もちろん、お父さんのボランティアは1日で終わったんだけれどさ。
そのあと部下の人はだんだん会社を休みがちになってさ。
1か月くらいしたら全然来なくなっちゃって、ある日いきなり会社辞めちゃったんだって。
そのあとね、会社の同僚がどっかのターミナル駅の前にある広場で、その人を見かけたんだってさ。
なんでも道行く人の幸せを祈ったり、みんなで歌を合唱したりしてたんだって。とっても幸せそうな顔してたらしいよ。
でもさ、会社に残された人には迷惑だよね。
お父さん、真剣に悩んでたもん。最近の若いもんはわからんって。
坂上君も気を付けたほうがいいよ。まわりにさ、宗教に凝っている人とかいない?
- 実はいる
- そんな人はいない
- 宗教の話から離れて
日本人って無宗教の人が多いから、宗教アレルギーって人が結構多いよね。坂上君もそういうクチなんだ。
シナリオ:愛と友情の狭間開始!
数年前のこと、山寺という女子生徒がいた。
なかなか良いルックスをしており、明るい性格で交友関係も広かった。
彼女には、田中というすごく仲のいい友達がいて、お互いのお弁当を交換して食べちゃうくらいだった。
「あー、その卵焼き超美味しそうじゃん?」
「ひとつあげるわ。じゃ、そっちの唐揚げ、もらっていいかしら?」
そんな風に毎日、山寺と田中はわいわいと仲良くしていた。
この二人はお互いに何でも理解し合って、嫌いなところなんて何もないってことはなく、山寺には田中のする話題で、どうしても好きになれないものがひとつだけあったの。
それはホラー映画だった。
田中はホラーの魅力に取り憑かれており、週に一度はレンタルビデオショップに行ってあれこれ借りて、時には深夜まで見ていた。
スプラッター系が特にお気に入りだったみたいで、もちろん新作映画があれば見に行き、山寺はそれに毎度のように誘われた。
「このゾンビ映画、すんごくリアルなメイクらしいの。楽しみだわ」
「へえ、最近の技術はすごいんだね」
田中が嬉々としてしゃべれば、山寺は適当に相槌を打っていたが、山寺は本当は大のホラー嫌いだった。
映画の上映中も、田中が目をキラキラさせて見ている隣で、山寺は冷や汗ダラダラと流していた。
山寺は、田中を悲しませたくないから、寝たふりなんかはできなかった。
「ホラーの話、もうやめてくんない?これからは映画にも付き合わせないで!」
何度も、そう言おうと思ったかわからない。だけど親友だから言えない。
そして田中は、山寺が本当は怖いのが大嫌いってこと、夢にも思っていなかった。だって今まで文句言われたことがないんだから。
本音と建て前は違っていたけれど、二人の日常はとりあえずバランスが取れていた。
田中はホラー以外にも普通に女の子らしい趣味はあったし、そっちでは山寺も気兼ねなく楽しめたから。
けどある日、その微妙なバランスが崩れる出来事が起こった。
山寺は、お気に入りの髪飾りを見ず知らずの男子に踏まれて壊されちゃって、怒っていた。
最近買ったばかりの髪飾りを、山寺は廊下で手に取ってうっとりと眺めていたんだけど、うっかり床に落としてしまい、運悪く踏まれてしまった。
もちろん文句を言ったんだけど、その男子ときたら「いきなり目の前に落す方が悪いだろ」なんて言ってろくに謝りをしなかった。
山寺はむらついていたが、男子相手にケンカして勝てるわけもなし、弁償してもらうこともできず、仕方なく引き下がるしかなかった。
そこへ田中がやってきて、いつものように悪気なく、「明日は土曜日だよね。また新作のホラー映画があるの。一緒に行かない?」と提案してきた。
田中は別の場所にいたので、山寺の髪飾りが壊された一件は知らなかった。
その時、山寺の心の中はどす黒く燃え上がった。自分がこんなに辛い思いをしているのに、なんて無神経なんだろうって。
山寺はとうとう我慢ならなくなって、かついてないほどの大声で怒鳴った。
「いい加減にしてよ!なんで気付いてくれないの。私、怖いのなんて大っ嫌いなの!幽霊もゾンビも殺人鬼も、もう見たくないの!だいたい私ら女子高生だよ。そんな暗い趣味はやめたらどうなの?もう私の前でホラーの話はしないで!」
山寺は今までため込んでか感情を、一気に爆発させた。
言いたいことを全部言い切った山寺は、息を切らしながら親友の目を見た。
「・・・ごめんね」
自分の趣味を正面きって拒否されて、ショックだった田中は、それだけしか言えなかった。
まだ昂った気持ちが収まらない山寺はそのまま田中と別れた。
山寺はさすがに次の日になると落ち着いたけど、しばらくは気まずくて田中と話もできなかった。
田中も田中で、一言もかけられない。
まるで見えない壁が彼女たちの間にできたようで、クラスメイトたちももうビックリで、あれだけ仲良かった親友同士にいったい何があったんだろうって。
山寺は田中と話す踏ん切りがなかなかつかなかったので、彼氏の岸谷に相談した。
岸谷は「勇気をもって話しかけろって。それでいいだろ」と簡単にアドバイスした。
その翌日、山寺は、登校すると真っ先に田中に近づき、「この前はちょっと言い過ぎだよ。ごめんね」と切り出すと、田中は笑ってはいないが、怒っている顔でもなく「うん」と小さく頷いた。
山寺はホッとして、「あの時は気が立っててさ、ついあんな乱暴なこと、ホントごめん。でももう水に流そうよ、ね?」と続けると、田中は「うん」と小さく頷いた。
山寺は最後にこう付け加えた。
「申し訳ないんだけさ、ホラー映画は勘弁っていうのは変わらないから。本当に大嫌いなんだ。これからは映画に誘ったりしないでね?他のならいいからさ」
「うん、誘わないよ」
田中と仲直りして心が楽になった次の日、山寺は同じクラス委員の男子の斎藤と図書室で仲良くしゃべりながら作業していた。
そこへ岸谷がやってきた。
岸谷はこめかみに青筋を浮かばせて、山寺に詰め寄った。
「なんだよ、その男は「
「え?同じクラス委員の人だけど」
「それだけじゃないだろう?今、すごく嬉しそうな顔をしてたじゃないか?俺といる時よりも!!」
「そんなわけないじゃん」
「なんだよその顔は!ひょっとして俺に飽きたから新しい男を探していたとかじゃないだろうな?」
「ちょっと待ってよ、そんなこと」
「いいか、俺以外の男と仲良くするなんて、絶対に許さねえからな!」
反論を一切聞く気がない岸谷は、猛然とその場を立ち去った。
山寺はボロボロと泣いてしまった。
岸谷の決定的な欠点は、めちゃくちゃ嫉妬深いことだった。他の男子といるなんて絶対に許さないっていう考えの持ち主だった。
山寺は岸谷をこれ以上怒らせるのは避けたい、と悩みぬき、納得してもらえるまで話し合おうと考えた。
次の日の放課後、山寺は田中にも協力してもらおうと思いついた。
「あのさ、彼氏のことでちょっと相談があるんだけど、聞いてくんない?」と山寺は気軽な口調で田中に相談を持ちかけた。
「そんな話は聞きたくないわ」
「あのね、本気でトラブってんるんだ。私一人だけじゃ解決できないかもしんないだよ」
「あなたの彼氏の話なんて、興味はないわ」
そう言って、田中は山寺に背中を向け、歩き去った。
そこへ岸谷がやってきた。
「おい!この前の男とまた話していただろう!」
確かに昼休み、斎藤がハンカチを落したから、山寺はそれを拾ってあげて、少し話をしたんだ。
岸谷は休み時間になるたびに山寺を監視しており、しっかりその場面を見ていたのだ。
「浮気するつもりなんだな?」
「いいかげんにしてよ、浮気なんてするわけないじゃん」
とうとう泣き出した山寺だったが、岸谷は矛を収めなかった。
「泣いてみせたってダメだ。そんな風にごまかそうとする女は一番嫌いだ!」
あれこれきついことを言った上で、もう二度とあいつとは話をするなって念を押して、岸谷は言ってしまった。
翌日、山寺はもう一度田中に頼みに行った。
「田中さん、あのさ、彼氏のことで相談が・・・」
「そんな話は聞きたくないわ」
「どうして?私たち親友じゃん」
「彼氏の話なんて聞きたくないわ」
「お願い!」
「聞きたくないわ」
山寺は気付いた。田中があのケンカのこと、本当は許してなかったんだって。ホラー趣味にケチをつけたことを田中はずっと根に持っていたって。
「そんなに、あの時のこと恨んでいるわけ?」
「それだけじゃないわ。あなたが嬉しそうにする彼氏の話、どれだけ辛い思いをしながら聞いていたかわかるかしら?デートの話を聞かされるたび、私はすごくみじめな気持ちになったわ」
そう、田中には彼氏はいなかった。内心、山寺のことが妬ましかったのだ。
「あなたの自慢話、すごく嫌だったわ。彼氏が街中でスカウトされたとか、でも彼女と一緒にいるほうがずっと言われて嬉しかったとか、そんなことを延々と!」
山寺は、田中がホラーの話を嬉々としてしゃべるように、以前から岸谷の話を得意げにしていたが、田中の恨みがましい気持ちに気付いてはいなかった。
「ごめんさない!ホラー映画にもいくらでも付き合うから!だから助けてよ!もう許して!」
「もう遅いわ」
それっきり田中は何も答えなかった。
彼氏の選び方や、彼氏への接し方も含めて、坂上君どう思う?
- かわいそう→福沢エンディング20:壊れた友情
- 自業自得→福沢エンディング21:最高のホラービデオ
- 答えられない
山寺は岸谷の言う通り、徹底的にほかの男子を無視することにした。
しばらくすると、岸谷の機嫌は回復していき、放課後は普通にデートするようになったが、周囲からの評価は下がっていった。
山寺は、男子から話しかけられると、何も答えずその場から去ってしまうため、クラス中のほとんどの男子から相手にされなくなった。
そんなとき、「困ったことがあるなら相談してくれよ」と斎藤が山寺に声を掛けてきた。
斎藤は図書館での一悶着以来、山寺のことが心配だったのだ。
「やめてよ、関わらないで」
「このままじゃクラスで孤立するだろう?君だけでなく、クラス全体での問題でもあるんだ」
「迷惑なの」と振り切るようにして山寺は斎藤から逃げて行った。
その日の放課後、山寺は岸谷から、校舎裏に呼び出された。
岸谷に怒鳴られるのかビクビクしていた山寺だったが、岸谷はニヤニヤしながら、山寺の体をまさぐり始めた。
「なにやっているんだ!」と声をかけたのは、山寺を心配して後を付けてきていた斎藤だった。
岸谷は誤解して「お前、やっぱりあいつと」と言い出した。
「ちが・・・」と言い終わる前に、山寺は胸に激痛を感じた。
そこからナイフの柄が生えていて、血が流れ落ちていた。
その後、山寺は病院に運ばれたが、助からなかった。
岸谷は逃亡して行方不明。
坂上君は、岸谷君の嫉妬深さは異常だと思う?
でもね、人ってどんな些細なことで殺されるか、わかんないんだよね。
例えば坂上君は最初さ、私の話そうとした宗教の話を勝手な都合で断ったでしょ。
私だからいいけどさ、他の人だったら殺意を持ってもおかしくないかもしれないよ。
えっ、なぁに、私は怒ってないよ。
福沢エンディング22:嫉妬の果てに・・・
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