今日のかまいたちの夜 輪廻彩声はどうかな?
プロローグ
4年前、大学生の時に「ペンションバラバラ殺人事件」として全国に知れ渡った恐ろしい事件に遭遇した真理は、天性の推理力を発揮してそれを解決した。そして、自らの隠れた資質に気付き、大学を卒業してすぐに透を助手にして探偵事務所を開業した。
といっても、浮気調査だのペット探しだのといった泥臭い依頼はお断り。
TVドラマのように、最初は家出人探しに見えてもその背後に秘密が隠されていて、やがては連続殺人に結び付くような、そういう依頼しか受けたくない真理の姿勢のため、もう2か月も事務所の家賃を滞納している・・・
「ペンションバラバラ殺人事件」を解決した二人組といううたい文句で、テレビでも少し紹介され、最初のうちこそいくつか依頼があったもののの、ほとんどが下らないものばかりで、真理が解決するにふさわしいと思った依頼は一握りしかなかった。
自然客足も遠のき、財政は逼迫する一方だが、大事件に出会うその日に備えて、真理は名探偵としての修行を忘れてはいなかった。
といっても透曰く、推理小説を読んでいるだけ、だが。
トロフィー:音楽収集75%をゲット!
そこへ、捜査課の楠木警部補がやってきた。彼は、真理の遠い親戚の知人だった。
警部補の話
「さっそくだが、ひとつお伽話を聞いてくれる」と警部補が話し出した。
これは守秘義務があった部外者に話せないはずの捜査中の事件について話し始める時の警部補の決まり文句だった。
「あるソフトウェア会社の社長が自宅で殺された・・・と思ってもらいたい」
「そういえば1週間ほど前に、そんな記事が新聞に」と透が言い出したので、真理は透の足を踏みつけ、「これはお伽話」と言った。
選択:人間関係か現場の様子か
A:被害者をめぐる人間関係について説明してください
B:まず現場の様子からお願いします
真理が人間関係について警部補に説明を求めると、警部補は説明を始めた。
被害者は五十嵐鉄雄:42歳、コンピュータソフトの開発販売をやっている会社の社長。
もともと別の会社のプログラマーをやっていたが、3年ほど前独立し、今の会社を作ってインターネットのブラウザを大ヒットさせたが、問題も多く抱えていた。
中島聡:五十嵐が元いた会社の同僚。五十嵐が作ったソフトは自分のプログラムの多くを盗用して作ったものだと訴えた。まだ裁判は係争中だが、どちらも一歩も譲る気配はなく、泥沼化している。
今村愛美:中島の元婚約者。妻子ある五十嵐に言い寄られて、最初はハナも引っ掛けなかったが、五十嵐が成功した途端こっそりと五十嵐と付き合い始めた。しかし、中島にバレて婚約解消、と同時に五十嵐にも捨てられた。
五十嵐徳子:五十嵐の妻。愛人の存在を知り、包丁を振り回して、五十嵐に怪我を負わせたが、たいした怪我ではなかったため警察沙汰にはならなかった。それから娘をつれて実家に戻っている。普通女性は愛人の方に怒りが向くことが多いが、話した限り、愛美に対する怒りはなさそうだった。
野崎和也:五十嵐の会社の元社員。会社の金の使い込みがバレてクビになり、嫁に逃げられた。
警部は、有力な容疑者はこの4人だが、決め手がない、と言って、事件の説明を始めた。
事件の発覚は月曜日。11時には必ず出社する五十嵐が昼を回っても来なかったので、社員の一人が自宅マンションへ出向いた。
ロックはされていなかったが、チェーンがかかっていたから、中にいるのは確かだった。
いくら呼び掛けても返事がなかったので、大変なことが起きたと判断して、チェーンを切って中に入り、死体を発見した。
ベランダの窓の鍵が開いており、現場が2階ということもあり、犯人はそこから逃走したと思われる。
五十嵐はパジャマ姿でリビングの床に倒れており、右後頭部を鈍器で殴られたのが死因だった。
凶器は、彼の部屋にあった青銅の置物で、インドネシアかどこかの神をかたどった人形らしい。結構な重さがあるから、うまく振り下ろせば女でも簡単に殺せただろう。
死亡推定時刻は、前日の日曜の夜9時から12時頃。
人間関係
警部補は4つのファイルを差し出した。
A:中島聡
B:今村愛美
C:五十嵐徳子
D:野崎和也
真理はファイルに手を伸ばした。
中島聡:33歳、独身。身長164センチメートル、体重83キロ。右足にギプスをつけ、松葉杖をついている。
「わたしはあいつに人生をめちゃくちゃにされたんだ。他人の功績を横取りしただけじゃ飽き足らなくて、愛美まで。
殺す?まさか。
わたしは今あいつと裁判で争っているところなんだ。時間はかかるでしょうが、必ず最後には正しい判決が下ると信じてますよ。
そうすりゃわたしはあいつからがっぽり賠償金をもらえるってわけです。殺してしまっちゃ元も子もないでしょう。
愛美のことは・・・でもね、見方を変えりゃもともとその程度の女だったってことでしょ?結婚する前に気付かせてくれたんだから、彼には感謝したっていいのかしれはせんよ。
日曜日の夜9時から12時ですか?もちろん家にいました。1週間ほど前に退院したばかりで、まだ静養中なんです。ええ、骨折ですよ。(骨折が感知していないことは確認済み)
裁判これから、どうなるんですかね?死んだ人間からも賠償金って、取れるんでしょうか?」
A:今村愛美
B:五十嵐徳子
C:野崎和也
真理はファイルに手を伸ばした。
今村愛美:28歳、独身。身長168センチメートル、体重58キロ。右手人差し指に包帯。
「わたしが馬鹿だったんです。中島さんのことを愛してなかったわけじゃわりません。このままこの人と結婚して本当に大丈夫なのかなって、不安だったんだと思います。そんなときに、あの人が親身に相談に乗ってくれて、そのうちひかれあうようになったんです。いえ、ほんとは彼の狙いがどこにあったのか、今ははっきりわかっています。あの人は、ただ人のものが欲しいだけなんです。だから、わたしと中島さんが分かれた途端、五十嵐さんの態度は豹変しました。憎んでないといえば嘘になりますが、わたしさえしっかりしていればこんなことにはならなかったんです。
この指は1週間くらい前、会社でバレーボールをしているときに突き指したんです。もうほとんど治りかけていますし、利き腕じゃないからそんなに困らないんですけどね。
日曜の夜ですか?自宅にいたと思います。証明してくれる人はいませんけど・・・」
A:五十嵐徳子
B:野崎和也
真理はファイルに手を伸ばした。
五十嵐徳子:38歳、被害者の妻。身長155センチメートル、体重43キロ。
左手親指に絆創膏。
「殺されるだなんて、まったくあの人にふさわしい死に方をしたものね。
あたしがやるわけないじゃない。娘の養育費だってこれから一生払ってもらわなきゃならないと思ってたんですからね。
遺産?離婚したのに遺産が入るんですか?ああ、娘にね。じゃあ、とりあえず養育費の心配はなさそうね。
この絆創膏は、包丁でざっくり切っちゃったのよ。
日曜の夜は家にいましたよ。娘と一緒に。まだ6歳だから、9時には寝てましたけどね。」
真理は、野崎和也のファイルに手を伸ばした。
野崎和也:44歳、独身、離婚歴あり。身長171センチメートル、体重65キロ。
「わたしだって、あいつに人生壊されたようなもんですからね、殺せるもんなら殺してやりたいところです。犯人に感謝したいくらいですね。
使い込み?ちょっと借りただけだったんですよ。株で損をしたところでしてね。すぐに取り返して穴埋めをするはずだったんだ。それをあの野郎、泥棒扱いしやがって。おかげで今じゃ女房にも出ていかれて、こんなありさまですよ。
日曜の夜だって?さあね、今じゃ毎日が日曜日なんでね。何してたかってすぐには分からないよ。でもたぶん近所の居酒屋で飲んでたんじゃないかな。聞いてみてくれよ。(居酒屋で確認。9時半から11時半までいたことが判明。そこから現場までは最低40分必要)」
人間関係で解決
真理は、「これだけで分かるのは、犯人が誰かってことくらいね」と言った。
A:中島聡
B:今村愛美
C:五十嵐徳子
D:野崎和也
真理の答えを聞いた警部は、「またお邪魔するよ」とあまり気乗りしない口ぶりで、席を立った。
その後、警部補からの連絡はない・・・
終:推理失敗
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