今日のSTEINS;GATE HD (シュタインズ・ゲート)はどうかな?
オカリンとまゆりは、秋葉原にある未来ガジェット研究所、通称ラボにいた。
駅から出て中央道りを進み、末広町駅の交差点を蔵前橋通りへ左折。次の信号の一歩手前の路地に入ると、大檜山ビルという古臭い雑居ビルがあり、その2階に居を構えていた。
目印は、ビル1階にあるブラウン管工房というマニアックなテナントで、今時旧式のブラウン管テレビだけを扱っているショップだ。
ブラウン管工房の店長である天王寺は、このビルのオーナーだ。
未来ガジェット研究所のラボメンは、3人。
ラボメンナンバー001:ラボ創設者にして狂気のマッドサイエンティストである、オカリンこと鳳凰院凶真。
ラボメンバーナンバー002:コスプレが趣味(着る方じゃなく作るのが趣味)の紅一点、椎名まゆり。
TIPS №51:コスプレをゲット。
「コスチューム・プレイ」の略で、仮装すること。日本におけるコスプレを言う場合、アニメなどのキャラクターに扮することを指し、コスプレする人のことを「コスプレイヤー」(さらに略して「レイヤー」とも)呼ぶ。コスプレのためのコスチュームは主に自作が多い。
ラボメンナンバー003:スーパーハカー、橋田至。
TIPS №76:スーパーハカーをゲット。
すごい腕前のハッカー。ただし自称。また、ネットの匿名掲示板などで言い争いに発展した際に「俺の友達にすごい腕前のハッカーがいるから、お前の正体暴くのなんて簡単だぞ」的な脅し文句がたびたび見受けられる。それらを揶揄して「明らかに存在していない諏郷でハッカー」のことをスーパーハカーと呼ぶ。
TIPS №73 常考をゲット。
「常識的に考えて」の略。ネットスラング。
この3人で構成される未来ガジェット研究所の活動内容は、発明だった。
オカリンの独り言にまゆりとダルが突っ込む。
TIPS №223 @ちゃんねるをゲット。
(架空)日本でも最大規模のアクセス数を持つ、匿名の巨大掲示板。チャッチフレーズは「ハッキングから今晩のおかずまで」であり、アングラな話題から一般的な話題まで、多種多様な内容が投稿されている。
TIPS №52 こっち見んなをゲット。
ネット上にアップロードされる画像において、カメラ目線の人物や動物などに対し、このツッコミを入れるには半ばお約束となっている。
TIPS №218 2次元の女の子をゲット。
アニメのキャラクターのこと。
TIPS №102 厨二病をゲット。
中二病とも。日本の思春期の少年によく見られる、少し特殊な言動、行動を指す言葉。あるいは、思春期を過ぎたにもかかわらず思春期のような痛々しい言動をする人間に対して使われるからかいの言葉、厭世的、反社会的、空想的な行動、子供として見られたくなくて背伸びした行動をとる事などを指す。本人はそれがいかにもかっこいいことと考えて行動しているが、大人から見るととても滑稽な姿に映る。なお厨二病をさらにカテゴライズしたものとして、アニメ的な設定なようなものが自分にあると思い込む「邪気眼」がある。オカリンは厳密にはこの「邪気眼」に該当する。
TIPS №22 乙をゲット。
「おつかれさま」の意。ネットスラング。
オカリンは覗き込んでいたモニタから顔を上げた。
モニタには、アルオアカをモチーフとしてデザインされた「アルパカマン」というキモカワイイキャラクターがたたずんでいた。
付属のマイクで話しかけると、返事してくれる「アルパカマン2」というインタクラティブゲームだ。
TIPS №6 アルパカをゲット。
ラクダの仲間。体重50~55㎏、体長2mはどで、ペルーやボリビア、チリあたりが生息地。近年ではアメリカやニュージーランドでも多数見かける。ラクダと違って背中にコブがなく、全身がモコモコの毛に覆われている。首が妙に長く、愛嬌のある顔のため、一部からキモカワイイと人気がある動物。
TIPS №26 オフ会をゲット。
チャットや匿名掲示板など、ネット上で知り合った者同士が、実際に同じ場所で集まって、直接会うこと。
偏屈そうなメガネデブ男で、オカリンの戦友にして片腕である橋田、通称ダルは、日がな一日だるそうにPDに向かっているオタク青年である。
2次元の嫁を持ちながら、3次元メイドに浮気するなど、趣味の方向性に多少難ありだが、萌え関連ならがなんでもいいらしい。
腕は確かで、ハードウェアよりソフトウェアの方が得意だとうそぶきつつも、オカリンのアイデアを実際に形にしてくれる非常に頼りにある男である。
まゆりは、「針が指にささった」と涙目になって自分の指をなめていた。
椎名まゆり、17歳、女子高生。
能天気な幼馴染は、未来ガジェット研究所のコス作り担当(ただし女性用コス限定)であり、今日もマイペースにせっせとアニメキャラのコスを自作している。
未来ガジェット研究所にとってコス作りは必要ないが、オカリンはまゆりを追い出すつもりはなかった。なぜならば、未来ガジェット研究所の門戸を最初に叩いたのはまゆりだったからだ。
今でも、まゆりが初めてこのラボにやってきた春の日のことはオカリンははっきり覚えていた。
「まゆしぃはオカリンに人質だから、ここにいようとおもいまーす」
モニタの中の人面アルパカが無反応だったので、オカリンがテレビの上部を軽く叩くと、ショートするような音がして、いきなり画面が真っ暗になった。
電源を入れ直しても完全な沈黙。壊れたようだ・・・
オカリンはソファに横になって目をつむった。
自然と脳裏に浮かんできたのは、1時間ほど前に見た頂上的な光景だった。
ラジ館を出たオカリンが見たのは、アキバを歩いていたすべての人間が一瞬にして目の前から消失するという現象だった。
後に残ったのは、昼間なのに無人と化したアキバの町並み。家電量販店の店頭から聞こえてくる、その店のオリジナルBGM。
「どうかしたー」という背後からの声で、オカリンは我に返った。
まゆりは消えていなかった。しかも不思議そうな目でオカリンを見ていた。
「今、ひ、人がっ、消えたよな?」とオカリンが言うと、「見~て~ない~」とまゆりは答えた。
「最初からこの辺には誰もいなかったよー。オカリンは幻を見てたんだね。きっと、この暑さのせいだよ♪トゥットゥルー♪」
オカリンがラジ館の屋上に視線をやると、人工衛星のような巨大機器が墜落していた。あそこで、つい数分前に牧瀬紅莉栖が刺された。
ドクター中鉢の発表会が始まる直前、爆発によるものらしき揺れがあり、屋上の防火扉が壊され、そこには人工衛星状の大きな機器が置かれ、煙と燐光が立ち込めていた。オカリンが見たときは、その機器は屋上にきちんと置かれていたのに、今見上げている景色においては、違っていた。それはビルの壁を破壊し、突き刺さるようにして静止していた。
あの場所に突き刺さっているということは、ちょうどドクター中鉢が会見をしたイベントスペースに直撃しているだろう。
「びっくりしたね~。ドカーンってすごい音がしたもん」とまゆりが言った。
だが、オカリンが聞いたのは、どちらかと言うとズズーンとかそんな感じだった。
オカリンの見たものと、まゆりの見たものが噛み合わない。
ここで、オカリンとまゆり以外の人物が突如出現した。
制服警官で、「ここらは今、立入禁止だ、すぐに出ていきなさい」と言って、UPXまで無理やり連れて行った。
TIPS №209 UPXをゲット。
(架空)秋葉原UPXビル。読み方はユーピーエックス。
UPX付近には人だかりができていた。
それから、このラボに戻ってきて、今に至る。
ニュースやネットをチェックしたが、ラジ館に謎の物体が墜落したというニュースが話題になっており、あの東テレまでも、昼間から報道特別番組に切替え、アキバの様子を生中継していた。
TIPS №114 東テレをゲット。
(架空)東都テレビ。東京では12ch。ほかの民放各社に比べてアニメに重点を置いた番組編成を行っており、オタクにとっては最も親しみを覚えるテレビ局である。重大事件、事故が起きた際に他局が一斉に報道特別番組に切り替わるような場合においても、東テレのみは通常の番組を淡々と流し続けるという気骨ある姿勢から、ネット上においては「東テレが報道特別番組に切り替わったら地球滅亡レベルの緊急事態」と揶揄する意見がある。
幸いにも墜落による犠牲者はいないようだが、中央通りの規制はいまだ解かれていない。
アキバの路上から数千人が一瞬で消失したことや、牧瀬紅莉栖が刺されたことは、誰も触れていなかった。
オカリンは、「これもすべて機関の隠蔽工作ということだな!」と言って、飛び起きて、ドクターペッパーを飲み干した。
TIPS №117 ドクターペッパーをゲット。
オカリンの大好物である炭酸飲料。
開発室に入ったオカリンは、1台の業務用電子レンジを眺めた。
TIPS №112 電子レンジをゲット。
電磁波(マイクロウェーブ)によって、水分を含んだ食品を加熱する調理用家電。もとは「レーダー・レンジ」と呼ばれていた。レーダーとはつまり電磁波のことである。通信用のレーダー技師が、偶然にも電磁波が食品を温めるという性質を持つのを発見したのが始まり。その後、研究が続けられ、家電としては1947年にアメリカで一般発売された。使用される電磁波は周波数2.45GHzで、出力は家庭用で500~1000ワットほど、業務用になると1500~2000ワットほどになる。これはISMバンドと呼ばれている特別な周波数で、無線LANなどにも使われている。
オカリンとダルは同じ高校(高2は別クラス)で、同じ大学に通っているが、ラボメンになったのはわずか2か月前だった。
未来ガジェット研究所では、これまでに合計8つの発明品を完成させた。
ラボの本来の研究目的は、機関をはじめとする闇の支配権力と戦うためのアイテムを作り上げることだ。
そちらの方の発明は、今のところ1つとして完成していない。一方で、その研究の副産物として、独創的にして未来的なガジェットの開発には成功していた。
TIPS №84 セレンディピティをゲット。
「serendipity」。ある物事の答えを探している際、その探している答えとは別の、価値ある要素を発見する才能。電子レンジの発明もこのセレンディピティによる。
1号機「ビット粒子砲」
TIPS №132 ビット粒子砲をゲット。
未来ガジェット1号機。栄えある未来ガジェット研究所最初の発明品は、おもちゃの光線銃の中に無理やりテレビのリモコンを埋め込んだもの。テレビにこれを向けて引き金を引けば、さながら銃を撃つかのようにチャンネルを切り替えることができる。ただし対応しているボタンは「チェンネル送り」のみであり、ほかのボタン、例えば音量調節などは使えない。テレビの音源はテレビ本体から直接On・Offを操作しなければならない。ネーミングの由来は、日本アニメ史上に燦然と輝くロボットアニメの金字塔「起動勇者ガンバム」から。
2号機「タケコプカメラー」
TIPS №94 タケコプカメラーをゲット。
未来ガジェット2号機。竹とんぼ式のCCDカメラ。竹とんぼの支柱にCCDカメラが内蔵しており、動力なしで空中撮影を可能とした。ただし撮影された映像はものすごい勢いで回転しているので、ずっと見ていると目が回って気持ち悪くなるかも。ネーミングの由来は「22エモン」から。
3号機「もしかしてオラオラですかーッ!?」
TIPS №171 もしかしてオラオラですかーッ!?をゲット。
未来ガジェット3号機。親指の汗のかき方によって判定するウソ発見器。それは汗検知器と言った方が正しいかもしれないがそれでもじゅうぶんすごい発明であると認めるがいい。ネーミングの由来は、カルト的人気を誇るマンガ「ジュジュの微妙な冒険」から。
4号機「モアッド・スネーク」
TIPS №170 モアッド・スネークをゲット。
未来ガジェット4号機。超瞬間加湿器。大量の水を、多数の電熱コイルで沸騰させ、ものすごい量の蒸気を噴出させる。持続時間はわずか数秒ながら、一瞬にして部屋を加湿できるのだ。適用畳数は6畳。クレイモア地雷そっくりの見た目が主にミリオタの心をくすぐる。ネーミングの由来はスニーキングアクションゲーム「メタルモア・ソリッド・ライジング」から。
5号機「またつまらぬ物を繋げてしまったby五右衛門」
TIPS №158 またつまらぬ物を繋げてしまったby五右衛門をゲット。
未来ガジェット5号機。ドライヤーと掃除機を合体させた、夢の未来ガジェット。掃除機の排気を利用して、ドライヤーを同時稼働させる。ネーミングの由来は怪盗が主人公のアニメ「ルパンツ三世」から。
6号機「サイリウム・セーバー」
TIPS №61 サイリウム・セイバーをゲット。
未来ガジェット6号機。ケミカルタイプの赤いサイリウムで、柄が取り付けられているため剣のように持つことが可能。血糊を発光させるという、誰も思いつかない画期的アイデアを実現させた。未来ガジェット研究所ではハードウェアだけでなく、化学分野での発明も可能なのであるッ!ネーミングの由来はハイウッド映画の超大作SFシリーズ「スパークウォーズ」から。
7号機「攻殻機動迷彩ボール」
TIPS №48 攻殻機動迷彩ボールをゲット。
未来ガジェット7号機。中古の6型プラウン管テレビ約12台を、すべて画面を外に向ける形で配置し球体を形成する。その隙間を埋めるように超小型C-MOSカメラを複数装着する。カメラはちょうど、そのカメラと対応する球体裏側のモニタに対し直角且つ外側に向け配置しておく。これにより光学迷彩技術を応用した、まるでポリゴンモデルのような球体として顕現した。今のところ完成させた未来ガジェットの中では最高傑作と呼ぶにふさわしいが、けっこうかさばるので保管しておくには邪魔すぎる。ネーミングの由来はアニメ映画化もされたSFマンガ「攻殻機動班」から。
8号機「電話レンジ(仮)」は、電子レンジにケータイ電話を繋げることで、電子レンジの遠隔操作が可能になるという夢の発明品だ。
出かける前にコンビニ弁当を電子レンジに入れておき、家に帰る事前にケータイから遠隔操作すれば家に到着したときにはコンビニ弁当の温めが完了しているのだ。
数日前、この電話レンジ(仮)には意図していない妙な機能があることを発見した。
きっかけはまゆりで、この電話レンジ(仮)の遠隔操作機能を使って冷凍からあげを温めるのを日課にしていた。というわけで、いつものようにまゆりが大好物の冷凍からあげ「ジューシーからあげナンバーワン!」を解凍しようとしたところ、予想外の出来事がおきた。
結論から言うと、解凍しようしたからあげは逆に冷凍されていたのだ。ちなみにそのとき電話レンジ(仮)に入れた冷凍かれらあげは、ほぼ自然解凍状態にあった。
それ以来、オカリンとダルとで原因を究明中であった。
オカリンは、まゆりのバナナを持って来させて、電話レンジ(仮)に入れた。
操作方法は、電子レンジに無理やり接続した専用のケータイ電話へかけるだけ。
フォーントリガーボタンで、電話レンジ(仮)に電話する。
本来は#120と入力すると、120秒の温めが開始されるのだが、わざと間違って120#と入力すると、ターンテーブルが逆回転始める。
TIPS №139 フントの法則をゲット。
原子の電子配置におけるルール。同一エネルギーの軌道に電子が配置する場合、可能な限り量子スピンを平行にして別々の軌道に入る。
120秒後、レンジが軽快な音を鳴らしたので、中からバナナを取り出した。
バナナは丸々極薄皮の中がゲル状になっていた。
ゲル状になったということは、分子同士の結びつきが弱くなっている可能性がある、とオカリンは考えていた。
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