今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?
倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75
5人目は細田を選択!
僕ね、今日のこの会をとっても楽しみにしてたんですよ。坂上君も楽しみにしてましたか?
- 楽しみにしていた
- 特に気にしていない
- あまり乗り気ではなかった
坂上君は立場的にみんなを盛り上げるべきだと思うけどなあ。そこまではっきり言われると、なんだかちょっと引いちゃうかも。
それにしても、7人目はどうしちゃたんでしょうかねえ。
迷惑するのは、坂上君なんですもんねえ。かわいそうに。
あ、申し遅れました。僕は細田友春っていいます。2年C組です。
あのう、坂上君って、友達とかいます?
- 多いほう
- あまりいない
- 早く話を進めてください
細田は、自分がデブだという自覚があるが、ダイエットをしてもどうしても食べたり、汗っかきですぐに喉が渇いてしまい、お茶よりもおいしいジュースを飲んでしまうため、どうしても痩せられないとのことで、小学生の頃から太っており、細田なのにデブと言われ続けていた。
風間と岩下の話を聞いていれば、シナリオ:トイレの恋開始!
細田が1年生の頃、友達がいなかった。
原因は、太っていたからで、クラスの皆は、外見で人のことを判断するような人ばかりだった。
細田が話しかけても、ニヤニヤと見下したような笑顔しか返してくれなかったで、細田はいつも一人でいた。
そんな細田のお気に入りの場所はトイレの個室だった。
学校はマンモス校で人が多いが、トイレだけは一人になれる場所だった。
細田は授業中でも平気で抜け出して、トイレに入ってボーっとしていた。
その日の放課後も、細田はトイレの中でボーっとしていた。
突然、短い女性の悲鳴が聞こえてきて、それに続いてドンっという何か大きなものが落ちる音が聞こえた。
声は隣の女子トイレの方から聞こえてきたようだった。
- 女子トイレに入ってみた
- 知らんふりをした
細田は薄情な人間ではなかったので、女子トイレの様子を伺ってみることにした。
女子トイレの中に入ると、トイレの個室の開いたドアから女の子の足が見え、同時に女の子のすすり泣く声が聞こえた。
どうやら女の子は、地べたに座り込んで泣いているようだ。
「大丈夫?」と細田が女の子に声を掛けると、ビクっと体を震わせて、目をまん丸くさせて細田のことを見ていた。
「あの、いきなり入ってきてごめんなさい。隣の男子トイレにいたら、悲鳴と鳴き声が聞こえてきたから心配になって」
地べたに座り込んでいた女の子のすぐ近くには、ちぎれたロープがあり、脱ぎ捨てられた上履きの横には白い封筒が落ちていた。
もしかしてこの子、自殺しようとしていたんじゃないか・・・
「私、死のうと思ったの」
突然、女の子がそんなことをしゃべった。
「どうして自殺しようと思ったの?」
細田の言葉を聞いた女の子は、泣くのをやめてぽつりぽつりと、その理由をしゃべり始めた。
要約すると、彼氏に振られたからというのがおおまかな理由でした。付き合っていた彼氏に好きな人ができて、別れを切り出されてしまったそうだ。
それで、生きることに絶望した女の子は死ぬことに決め、トイレのドア枠で首を吊ろうとしたが、ロープが切れ、結局未遂に終わってしまった。
細田は必死に女の子を慰めた。
「ありがとう、慰めてくれて、私は1年F組の室戸葵。あなたは?」
「僕は1年C組の細田友春って言います」
「そっか、結構近いクラスなんだね」
そう言って室戸はふっと笑った。
とりあえず、室戸は自殺を思いとどまってくれたようだ。
「細田君は命の恩人だね」
細田は女の子と話したことがほとんどなかったので、その時は相当ニヤケた間抜けな顔をしていただろう。
それ以来、細田は室戸と友達になり、廊下ですれ違う時に、声をかけてもらったり、あいさつをするようになった。
室戸とあって1週間が過ぎようとした頃、放課後、いつものように一人で帰ろうとしている細田に、室戸が声を掛けた。
「よかったら、いっしょに帰らない?」
思いがけない室戸の提案に戸惑う細田。
細田は女の子にそんなことを言われたことがなかったのだ。
「細田君は、私と一緒に帰るのは嫌かな?」
「嫌なわけあるもんですか」
「本当?じゃあ一緒に帰りましょ」
女の子と一緒に帰るなんて初めての細田は、緊張して何を話したか、あまり覚えていなかった。
そして、ある角に差し掛かった時、室戸が小さく声を上げた。
室戸が声を上げた方を見ると、鳴神学園の制服を着た一組のカップルが楽しそうに、道を歩いていた。
室戸の顔色が一気に曇ったのがわかった。
室戸は走り出すと、すぐ近くの路地に引っ込んでしまったので、細田は室戸を追いかけた。
察しの悪い細田でも、もしかしたらさっきのカップルの男は、室戸の彼氏だった人じゃないかと気づいた。
「こめんね、いきなり隠れたりして。さっき、前を歩いていた男の子、私の彼氏だったの。新しい彼女と歩いているのを見たら、何だかその場にいられなくて・・・私、このままじゃ学校にも行きたくないな」
細田は悲痛な面持ちで訴える室戸を見て、何とかしてあげたいと思った。
「何か自分に、協力できることはないかな?」
「ありがとう、細田君」
そして、室戸は細田にあることを頼んだ。
坂上君、彼女は僕に何を頼んだと思う?
- 彼氏を呼び出してほしい
- 彼女を呼び出してほしい
- わからない
違います。彼氏と顔を合わすのもつらいんですよ。
「あの人の彼女を、呼び出してほしいの。私じゃあの人を呼び出すことはできないから、お願い、細田君」
細田は室戸の頼みを聞くことにして、室戸の彼氏と今の彼女のことについていろいろと調査した。
室戸の彼氏だった人は、サッカー部で注目される2年生で次期キャプテン候補の西澤仁志だった。
西澤は、スポーツ特待生で、鳴神学園でも話題の有名人だった。
西澤は、とにかく女性にモテモテでいつも女の子が周りに集まっているのに、特定の彼女はいないみたいだった。要するに、本命の彼女である室戸のことは、みんなには内緒にしているみたいだった。
そして、今の西澤の彼女は1年生の姫乃愛良だったが、姫乃のことを同じクラスの人に聞いても、なんか答えをはぐらかされてしまい、今一つわからず、結局、名前以外、写真を見る限りとても美しいということだけしかわからなかった。
普通に姫乃を呼び出すのことが細田には無理そうだったので、姫乃の持ち物を拝借して、それを餌に呼び出すことにした。
女子が体育の時間を見計らい、細田は姫乃の机から高価そうな万年筆を拝借し、代わりに手紙を忍ばせた。
「あなたの落とし物を拾いました。返したいので、放課後、屋上まで来てください」
「放課後、この万年筆を取りに屋上に姫乃さんが来るから、そこで話をすればいいよ」
細田が万年筆を渡しながら室戸にそう言うと、室戸はにっこり笑って「ありがとう、細田君」と言ってくれた。
次の日、学校は大騒ぎになっていた。
駐車場には何台もパトカーがとまっているし、テレビ局の中継車もいた。どうやら誰かが屋上から飛び降りて死んだ、と騒ぎになっていた。
死んだのは姫乃だった。
「まさか室戸さんが?」と思った細田は室戸を問いただすことにした。
休み時間、室戸の教室に向かうと、細田に気づいた室戸は近づいてきた。
「ここじゃなくて、どこか人気のないところで話しましょ」
細田は、室戸に誘われるまま校舎裏にやってきた。
「あの、姫乃さんのことなんだけど」
口を開いた途端、室戸は細田の胸元に飛び込んできた。
瞳に涙を溜めながら嗚咽混じりに、室戸はあの時の事の顛末を語り始めた。
室戸が姫乃を呼び出したのは、西澤と別れてほしいと切り出すつもりだった。
ところが姫乃は、室戸の話を聞こうともせず、万年筆を返せと迫ってきた。
起こった姫乃から、髪の毛を引っ張られたり引っ掛かれたり暴力を受けて、もみ合っているうちに万年筆が屋上から落ちそうになり、それを取ろうと身を乗り出した姫乃は、そのまま落下した。
「細田君、どうしよう・・・私のせいだわ」
「いや、室戸さんのせいじゃないよ。僕が万年筆を持って行ったりしなければ」
「いいえ、細田君は悪くない。元はといえば渡した細田君に頼んだことよ」
「室戸さん、僕は絶対誰にも言わないよ。約束する。これは二人だけの秘密だよ」
細田の言葉を聞いた室戸は、安心したようにやさしい笑みを浮かべてくれた。
「二人だけの秘密、ありがとう、細田君」
姫乃の事件は、しばらくの間、学校を賑わせていたが、1か月もするば何事もなかったかのように、いつもの学園生活が戻ってきた。
なぜならば、あれは自殺として片づけられたわけなので。
姫乃は家庭に複雑な事情を抱えていたそうで、だから自殺したんだろうって。
でも、西澤だけは、話題が沈静化して行くに従って、だんだん塞ぎこむようになった。
そんな西澤を励ましていたのは室戸だった。
室戸が西澤といい雰囲気になっていくにつれ、ある噂が目立つようになっていった。
それは、死んだ姫乃を見た、という噂だった。
なんでも見た生徒の話だと、部活で遅くなった帰りに姫乃が飛び降りて死んだ場所で、彼女が佇んでいるのを目撃したとい言うのだ。しかも、彼女の表情はとてつもない怒りに満ちていたそうだ。
細田も見たし、目撃例は日に日に増えていき、校内は再び姫乃の話題でもちきりになった。
そんなある日、担任の先生に掃除当番を命じられた細田は、焼却炉にゴミを捨てるため校舎裏に向かった。
そこで、誰かの泣き声が聞こえてきたので、細田がのぞいてみると、それは室戸だった。
「室戸さん、どうしたの?具合でも悪いのかい?」
「西澤さんが、やっぱり、姫乃さんのことが気になるって・・・私とは付き合えないって・・・」
そう言って、室戸はわっと泣き出した。
姫乃の一件以来、室戸は親身になって西澤に尽くした。
西澤もそんな献身的な室戸の態度に、だんだんと室戸に接する態度が、かつて付き合っていたいたときのように戻っていった。
そして室戸は思い切って「私たち、やり直さない?」と西澤に言ったが、彼は首を横に振った。
「死んだ姫乃さんに申し訳ない、だからお前とは付き合えない」と。
「西澤さんの中には、まだあの女の影がいるのよ!」
そう言った室戸の顔を見たとき、室戸の瞳は爛々と輝き、はっきりと憎悪の炎が見てとれた。
細田は、そんな彼女の表情をとてもキレイだと思った。そう細田は室戸に恋をした。
坂上君、君ならどうしますか?
- 告白する
- 告白しない
告白するなら今しかないと、細田は一大決心で、室戸に言った。
「僕じゃだめかな?」
「ごめんさない、でも、私、細田君は、いい人だと思うわ」
細田は、室戸に言われたセリフを噛みしめながら、帰宅した。恋人にはなれなくても、友達ではいられるはずだ。それに秘密の約束がある。
室戸とのやり取りから数日後、細田は室戸を元気づけるために遊園地のチケットを用意した。
でも、その日の学校ではなぜか室戸の姿が見えず、結局チケットを渡せないまま下校となった。
彼女はどこに行ってしまったんだろう、と細田がそんなことを思いながら公園に差し掛かった時、見慣れた人影を見つけた。
何やら室戸と西澤が激しく言い争いをしているようだった。
細田は好奇心から、二人に気づかれないようそっと近づき、公園の茂みに隠れた。
どうやら、室戸は西澤に、また付き合ってほしい、とお願いしているようだった。
「何度言われても、もう俺は、お前の気持ちには答えられないんだ」
「姫乃さんは、もう死んだんだから。いつまでも過去の人影を引きずっていたらダメよ!」
「怖いんだよ。愛良が夢に出て切るんだ。あなたを一生離さないって、俺の耳元でささやくんだ。お前と一緒にいると特にそれがひどいんだ。きっと、あいつ、まだ成仏してないんだと思う。お前に俺も一緒にいると、愛良の霊に何をされるかわからないぞ」
「私は大丈夫。私が一番辛いのは、あなたに嫌われることだから。あなたに嫌われたら、私生きていけないもの。だから姫乃さんの霊なんて、怖くない。私があなたを守るわ」
「葵、お前、なんでそんなに俺にこだわるんだよ。俺以外にも、他に男はいっぱいいるんじゃないか。お前ならかわいいし、他にいくらだって」
「西澤さんじゃなきゃダメなの!それがわからないの?他の人でもよかったら、こんなに苦しい思いなんかしないよ」
その言葉に打たれたのか、西澤は室戸に向き直ると泣いている室戸の肩に優しく手を置いた。
「泣くなよ」とその手で、室戸の瞳の涙をぬぐった。
そのまま、二人は顔を寄せ合い、キスをした。
二人のキスを目撃して、動揺した細田は物音を立ててしまい、、室戸に気づかれてしまった。
「誰?」
「あの、その、ごめんさない」
「細田君」
細田はどうしていいかわからず、そのまま走り出してしまった。
「おい、あいつ、葵の知り合いじゃないのか?追わなくていいのか?」
「あんなデブ、どうでもいいわ」
背中越しに刺さった言葉の重みで、細田は少し走ったところで、膝をついてしまった。
いい人いいっていうのは、良いとは違う、どうでもいい人って意味だったのだ。
そんなとき、細田の脳裏にあることが思い出された。それは秘密の約束だった。
姫乃の一件は、室戸が嘘をついているかもしれないということだ。
細田は、その足でそのまま警察に行き、あの日の出来事のすべてを話した。
次の日、細田は警察の事情聴取で呼び出された。
細田は、何か罪に問われるのではないかと心配したが、何も罰せられなかった。
ただ室戸に関しては詳しくいろいろ聞かれたことと、、姫乃の遺体には自殺にしては不可解な点がいくつもあったことから、警察は殺人事件として追っていた、ということを教えてもらった。
運命の日がやってきのは翌日の放課後だった。
「来ないで!」
顔を上げてみると、屋上の柵から身を乗り出した室戸の声だった。
その近くには、刑事らしい中年の男性が2人、焦った様子で室戸を必死に説得していた。
おそらく昨日の話を聞いた警察が、今日になって室戸に事情聴取をしに来たのだろう。
「なんで皆、私と西澤さんの邪魔をするの!」
大勢の野次馬が周りに集まってくる。
「葵、お前何やっているんだ!」
気づくと、細田の隣で西澤が焦った表情で、室戸に声を掛けていた。
「西澤さん、きゃあ!」
「葵!!」
突然、室戸が足を踏み外して地面に落ちかけた。かろうじて腕1本で床を持ち、体を支えている状態だ。
屋上に待機していた刑事たちは、急いで室戸の元に駆け寄り、引き上げるために柵を乗り越えようとしていた。
その時、細田は見てしまった。
屋上の柵を越えたわずかな縁の部分から、凄まじい形相で室戸をにらんでいる姫乃の姿を・・・
「いやあ!」
悲鳴を上げた室戸の表情から察するに、彼女にも姫乃の霊が見えていたのだろう。
「愛良・・・」
西澤からもそんなつぶやきが聞こえてきた。少なくとも、室戸、西澤、細田には、姫乃の姿がはっきりと見えていた。
「来ないで!悪いのはあんたよ。あんたが全部悪いんでしょうが!」
室戸は姫乃から逃げようと必死になっていたが、姫乃の霊は彼女が支えている腕に嚙みついた。
室戸の悲鳴が聞こえ、ゆっくりと彼女の体は宙に舞うと、次の瞬間地面に叩きつけられた鈍い音がした。そして、地面には室戸を中心に血だまりが広がっていった。
室戸が死んだことによって、事件の真相は永遠に闇に包まれていしまった。
でも、細田には何となく、室戸が姫乃を突き落とし、命を奪われた姫乃が彼女に復讐したということが、わかった。
姫乃と室戸、付き合っていた2人を亡くした西澤はひどく憔悴していた。
事件の成り行きをいった彼の周りの外野たちは、彼女たちの気持ちを弄んで2人と付き合った西澤を攻めた。
あの事件から1週間ほど経ったある日、細田は西澤から声を掛けられた。
「聞きたいことがあるだけだ。ちょっと、こっちに来い」
細田は校舎裏に連れていかれた。
「お前、あの事件のこと、何か知っているんだろう?全部話してくれよ」
西澤は事件について何も知らないようでした。ただ短期間の間で、彼女だった2人が屋上から飛び降りて死んだのだ。
「僕は何も知りません。室戸さんとは知り合いなだけで、今回の事件にかんしては僕は何もしらないんです」
西澤はその場でうなだれた。
「夢で2人が出てくるんだ。俺の枕元に立って何か言いたそうな顔で、俺のことをずっと見てるんだよ。それが毎晩続くんだ。俺はもう気が狂いそうだ。あいつら、俺に一体、何をしてほしいんだ」
「西澤さん、現場に行ってみたらどうです?彼女たちが死んだ現場に行って、彼女たちの霊に直接聞いてみたらいいと思います」
「あの場所に愛良と葵はまだいるのか?お前には、それが見えるのか?」
「ええ、僕には霊感があるんですよ。彼女たちは、飛び降りた地面に根を張るように、ずっと佇んているです。そして、一日でも早く成仏できるのを待っているんですよ。多分、彼女たちを成仏させられのは西澤さんしかいないと思います」
「そうか、俺はどうしたらいいんだ?」
本当を言うと、細田には2人の霊は見えなかったが、妙な予感がした。きっと彼が行けば2人は出てきてくれるんじゃないかって。
その日の夜、細田と西澤は校門で待ち合わせをして、あの場所へと向かった。
「何もおきないじゃないか」
「一度呼んだくらじゃ何も起きませんよ。でも西澤さんが心を込めて呼びかければ、きっと出てきてくれると思います」
「あ、愛良、葵・・・」
すると、西澤の言葉に呼応するように、姫乃と室戸の姿で青白いシルエットが浮かび上がった。
「教えてくれ、お前たちは俺にどうしてほしいんだよ?」
「私たちのどちらか一人を選んで。どっちがあなたの彼女か。そして口づけしてほしいの。そうしたら、成仏できる」
西澤はおびえながらも、彼女たちに近づき、2人の顔を交互に見た。
西澤は、覚悟を決めたのか、室戸の方に歩み寄った。
その時、姫乃がいきなり目を見開いて、ものすごい形相で西澤をにらんだ。
西澤が思い直したのか、姫乃へ顔を近づけた。
でも、今度は、室戸がものすごい形相で西澤のことを見つめた。
どちらかにキスしようとすると、また一方か呪い殺さんばかりの表情で、西澤のことをにらんできりがない。
業を煮やしたのか、姫乃と室戸の霊は、それぞれ反対方向から西澤の腕をぐいぐいと引っ張った。
「助け・・・」
西澤は苦痛に顔をゆがめながら、細田に助けを求めたが、どうすることもできない。
彼女たちは、西澤の腕を力任せにぐんぐんと引っ張る。
ボキっと鈍く嫌な音が聞こえてきた。
引っ張りすぎて腕の関節が外れたのだ。
「痛いよ、やめてくれ!」
いつしか腕から血が吹き出し、みしみしと肉がちぎれる音が聞こえます。
まるで、戦国時代の拷問の牛裂きの形のようだ。両手両足を荒縄で牛に括り付け、それぞれ別の方向に思いっきり後ろ走らせるという。
「あがぎゃあああ!!!」
彼の悲痛な叫びとともに、両腕は夥しい血を噴き出しながらもげてしまった。両腕をもがれた西澤は血に塗れ、体をぴくぴくと痙攣させていた。
室戸と姫乃の霊は、そんな西澤を見ながら悲しそうな顔をして、ふっと消えてしまった。
校庭には腕をもがれて西澤と、ちぎれた両腕だけが残った。
西澤は死んでおらず、苦しそうに涙とよだれを垂らしながら、のたうちまわっていた。
「助けを呼んできてくれ、細田」
細田は、その場にしゃがんで、じーっと西澤を見ていた。
女の子にモテても、決して幸せじゃないんだ。だから、やっぱり一人でいるのが正しいんだ。そうやって細田は自分に言い聞かせた。
みじめにのたうちまわる西澤を見ることで、細田は初めて優位に立てた気がした。
「どうして?早く助けてくれよ」
「きゃー、怖い、助けて」
これだけ観察すればもう十分だと納得した細田は、大声で叫んで逃げ出した。
逃げながら細田は、こぼれ出る笑いを隠せなかった。
西澤さんが、あの後一人で立ち上がって助けを呼びに行き、助かった。
何とか一命は取り留めたが、話は支離滅裂。自殺した女の子に両腕を奪われた。自分のことを取り合いになって、腕を引っ張ったらそのままちぎれてしまった。でも彼女たちは成仏できた。
ねえ、誰も信じる?そんな面白い話。
これで僕の話は終わりだよ。
「ありがとうございました」
坂上は姫乃と室戸の霊はその後どうなったんだろう、と考えながらふと視線をドアに向けたとき、ドアの隙間、ほんの数センチ開いた隙間から、青白い顔をした女の顔がこちらをじっと見つけていた。そして、目が合うと、その顔はしゅっとドアの奥に引っ込んでしまった。
「見たんだね」
細田がにやけた顔を坂上を見る。
「あれはね、室戸さんの霊だよ。あの事件の後から気づくと、いつもどこでもどんな場所でも、ありとあらゆる隙間から彼女が僕のことを見ているんだ。もしかしたら、僕が秘密をしゃべったことを怒っているのかもしれない。そして、西澤さんがあんな目に遭うように仕向けたこと。でも、僕は幸せなんだ。だって西澤さんじゃなくて、ずっと僕だけのことを見てくれているんだものね。僕さ、モテないからさ。この際、相手が生きていようが死んでいようが関係ないの。たとえ悪霊だっていいじゃない?うふ、うふふ」
エンディング№270:トイレの恋
エンディングリスト28/656 達成度4%
キャラクター数37/112 達成度33%
イラスト数 18/272 達成度6%
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