
今日の屍人荘の殺人はどうかな?
肝試しの準備ができたとお呼びがかかり、葉村たちは再び広場に集まった。出目の姿はない。おそらく脅かし役としてどこかに潜んでいるのだろう。立浪が紙袋を差し出した。
「それじゃクジでペアを決めよう。女の子が引いてくれ」
葉村の相手は比留子で、スタートは4番目ということになった。
ちなみに他のペアは、七宮・下松組、進藤・星川組、明智・静原組、重元・高木組、立浪・名張組だ。
目的となる神社は湖沿いを東に進み、途中で合流する山からの道を登った先にあるという。そのお堂にあるお札を取ってくればクリア。
午後9時、まずは1組目の七宮・下松組が出発する。
5分ほどの間隔をおいて、2組目、3組目がスタートする。
葉村たちの順番が回ってきた。
肝試しはペアで手を握るというルールが設けられた。
葉村は比留子の手を握り、しばらく湖沿いの道路を進む。
「ねえ、葉村君。実は君に話しておきたいことがあるんだ」
「なんのことですか」
「君をこの合宿に誘った目的について。私は君を口説きたくてこの合宿に誘ったんだよ」
「は?」
「私はこれまで何度か難解な事件に関わってきた。そしてこれからもいくつもの事件に携わることになると思う。そこで、単刀直入に言おう。私の助手になってよ。私にも君が必要だ」
「いやいやいや、俺はただの読書好きですよ。専門的な知識もないし、天才的に閃くこともない」
「そんなのワトソンだってそうじゃないか。ごく一般的な意見を横から挟むに過ぎない。けれどそれで事件が解決するなら万々歳だ。すぐに返事をくれとは言わないよ。合宿が終わるまでに考えといてほしい」
「なんで俺なんです?」
「それは内緒」
「明智さんには話してもいいんですか?」
「少し待ってて。ある意味彼とのコンビを解消させるようなものだ。君はきっと彼にも必要不可欠な存在だろうし、そのうち私から明智さんに話をさせてもらうよ」
左手にあった雑木林が開けて、山側から下りてくる細道が見えてきた。その時だった。
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