チラシの裏~弐位のゲーム日記
社会人ゲーマーの弐位のゲームと仕事とブログペットのことをつづった日記

 

屍人荘の殺人 〈屍人荘の殺人〉シリーズ (創元推理文庫)
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 今日の屍人荘の殺人はどうかな?


 洗った鉄板と鉄網を高木と手分けして持ち、紫湛荘の玄関前を通り過ぎると、奥のエレベーターに出目が乗り込むのが見えた。
 広場に戻ると片付けを終えて駐車場に側に集まった皆の間に白々とした空気が漂っているのに気付いた。
 見回すと出目の姿が見たらず、星川が名張の側に寄り添い、慰めるように何事か言葉をかけているにが気になった。
 「何があったんですか?」と明智に問うと
 「よくわからんが、名張嬢が出目式の熱烈なお誘いをお撥ねつけになったらしい」
 そう言って肩をすくめた。
 横で高木が舌打ちした。
 微妙な空気のフォローに回ったのは立浪だった。
 「皆、すまなかったな。あいつは昔から酒を飲むと気が大きくなって、女と手の癖が悪くなるんだ。後で頭を冷やすように言っておこう。あいつはペナルティってことで、この後の肝試しの脅かし役に回ってもらうことにするか。いいよな、七宮」
 「ああ、自業自得だ」
 どうやら3人に力関係は対等というわけではなく、七宮と立浪が実権を握り、出目は道化役のようだ。出目が他の者に対して高圧的なのはその不満のせいなのかもしれない。
 「肝試しってどこに行くんですか?」
 「15分ほど歩いたところに古い神社があるのさ。そこから二人一組で札を取って来てもらう」
 七宮たちは準備してくるからいったん部屋に戻るように言い残し、広場を後にした。
 その時、空を眺めていた明智が呟いた。
 「あれは何だろう」
 見ると、東側の山の輪郭がうっすら光っている。
 「サベアロックフェス。山の向こう側の自然公園で野外ライブをしてるんです。きっとそのステージの明かりでしょう」
 重元が手元のスマートフォンを覗きながら
 「あれ・・・ネットが繋がらない。ロックフェスを調べようとしてるんだけど」
 「ここ、電波が入らないんじゃない」と下松。
 「バーベキューの前までは通じてました」
 すると他のメンバーも自分の携帯を取り出し、口々に戸惑いの声を上げた。
 「ホントだ。全然通じない」
 それぞれが持っている携帯は機種も契約会社も違う。ただの接続障害だとは考えられない。
 「もし何かの障害だとしても紫湛荘には電話があるし、車を使えば町まで出られるんだ。大したことじゃないさ」
 進藤の言うとおりだ。明智は冴えない表情で
 「外部との連絡の遮断、か。これもまた現代版のクローズドサークルというえるのかもしれんな」と言った。
 その言葉に不安を煽られた葉村は、いつもの癖で時間を確認しようと左手を持ち上げた。そこで、むき出しの手首を見て、時計をバーベキューの時に外したことを思い出した。
 皆の輪から離れ、時計を置いていた駐車場の電灯の下へ向かったが、そこには時計を包んでおいたハンカチだけがはだけた状態で残されていて、時計そのものはどこにも見当たらなかった。
 「どうしたの?」
 葉村の様子を気にしてた比留子が声を飛ばしてきた。
 「ここに置いてあった時計が見当たらなくて」
 それを聞いた名張が声を上げた。
 「私がさっき見た時、時計は確かにあったわ。そんなところにハンカチが置いてあったから気になって、中をめくって確かめたの」
 皆の元に戻り、詳細を訊ねる。
 「いつ頃のことですか?」
 「バーベキューの終わりごろかしら。出目っていう人が絡んでくる直前よ」
 事件の匂いを嗅ぎ取ったのか明智が名張に質問を重ねた。
 「途中、時計に近づいた人はいましたか」
 「いなかったのわ。どうにかしてあの人と打ち切られないきっかけを捜していたから、誰かが近づいてきたら絶対に気づいたはずだよ。
 そうしているうちに片づけが始まったの。チャンスだと思って離れようとしたら彼が親しげに肩を回してきたから、声を上げて振り払ったの。そして私の近くにいた星川さんが駆け寄って、そのまま」
 「名張さんが声を上げてからは、出目さんだけが時が置いてある壁際に立っていた。それ以前にこの壁際、また駐車場に近づいた人はいますか。もしくは誰かを目撃したという話でも構いません」
 すると数人が手を挙げ、バーベキューの準備の際に駐車場の倉庫にしまわれいた器具を運び出すために近づいたと話した。すると静原が恐る恐るといった感じで手を挙げた。
 「あの、名張さんと出目さんが来られてから、私はずっとその様子を見ていたんです。だから、お二人が来られてからは誰もその場に近づいていないと断言できます」
 名張も同意し、それ以外の証言をする人もいなかった。以上を踏まえて明智は言う。
 「ということは、我々の目が名張さんに向いている際に出目さんが時計を拾い、そのまま持ち帰ったと考えるのが自然だ」
 去年が硬い声を出した。
 「去年も同じようなことがあった。確か江端さんが酔いつぶれている隙に財布から万札が抜かれていたんじゃなかったっけ。なあ進藤」
 彼女が言う江端さんとおそらく映研の先輩だろう。
 「そうだったかな」
 「そうだとも。思い出した!あの時江端さんを酔い潰したのも確か出目さんだったはずだ。けど結局彼は知らないの一点張りだった。
 葉村、取り返しに行こう。あたしも一緒に行ってやる」
 「出目さんが犯人だと決まったわけじゃないだろう。名張さんが勘違いしている可能性もゼロじゃない。なあ明智さん」
 進藤が慌てる。ここで騒ぎを起こすとまずいと顔に書いてある。
 「ロジカルに考えれば、彼女が来る以前に時計が持ち去られていたなら、全員が容疑者にとなる。だが、彼女が時計を見たというのは紛れもない真実だろう」
 「どうしてそう言い切れる?」
 「今はハンカチだけが残されている。そして葉村君はさっきこう言った。『ここに置いてあった時計が見当たらない』と。だが直後に名張さんは『中をめくって確かめた』と証言した。ハンカチで時計を包んでいたなんて葉村君は言っていないのに。普通はハンカチを下に敷いていたと考える方が自然だ。『めくって』と言い切ったのは、彼女が時計の実物を目にしたからだ」
 「ほらね、ということは盗んだには私か出目さんが。どうぞ好きに調べてちょうだい」
 名張が胸を張り、明智が補足した。
 「さらに言えば、名張さんが時計を盗み、星川さんが駆け寄った時に渡した。という可能性も無きにしも非ずだ」
 「いいわ、じゃあ私のことも調べるといいわよ」
 星川もそう言って出目をかばおうとする進藤に見せつけるように両腕を広げる。
 比留子が手早くボディチェックを施し、「ありませんね」と証言した。これには進藤も反論できなかった。


 皆がいったん部屋に戻る中、葉村は事情を聞くために出目の部屋に向かうことにした。ありがたいことに、心配した明智と高木がついてきてくれるという。だが残念なことに訪問は空振りに終わった。出目の部屋にいくら声を掛けても応答がなかったのだ。
 「あの3人なら、さっきエレベーターで下りてきて外に出て行きました」
 フロントにいた管野に聞くと、そう答えがあった。きっと肝試しの下準備に行っていまったのだろう。
 明智が尋ねる。
 「高価なものだったのか」
 「いえ、値段自体は大したことはないんですが、妹が高校の入学祝いにくれた時計なんで」
 しかも震災から間もない時期で皆がてんやわんやしていた中、苦労して買い求めてくれたものだ。葉村にとって金銭に換えられない価値がある。タイミングを見て取り戻さなけばならない。

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