今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?
倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
2人目は岩下明美を選択!
岩下は3年A組とのこと。
「あなた、私のことどう思う?」
- 優しそうな人
- 厳しそうな人
- 初対面なのでわかりません
- 愛に生きる人(2人目に選択した時のみ)
岩下は、愛に生きる人と表現したくれた想いに応えて愛の話をしてくれる。
「あなた、話したこともない相手に恋をしたことはある?テレビのタレントや、あまり話したことのない同級生、電車の中で見かける人、近所のコンビニのスタッフとか。毎日見掛けるうちに、ついさっきまで意識さえしなかった存在が、ある日突然、特別な存在として胸の内に浮かび上がってくるこだってあるでしょうね。その人が、いつものようにさりげなく視界に登場するだけで、退屈な日々が燃え上がる恋の物語へと置き換わっていく。そういった経験はないかしら?」
- ある
- ない
- 教える
- 教えない
- タレント→エンディング№310:彼を呼ぶ声
- 同級生
- 岩下さんです
よく恋は盲目と言うでしょう?絵画の中の人物や造形物に本気で恋をしてしまう人もいるわ。キリシア神話に登場する自分の作り出した彫刻を愛したピュグマリオンの話は有名よね。現代でも二次元コンプレックスといって、アニメやゲームの登場人物に惚れこんでしまう人たちがいるじゃない。まあ周りがどうあれ、自分の心の中で愛情を傾ける限り、それが実在する人物かどうかは関係ないことなのかもしれないわね。これから私が罠すのは、そんな自分の心の中の人に恋をしてしまった、ある少女のお話よ」
不知火美鶴の席は教室の窓際で、彼女はこの席がお気に入りだった。
とても見晴らしがよくて、グラウンドから校門まで見渡せた。
不知火は合唱部に所属する2年生で、岩下が部長をしている演劇部と一緒にミュージカルを企画するイベントがあり、二人は仲良くなったとのこと。
引っ込み思案の不知火は、活発に校庭を駆け回る男子生徒たちの動きを、よく羨望の眼差しで見つめていた。
やがて、不知火は、ある特定の男子生徒に恋をした。
名も知らないその相手は、子供っぽくて、いつもテンションが高くて、がむしゃらで、無駄な動きが多い、どこにでもいるような愛すべき男の子だった。
どんな撞木でも彼が活躍した時のむじゃくな喜びようや、へとへとに疲れながらも最後までひたむきに全力を尽くす様子が心に引っかかっているうちに、いつの間にか意識するようになってしまった。
ある日、不知火はこの気持ちが恋なのではないかと気が付いた。
自覚すれば、もうその想いを無視することはできず、不知火の彼に対する思慕はどんどん加速していった。
彼の仕草の一つ一つにときめいて、遠くから眺めているだけで、全身に幸福感が押し寄せてきて、退屈な授業が愛しい彼との逢瀬のひとときに変わった。
彼を見ることができるのは、彼が体育の時間の時だけだったけれど、不知火にはそれで十分だった。
彼がなんという名前で、どのクラスに在籍していた、どんな部に入っていて、どこに住んでいて、どんな女の子が好きで、決まった相手はいるのか。その気になれば簡単に調べることもできたのに、不知火はそれをしようとしなかった。
不知火は一度だけ廊下で、その彼とすれ違ったことがあったが、不知火は顔を伏せて、足早に歩き去ってしまった。
不知火は、目に映る風景の中に走り回る彼を愛したのであって、そこに自分が介入することなんて考えもしなかった。
まるで教室の窓枠が大きな額縁で、彼はその絵の登場人物であるかのように。
不知火は、彼の正体をしって幻滅したり、失恋したときの衝撃で自分の心が傷つくのが怖くて嫌だった。
不知火は、自分の描いた世界の中だけで、彼と恋をしたかった。
そんな不知火と彼との一方的な逢瀬の時は、ある日あっけなく終わりを迎えた。
席替えのくじで廊下側の席を引き当ててしまった不知火は、彼の登場する風景を愛でる機会を、一瞬にして失ってしまった。
不知火は、最初は授業中に教室で目を閉じて、脳裏に彼のいる風景を思い描いた。
最初は思い通りの彼を描けずに困っていたが、次第に想像上の彼を自由に動かせるようになり、不知火は元の幸福感を取り戻すことができた。
不知火は、自分でも気づかなかったみたいだが、エア充体質だった。
才能が開花した観察力と想像力は、並大抵のものじゃなかった。
目を閉じて意識を集中するだけで、風景の細部まではっきりと思い描くことができ、そこを舞台に動き回る彼の姿も、とても生き生きとしたものだった。
それまで見たことのある光景を再生するだけでなく、不知火の中で新たな命を得た彼は、まるで生きているように動き回った。
そして想像力が増していくと、ついには彼を取り巻くクラスメイトたちまで再現され、それぞれにふさわしい役割を演じていた。
ただここまでくると、それはもう想像とは呼べず、不知火の作り出した妄想の世界。
窓際で見つめていたころは、体育の時間だけという限りがあったから歯止めがきいていたが、彼の姿をいつまでも好きなだけ眺めていられるようになった不知火は、もう現実の世界に帰ってこられなくなった。
授業中はもちろん休み時間まで不知火は妄想の世界に入り浸った。先生に注意されても、友達に呼ばれても、目を閉じて幸せそうに微笑んでいるだけ。
それは家でも続き、すぐ自分の部屋にこもってしまうし、食事の手はしょっちゅう止まるし、何時間もお風呂に入ったまま出てこない。
やがて不知火は、妄想ならリスクがないという打算かしら、それまで自分が登場していなかった世界に、ついに自分を登場させようかと考え始めた。
そして、ついに不知火は、妄想の世界で告白してみようと決心した。
実は、岩下は、不知火から何度も相談を受けていた。
「すいません、岩下さん、またお呼びだけしてしまって」
「いいのよ、気にしないで。私もあなたの話には巨にあるから。で、妄想世界の彼とはうまくいっているの?」
「しれが、まだ本当に私が飛び込んでしまっていいものか悩んでいるんです」
「この前は告白する決心がついたって言ってたのに、まだ出会ってもいないの?」
「突然私なんかが彼の前に現れたら迷惑するんじゃないかと思って」
「そんなことないわ。彼はきっとあなたのことを受け入れてくれる。それで彼の名前くらいはかわったんでしょうね?」
「いえ、まだ聞き出せなくて」
「呆れたわね。彼は仲の良い友達と伊一緒なんでしょ?彼らは何て呼んでいるの?」
「・・・」
「ニックネームもないの?」
「はい、友ダリはいつも、ようとかお前とかそんな呼び方ばかりなので」
「困ったものね。それだったらもう、あなたが出ていくしかないじゃない。一歩踏み出すのも大事じゃなくて?そのためにはあなたが必要よ。そして告白しちゃいなさい」
「告白して断られたら、私、もう生きていけない。ううっ・・・」
「泣かないで、不知火さん。私も考えるから。そうね、現実の世界に合わせればいいんじゃない?体育の授業はいつなのかはわかっているんでしょう?その授業の時に彼はグラウンドんじいるんだから、玄逸の彼とあなたの想いをシンクロさせるのよ。そして、そこであなたは彼と出会うの。今、彼が何をしているのか現実と妄想がシンクロすれば、あなた自身も妄想の世界に登場しやすいんかないかしら?」
「現実の世界とのシンクロ。ありがとうございました、岩下さん。私、やってみます」
「頑張って告白しなさい。必ず、あなたにとっていい返事が聞けるから」
決心がついてから、一日千秋の思いで待ちわびていた体育の時間がやっと訪れた。
もちろん窓から遠くなった不知火の目には見えないのだけど、彼女はいつものように目を瞑り、彼が生き生きと活躍する様を思い描いた。
「ねぇ、不知火さんはどんな形で彼に想いを伝えたと思う?」
- 近づいて話しかけた
- 窓を開けて好きだと叫んだ→エンディング№310:彼を呼ぶ声
- わからない
窓枠で切り取られた風景画の中に自分が現れて、彼に想いを告げて・・・
彼女は想像の世界でとるべき行動を、何度もシミュレートしたが、なかなか決心がつかず、大きく深呼吸までした。
突然、グラウンド上に見知らぬ女の子が現れ、不知火を望まぬ人物の登場に驚いて声をあげそうになった。
彼女が思い描いものしか登場してこないはずなのに、その女はさも当たり前のことのようにその世界に割り込んできた。
まだ後ろ姿しか見てないけれど、それが自分よりもはるかにかわいい女の子に思えた。
グラウンドに現れた少女は、まっすぐに彼のいる方向に向かって歩いて行った。
不知火は、その映像が自分の想像であることも忘れて、狼狽した。
不知火にとって、この光景はもはや妄想ではなく、認めたくない現実だった。
不知火にとって、自分の作り出した妄想世界で、自分以外の誰かが彼を愛し、想いを告げること自体が許せなかった。
不知火自身は、自分さえ踏み出せばいくらでもチャンスがあったのに、自分から彼に声をかけることもできなかった、
自分にはない勇気をもった人、「好きです」って告げる勇気。
そして何より、傷つくことを恐れない勇気を持っている人が、妬ましくて仕方なかった。
そして、悪い方、悪い方へと考えが走ってしまう。その子が自分よりほんの少しだけ早く行動を起こしたがたに、自分がつかむべき幸せを奪ってしまうように思えてならなかった。
それは不知火が生まれて初めて身を焦がした、醜い嫉妬の炎。
不知火は想像が作り上げた窓の中から彼女の背中を睨みながら、ありったけの呪いを込めて念じた。
燃えてしまえ!消えてしまえ!
不知火の嫉妬は黒い炎となり、視線に乗って恋敵の背に食い込んだ。
あの少女は、彼女の望み通りに燃え上がった。
いい気味だ、私の愛する亜kレを奪おうとした罰よ、燃えろ、もっと燃えろ!
そう不知火が願いを込めると、少女を包む炎はさらに勢いを増した。そして、少女は炎の包まれながら、その火を払おうと必死で両手をばたつかせた。
それがまるで踊っているように見えておかしくて、思わず不知火は、クスリと笑ってしまったが、その笑顔は一瞬にして凍り付いた。
燃え盛る炎の中で踊る少女はこちらを向いた。炎に焼けただれる彼女の顔、それは不知火だった。
「ぎゃああああ」
想像の中ではなく、現実の世界で。グラウンドではなく、教室の中で。不知火自身の背中から、突然、激しい炎が噴き上がった。
そしてその炎は、見る見るうちに彼女の全身を包むこみ燃え上がった。
見たこともない自分の背中を想像上で作り上げてしまったのだから、不知火の想像力は優れていたのだろう。
不知火はなんとか一命を取り留め、奇跡的に意識を取り戻したけど、結局学校には戻ってこなかった。
全身に酷い火傷を負って、美しかった顔も面影がなくなり、髪も毛根ごと失ってしまった。
人前に姿を見せられないという事情もあったが、もっと深刻なのは不知火の精神の方だった。
彼女は病院のベッドの上で、常に満面の笑みを浮べている。妄想世界の住人になったのだ。
妄想世界で燃え盛る彼女を救い出したのは、彼だったらしい。
彼ったら、自分が火の粉を被るのも恐れずに彼女を助け、全身に火傷を負って息も絶え絶えの彼女に彼は自ら告白したそうだ。
美鶴さん、一生大事にする。だから僕と結婚しよう、って。
だから、病院にいる彼女はこぼれそうなほどの市合わせていっぱいなのだ。
「彼女が作り出した妄想世界で、知らない女性が現れるなんて、あり得ないでしょうに。もし、もう少しだけ彼女に冷静さがあったなら、その少女が不知火さん自身であり、二人の恋はうまくいくって思えたでしょうにね。まさか自分を呪ってしまうなんて。
坂上君、こんな言葉知っている?『人を呪わば、穴二つ』。もっとの不知火さんは自分を呪って穴一つ、とでも言うのかしらね。うふふふ」
エンディング№311:燃えるほどの恋
エンディング数 21/656 達成度3%
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