今日のアパシー学校であった怖い話1995特別編はどうかな?
1人目は荒井昭二を選択。
荒井は2年B組の生徒だ。
怖い話はお好きなんですか?
- 好き
- 人並程度
- 嫌い
荒井は、日野に頼まれてここへやってきたのだが、乗り気ではない、と言い出す。
荒井は、みんなで集まって怪談話をするような俗世間的なことは嫌いという憎らしいとい言い切る。
霊を馬鹿にして、勝手に呪われて、それで周りに迷惑をかける人間と同じ空気を吸うことがやりきれないが、この鳴神学園は、霊を馬鹿にしていると、それ相応の罰が下る、と言って笑う荒井。
どうして、この鳴神学園を選んだのですか?
- 自分の意志で
- 親の意志で
高校生にもなって自分で進路を決めることができない坂上にぴったりな話をしよう、といって荒井は話し始める。
誕生日プレゼント
一度は見てみたいけどなかなか見ることができない光景、何か一つ見ることができるなら、何を望みますか?
- 自分の身体の中
- 自分の未来
- 過去の歴史の名場面
- 殺人の現場
荒井が1年生だった頃、さっきと同じ質問をクラスメイトの佐伯裕也にしたところ、「人が死ぬところがみたい」と言われた。
荒井が、どういう風に死ぬところが見たいのかを尋ねると、佐伯は「人が高いところから落ちて、死ぬところがみたい」と答えた。
荒井が、「転落死ですか?人が地面に衝突して、ただの肉塊になる場面が見たいのですか?」と尋ねると、佐伯は「そんなグロテスクな死体は見たくない。僕は、そんな瞬間に自分が何を考えるかを知りたいんだ。」と答えた。
「これから地面に衝突して死ぬというほんの数秒間。その瞬間を見たとき、自分は何を思うんだろう?怖くなるかもしれないし、何も思わないかもしれない。あるいは今日の晩御飯のメニューについて考えているかもしれない。そんなことを想像するとドキドキしてこないかい?」と嬉しそうに話した佐伯。
荒井は、そう話した佐伯に興味を持ち、自分の中で佐伯は特別な存在となっていった。
今、新聞部の窓から見える10階建てのビルは、佐伯と会話した頃は建設作業中だった。
窓際の席だった佐伯は、毎日建設中のビルを見ながら、「あそこで作業している人が、目の前で落ちてこないかな?」と思っていた。
ある日、佐伯の父親が、そのビルの建設に携わることになった。
佐伯の父親は、建設関係の仕事をしており別の現場で働いていたが、そちらの仕事が終わったため、応援要員として回されたのだった。
夕食の時、父親からその話を聞かされた佐伯は、あのビルから誰かが落ちるところが見られるかもしれない、と考えて微笑みが浮かべていた。
翌日の朝食、佐伯は父親の食事に睡眠薬を入れたが、父親は気付かず食べて、出勤した。
佐伯の方は、睡眠薬の効果で父親がうっかり安全帯を付け忘れ、ふらついて、自分が見ている前であのビルから落ちるかもしれない、と1日中ドキドキしながら、教室の窓からビルを見てたい。
荒井は、まさか父親に睡眠薬を盛ったとは思っておらず、佐伯が今日もまたビルから人が落ちるのを楽しみに待っているな、と思いながら佐伯の姿を見ていた。
結局その日は、父親は転落しなかったので、佐伯は落ち込んでいたが、ビルの完成に3か月かかると父親から聞いていたので、根気よく待ち続けることにした。
それから来る日も来る日も、佐伯は少しずつ量を増やしながら睡眠薬を父親に盛り、ビルを眺めていたが、父親は転落しなかった。
1カ月ほど経ち、佐伯の我慢が限界に達しようとした時、佐伯はある行動をとった。
- ひたすら機会を狙った
- 実験台を変えた
佐伯は根気よく父親に睡眠薬を盛り続けた。
ある日の朝、父親はまったく気づかずに睡眠薬入りの食事を食べながら、佐伯に、「今日は裕也の誕生日だから、裕也が喜ぶものをプレゼントしてやろう」と言い出した。
佐伯は、「誕生日で喜ぶ歳でもないから」と言って、断ったが、父親は「絶対に喜ぶプレゼdントだ」と引き下がらない。
佐伯は、「本当に欲しい物がわかるの?自分が本当に欲しいのは、目の前にいる父親の命、ビルから落ちる瞬間だよ」と叫びそうになるのを押さえた。
父親は、「プレゼントは今はないんだ。今日中に用意しておくから、学校から帰ったら机の上を見てくれ」と話すと、母親が、「昔は一家でバースデーパーティーをしてたのよね」と懐かしそうに話した。
それを聞いた佐伯は、その光景を思い出し、自分が欲しかった物をプレゼントしてくれてた父親を殺そうとしていることに罪悪感を覚えたが、今までよりもさらに高揚感も感じていた。
学校へ行き教室でビルから人が落ちないかと見ていた佐伯は、ビルの最上階の端っこにいる作業員の姿を見つけた。
ここからは顔は見えないが、佐伯にはなぜかその作業員が、自分の父親のように思えた。
「落ちろ、落ちろ、落ちろ!」と佐伯が強く念じていると、ふらついた作業員が、そのまま落下していった。
佐伯が見ている場所からは、落下地点は見えなかったが、佐伯の頭の中では父親がグチャグチャになって壊れた人形のようになっている姿が見えた。
佐伯は、自分が盛った睡眠薬のせいで父親が目の前と落ちて死んだ、と叫びそうになったが、睡眠薬を使ったため事件性が疑われては困ると考え、気分が悪くなった、と告げて早退した。
荒井はビルから人が転落したと思っていないので、早退する佐伯が青ざめいてたがなぜか興奮してたように見えてた。
佐伯が家に帰ると、のんびりした口調で母親が出迎えてくれた。
佐伯は、部屋で休むと言って、ベッドに寝転んだが、父親の無残な光景が頭の中から消えない。
ふと部屋の中を見渡すと、机の上に手紙が置いてあった。
これが父親が今朝言っていたプレゼントかと思うと、佐伯の目から涙があふれる。
封筒を開けて、手紙を読むと、最近仕事中の眠気がひどいため、佐伯の部屋を調べたら睡眠薬のビンを見つけたので、自分の食事に睡眠薬を仕込んでいることに気付いていた、と書かれていた。
オレが、裕也の教室から見えるあのビルに現場に行くようになってから仕事中の眠気を感じるようになったので、最初は仕事が失敗するよう仕向けているかと思っていたが、よくよく考えると、オレがビルから転落するところが見たいことに気付いた。
なぜそう思ったのかというと、それはオレも、それくらいの年齢に、工事現場で働いているヤツが目の前で落ちてこないかな、と思っていたことがあったから。
でも、オレは頭の中で思っていただけで、裕也は実際にそうなるよう実行している。
一番ショックだったのは、裕也にとってオレは、好きでも嫌いでもない無関心な存在で、裕也の目的を叶えるのに一番都合のいい相手だから睡眠薬を飲ませた、と知ったことだ。
裕也は、自分の目的のために躊躇なく人の命を奪う。その対象は誰でも構わない。それがとても恐ろしい。
どうしたら裕也に人の命の尊さをわからせてやれるのかを考えたが、何をやってもわかってはくれないんじゃないかと思ったり、例え裕也が「わかった」と返事してもそれを信じることができない。
今オレができるただ一つのことは、裕也の誕生日にあのビルから飛び降りることで、人の命の意味を伝えようと思う。これが誕生日プレゼントだ。
これを見て裕也が何を思うかはわからない。
願わくば、オレの死をもって、どうか命の尊さに気付いてほしい。
これがオレからお前にできる最後の贈り物だ。
どうか人の痛みをわかることのできる優しい大人になってください。
16年間裕也の父親だった男の最後の願いです。
佐伯は、「僕が望んだのは、こんなことじゃない」と力なくつぶやいた。
人が目の前で転落死するとき、自分が何を考えるのかずっと知りたくて、父親に睡眠薬を飲ませて殺そうとしていた。やっとその答えを知ることができた。
父親がビルから落ちていくのを見て、地面に激突するまで数秒間ずっと思っていたのは、「死なないで!ごめんなさい!死なないで、父さん!」だった。
廊下から「お父さんが、お父さんが」と母親の悲痛な叫びが聞こえてきたが、佐伯の耳には届いていなかった。
事故後しばらく佐伯は学校を休んでいたが、久しぶりに登校したときにこの話を荒井に打ち明けてきたとのこと。
人が死ぬ瞬間に自分が何を考えるかを知りたいという狂気の実験。佐伯は身をもってその結果を知ることになったのです。そう考えると、彼の父親の死も無駄ではなかったのではないでしょうか。
荒井エンディング003:狂気の実験
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