
今日のNever 7 - The End of Infinityはどうかな?
誠 V.S. 優夏
着替えから戻って来た優夏は、ネットの向こう側で不敵な笑みを浮かべている。
優夏のサーブ。
オレは一歩も動けなかった。稲妻のような剛速球は鋭くコートに突き刺さった。
「これでフィフティーンオールね」
「なかなかやるな」
「なんか笑顔が引きつっているんですけど」
「ちょっと油断しただけだ!」
「じゃあ、行くよ~」
燃え上がる火の玉のような強烈なサーブが放たれた。
しかし、それはオレの真正面だった。
- クロスに返す
- ストレートに返す
- ロブを上げる
だが、ボールは優夏の頭上を越え、ベースラインの内側にストンと落ちた。
「これで15-30かぁ。勝負はこれからよ?」
休む間もなく、優夏は次のサーブの体勢に入った。
竜巻のような高速回転のかかったボールは、サービスラインギリギリの位置で跳ね上がった。
次に返す方向は・・・
- クロス
- ストレート
トップスピンのかかったボールが、吸い込まれるようにコートを打つ。
- とりあえず返す
- ここはロブで
- 前に出てみる
- チャンスを待つ
しかし、優夏はオレの裏をかいて、高々とロブを上げて来た。
ボールはオレの頭上を越え、ベースラインを越え、背後のフェンスを越えて、森の中へと消えて行った・・・
(これで15-40か)
敗色濃厚な優夏は、虎視眈々と何かを企んでいるかのように、意味深な笑みを浮かべながら、
「古今東西、お酒の種類、焼酎!」と言って、超高速サーブを放った。
「ぶ、ぶらんで~」
「日本酒!」
- ウォッカ!
- ビール!
- ジン!
- 老酒!
- ビール!
- ジン!
- 老酒!
- ビール!
- 老酒!
「老酒!」
「うわぁ~ん、思い浮かばないよ~そうだ!スマ~ッ酒!」
優夏が放った豪快なスマッ酒は、たちまち背後の森へ飲み込まれていった。
結局第1セットの第1ゲームは、オレの勝利に終わったのだった。
一生の約束
「あ~ん、もう見つからないよ~」
オレの片腕には、39個のテニスボールが入ったプラスチックのカゴがぶら下げられている。
最後の1個がどうしても見つからなかった。
探し始めてから、かれこれ30分は経つ。
気を抜くと、優夏はとんでもない方向にボールを打ち返し、華麗なる場外本塁打をしばしば見せてくれた。
あれから1時間以上ゲームを続けたが、最後の1球がフェンスを越える間際まで、オレは優夏に1セット負けていたのだ。
「早く探しちゃお。時間もったいないよ。
ほら、誠!ボケーっと突っ立ってないで、早く探す!」
オレも中腰になって探し始めた。
(何で呼び捨てなんだろ?)
オレは足を止め、何気なく優夏の方へと視線を向けた。
あらわになった優夏の太ももが、森の湿り気をまとって瑞々しく見える。すべるようななめらかな肌は、まばゆいほどの清純な艶めきに満ちていた。
オレは唐突に、ある事実に気づいてしまう。
(オレは優夏のことを『ゆうか』と呼んでる!)
優夏だけじゃなく、オレは遥のことを『はるか』、億彦のことを『おくひこ』と呼んでいた。
「あ!あったよ!」
テニスボールを高々と掲げながら立ち上がった優夏は、満面の笑顔だった。
「はい」と言って、優夏がふわりとボールを投げる。
オレはそれを右手でキャッチして、プラスチックのカゴに入れた。
これで全部集まったわけだ。
「ちょっとぉ、サンキューとかありがとうとかないの?」
「さんきゅう」
「あ、実は全然感謝してないでしょ?」
- 元はと言えば優夏のせいだ
- 感謝している
「じゃあ、どうすればいいんだよ?」
「お礼ってのは、気持ちを込めて言うものでしょ」
それから、オレへの悪態が連なり、だんだん、腹が立ってきた。
「よーし、試合再開だ!」
「いいよ、相手になってあげましょう。その代り、もしわたしが勝ったら・・・1つだけ何でも言うことを聞くこと」
「じゃあ、もしオレが勝ったら?」
「もちろん、1つだけ、何でも言うことを聞いてあげるよ」
「受けて立とうじゃないか!」
かくして、オレ達は再びネットを挟んで向かい合うことになった。
飾ることのない優夏の態度には、すがすがしさがある。『竹を割ったような性格』とは、きっと彼女みたいな女の子のことを言うのだろう。
ゼミ合宿も悪くないな、そう思い始めたオレだった。
試合の決着がついたオレ達は、これからどうするか話し合った。
もう1試合するほどの体力は残っていなかったし、かと言って、ロッジに戻るには早過ぎる時間だった。
で、結局、海に行った遥と億彦に合流しようということになった。
話し合いを終え、オレ達は管理事務所でシャワーを浴びた。
そして、今オレ達は海へと続く長い坂道を下っている。
「さ~てと、何やってもらっちゃおっかな?」
- 「やっぱり、あの約束はなしにしない?」
- 「もったいぶってないで早く言えよ」
まっ、考えておくよ」
「今、言えよ!」
「だって、いいのが思いつかないんだもん。約束では有効期限があるなんて言ってないしね。10年経っても、ちゃんと覚えててよ?」
林道を抜け、オレ達は海岸線に出た。
西に少し行くと、岩場に囲まれた小さな入り江がある。
東に向かえば、長い白砂のビーチが広がっている。
小さな入り江の方を姫ケ浜、長くて広い砂浜の方を月浜と呼ぶらしい。
オレ達はまず姫ヶ浜を当たってみることにすると、タイミング良く、ばったり2人と出くわした。
2人はちょうどロッジに帰ろうと思っていた所だったらしい。
優夏が事情を説明し、せっかくだからということで、オレ達4人は商店街へ繰り出すことになった。
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