チラシの裏~弐位のゲーム日記
社会人ゲーマーの弐位のゲームと仕事とブログペットのことをつづった日記

 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 1週目クリア
 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75を見る
 5人目は細田のシナリオ:トイレの恋→エンディング№270~272見る
 6人目は新堂のシナリオ:吉田ババア→エンディング№001~005を見る
 7話目はシナリオ:うしろの正面:エンディング№426~431を見る


 2週目開始!
 倉田のシナリオ:呪われたロッカー→エンディング№376~383を見る



 1人目は岩下明美を選択!


 岩下は3年A組とのこと。


 「あなた、私のことどう思う?」
  • 優しそうな人
  • 厳しそうな人
  • 初対面なのでわかりません
  • 美しい人(1人目に選択した時のみ)
  • モテそうな人
 シナリオ:ポプリ


 「あら、嬉しいわね。私の第一印象を美しいと言ってくれるなんて。
 坂上君、女性を喜ばせる術を心得ているいるなんて、憎いわね。そんなあなたの行為に応えて、私も美しい女性の話をしましょうか。
 その女性はね、この鳴神学園の卒業生。
 でもね、いつの時代美女には秘密が付き物なの。
 秘密は、時にそれを無理に暴こうとする者に、災いをもたらすわ。特に美女の秘密はね」


 鳴神学園に女の子が転校してきた。
 彼女の名前は名倉寧々。
 転校生は自然とクラスになじんでいくものだが、名倉はいつまで経ってもクラスの中で特別な存在だった。
 例えるなら、まるでアヒルの群れに白鳥が混じっているような、そんな感じだった。
 名倉は美しかったが、際立って美人だったというわけではなかった。
 あるものは絶世の美女と言い、あるものは気味が悪いという。そんな個性的で特別な美貌を兼ね備えていた。
 そんな彼女だけれど、みんなは一目置いていた。
 落ち着いた物腰と思慮深さを感じさせる発現。そして何よりも、彼女からはいつもとてもよい香りがしていた。
 香りといっても、ブランド物の香水のように主張が激しいものではなく、彼女の動きに合わせて、ほんのりと空気に混じるような、そんな控えめな香りだった。
 名倉とすれ違う時、ふわりと風に乗ったその香りにときめいて、思わず振り返ってしまう男子も多かった。
 だから、名倉の香りの秘密の聞きたがる女の子は、後を絶えなかった。
 でも、名倉は誰にもでも打ち明けてくれた。
 ポケットから可愛らしい小袋を取り出して、匂いの元はこれよって。
 その袋の中には、ポプリが入っていた。
 ポプリというのは、香りのいい花やハーブ、スパイスなどを乾燥させたものだ。
 数種類のドライフラワーを作り、それに何種類か混ぜ合わせてから保留剤に精油を加えて、なじませて、完成まで1カ月ほどかかる。
 簡単に作れるが、何のドライフラワーを使うと、そして精油はどんな香りを使うかで完成したときの香りは変わってしまう。
 絶妙なバランスがポプリ作りの最も難しいとこであり、また醍醐味でもあると言われている。
 女の子たちから、「このポプリ私も欲しい」と言われた名倉は、自分で作っている、と答えた。
 作り方を教えてほしい、と言われた名倉は、「特殊な作り方をしているから、みんなにはちょっと難しいと思うわ」と答えて、ポプリを分けてくれた。
 あっという間にクラス中の女の子たちの間に、名倉のポプリが広まった。
 そして、ポプリが入っていた可愛らしいサシュも、名倉の手作りだった。


 「みんながその時点で満足していたら、何も問題は起こらなかったわ。
 でも、中にはいるのよね、秘密といわれると、どうしても知りたくなる人。
 あなた、名倉さんのポプリがどうやって作られているか、秘密を暴きたいと思っているじゃないかしら?」
  • 秘密を暴きたい
  • そんなことはしたくない
 「ふふ、随分と正直なのね。
 でも、西洋のことわざに、好奇心はネコを殺す、というものがあるのよ。
 あまりになんにでも首を突っ込もうとすると、酷い目に遭うという意味よ。うふふふ」


 名倉のクラスに八戸安蘭という子がいた。
 彼女も、名倉からポプリをもらっていたが、彼女は、他人が少しでも自分より勝っているのが気に食わないという性格だった。
 自分も名倉以上にいい香りのポプリを作って、みんなを羨ましがらせないと考えた。
 八戸は、名倉からもらったサシュの袋をばらして、中身を見た。中にはたくさんの種類のドライフラワーや、乾燥させたスパイスが入っていた。
 それを一つ一つ調べて、同じようなものを用意した。
 でも、同じように素材を用意しても、まったく同じものを作ることは難しかった。アロマオイルは香料を混ぜて、オリジナリティを出していたからだ。
 八戸は、必死にポプリの匂いをかいで、どんな香料が使われているのか、突き止めようとした。
 でも、どんなに同じように作っても、オリジナルには、到底及ばない出来だった。
 八戸は悔しい気持ちを必死に隠して、名倉に作り方ノレシピを教えてほしい、と頼み込んだが、名倉は決して教えてくれなかった。
 名倉は作り方を独り占めして、自分だけ人気者でいたいに違いない、と八戸は、次第にそんな風に思いつめるようになっていった。


 そんなある日、なんとしてもポプリの秘密を知りたかった八戸は、こっそりと名倉の後をつけようと考えた。
 もしかしたら材料を仕入れているお店に立ち寄るかもしれないし、家の窓をのぞいたら材料が見られるかもしれない。
 名倉が学校を後にすると、八戸が後を付けていることに気づかず確かな足取りで歩いて行った。
 名倉は、住宅街を抜け、田畑はあぜ道ばかりが目立つ景色も通り越し、夜の闇が空を覆い始めるころに薄暗い森の入り口に差し掛かった。
 木々はうっそうと茂り、先はまったく見えない。


 「それで、彼女はどうしたと思う?」
  • 後を付ける
  • 引き返す
 八戸は追跡をあきらめて、そこで引き返すことにした。
 数日後、テレビのニュースで、女子高生の他殺体が発見されたことが報じられた。場所は、八戸が隠れていた森の茂みの中だった。
 被害者は鳴神学園の制服を着ており、遺体には執拗な暴行が加えられていて、体中には無数の穴が空いていた。
 八戸は、一歩間違えたら自分も同じ目に遭っていたかもしれないと思い、震えが止まらかなった。
 そして、それと時を同じくして名倉が学校に来なくなった。行方不明になったのだ。


 「名倉さんも、殺された女子高生のような目に遭ったんだと思う?それとも、彼女は襲う側で。
 いえ、憶測で人を疑うのは良くないわね。行き過ぎた好奇心で身を滅ぼさないように気を付けるのよ、うふふふ」


 エンディング№213:好奇心は猫を殺す
 エンディング数 50/657 達成度7%
 キャラクター図鑑 43/122 達成度35%
 イラストギャラリー 35/283 達成度12%

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 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 1週目クリア
 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75を見る
 5人目は細田のシナリオ:トイレの恋→エンディング№270~272見る
 6人目は新堂のシナリオ:吉田ババア→エンディング№001~005を見る
 7話目はシナリオ:うしろの正面:エンディング№426~431を見る


 2週目開始!

 イジめで死んだ真美の人形を、イジメてた良江が拾うが、人形の方が、真美をマミちゃん人形と認識しており、良江もヨシエちゃん人形と認識している・・・


 新聞部では、日野貞夫が、一学期最後の学校新聞は七不思議の特集をやろう、と言い出す。
 倉田恵美も、長年使われていない旧校舎が夏休み中に取り壊されるし、季節的にも受ける、といって賛成する。
 日野が学校の怪談好きの七名を集めるとのことで、今度の金曜日の放課後に、新聞部の部室で行うことになった。
 日野から、七不思議の記事を書くように言われたのは、主人公の坂上修一だった。
 坂上が嫌がっているのに気づいた倉田が、怖い話が好きだから自分がやります、と言い出したので、坂上は、実は怖い話が苦手だ、と打ち明ける。
 それを聞いた日野は、新聞部一番の怖がりの坂上だから指名した、と答える。
 怖い話を聞いて思いっきり怖がって、その恐怖を記事にしてほしい、という理由からだった。
 倉田は、なら自分は語り部をやりたい、と日野に訴えると、日野は、今ここで怖い話をしてみろ、と言い出す。
 それくらいできないようじゃ、語り部は務まらないとのこと。


 →やります
 →あ~、やっぱりいいです


 「学校で、実は卒業するまで一度も行かないような場所があるのって知っている?」
  • プール
  • 放送室→シナリオ:カエルですか?ネズミですか?
  • 保健室→シナリオ:カエルですか?ネズミですか?
  • トイレ
 シナリオ:呪われたロッカー開始!


 「確かにプールは夏の体育の時間しか行かないよね。水泳部でもない限り、年に数回行くかどうか。
 坂上君って、泳げる?」
 「あのさー、今どき冗談でもそんなこと言わないよ。
 じゃあ、もう一回聞くから、ちゃんと答えてね。坂上君って、泳げる?」
 「ま、確かに猫も泳ぐけど。
 やっぱり怖い話を聞くの向いてないんじゃないの?
 日野先輩、やっぱりこの役は私に・・・そんな怖い顔で睨まないでくださいよお。
 それじゃあ、水泳部の怖い話を聞いてください。
 まあ、この話は鳴神学園では有名な都市伝説だからさ。もしかして坂上君も聞いたことあるかな、瀬戸裕子さんの噂」
 「へえ、怖がりの坂上君でも知っているんだからよっぽど有名なんだ。
 でもさ、ロッカーで瀬戸さんを呼び出す方法はさすがに知らないでしょ?」
 「知ってるの?ねえ、どうして知ってるの?」
 「そうだよね、怖がりの坂上君だもんね、知るわけないわよね。
 さすがに日野先輩は知っていますよね?そうですよね」


 今から10年以上も前に、鳴神学園の水泳部に瀬戸裕子というものすごい選手がいた。
 彼女が泳ぐと人魚みたいだって、みんなは噂していた。
 そんな瀬戸だが、ある朝、プールでうつ伏せになって浮いているところを発見された。
 生徒だけのプール利用は禁止されていたが、彼女の場合は特別で、大会前は特に熱心に練習していた。
 おそらく一人で練習しているときに心臓麻痺を起こして溺れたのだろう、と言われていた。
 それから、プールで変なことが起こるようになった。


 「どんな変なことが起きたと思う?」
 「そうなの、泳いでいるとき、足をつる人が多くなったの。
 みんなは噂したわ。瀬戸さんの祟りだって。しかも、誰もいないはずの部室で、人の気配がするの。
 部室をきれいに片付けておいたのに次の日、部室が水浸しになっていたり。
 みんなは、きっと瀬戸さんが水泳部のことを忘れられないで化けて出てくるのではないか、と噂しました。
 さらに恐ろしいことに、彼女の使っていたロッカーを使った子が次々と恐ろしいことが起こったの。突然肩に手をかけられたり、後ろ髪を引っ張られたり。
 もちろん辺りには誰もいない。さっき、泳いでいるときに足をつる人が多くなっていったでしょ。あれも瀬戸さんのロッカーを使った子に限って起きるのです。
 それでね、その人たちに話を聞くと、みんな口を揃えて、泳いでいたら、突然誰かに足を引っ張られた、っていうんだってさ。
 瀬戸さんが寂しくてさ、友達を欲しがってるんだよ。誰かを道連れにしたいんだよ。
 足を引っ張られた子は、気持ち悪いからすぐロッカーを取り変えるでしょ。すると、変なことは起きなくなる。だから、やっぱりロッカーが呪われているって話になったわけ。
 それでそのロッカーは、使用禁止になりました。
 本来は撤去するはずだったんですけど、動かそうとすると不気味な声がきこえるとかで、気味悪い噂も広まりました。
 それで、そのまま放置して、瀬戸さんが使っていたロッカーだけは使わないようになったというわけ。
 そのロッカーって、一人用の縦長のロッカーが8つ繋がって1つになっている大きなロッカーでね、それごと使用禁止になっているから、いわば8つのロッカーが使用禁止になっているのね。
 今も、そのロッカーは水泳部の部室においてるというのが、鳴神学園にまつわる都市伝説の一つ。そうですよね、日野先輩?」
 日野「ああ、うちの学校では有名な話だ」
 「ここまでは誰もが知っている話。でも、そのロッカーには瀬戸さんが棲みついているっていう話は知っています?」
 日野「それは知らないな」
 倉田「瀬戸さんをロッカーから呼び出す方法があるんですよ」
 日野「おもしろそうだな、教えてくれよ」
 「瀬戸さんが死んだと言われている命日の午後4時44分にロッカーに行って、瀬戸さん、瀬戸さん、瀬戸さんと3回名前を呼びます。
 続いて、今瀬戸さんを殺した犯人がロッカーの前に立っています。確かめてみませんか?って言うだけです。
 すると何かが起きるって言われてます」
 日野「馬鹿らしい」
 朝比奈「十分に怖い話だよ。何かあったら、どうするんだよ」
 日野「あるわけないだろ」
 「じゃあ、確かめてみましょうよ」
 日野「いいぞ、その命日の約束の時間になったらまた誘ってくれ」
 「それって今日なんですよね。そして今の時間、何時だかわかりますか?」
 日野「今は午後4時、もうすぐじゃないか!」
 「それじゃあ、日野先輩、一緒に水泳部の部室に行きましょうか」
 日野「いくらなんでも、それは急すぎるだろ。朝比奈、お前がいったらどうだ?」
 朝比奈「この企画の立案者である日野が行くべきじゃないか。それに、そんな話は信じていないんだろう?」
 日野「仕方ない。さあ行くぞ、坂上」
 坂上「遠慮しますので、先輩どうぞ」
 日野「お前は七不思議の集会の聞き役として参加するんだ。さあ、行くぞ」
 「坂上君、そのロッカーって、ちょっと興味あるよね?」
 「本当は興味あるんでしょ、顔に書いてあるよ。
 さあ、見に行ってみよう」
 日野「行かないなんて許さん。行くぞ、坂上」


 日野「まったく、あいつら、よりによって誰一人付いてこないとは」
 坂上「先輩、普通来ないですよ。誰もいないじゃないですか」
 日野「練習もしないで何をやっているだ、水泳部は」
 倉田「水泳部は昨今の大会での輝かしい成績が認められて、今年から新しい部室をあてがわれたんですよ。ここは、いわば開かずのロッカーが置いてある開かずの間です。
 それじゃあ、入りますよ~。
 ん~、やっぱり鍵が掛かっていますねぇ」
 日野「残念だな、じゃあ帰ろうか」
 倉田「開いた」
 坂上「倉田さん、すごい。ヘアピン1本で開けちゃうなんて」
 日野「誰かに見られたらどーする!」
 倉田「こんなところ、誰も来ませんよ」
 坂上「先輩、怖いんですか?」
 日野「なっ、俺が怖いわけないだろう」
 坂上「入りますよ、先輩」
 日野「坂上、どうしたんだ。怖くないのか」
 坂上「いえ、怖いですよ。でも、先輩を見ていたらちょっと落ち着きました」
 倉田「坂上君、瀬戸さんと会える時間は何時何分だっけ?」
 倉田「そう、4時44分ね」


 倉田「これが呪いのロッカーね。この中の一つが瀬戸さんのロッカーって言われているんだけれど、はっきりした場所はわからないもんなあ。
 ねえ、開ける前に最初は瀬戸さんの名前を何回呼ぶんだっけ?」
 坂上「瀬戸さん、瀬戸さん、瀬戸さん」
 倉田「瀬戸さんの名前を3回呼ぶんだよね。
 そして、ロッカーの前に立っているのは誰だっていうんだっけ?」
 坂上「今、瀬戸さんを殺した犯人がロッカーの前に立っています」
 倉田「そう、そして最後に言うのは?」
 坂上「確かめてみませんか?」
 倉田「あとはロッカーを開けるだけだね。どれかわからないから、片っ端から開けてみようか。
 ねえ、どれを開けてみる?」


 どれかを選ぶ。
 倉田「ここには何もないね」
 日野「何も起きるわけはないし、何も入っていないのは当然だ」
 倉田「ねえ、次はどのロッカーを開ける?」


 どれからを選ぶ→瀬戸さんと遭遇
 坂上「うわああ!」
 倉田「きゃー!」
 倉田が思い切りロッカーの扉を閉めた。
 倉田「もう一度開けてみよっか?」
 坂上「日野先輩、開けてみませんか?」
 日野「馬鹿を言うな!」
 倉田「ひょっとして怖いんですか?」
 日野「何を言うか、倉田。幽霊なんてものはな、この世にはいないんだ。あれは見間違いだ」
 倉田「怖いんだ」
 日野「断じて怖くない!」
 倉田「じゃあ、開けてみてください」
 日野「よ、よし、本当に開けるぞ」
 坂上「うわああ!」
 日野が開けるよりも早くロッカーのドアは勝手に開き、そいつが飛び出してきた。
 そいつは日野に抱き着くと、ロッカーに引きずり込んだ。
 坂上が助けようと手を伸ばしたとき、ロッカーは悲鳴のような音を上げて勢いよく閉まった。
 坂上は、ロッカーを思いっきり引っ張るが、びくともしない。
 ロッカーの中から日野のものすごい悲鳴が聞こえてきた。
 悲鳴と同時に、ごりごりっと骨が砕けるような鈍くてこもった嫌な男が聞こえてきて、さらにボキボキと肉を折りたたむような音がしている。
 突然、がちゃりと音がして、ロッカーが少しだけ開き、気味の悪い音がしなくなった。
 坂上はゆっくりとドアを開けてみた。
 中には何もなかった。
 中から、ぷ~んと鉄の臭いがした。それは血の臭いともいえる。
 けれど、ロッカーの内側は血の跡など一つもなかった。
 「坂上君、日野先輩は?」
 坂上が黙っていると、倉田は、「戻ろうか、新聞部に」と言った。


 新聞部の扉を開けると、新聞部の面々とびしょ濡れになった日野もいた。
 「日野から聞いてたところなんだけど、プールに落ちて、呪われたロッカーを調べるどころじゃなかったんだって?」と朝比奈が言った。
 後ろで倉田が坂上を小突き、うまく話を合わせろと言いたそうな目で合図を送ってきた。
 「そうなんですよ」と頭を掻きながら坂上と倉田は部室に入った。
 その時、鉄の臭いと魚の生臭さが混じったような、吐き気をもよおす臭いがした。
 椅子に座ると、日野がうつろな表情で、坂上を見て笑っている。
 坂上は、何もなかったのだ、と自分に言い聞かせた。


 エンディング№383:ロッカーを開けないで→ゲームオーバー
 エンディング数 49/657 達成度7%
 キャラクター図鑑 42/122 達成度34%
 イラストギャラリー 34/283 達成度12%

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 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 1週目クリア
 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75を見る
 5人目は細田のシナリオ:トイレの恋→エンディング№270~272見る
 6人目は新堂のシナリオ:吉田ババア→エンディング№001~005を見る
 7話目はシナリオ:うしろの正面:エンディング№426~431を見る


 2週目開始!

 イジめで死んだ真美の人形を、イジメてた良江が拾うが、人形の方が、真美をマミちゃん人形と認識しており、良江もヨシエちゃん人形と認識している・・・


 新聞部では、日野貞夫が、一学期最後の学校新聞は七不思議の特集をやろう、と言い出す。
 倉田恵美も、長年使われていない旧校舎が夏休み中に取り壊されるし、季節的にも受ける、といって賛成する。
 日野が学校の怪談好きの七名を集めるとのことで、今度の金曜日の放課後に、新聞部の部室で行うことになった。
 日野から、七不思議の記事を書くように言われたのは、主人公の坂上修一だった。
 坂上が嫌がっているのに気づいた倉田が、怖い話が好きだから自分がやります、と言い出したので、坂上は、実は怖い話が苦手だ、と打ち明ける。
 それを聞いた日野は、新聞部一番の怖がりの坂上だから指名した、と答える。
 怖い話を聞いて思いっきり怖がって、その恐怖を記事にしてほしい、という理由からだった。
 倉田は、なら自分は語り部をやりたい、と日野に訴えると、日野は、今ここで怖い話をしてみろ、と言い出す。
 それくらいできないようじゃ、語り部は務まらないとのこと。


 →やります
 →あ~、やっぱりいいです


 「学校で、実は卒業するまで一度も行かないような場所があるのって知っている?」
  • プール
  • 放送室→シナリオ:カエルですか?ネズミですか?
  • 保健室→シナリオ:カエルですか?ネズミですか?
  • トイレ
 シナリオ:呪われたロッカー開始!


 「確かにプールは夏の体育の時間しか行かないよね。水泳部でもない限り、年に数回行くかどうか。
 坂上君って、泳げる?」
 「あのさー、今どき冗談でもそんなこと言わないよ。
 じゃあ、もう一回聞くから、ちゃんと答えてね。坂上君って、泳げる?」
 「ま、確かに猫も泳ぐけど。
 やっぱり怖い話を聞くの向いてないんじゃないの?
 日野先輩、やっぱりこの役は私に・・・そんな怖い顔で睨まないでくださいよお。
 それじゃあ、水泳部の怖い話を聞いてください。
 まあ、この話は鳴神学園では有名な都市伝説だからさ。もしかして坂上君も聞いたことあるかな、瀬戸裕子さんの噂」
 「へえ、怖がりの坂上君でも知っているんだからよっぽど有名なんだ。
 でもさ、ロッカーで瀬戸さんを呼び出す方法はさすがに知らないでしょ?」
 「知ってるの?ねえ、どうして知ってるの?」
 「そうだよね、怖がりの坂上君だもんね、知るわけないわよね。
 さすがに日野先輩は知っていますよね?そうですよね」


 今から10年以上も前に、鳴神学園の水泳部に瀬戸裕子というものすごい選手がいた。
 彼女が泳ぐと人魚みたいだって、みんなは噂していた。
 そんな瀬戸だが、ある朝、プールでうつ伏せになって浮いているところを発見された。
 生徒だけのプール利用は禁止されていたが、彼女の場合は特別で、大会前は特に熱心に練習していた。
 おそらく一人で練習しているときに心臓麻痺を起こして溺れたのだろう、と言われていた。
 それから、プールで変なことが起こるようになった。


 「どんな変なことが起きたと思う?」
 「そうなの、泳いでいるとき、足をつる人が多くなったの。
 みんなは噂したわ。瀬戸さんの祟りだって。しかも、誰もいないはずの部室で、人の気配がするの。
 部室をきれいに片付けておいたのに次の日、部室が水浸しになっていたり。
 みんなは、きっと瀬戸さんが水泳部のことを忘れられないで化けて出てくるのではないか、と噂しました。
 さらに恐ろしいことに、彼女の使っていたロッカーを使った子が次々と恐ろしいことが起こったの。突然肩に手をかけられたり、後ろ髪を引っ張られたり。
 もちろん辺りには誰もいない。さっき、泳いでいるときに足をつる人が多くなっていったでしょ。あれも瀬戸さんのロッカーを使った子に限って起きるのです。
 それでね、その人たちに話を聞くと、みんな口を揃えて、泳いでいたら、突然誰かに足を引っ張られた、っていうんだってさ。
 瀬戸さんが寂しくてさ、友達を欲しがってるんだよ。誰かを道連れにしたいんだよ。
 足を引っ張られた子は、気持ち悪いからすぐロッカーを取り変えるでしょ。すると、変なことは起きなくなる。だから、やっぱりロッカーが呪われているって話になったわけ。
 それでそのロッカーは、使用禁止になりました。
 本来は撤去するはずだったんですけど、動かそうとすると不気味な声がきこえるとかで、気味悪い噂も広まりました。
 それで、そのまま放置して、瀬戸さんが使っていたロッカーだけは使わないようになったというわけ。
 そのロッカーって、一人用の縦長のロッカーが8つ繋がって1つになっている大きなロッカーでね、それごと使用禁止になっているから、いわば8つのロッカーが使用禁止になっているのね。
 今も、そのロッカーは水泳部の部室においてるというのが、鳴神学園にまつわる都市伝説の一つ。そうですよね、日野先輩?」
 日野「ああ、うちの学校では有名な話だ」
 「ここまでは誰もが知っている話。でも、そのロッカーには瀬戸さんが棲みついているっていう話は知っています?」
 日野「それは知らないな」
 倉田「瀬戸さんをロッカーから呼び出す方法があるんですよ」
 日野「おもしろそうだな、教えてくれよ」
 「瀬戸さんが死んだと言われている命日の午後4時44分にロッカーに行って、瀬戸さん、瀬戸さん、瀬戸さんと3回名前を呼びます。
 続いて、今瀬戸さんを殺した犯人がロッカーの前に立っています。確かめてみませんか?って言うだけです。
 すると何かが起きるって言われてます」
 日野「馬鹿らしい」
 朝比奈「十分に怖い話だよ。何かあったら、どうするんだよ」
 日野「あるわけないだろ」
 「じゃあ、確かめてみましょうよ」
 日野「いいぞ、その命日の約束の時間になったらまた誘ってくれ」
 「それって今日なんですよね。そして今の時間、何時だかわかりますか?」
 日野「今は午後4時、もうすぐじゃないか!」
 「それじゃあ、日野先輩、一緒に水泳部の部室に行きましょうか」
 日野「いくらなんでも、それは急すぎるだろ。朝比奈、お前がいったらどうだ?」
 朝比奈「この企画の立案者である日野が行くべきじゃないか。それに、そんな話は信じていないんだろう?」
 日野「仕方ない。さあ行くぞ、坂上」
 坂上「遠慮しますので、先輩どうぞ」
 日野「お前は七不思議の集会の聞き役として参加するんだ。さあ、行くぞ」
 「坂上君、そのロッカーって、ちょっと興味あるよね?」
 「そうだよね。これから一緒に確かめに行こう!」
 日野「行かないなんて許さん。行くぞ、坂上」


 日野「まったく、あいつら、よりによって誰一人付いてこないとは」
 坂上「先輩、普通来ないですよ。誰もいないじゃないですか」
 日野「練習もしないで何をやっているだ、水泳部は」
 倉田「水泳部は昨今の大会での輝かしい成績が認められて、今年から新しい部室をあてがわれたんですよ。ここは、いわば開かずのロッカーが置いてある開かずの間です。
 それじゃあ、入りますよ~。
 ん~、やっぱり鍵が掛かっていますねぇ」
 日野「残念だな、じゃあ帰ろうか」
 倉田「開いた」
 坂上「倉田さん、すごい。ヘアピン1本で開けちゃうなんて」
 日野「誰かに見られたらどーする!」
 倉田「こんなところ、誰も来ませんよ」
 坂上「先輩、怖いんですか?」
 日野「なっ、俺が怖いわけないだろう」
 坂上「入りますよ、先輩」
 日野「坂上、どうしたんだ。怖くないのか」
 坂上「いえ、怖いですよ。でも、先輩を見ていたらちょっと落ち着きました」
 倉田「坂上君、瀬戸さんと会える時間は何時何分だっけ?」
 倉田「そう、4時44分ね」


 倉田「これが呪いのロッカーね。この中の一つが瀬戸さんのロッカーって言われているんだけれど、はっきりした場所はわからないもんなあ。
 ねえ、開ける前に最初は瀬戸さんの名前を何回呼ぶんだっけ?」
 坂上「瀬戸さん、瀬戸さん、瀬戸さん」
 倉田「瀬戸さんの名前を3回呼ぶんだよね。
 そして、ロッカーの前に立っているのは誰だっていうんだっけ?」
 坂上「今、瀬戸さんを殺した犯人がロッカーの前に立っています」
 倉田「そう、そして最後に言うのは?」
 坂上「確かめてみませんか?」
 倉田「あとはロッカーを開けるだけだね。どれかわからないから、片っ端から開けてみようか。
 ねえ、どれを開けてみる?」


 どれかを選ぶ。
 倉田「ここには何もないね」
 日野「何も起きるわけはないし、何も入っていないのは当然だ」
 倉田「ねえ、次はどのロッカーを開ける?」


 どれからを選ぶ→瀬戸さんと遭遇
 坂上「うわああ!」
 倉田「きゃー!」
 倉田が思い切りロッカーの扉を閉めた。
 倉田「もう一度開けてみよっか?」
 「よし、もう一度開けてみよう」と坂上が扉に手を掛けたが、ロッカーの扉は固くてびくともしない。
 「もういいよ、私が開ける」と倉田が手を出してきた。
 坂上と倉田との力で、扉が半開きになったが、すぐに内側にいる何かが、ロッカーをバタンと閉めてしまった。
 「やだ、坂上君、今の何?」
 「とにかく部室に戻ろう。瀬戸さんのロッカーを開けただけで不幸になるなんて、噂に尾ひれがついただけのことだろう?だから、きっと大丈夫だ」
 「そうだよね、呪われたりしないよね」
 ショックを受けた日野は「ふぁふぁふぁ」と何を言っているのかさっぱりわからない。
 新聞部に戻るころ、日野は落ち着いた。


 エンディング№382:もう一度開けてみる
 エンディング数 48/657 達成度7%
 キャラクター図鑑 42/122 達成度34%
 イラストギャラリー 34/283 達成度12%

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 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 1週目クリア
 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75を見る
 5人目は細田のシナリオ:トイレの恋→エンディング№270~272見る
 6人目は新堂のシナリオ:吉田ババア→エンディング№001~005を見る
 7話目はシナリオ:うしろの正面:エンディング№426~431を見る


 2週目開始!

 イジめで死んだ真美の人形を、イジメてた良江が拾うが、人形の方が、真美をマミちゃん人形と認識しており、良江もヨシエちゃん人形と認識している・・・


 新聞部では、日野貞夫が、一学期最後の学校新聞は七不思議の特集をやろう、と言い出す。
 倉田恵美も、長年使われていない旧校舎が夏休み中に取り壊されるし、季節的にも受ける、といって賛成する。
 日野が学校の怪談好きの七名を集めるとのことで、今度の金曜日の放課後に、新聞部の部室で行うことになった。
 日野から、七不思議の記事を書くように言われたのは、主人公の坂上修一だった。
 坂上が嫌がっているのに気づいた倉田が、怖い話が好きだから自分がやります、と言い出したので、坂上は、実は怖い話が苦手だ、と打ち明ける。
 それを聞いた日野は、新聞部一番の怖がりの坂上だから指名した、と答える。
 怖い話を聞いて思いっきり怖がって、その恐怖を記事にしてほしい、という理由からだった。
 倉田は、なら自分は語り部をやりたい、と日野に訴えると、日野は、今ここで怖い話をしてみろ、と言い出す。
 それくらいできないようじゃ、語り部は務まらないとのこと。


 →やります
 →あ~、やっぱりいいです


 「学校で、実は卒業するまで一度も行かないような場所があるのって知っている?」
  • プール
  • 放送室→シナリオ:カエルですか?ネズミですか?
  • 保健室→シナリオ:カエルですか?ネズミですか?
  • トイレ
 シナリオ:呪われたロッカー開始!


 「確かにプールは夏の体育の時間しか行かないよね。水泳部でもない限り、年に数回行くかどうか。
 坂上君って、泳げる?」
 「あのさー、今どき冗談でもそんなこと言わないよ。
 じゃあ、もう一回聞くから、ちゃんと答えてね。坂上君って、泳げる?」
 「ま、確かに猫も泳ぐけど。
 やっぱり怖い話を聞くの向いてないんじゃないの?
 日野先輩、やっぱりこの役は私に・・・そんな怖い顔で睨まないでくださいよお。
 それじゃあ、水泳部の怖い話を聞いてください。
 まあ、この話は鳴神学園では有名な都市伝説だからさ。もしかして坂上君も聞いたことあるかな、瀬戸裕子さんの噂」
 「へえ、怖がりの坂上君でも知っているんだからよっぽど有名なんだ。
 でもさ、ロッカーで瀬戸さんを呼び出す方法はさすがに知らないでしょ?」
 「知ってるの?ねえ、どうして知ってるの?」
 「そうだよね、怖がりの坂上君だもんね、知るわけないわよね。
 さすがに日野先輩は知っていますよね?そうですよね」


 今から10年以上も前に、鳴神学園の水泳部に瀬戸裕子というものすごい選手がいた。
 彼女が泳ぐと人魚みたいだって、みんなは噂していた。
 そんな瀬戸だが、ある朝、プールでうつ伏せになって浮いているところを発見された。
 生徒だけのプール利用は禁止されていたが、彼女の場合は特別で、大会前は特に熱心に練習していた。
 おそらく一人で練習しているときに心臓麻痺を起こして溺れたのだろう、と言われていた。
 それから、プールで変なことが起こるようになった。


 「どんな変なことが起きたと思う?」
 「誰もいないはずの部室なのに、さっきまで誰かがいた形跡があるの。
 部室をきれいに片付けておくでしょ。すると次の日、まるで誰かが水をまいたように、部室が水浸しになっているのです。
 みんなは、きっと瀬戸さんが水泳部のことを忘れられないで化けて出てくるのではないか、と噂しました。
 しかも、彼女の使っていたロッカーを使った子が次々と事故にあったの。泳いでいて、突然足をつったり、溺れたり。
 それでね、その人たちに話を聞くと、みんな口を揃えて、泳いでいたら、突然誰かに足を引っ張られた、っていうんだってさ。
 瀬戸さんが寂しくてさ、友達を欲しがってるんだよ。誰かを道連れにしたいんだよ。
 足を引っ張られた子は、気持ち悪いからすぐロッカーを取り変えるでしょ。すると、変なことは起きなくなる。だから、やっぱりロッカーが呪われているって話になったわけ。
 それでそのロッカーは、使用禁止になりました。
 本来は撤去するはずだったんですけど、動かそうとすると不気味な声がきこえるとかで、気味悪い噂も広まりました。
 それで、そのまま放置して、瀬戸さんが使っていたロッカーだけは使わないようになったというわけ。
 そのロッカーって、一人用の縦長のロッカーが8つ繋がって1つになっている大きなロッカーでね、それごと使用禁止になっているから、いわば8つのロッカーが使用禁止になっているのね。
 今も、そのロッカーは水泳部の部室においてるというのが、鳴神学園にまつわる都市伝説の一つ。そうですよね、日野先輩?」
 日野「ああ、うちの学校では有名な話だ」
 「ここまでは誰もが知っている話。でも、そのロッカーには瀬戸さんが棲みついているっていう話は知っています?」
 日野「それは知らないな」
 倉田「瀬戸さんをロッカーから呼び出す方法があるんですよ」
 日野「おもしろそうだな、教えてくれよ」
 「瀬戸さんが死んだと言われている命日の午後4時44分にロッカーに行って、瀬戸さん、瀬戸さん、瀬戸さんと3回名前を呼びます。
 続いて、今瀬戸さんを殺した犯人がロッカーの前に立っています。確かめてみませんか?って言うだけです。
 すると何かが起きるって言われてます」
 日野「馬鹿らしい」
 朝比奈「十分に怖い話だよ。何かあったら、どうするんだよ」
 日野「あるわけないだろ」
 「じゃあ、確かめてみましょうよ」
 日野「いいぞ、その命日の約束の時間になったらまた誘ってくれ」
 「それって今日なんですよね。そして今の時間、何時だかわかりますか?」
 日野「今は午後4時、もうすぐじゃないか!」
 「それじゃあ、日野先輩、一緒に水泳部の部室に行きましょうか」
 日野「いくらなんでも、それは急すぎるだろ。朝比奈、お前がいったらどうだ?」
 朝比奈「この企画の立案者である日野が行くべきじゃないか。それに、そんな話は信じていないんだろう?」
 日野「仕方ない。さあ行くぞ、坂上」
 坂上「遠慮しますので、先輩どうぞ」
 日野「お前は七不思議の集会の聞き役として参加するんだ。さあ、行くぞ」
 「坂上君、そのロッカーって、ちょっと興味あるよね?」
 「本当は興味あるんでしょ、顔に書いてあるよ。
 さあ、見に行ってみよう」
  • 確かめに行く
  • そんなの嫌だ
 日野「坂上、よく言った!」


 日野「まったく、あいつら、よりによって誰一人付いてこないとは」
 坂上「先輩、普通来ないですよ。誰もいないじゃないですか」
 日野「練習もしないで何をやっているだ、水泳部は」
 倉田「水泳部は昨今の大会での輝かしい成績が認められて、今年から新しい部室をあてがわれたんですよ。ここは、いわば開かずのロッカーが置いてある開かずの間です。
 それじゃあ、入りますよ~。
 ん~、やっぱり鍵が掛かっていますねぇ」
 日野「残念だな、じゃあ帰ろうか」
 倉田「開いた」
 坂上「倉田さん、すごい。ヘアピン1本で開けちゃうなんて」
 日野「誰かに見られたらどーする!」
 倉田「こんなところ、誰も来ませんよ」
 坂上「先輩、怖いんですか?」
 日野「なっ、俺が怖いわけないだろう」
 坂上「入りますよ、先輩」
 日野「坂上、どうしたんだ。怖くないのか」
 坂上「いえ、怖いですよ。でも、先輩を見ていたらちょっと落ち着きました」
 倉田「坂上君、瀬戸さんと会える時間は何時何分だっけ?」
 倉田「そう、4時44分ね」


 倉田「これが呪いのロッカーね。この中の一つが瀬戸さんのロッカーって言われているんだけれど、はっきりした場所はわからないもんなあ。
 ねえ、開ける前に最初は瀬戸さんの名前を何回呼ぶんだっけ?」
 坂上「瀬戸さん、瀬戸さん、瀬戸さん」
 倉田「瀬戸さんの名前を3回呼ぶんだよね。
 そして、ロッカーの前に立っているのは誰だっていうんだっけ?」
 坂上「今、瀬戸さんを殺した犯人がロッカーの前に立っています」
 倉田「そう、そして最後に言うのは?」
 坂上「確かめてみませんか?」
 倉田「あとはロッカーを開けるだけだね。どれかわからないから、片っ端から開けてみようか。
 ねえ、どれを開けてみる?」


 どれかを選ぶ。
 倉田「ここには何もないね」
 日野「何も起きるわけはないし、何も入っていないのは当然だ」
 倉田「ねえ、次はどのロッカーを開ける?」


 どれからを選ぶ→瀬戸さんと遭遇
 坂上「うわああ!」
 倉田「きゃー!」
 倉田が思い切りロッカーの扉を閉めた。
 倉田「もう一度開けてみよっか?」
  • もう開けない
  • もう一度開けてもらう
  • 日野先輩に開けてもらう
 坂上「もう帰ろうよ、倉田さん」
 倉田「なんだ、残念。それじゃ新聞部なんて務まんないよ。そうですよね、日野先輩?」
 日野「ふぁふぁふぁ」
 何を言っているのかさっぱりわからない。よほどショックだったようだ。
 倉田「日野先輩、例の七不思議の集会、ぜひよろしくお願いしますね」
 日野「ほひぃ」
 倉田「ありがとうございます!」


 エンディング№381:ロッカーの瀬戸さん
 エンディング数 47/657 達成度7%
 キャラクター図鑑 42/122 達成度34%
 イラストギャラリー 34/283 達成度12%

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 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 1週目クリア
 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75を見る
 5人目は細田のシナリオ:トイレの恋→エンディング№270~272見る
 6人目は新堂のシナリオ:吉田ババア→エンディング№001~005を見る
 7話目はシナリオ:うしろの正面:エンディング№426~431を見る


 2週目開始!

 イジめで死んだ真美の人形を、イジメてた良江が拾うが、人形の方が、真美をマミちゃん人形と認識しており、良江もヨシエちゃん人形と認識している・・・


 新聞部では、日野貞夫が、一学期最後の学校新聞は七不思議の特集をやろう、と言い出す。
 倉田恵美も、長年使われていない旧校舎が夏休み中に取り壊されるし、季節的にも受ける、といって賛成する。
 日野が学校の怪談好きの七名を集めるとのことで、今度の金曜日の放課後に、新聞部の部室で行うことになった。
 日野から、七不思議の記事を書くように言われたのは、主人公の坂上修一だった。
 坂上が嫌がっているのに気づいた倉田が、怖い話が好きだから自分がやります、と言い出したので、坂上は、実は怖い話が苦手だ、と打ち明ける。
 それを聞いた日野は、新聞部一番の怖がりの坂上だから指名した、と答える。
 怖い話を聞いて思いっきり怖がって、その恐怖を記事にしてほしい、という理由からだった。
 倉田は、なら自分は語り部をやりたい、と日野に訴えると、日野は、今ここで怖い話をしてみろ、と言い出す。
 それくらいできないようじゃ、語り部は務まらないとのこと。


 →やります
 →あ~、やっぱりいいです


 「学校で、実は卒業するまで一度も行かないような場所があるのって知っている?」
  • プール
  • 放送室→シナリオ:カエルですか?ネズミですか?
  • 保健室→シナリオ:カエルですか?ネズミですか?
  • トイレ
 シナリオ:呪われたロッカー開始!


 「確かにプールは夏の体育の時間しか行かないよね。水泳部でもない限り、年に数回行くかどうか。
 坂上君って、泳げる?」
 「あのさー、今どき冗談でもそんなこと言わないよ。
 じゃあ、もう一回聞くから、ちゃんと答えてね。坂上君って、泳げる?」
 「ま、確かに猫も泳ぐけど。
 やっぱり怖い話を聞くの向いてないんじゃないの?
 日野先輩、やっぱりこの役は私に・・・そんな怖い顔で睨まないでくださいよお。
 それじゃあ、水泳部の怖い話を聞いてください。
 まあ、この話は鳴神学園では有名な都市伝説だからさ。もしかして坂上君も聞いたことあるかな、瀬戸裕子さんの噂」
 「へえ、怖がりの坂上君でも知っているんだからよっぽど有名なんだ。
 でもさ、ロッカーで瀬戸さんを呼び出す方法はさすがに知らないでしょ?」
 「瀬戸さんが死んだと言われている命日の午後4時44分にロッカーに行って、瀬戸さん、瀬戸さん、瀬戸さんと3階名前を呼びます。
 続いて、今瀬戸さんを殺した犯人がロッカーの前に立っています。確かめてみませんか?って言うだけです。
 すると何かが起きるって言われてます」
 日野「馬鹿らしい」
 朝比奈「十分に怖い話だよ。何かあったら、どうするんだよ」
 日野「あるわけないだろ」
 「じゃあ、確かめてみましょうよ」
 日野「いいぞ、その命日の約束の時間になったらまた誘ってくれ」
 「それって今日なんですよね。そして今の時間、何時だかわかりますか?」
 日野「今は午後4時、もうすぐじゃないか!」
 「それじゃあ、日野先輩、一緒に水泳部の部室に行きましょうか」
 日野「いくらなんでも、それは急すぎるだろ。朝比奈、お前がいったらどうだ?」
 朝比奈「この企画の立案者である日野が行くべきじゃないか。それに、そんな話は信じていないんだろう?」
 日野「仕方ない。さあ行くぞ、坂上」
 坂上「遠慮しますので、先輩どうぞ」
 日野「お前は七不思議の集会の聞き役として参加するんだ。さあ、行くぞ」
 「坂上君、そのロッカーって、ちょっと興味あるよね?」
  • 興味ある
  • 別に興味ない
 「そうだよね。じゃあ、これから一緒に確かめに行こう!」
  • 確かめに行く
  • そんなの嫌だ
 日野「坂上、よく言った!」


 日野「まったく、あいつら、よりによって誰一人付いてこないとは」
 坂上「先輩、普通来ないですよ。誰もいないじゃないですか」
 日野「練習もしないで何をやっているだ、水泳部は」
 倉田「水泳部は昨今の大会での輝かしい成績が認められて、今年から新しい部室をあてがわれたんですよ。ここは、いわば開かずのロッカーが置いてある開かずの間です。
 それじゃあ、入りますよ~。
 ん~、やっぱり鍵が掛かっていますねぇ」
 日野「残念だな、じゃあ帰ろうか」
 倉田「開いた」
 坂上「倉田さん、すごい。ヘアピン1本で開けちゃうなんて」
 日野「誰かに見られたらどーする!」
 倉田「こんなところ、誰も来ませんよ」
 坂上「先輩、怖いんですか?」
 日野「なっ、俺が怖いわけないだろう」
 坂上「入りますよ、先輩」
 日野「坂上、どうしたんだ。怖くないのか」
 坂上「いえ、怖いですよ。でも、先輩を見ていたらちょっと落ち着きました」
 倉田「坂上君、瀬戸さんと会える時間は何時何分だっけ?」
  • 4時44分
  • 4時59分
  • 5時55分
  • 5時59分
 倉田「あれ、何も起きない?ひょっとして、坂上君、間違えたんじゃない?
 日野「お前、相変わらずのおっちょこちょいだなあ。残念だな、倉田。これで来年の今日まで呪われたロッカーはお預けだな。さあ、部室に戻るぞ」
 倉田「私の話はこれで終わりなんですけど、七不思議の集会に語り部は・・・」
 日野「なかなか笑わせてもらったぞ。大喜利の集会でもあったら、呼んでやるよ。わはははは」


 エンディング№380:何も起きない呪いのロッカー
 エンディング数 46/657 達成度7%
 キャラクター図鑑 42/122 達成度34%
 イラストギャラリー 33/283 達成度11%

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 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 1週目クリア
 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75を見る
 5人目は細田のシナリオ:トイレの恋→エンディング№270~272見る
 6人目は新堂のシナリオ:吉田ババア→エンディング№001~005を見る
 7話目はシナリオ:うしろの正面:エンディング№426~431を見る


 2週目開始!

 イジめで死んだ真美の人形を、イジメてた良江が拾うが、人形の方が、真美をマミちゃん人形と認識しており、良江もヨシエちゃん人形と認識している・・・


 新聞部では、日野貞夫が、一学期最後の学校新聞は七不思議の特集をやろう、と言い出す。
 倉田恵美も、長年使われていない旧校舎が夏休み中に取り壊されるし、季節的にも受ける、といって賛成する。
 日野が学校の怪談好きの七名を集めるとのことで、今度の金曜日の放課後に、新聞部の部室で行うことになった。
 日野から、七不思議の記事を書くように言われたのは、主人公の坂上修一だった。
 坂上が嫌がっているのに気づいた倉田が、怖い話が好きだから自分がやります、と言い出したので、坂上は、実は怖い話が苦手だ、と打ち明ける。
 それを聞いた日野は、新聞部一番の怖がりの坂上だから指名した、と答える。
 怖い話を聞いて思いっきり怖がって、その恐怖を記事にしてほしい、という理由からだった。
 倉田は、なら自分は語り部をやりたい、と日野に訴えると、日野は、今ここで怖い話をしてみろ、と言い出す。
 それくらいできないようじゃ、語り部は務まらないとのこと。


 →やります
 →あ~、やっぱりいいです


 「学校で、実は卒業するまで一度も行かないような場所があるのって知っている?」
  • プール
  • 放送室→シナリオ:カエルですか?ネズミですか?
  • 保健室→シナリオ:カエルですか?ネズミですか?
  • トイレ
 シナリオ:呪われたロッカー開始!


 「確かにプールは夏の体育の時間しか行かないよね。水泳部でもない限り、年に数回行くかどうか。
 坂上君って、泳げる?」
 「あのさー、今どき冗談でもそんなこと言わないよ。
 じゃあ、もう一回聞くから、ちゃんと答えてね。坂上君って、泳げる?」
 「坂上君、笑えない。
 あのさ、いきなりお風呂とか誘う?それにこのシチュエーションだと一緒にお風呂に入って、そこで泳げるかどうか見せてくれるってことだよね。
 それ、どんなお風呂なの?
 最初のデートで行く場所じゃないよね?あとで私がしっかりとレクチャーしてあげよう。
 今はそんなことより水泳部の話だよね。
 まあ、この話は鳴神学園では有名な都市伝説だからさ。もしかして坂上君も聞いたことあるかな、瀬戸裕子さんの噂」
 「そうだよね、怖がりの坂上君だもんね、知るわけないわよね。
 さすがに日野先輩は知っていますよね?そうですよね」


 今から10年以上も前に、鳴神学園の水泳部に瀬戸裕子というものすごい選手がいた。
 彼女が泳ぐと人魚みたいだって、みんなは噂していた。
 そんな瀬戸だが、ある朝、プールでうつ伏せになって浮いているところを発見された。
 生徒だけのプール利用は禁止されていたが、彼女の場合は特別で、大会前は特に熱心に練習していた。
 おそらく一人で練習しているときに心臓麻痺を起こして溺れたのだろう、と言われていた。
 それから、プールで変なことが起こるようになった。


 「どんな変なことが起きたと思う?」
  • 誰もいないプールから音がする
  • 水泳部室が水浸しになっている
  • 水泳中、足をつる人が多くなった
 誰もいないプールで、バシャバシャと誰かが泳いでいる音がするようになった。
 そういう時、まるで誰かを誘うように、ぷらぁんとプールから手だけが伸びていた。
 先生が放課後の見回りの時、それを最初に発見したらしいだけど、先生は誰かが溺れているのかと思って、急いで手を差し伸べたが、プールの中の手が、するっと水の中に引っ込んでしまったとのこと。
 先生は慌ててプールを覗き込んだが、水の中には誰もいなかった。
 あれは瀬戸の霊の手で、助けを求めて差し出している手だと噂されるようになった。
 そのうち、瀬戸の供養の為にプールから出る霊の手をつかんで、ひっぱりあげてやるのがいいって、水泳部員の一人が言い始めたが、結局却下されてしまった。
 それから、女の子が泳いでいると、誰かに身体をぬらっと触られたりするようになるが、水の中には誰もいない。
 怖くなって水から上がろうとすると、後ろから思い切り髪を掴まれて引っ張られるようなことが何度も起こるようになり、怖がった女子たちが水泳部を辞める事態になってしまった。
 それで仕方なく、幽霊の手を握ることになったが、黙って待っていても仕方があんいので、プール際で部員が手を差し伸べて待つことになった。
 ところが、一人だけやらない子がいた。丸茂多江だった。
 「あんたたちバッカじゃない。そもそも幽霊なんていないし!」
 確かに丸茂の言う通りだが、何とかしなくてはならない部員たちは、丸茂に一度だけ付き合ってほしいと説得した。
 仕方なく丸茂がプールに手を差し伸べた途端、それまで静かだった水面が、突然激しく波打ち始めた。
 誰の悲鳴が聞こえたので見ると、丸茂が水面から現れた手にしっかりと掴まれて、プールにひこずりこまれそうになっていた。
 「助けて!」
 みんなで丸茂の身体を掴んで引っ張って、丸茂をその手から引きはがすことに成功した。
 そのとたん、それまで激しく波打っていたプールがまたしーんと静まり返った。
 「あいつは、私たちを道連れに殺そうとしているのよ!」と丸茂が言うと、みんなは納得してうなづいた。
 そして、きちんとお祓いをして、瀬戸の霊を鎮めた。
 それから、瀬戸の霊が出るという噂もなくなり、泳いでいる女子が被害にあることもなくなった。
 それから、丸茂はどんどん水泳がうまくなり、めきめきと頭角を現して、数々の大会に出場して新記録をたたき出し、たくさんのトロフィーを手に入れ、幸せのうちに卒業していった。


 「坂上君は、彼女が勝てたのは彼女の実力だと思う?」
 「本当にそう思う?
 だとしたら坂上君、丸茂さんてどんな女の子だったと思う?」
 「へえ、坂上君って見た目よりも考えているんだね。
 私も坂上君と一緒。丸茂さんって、想像以上に怖い性格だと思うよ。だってさ、心臓麻痺で死んだ瀬戸さんって、本当に事故死だったのかな。
 いくら大会前でも、プールで一人で練習するもの?それに、みんなで瀬戸さんの霊を助けようってプール際で手を差し伸べたとき、どうして丸茂さんは嫌がったんだろうね。
 彼女が渋々プール際で手を差し伸べた途端、プールは大荒れになって中から瀬戸さんの手が現れて丸茂さんを引きずり込もうとしたわけでしょ?
 それって、明らかに丸茂さんのことを狙っているじゃん。だから、私は思うの。瀬戸さんを心臓麻痺に見せかけて殺したのは丸茂さんだって。
 だってさ、プールに現れた手を取って、瀬戸さんの霊を救おうって言い出したのって、誰だかわからないんだよ。
 おそらくはさ、女子部員の誰かに瀬戸さんの霊が乗り移って、言わせたんじゃないかな。
 それで丸茂さんの手を掴んで思い切りプールに引きずり込んでやろうとしたとき、瀬戸さんはは何かに気づいて、丸茂さんを許したんだと思う。
 いや、丸茂さんを道連れにしても自分が浮かばれないってことには気づいたんじゃないかな。
 それで丸茂さんは束縛するものがなくなって、水泳に集中できた。だから勝負に勝つことができた。
 丸茂さんのような人を殺してでもエースになりたいっていう気持ちのある人間だからこそ、強くなったのかもね。
 これはあくまでも私の想像だから。この物語は今も続いていた、丸茂さんが死ぬまで続くのかも。
 瀬戸さんの思いが怨念や呪いに変化していたら、そこに待っているのは本物の地獄でしかないのだから。
 これで、私の話は終わりです」
 坂上「日野先輩、倉田さんだけは絶対に語り部として呼ばないでくださいね。僕、怖い話は聞きたくないですから」
 日野「坂上からご指名が入ったぞ、倉田」
 倉田「よっしゃ!」
 坂上「逆です」
 日野「まあ、実際に語り部として誰を呼ぶのかはもう少し考えてみるよ」


 エンディング№379:瀬戸さんを殺したのは?
 エンディング数 45/657 達成度6%
 キャラクター図鑑 42/122 達成度34%
 イラストギャラリー 33/283 達成度11%

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 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 1週目クリア
 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75を見る
 5人目は細田のシナリオ:トイレの恋→エンディング№270~272見る
 6人目は新堂のシナリオ:吉田ババア→エンディング№001~005を見る
 7話目はシナリオ:うしろの正面:エンディング№426~431を見る


 2週目開始!

 イジめで死んだ真美の人形を、イジメてた良江が拾うが、人形の方が、真美をマミちゃん人形と認識しており、良江もヨシエちゃん人形と認識している・・・


 新聞部では、日野貞夫が、一学期最後の学校新聞は七不思議の特集をやろう、と言い出す。
 倉田恵美も、長年使われていない旧校舎が夏休み中に取り壊されるし、季節的にも受ける、といって賛成する。
 日野が学校の怪談好きの七名を集めるとのことで、今度の金曜日の放課後に、新聞部の部室で行うことになった。
 日野から、七不思議の記事を書くように言われたのは、主人公の坂上修一だった。
 坂上が嫌がっているのに気づいた倉田が、怖い話が好きだから自分がやります、と言い出したので、坂上は、実は怖い話が苦手だ、と打ち明ける。
 それを聞いた日野は、新聞部一番の怖がりの坂上だから指名した、と答える。
 怖い話を聞いて思いっきり怖がって、その恐怖を記事にしてほしい、という理由からだった。
 倉田は、なら自分は語り部をやりたい、と日野に訴えると、日野は、今ここで怖い話をしてみろ、と言い出す。
 それくらいできないようじゃ、語り部は務まらないとのこと。


 →やります
 →あ~、やっぱりいいです


 「学校で、実は卒業するまで一度も行かないような場所があるのって知っている?」
  • プール
  • 放送室→シナリオ:カエルですか?ネズミですか?
  • 保健室→シナリオ:カエルですか?ネズミですか?
  • トイレ
 シナリオ:呪われたロッカー開始!


 「確かにプールは夏の体育の時間しか行かないよね。水泳部でもない限り、年に数回行くかどうか。
 坂上君って、泳げる?」
 「あのさー、今どき冗談でもそんなこと言わないよ。
 じゃあ、もう一回聞くから、ちゃんと答えてね。坂上君って、泳げる?」
  • 知りたければ一緒に海行く?
  • 一緒にお風呂入らない?
  • 猫かきだって得意です
 「坂上君、私のこと好きなの?
 そんなこと、日野先輩の前で告っちゃったりする?
 ああ、そっか、本命は日野先輩なんでしょう?
 私のこと好きと見せかけて日野先輩にヤキモチを焼かせようって魂胆か」
 それを聞いた日野は「さっさと怖い話を話せ。つまらんことを言うのなら、もう聞かんぞ」を怒り出す。
 「あ、はーい。水泳部の怖い話しまーす。すいませんでした。
 まあ、この話は鳴神学園では有名な都市伝説だからさ。もしかして坂上君も聞いたことあるかな、瀬戸裕子さんの噂」
 「そうだよね、怖がりの坂上君だもんね、知るわけないわよね。
 さすがに日野先輩は知っていますよね?そうですよね」


 今から10年以上も前に、鳴神学園の水泳部に瀬戸裕子というものすごい選手がいた。
 彼女が泳ぐと人魚みたいだって、みんなは噂していた。
 そんな瀬戸だが、ある朝、プールでうつ伏せになって浮いているところを発見された。
 生徒だけのプール利用は禁止されていたが、彼女の場合は特別で、大会前は特に熱心に練習していた。
 おそらく一人で練習しているときに心臓麻痺を起こして溺れたのだろう、と言われていた。
 それから、プールで変なことが起こるようになった。


 「どんな変なことが起きたと思う?」
  • 誰もいないプールから音がする
  • 水泳部室が水浸しになっている
  • 水泳中、足をつる人が多くなった
 誰もいないプールで、バシャバシャと誰かが泳いでいる音がするようになった。
 そういう時、まるで誰かを誘うように、ぷらぁんとプールから手だけが伸びていた。
 先生が放課後の見回りの時、それを最初に発見したらしいだけど、先生は誰かが溺れているのかと思って、急いで手を差し伸べたが、プールの中の手が、するっと水の中に引っ込んでしまったとのこと。
 先生は慌ててプールを覗き込んだが、水の中には誰もいなかった。
 あれは瀬戸の霊の手で、助けを求めて差し出している手だと噂されるようになった。
 そのうち、瀬戸の供養の為にプールから出る霊の手をつかんで、ひっぱりあげてやるのがいいって、水泳部員の一人が言い始めたが、結局却下されてしまった。
 それから、女の子が泳いでいると、誰かに身体をぬらっと触られたりするようになるが、水の中には誰もいない。
 怖くなって水から上がろうとすると、後ろから思い切り髪を掴まれて引っ張られるようなことが何度も起こるようになり、怖がった女子たちが水泳部を辞める事態になってしまった。
 それで仕方なく、幽霊の手を握ることになったが、黙って待っていても仕方があんいので、プール際で部員が手を差し伸べて待つことになった。
 ところが、一人だけやらない子がいた。丸茂多江だった。
 「あんたたちバッカじゃない。そもそも幽霊なんていないし!」
 確かに丸茂の言う通りだが、何とかしなくてはならない部員たちは、丸茂に一度だけ付き合ってほしいと説得した。
 仕方なく丸茂がプールに手を差し伸べた途端、それまで静かだった水面が、突然激しく波打ち始めた。
 誰の悲鳴が聞こえたので見ると、丸茂が水面から現れた手にしっかりと掴まれて、プールにひこずりこまれそうになっていた。
 「助けて!」
 みんなで丸茂の身体を掴んで引っ張って、丸茂をその手から引きはがすことに成功した。
 そのとたん、それまで激しく波打っていたプールがまたしーんと静まり返った。
 「あいつは、私たちを道連れに殺そうとしているのよ!」と丸茂が言うと、みんなは納得してうなづいた。
 そして、きちんとお祓いをして、瀬戸の霊を鎮めた。
 それから、瀬戸の霊が出るという噂もなくなり、泳いでいる女子が被害にあることもなくなった。
 それから、丸茂はどんどん水泳がうまくなり、めきめきと頭角を現して、数々の大会に出場して新記録をたたき出し、たくさんのトロフィーを手に入れ、幸せのうちに卒業していった。


 「坂上君は、彼女が勝てたのは彼女の実力だと思う?」
 「本当にそう思う?
 だとしたら坂上君、丸茂さんてどんな女の子だったと思う?」
  • 頑張り屋の女の子
  • 深い闇を抱えた子
 「確かに、頑張り屋、と言えるかもしれないよねぇ。
 あれだけの事件があった後も、水泳部を辞めずに努力して数々の大会で記録を残したんだから。
 でも、本当に彼女はただの頑張り屋さんだったのなあ。
 私の話はこれで終わりね」
 朝比奈「それなら十分に学校の七不思議に載せられるね」
 「ありがとうございます!」
 日野「まあまあだな。一応、語り部の候補には入れておくか」
 「え~、よろしくお願いしますよぉ」


 エンディング№378:瀬戸さんのおかげ?
 エンディング数 44/657 達成度6%
 キャラクター図鑑 42/122 達成度34%
 イラストギャラリー 33/283 達成度11%

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 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 1週目クリア
 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75を見る
 5人目は細田のシナリオ:トイレの恋→エンディング№270~272見る
 6人目は新堂のシナリオ:吉田ババア→エンディング№001~005を見る
 7話目はシナリオ:うしろの正面:エンディング№426~431を見る


 2週目開始!

 イジめで死んだ真美の人形を、イジメてた良江が拾うが、人形の方が、真美をマミちゃん人形と認識しており、良江もヨシエちゃん人形と認識している・・・


 新聞部では、日野貞夫が、一学期最後の学校新聞は七不思議の特集をやろう、と言い出す。
 倉田恵美も、長年使われていない旧校舎が夏休み中に取り壊されるし、季節的にも受ける、といって賛成する。
 日野が学校の怪談好きの七名を集めるとのことで、今度の金曜日の放課後に、新聞部の部室で行うことになった。
 日野から、七不思議の記事を書くように言われたのは、主人公の坂上修一だった。
 坂上が嫌がっているのに気づいた倉田が、怖い話が好きだから自分がやります、と言い出したので、坂上は、実は怖い話が苦手だ、と打ち明ける。
 それを聞いた日野は、新聞部一番の怖がりの坂上だから指名した、と答える。
 怖い話を聞いて思いっきり怖がって、その恐怖を記事にしてほしい、という理由からだった。
 倉田は、なら自分は語り部をやりたい、と日野に訴えると、日野は、今ここで怖い話をしてみろ、と言い出す。
 それくらいできないようじゃ、語り部は務まらないとのこと。


 →やります
 →あ~、やっぱりいいです


 「学校で、実は卒業するまで一度も行かないような場所があるのって知っている?」
  • プール
  • 放送室→シナリオ:カエルですか?ネズミですか?
  • 保健室→シナリオ:カエルですか?ネズミですか?
  • トイレ
 シナリオ:呪われたロッカー開始!


 「確かにプールは夏の体育の時間しか行かないよね。水泳部でもない限り、年に数回行くかどうか。
 坂上君って、泳げる?」
 「ふーん、泳げないんだ。やっぱりね。見るからに弱々しそうだもん。
 でもさ、美味しい設定だなあ。もし誰かとプールに行くでしょ。そんな時、坂上君が溺れたら相手が命がけで助けてくれるわけですよ。
 意識を失った坂上君に必死のディープキス・・・じゃなくて人工呼吸をするのね。そのおかげで坂上君は息を吹き返す。そして愛が始まるのか。
 あ、水泳部の話だったね。
 まあ、この話は鳴神学園では有名な都市伝説だからさ。もしかして坂上君も聞いたことあるかな、瀬戸裕子さんの噂」
  • 知っている
  • 知らない
 「へえ、怖がりの坂上君でも知っているんだからよっぽど有名なんだ。
 でもさ、ロッカーで瀬戸さんを呼び出す方法はさすがに知らないでしょ?」
  • 知っている
  • 知らない
 「知ってるの?ねえ、どうして知ってるの?」
 「そうだよね、怖がりの坂上君だもんね、知るわけないわよね。
 さすがに日野先輩は知っていますよね?そうですよね」


 今から10年以上も前に、鳴神学園の水泳部に瀬戸裕子というものすごい選手がいた。
 彼女が泳ぐと人魚みたいだって、みんなは噂していた。
 そんな瀬戸だが、ある朝、プールでうつ伏せになって浮いているところを発見された。
 生徒だけのプール利用は禁止されていたが、彼女の場合は特別で、大会前は特に熱心に練習していた。
 おそらく一人で練習しているときに心臓麻痺を起こして溺れたのだろう、と言われていた。
 それから、プールで変なことが起こるようになった。


 「どんな変なことが起きたと思う?」
  • 誰もいないプールから音がする
  • 水泳部室が水浸しになっている
  • 水泳中、足をつる人が多くなった
 誰もいないプールで、バシャバシャと誰かが泳いでいる音がするようになった。
 そういう時、まるで誰かを誘うように、ぷらぁんとプールから手だけが伸びていた。
 先生が放課後の見回りの時、それを最初に発見したらしいだけど、先生は誰かが溺れているのかと思って、急いで手を差し伸べたが、プールの中の手が、するっと水の中に引っ込んでしまったとのこと。
 先生は慌ててプールを覗き込んだが、水の中には誰もいなかった。
 あれは瀬戸の霊の手で、助けを求めて差し出している手だと噂されるようになった。
 そのうち、瀬戸の供養の為にプールから出る霊の手をつかんで、ひっぱりあげてやるのがいいって、水泳部員の一人が言い始めたが、結局却下されてしまった。
 それから、女の子が泳いでいると、誰かに身体をぬらっと触られたりするようになるが、水の中には誰もいない。
 怖くなって水から上がろうとすると、後ろから思い切り髪を掴まれて引っ張られるようなことが何度も起こるようになり、怖がった女子たちが水泳部を辞める事態になってしまった。
 それで仕方なく、幽霊の手を握ることになったが、黙って待っていても仕方があんいので、プール際で部員が手を差し伸べて待つことになった。
 ところが、一人だけやらない子がいた。丸茂多江だった。
 「あんたたちバッカじゃない。そもそも幽霊なんていないし!」
 確かに丸茂の言う通りだが、何とかしなくてはならない部員たちは、丸茂に一度だけ付き合ってほしいと説得した。
 仕方なく丸茂がプールに手を差し伸べた途端、それまで静かだった水面が、突然激しく波打ち始めた。
 誰の悲鳴が聞こえたので見ると、丸茂が水面から現れた手にしっかりと掴まれて、プールにひこずりこまれそうになっていた。
 「助けて!」
 みんなで丸茂の身体を掴んで引っ張って、丸茂をその手から引きはがすことに成功した。
 そのとたん、それまで激しく波打っていたプールがまたしーんと静まり返った。
 「あいつは、私たちを道連れに殺そうとしているのよ!」と丸茂が言うと、みんなは納得してうなづいた。
 そして、きちんとお祓いをして、瀬戸の霊を鎮めた。
 それから、瀬戸の霊が出るという噂もなくなり、泳いでいる女子が被害にあることもなくなった。
 それから、丸茂はどんどん水泳がうまくなり、めきめきと頭角を現して、数々の大会に出場して新記録をたたき出し、たくさんのトロフィーを手に入れ、幸せのうちに卒業していった。


 「坂上君は、彼女が勝てたのは彼女の実力だと思う?」
  • 得体のしれない力が働いた
  • 丸茂さんの実力
 「そうね、たしかに彼女の実力だけでは勝てなかったかもね。
 私もね、気になったから当時の記録をいろいろと調べてみたの。そしたら、当時の新聞部が丸茂さんに取材した記録が残っていたの」


 「私が強くなれたのは、瀬戸裕子さんのお陰です。
 プールで怖い出来事が続いたとき、瀬戸さんの幽霊がいるんじゃないかって話になって、瀬戸さんの霊を助けようってみんなでプール際に並んで手を差し伸べたんです。
 その時、私の手が瀬戸さんの霊に掴まれてプールに引きずり込まれそうになったんですが、頭の中に声が聞こえてきたんですよね。
 多江ちゃん、私の次はあなたよ。あなたが頑張って水泳部を強くして。私の力をみんなあげるから、って。それで私は強くなれました。
 だから、このトロフィーは天国にいる瀬戸さんに捧げたいと思います」


 「確かに丸茂さんはもともと素質があったんでしょう。
 でもね、彼女一人ではあそこまで強くはなれなかった。プールで亡くなった瀬戸さんの支えがあったからこそなんでしょうね。
 そういう美談が水泳部には伝わっているの。だから、今も水泳部の部室には瀬戸さんの遺影が飾られているのよ。水泳部の守り神としてね」


 エンディング№377:瀬戸さんの支えがあって
 エンディング数 43/657 達成度6%
 キャラクター図鑑 42/122 達成度34%
 丸茂多江
 イラストギャラリー 33/283 達成度11%

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 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 1週目クリア
 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75を見る
 5人目は細田のシナリオ:トイレの恋→エンディング№270~272見る
 6人目は新堂のシナリオ:吉田ババア→エンディング№001~005を見る
 7話目はシナリオ:うしろの正面:エンディング№426~431を見る


 2週目開始!

 イジめで死んだ真美の人形を、イジメてた良江が拾うが、人形の方が、真美をマミちゃん人形と認識しており、良江もヨシエちゃん人形と認識している・・・


 新聞部では、日野貞夫が、一学期最後の学校新聞は七不思議の特集をやろう、と言い出す。
 倉田恵美も、長年使われていない旧校舎が夏休み中に取り壊されるし、季節的にも受ける、といって賛成する。
 日野が学校の怪談好きの七名を集めるとのことで、今度の金曜日の放課後に、新聞部の部室で行うことになった。
 日野から、七不思議の記事を書くように言われたのは、主人公の坂上修一だった。
 坂上が嫌がっているのに気づいた倉田が、怖い話が好きだから自分がやります、と言い出したので、坂上は、実は怖い話が苦手だ、と打ち明ける。
 それを聞いた日野は、新聞部一番の怖がりの坂上だから指名した、と答える。
 怖い話を聞いて思いっきり怖がって、その恐怖を記事にしてほしい、という理由からだった。
 倉田は、なら自分は語り部をやりたい、と日野に訴えると、日野は、今ここで怖い話をしてみろ、と言い出す。
 それくらいできないようじゃ、語り部は務まらないとのこと。


 →やります
 →あ~、やっぱりいいです


 「学校で、実は卒業するまで一度も行かないような場所があるのって知っている?」
  • プール
  • 放送室→シナリオ:カエルですか?ネズミですか?
  • 保健室→シナリオ:カエルですか?ネズミですか?
  • トイレ
 シナリオ:呪われたロッカー開始!


 「確かにプールは夏の体育の時間しか行かないよね。水泳部でもない限り、年に数回行くかどうか。
 坂上君って、泳げる?」
  • 泳げる
  • 泳げない
  • 犬かきなら得意
 「へー意外。体育で水泳になると、水着も着ないでプールから思い切り遠くに離れて体育座りしていそうな感じだけれど、違ったね。
 私の友達も彼氏にするなら泳げる人じゃないと困るって言ってました。
 何でかって?デートで一緒に海に行っても、つまんないでしょ。
 それに、もし彼女が溺れちゃったら誰にたすけてもらうわけ?
 それにさ、南の島のリゾートで彼氏で二人っきりで過ごすバカンス。その時、沖からものすごい勢いで巨大なメガロドンがぐわーっと襲い掛かってきたとき、泳げなかったらどうすんの?
 砂浜までサメは来れない?
 何言ってんの、最近のサメは雪山やジャングルどころか宇宙まで出張するんだから。
 だから、泳げなきゃダメ。
 あ、水泳部の話だったね。
 まあ、この話は鳴神学園では有名な都市伝説だからさ。もしかして坂上君も聞いたことあるかな、瀬戸裕子さんの噂」
  • 知っている
  • 知らない
 「へえ、怖がりの坂上君でも知っているんだからよっぽど有名なんだ。
 でもさ、ロッカーで瀬戸さんを呼び出す方法はさすがに知らないでしょ?」
  • 知っている
  • 知らない
 「知ってるの?ねえ、どうして知ってるの?」
  • 実は嘘を吐きました
  • 瀬戸さんから聞いた
 「実は瀬戸裕子さんから聞きました」と坂上は嘘を吐いた。
 倉田は黙ったまた坂上のことを見ている。
 「すいません、実は冗談でした」と言って、坂上は軽く頭を下げたが、倉田は無反応で坂上を見つめている。
 気まずくなった坂上は、日野に助けを求めようとしたが、いなくなっている。
 よく見れば、新聞部の部員が一人もいなくなっていた。
 「坂上君、目をつぶって」と倉田が声を掛けてきたので、坂上をそれに従い目を閉じた。
 足音が聞こえてきて、坂上の横で止まる。
 息遣いが聞こえ、吐息が坂上の頬をかすめる。
 「誰に聞いたの?」
 突然息苦しくなった坂上は、慌てて目を開けると、そこは水中だった!
 坂上は激しく手をかくが、沈んでいく。
 誰かが足を掴んでいる。


 『そうだ、あの日、僕は瀬戸さんと一緒に泳いでいた。でも、瀬戸さんが他の男を好きになるから・・・』
 「先生、やめてください。私、そんなつもりはありませんから!」
 『悪いのは裕子だ。裕子が僕に冷たくするから・・・』
 「何をするの、苦しい!」
 『だから、プールの中で俺はアイツの首を・・・
 俺は、僕は、誰だ?』


 黒木源造「どういうことだ、水浸しじゃないか」
 倉田「私が怖い話をしていたら、突然坂上君が苦しみだして、いきなり水を吐き出したかと思うと・・・」
 日野「新聞部で水死って、あり得なさすぎだろう」
 倉田「とにかく坂上君、新聞部がびしゃびしゃになるほど大量の水を吐き出して、もう私たちはわけがわからなくて何もできないでしたら・・・」
 朝比奈「水を吐き終わると同時に坂上君は動かなくなってしまったんです」
 黒木「どんな怖い話をしたんだ?」
 倉田「水泳部の瀬戸さんの話をしようとしたら・・・」
 黒木「お前ら、このことは誰にも言うな。何も見なかった、いいな?」
 日野「しかし・・・」
 黒木「瀬戸裕子は事故死だ。それに、こんなことが公になったら新聞部は廃部だぞ」
 日野「・・・はい」
 倉田「・・・はぁ」
 朝比奈「わかりました」
 黒木「あとは俺が片付けておく。お前らは出ていけ」


 『翌日、坂上君が転校したと学校から報告があった。
 私は何も知らない。その後新聞部のみんなと会っても、お互い何も知らない振りを通している。
 私が新聞部を退部したのは1学期が終わる夏休み前のことだった』


 エンディング№376:新聞部の溺死事件→ゲームオーバー
 エンディングリスト42/657 達成度6%
 キャラクター図鑑:41/122 達成度33%
 黒木源造
 瀬戸裕子
 イラストギャラリー:32/283 達成度11%

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 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75を見る
 5人目は細田のシナリオ:トイレの恋→エンディング№270~272見る
 6人目は新堂のシナリオ:高木ババア→エンディング№003を見る


 語り部6人に話が終わったのに、7人目はまだ姿を見せない。
 新堂に「どうするんだ?」と促された坂上。
  • もうしばらく待ちましょう
  • 新堂さんの意見を聞きたい
  • 帰りましょう
 
 シナリオ:うしろの正面


 「なあ、坂上。7人目は結局まだ来ねえけど、どうするんだよ」
 皆、待たされた不満が噴出したのか、好き勝手に文句を言い出した。
 岩下が席を立ち、つかつかとドアに向かって歩き始めたので、他の皆もそれに続いて席を立った。
 「待ってください」と坂上は皆を呼び止めた。
 「僕が話をします。七不思議は七話揃わないと、終わりませんから。皆さんに気に入ってもらえるような怖い話ができるように頑張りますので、どうか席に戻ってもらえないでしょうか」
 坂上の言葉に一同は顔を見合わせると、ぞろぞろと席に戻った。
 「皆さん、ありがとうございます。それで、最近僕が体験した話と、昔起きたとある話とどちらをご希望でしょうか」
 「へえ、お前は怖い話が苦手だったんじゃねえのか。それなのに、俺たちに選択させてくれるっていうのか?」
 「せっかくですので、よければ新堂さんが選んでいただけますか?」
 「よし、俺が聞きたいのは・・・」
 「わかりました。皆さん、僕の話を聞いていただけますようでありがとうございます。改めまして、僕は1年E組の坂上修一と言います。どうぞ、最後までお付き合いしていただけると嬉しいです」


 昔、この付近に大きな団地があったが、老朽化が進んだため、10年くらい前に取り壊されてしまった。
 その団地にある男の子が住んでいた。
 彼はまだ、その団地に引っ越してきたばかりだったので、周りに友人と呼べる人間がおらず、いつも団地の隅にある古びたブランコで遊んでいた。
 そんなある日、誰かが彼に声を掛けてきた。
 「お前、一人で何してんだよ」
 彼に声を掛けてきたのは、男の子と近い歳の活発そうな少年だった。
 「俺たちと一緒に遊ばねえか?仲間にも紹介してやるよ」
 そう言って、彼は少年の手を引っ張って公園の茂みの中に連れて行った。
 彼に連れていかれた場所には、少年と近い年頃の子供たちが数人おり、思い思いに遊んでいた。  
 「こいつも今日から仲間だ」と紹介されると、他の子どもたちは素直に受け入れてくれた。
 「皆この団地に住んでいる奴らなんだぜ。お前も今日から俺たちに仲間だ。これからは一緒に遊ぼうぜ」
 「うん、よろしく」
  こうして一人ぼっちだった少年に友達ができ、その日から7人は何をするのも一緒に行動した。


 ある夏の暑い日のこと。
 リーダー格の少年が、みんなにある提案をした。
 「学校に行ってみたくねえか?」
 少年は、学校についてよく知らなかった。
 他の子どもたちは小学校はいつも行っているところとのことで、夏休みで誰もいない近くにある高校へ探検に行く、とのことだった。
 子供たちは興味津々で探検に出かけた。


 子供たちがやってきたのは、鳴神学園だった。
 リーダー格の少年の案内で、破れたフェンスを潜り抜けて校内に侵入した子供たちは、木造の旧校舎にやってきた。
 この頃、旧校舎はすでに立ち入り禁止だったが、入り口に立ち入り禁止のテープが貼られているだけで、子供たちが侵入するには簡単だった。
 リーダー格の少年は、「探検するにはぴったりの場所だろ?今から探検しよーぜ」と言った。
 嫌がる子供もいれば、乗り気の子供もおり、結局、子供たちは旧校舎に入ることにした。


 旧校舎の中は、昼間でも薄暗く、木の匂いに満ちていた。
 そして、子供たちが歩く度、床はぎいぎいと音を立てた。
 最初は、その音に怖がっていた子供たちだったが、だんだんと恐怖が薄れていき、好き勝手に遊び回り始めた。
 「これから、みんなで何かして遊ぼうぜ」とリーダー格の少年が言った。
 彼はどんな遊びをしたと思いますか?
 「かくれんぼしようぜ」
 リーダー格の少年がそう提案し、皆はかくれんぼすることにした。
 じゃんけんをした結果、鬼はあの引っ越してきた少年になった。
 少年は百数えたあと、近くの教室から順々に探して回ったが、誰一人として見つからなかった。
 やがて、校舎に茜色の陽が差し込み、周囲をオレンジ色の染め上げていく頃、少年は皆を探すことを諦めて、泣きながら家路についた。


 団地に着くと、ちょうど少年の母親が買い物袋を提げて歩いているところに出くわした。
 少年は母親に抱きついて、たどたどしい言葉で一部始終を母親に伝えた。
 「そう、かくれんぼの途中でお友達が帰っちゃったの」
 「一生懸命探したのに、見つからないんだもん。あ!」
 気が付けば、少年の前方に自分を置き去りにした子供たちが楽しそうに公園ではしゃぎまわっていた。
 「お母さん、あの子たちだよ。あの子たちがかくれんぼの途中で僕を放って帰っちゃったの」
 「どの子かしら?」
 ところが少年の母親は、彼が指さした方を見ても、首を傾げるばかり。
 「お母さん、あそこだよ」
 「誰もいないけど・・・」
 少年は驚いて母親の顔を見た。
 そして、もう一度公園を見ると、さっきまではしゃいでいた彼らはいなくなっていた。
 「変な子ねえ。もうすぐご飯だから家に入りましょ」
 母親はそう言うと、少年を抱きかかえて家に入った。


 それからです。
 少年に他人には見ることができない。不思議な彼らとのつながりができたのは。
 その後、少年は父親の転勤が決まり、団地から引っ越した。
 けれど引っ越した先でも、彼らは少年の前に姿を現した。
 しかも、彼らは、少年が成長するにつれて同じように成長していった。
 少年は、彼らとは気づかず、成長した彼らとまた友達になって、そして、そんなことを何度も繰り返した。
 けれど少年は、歳をとるにつれて、それは幻だということを悟った。少年にしか見えない彼らは、少年の妄想の産物だった。そして、少年は坂上自身だった。


 「そう、あなた方は、僕が生んだ幻影なんです」
 「お前、何言ってるんだよ」
 新堂が呆れた顔で、坂上を見る。
 「今日の集会ですけど、本当は今日じゃなくて明日だったんです。だけど僕は、今日が集会の日だと思い込んでいました。そして、扉を開けるとみんながいました。会が進むにつれて、僕は集会が今日じゃなくて明日だということを思い出したんですけど、どうしてもそれが言えなくて。
 語り部はまだここにいる。皆に会いたい気持ちが、僕の記憶に妙な綻びを与えるんです。
 みんなと会えるのは、これが最後なんですよね。それがわかっていたから、最後の瞬間まで僕は何も言えませんでした。
 僕はみんなことが本当に大好きだから、離れたくなかった。でも、もうそれも終わりにしなかならないんです」
 坂上の頬に涙が伝った。
 「皆さん、僕はもう一人でも大丈夫です。あの時みたいな子供じゃないですから。一人でも、大丈夫ですよ。本当に今までありがとうございました」
 坂上は6人に対して感謝の意を込めて深々とお辞儀をした。


 扉が開く音がした。
 「お前、何してんだよ?」
 「日野先輩」
 扉の向こうには、この企画を立案した日野がいた。
 「部室の前を通ったら、灯りがついているから、誰かいるかと思って。明日の準備か?」
 「なんでもないんです・・・」
 「お前、何泣いてるんだ?どこか痛いのか?」
 坂上はまた瞳を閉じた。
 さよなら、僕の思い出達。


 エンディング№426:さよなら、思い出達
 エンディング数 41/657 達成度6%
 キャラクター図鑑 39/122 達成度31%
 坂上静江
 イラストギャラリー 32/283 達成度11%


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 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
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 5人目は細田のシナリオ:トイレの恋→エンディング№270~272見る


 6人目は新堂誠を選択。
 シナリオ:高木ババア開始!


 新堂誠は3年D組の生徒。
「お前がどうして新聞部に入ったか教えてくれないか?」
  • なんとなく入りました
  • 前から憧れていました
  • ゲーム実況者になりたかったので
「ずいぶんと変わった部に憧れていたんたな、お前。何に興味を持つかは人それぞれだからな。
 それより俺みたいな奴が、こんな女子供が喜びそうな集会にいるのは場違いだって感じてんじゃねえか?」
 「ほう、怖いものしらずってぇか、直球じゃねえか、お前、気に入ったぜ。
 俺に面と向かってそんなこと言う奴は、久方ぶりたしなあ。
 はっきり言って俺は、こんな会に興味はなし。だが、新聞部の日野には、ちっとした借りがあってな。受けた恩を仇でかえすわけにはいかねえ。
 だから、義理を立てて奴の頼みを引き受けたんだ。
 それじゃあ、さっそく話を始めるとするか。ところで、この部屋、なんか怪しくねえか?
 霊ってのはよ、人間の気を敏感に察知するっていうからな。それでな、霊は恐怖心を持った奴の周りに集まるっていうじゃねえか。
 怖い話をしているとき、突然背筋にゾクって寒気が走る。あれはま、そいつの背中を霊が撫でてるんだぜ。
 坂上、お前、まさか怖がったりしてねえよな」
 「怖がっているのがお前じゃないとしたら、他の誰かが怖がっているのか?それを察知して霊が集まってきたのか?
 それとも、この霊たちは、誰も怖がっていないのに集まって来たのか?
 この霊たちは。これから起きる何かを予測して集まってきたことになる。わかるか?この集会で何かが起こるってことさ。
 それじゃあ、話を始めてやろう。噂話って知ってるか?口裂け女とか、人面犬、トイレの花子さんや、メリーさん。そういう噂、お前は馬鹿にしているか?」
 「そうかい。そんなの子供だましだよって鼻で笑ってんだな、お前は。だとしたら、不幸だな」


 新堂のクラスメートに吉田達夫という男がいた。
 現実主義というか、アンチ・ロマンチストというのか、どにかく嫌な男だ。
 勉強はできたけど、それだけの男で、いつも気取っていて、殴ってやりたいタイプだった。
 吉田は、どんなに殴られようが絶対に抵抗しないが、きちんとそれを先生に報告していたので、いじめようとしてもいじめられない男だった。
 先生の間では、成績抜群で品行方正、先生には従順でなんでも従い、問題があるとすぐに報告するため、評判が良かった。
 吉田はそんな男だから、誰にも相手にされず、無視されていた。
 ところが吉田は、それを喜んでいるようだった。自分が選ばれた人間にでもなったつもりで、周りを見下しているのは見え見えだった。


 「お前はそんな奴には何かガツンと一発かましてやりたいと思うだろ?」
 「腹が立つ奴がいても、だんまりなのか?
 だとしたら、よほどの優等生か、逆に冷たい人間なんだな」


 そんな時、新堂はちょっとおもしろい話を聞いた。高木っていう名前のババアの話だった。
 そのババは、ませたガキが好きそうなフリルのついた真っ赤なロングスカートをはいている。
 足が隠れて地面を引きずるほどのロングスカートのため、高木ババアのスカートの裾はボロボロだった。
 そのババアは腰まである伸ばし放題の髪の毛をいつも垂らしていて、顔を隠している。
 その顔を見た人の話では、すげえ厚化粧をしており、あの顔を見たら、二度と忘れらないとのこと。
 そして、上は白のブラウスを着ているのだが、お姫様が着てるようなヒラヒラのついたかわいらしいブラウスなのだが、ずっと着続けているせいか、元の色がわからないぐらい薄茶色に変色していた。
 ところどころ穴もあいているし、ツギハギだらで、すんげえ臭い。
 そして、ものすごいスピードでピョンピョン飛びながら歩いていた。


「時速100キロで、ピョコピョコ飛び跳ねながら走る厚化粧をした薄汚ねえババア。そんな奴に追いかけられたら、お前どうする?
 お前、笑ったか?今、笑ったんじゃねえのか?」
  • 笑った
  • 笑っていない
「どうした?声が震えているぜ?」


 高木ババアが何でピョコピョコ飛び跳ねるのかは、片足がないからだ。
 なんでも、交通事故でトラックのタイヤに足を巻き込まれたらしいんだけど、そのとき家族も一緒にいて、息子夫婦に3人の孫、全員、即死だった。
 死体は原形をとどめておらず、ミンチみたいにグチャグチャになったらしい。
 トラックの運転手は酔っぱらっていたらしく、事故に気づかず、子供をタイヤに挟んだまま、10キロ以上走ったそうだ。
 それで高木ババアは発狂してしまい、その後、家族みんな死んだショックから立ち直れず、自宅の布団で、誰にも看取られずに死んだらしい。
 死後1カ月以上経って発見されたそうで、今現れる高木ババアは幽霊だ。
 幽霊だからこそ、時速100キロで走ることができるのだ。
 高木ババアが臭いのは死後1カ月以上経っているからで、あの服装は事故にあったときの服装とのこと。
 そして、高木ババアは、ある目的があって狙った奴の前に現れ、高木ババアに狙われると絶対に逃げられないため最後らしい。
 高木ババアは、最初は何気なく声をかけてくる。
 「身寄りのない年寄りの思い出話を聞いてくだされ」
 ついうっかり情けをかけて相手をしたら、もう最後だ。いきなり、あの時の事故の話を始めるのだ。
 「私には、人様のうらやむのうな家族がいましての。よくできた息子に、よくできた嫁。目に入れても痛くないほどのかわいい孫が3人。
 そりゃあもう、とても幸せな家族でした。仏様には毎日お礼を言いました。
 でも、ひどいもんです。仏様なんて、いやぁしません。私の家族はみんな死んでしまいました。
 交通事故でした。私を残して家族全員、トラックに轢かれちまったんでごぜえます」
 そんなこと言われたら、聞いているほうは、慰めないわけにはいかない。
 「その分、おばあさんが頑張って生きなきゃ」
 「ありがとうごぜえます。こんなババアに気を遣ってくださって。
 あんた様は、死んでいった家族たちのことがかわいそうだと思いますかのう?」
 「ええ」
 誰だって、反射的にそう答えるだろう。
 すると、高木ババアは、薄汚れたスカートをめくって、こう言う。
 「私しゃあ、そん時の事故で片足をなくしちまいました。私のなくなった片足、不憫だとは思いませんかのう?」
 (さあ、どうだ。お前の心は恐怖心でいっぱいだろう。さあ、おとなしく私に食われてしまうがいいよ)
 まるでそんなことを言っているように、醜く化粧されたシワだらけの顔をこっちに向けてニタニタと笑う。
 もう、走り出すしかない。
 走って走って、心臓が口からこぼれるほど走りまくって逃げる。
 そして、もうだめだ、走れない、と思って、ふらふらの足を休め、全身で息をして、ふっと顔を上げると、高木ババアがニタニタ笑いながら、目の前に立っている。
 「よくできた息子は、腹の上を裂かれて真っ二つ。内臓が飛び出て、どこにいったかわからなくなりましてのう。かわいそうだと思うなら、あんたの内臓をくださいな」
 また逃げる。逃げて、逃げて、逃げまくる。
 足が痙攣して転ぶ。
 後ろからゆっくりと足音が聞こえてきて、真後ろで止まる。
 「よくできた嫁は、両腕を轢き潰されてしにました。かわいそうだと思うなら、あんたの両腕くださいな。
 目に入れても痛くないほどかわいい3人の孫。
 一人は両足を潰されました。
 一人は首を潰されてしにました。
 そして、最後の一人は、タイヤに巻き込まれて体中の皮膚をひっぺがされて真っ赤になって死にました。
 家族はみんな、挽き肉みたいにグジャグジャになって、死んだんでごぜえます。
 かわいそうだと思うでしょう?
 だったら、あんたの体をくださいな」
 そして、首を絞め上げられ、ジ・エンド。
 死んだあと、死体は見つからない。全身は死んでいった家族に分け与えられるから。


 「この話を聞いた奴はよ、1週間以内に必ず高木ババアに会うっていうぜ。
 俺は、お前に話したんだからな。ここに集まっている残りの5人は関係ねえぜ。
 お前、笑っているのか?それとも、震えているのかよ。
 そう心配すんなよ。実は助かる方法もあるんだぜ」


 「助かる方法を知りたいか?」
 「高木ババアに会わないですむ方法、それはな・・・
 1週間以内に誰でもいいから5人以上の右足を集めるんだ。お前が高木ババアの代わりをやればいいんだよ」
 (高木ババアは、本当にいるのか?)
 『きっと、いる。
 新堂さんが高木ババアの話をしてからというもの、僕はこの部屋に何か得たいの知れないものが漂っている気がしてならない。
 僕は、もう高木ババアに取り憑かれてしまったのだ。僕はもう、助からないのか。
 5人以上の右足を手に入れるなんて、僕にできるわけない。
 ここにいるのは何人だ?6人いる。
 奴ら、僕のことを見て笑っている。
 そうさ、こいつらに犠牲になってもらおう。
 1週間以内に、こいつらの右足を手に入れればいいんじゃないか。
 よし、そうと決まれてば今は平然を装おう。何事もなかったように、この集会を終わらせればいい。ふふ、ふふふふふ』

 エンディング№003:六本の右足
 エンディング数 40/657 達成度6%
 キャラクター図鑑 38/122 達成度31%
 イラストギャラリー 32/283 達成度11%


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 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75を見る
 5人目は細田のシナリオ:トイレの恋→エンディング№270~272見る
 6人目は新堂のシナリオ:高木ババア→エンディング№001・002・004・005を見る(エンディング№03は7話目のエンディングの影響するので、あとでプレイします)


 語り部6人に話が終わったのに、7人目はまだ姿を見せない。
 新堂に「どうするんだ?」と促された坂上。
  • もうしばらく待ちましょう
  • 新堂さんの意見を聞きたい
  • 帰りましょう
 
 シナリオ:うしろの正面


 「なあ、坂上。7人目は結局まだ来ねえけど、どうするんだよ」
 皆、待たされた不満が噴出したのか、好き勝手に文句を言い出した。
 岩下が席を立ち、つかつかとドアに向かって歩き始めたので、他の皆もそれに続いて席を立った。
 「待ってください」と坂上は皆を呼び止めた。
 「僕が話をします。七不思議は七話揃わないと、終わりませんから。皆さんに気に入ってもらえるような怖い話ができるように頑張りますので、どうか席に戻ってもらえないでしょうか」
 坂上の言葉に一同は顔を見合わせると、ぞろぞろと席に戻った。
 「皆さん、ありがとうございます。それで、最近僕が体験した話と、昔起きたとある話とどちらをご希望でしょうか」
 「へえ、お前は怖い話が苦手だったんじゃねえのか。それなのに、俺たちに選択させてくれるっていうのか?」
 「せっかくですので、よければ新堂さんが選んでいただけますか?」
 「よし、俺が聞きたいのは・・・」
 「わかりました。皆さん、僕の話を聞いていただけますようでありがとうございます。改めまして、僕は1年E組の坂上修一と言います。どうぞ、最後までお付き合いしていただけると嬉しいです」


 昔、この付近に大きな団地があったが、老朽化が進んだため、10年くらい前に取り壊されてしまった。
 その団地にある男の子が住んでいた。
 彼はまだ、その団地に引っ越してきたばかりだったので、周りに友人と呼べる人間がおらず、いつも団地の隅にある古びたブランコで遊んでいた。
 そんなある日、誰かが彼に声を掛けてきた。
 「お前、一人で何してんだよ」
 彼に声を掛けてきたのは、男の子と近い歳の活発そうな少年だった。
 「俺たちと一緒に遊ばねえか?仲間にも紹介してやるよ」
 そう言って、彼は少年の手を引っ張って公園の茂みの中に連れて行った。
 彼に連れていかれた場所には、少年と近い年頃の子供たちが数人おり、思い思いに遊んでいた。  
 「こいつも今日から仲間だ」と紹介されると、他の子どもたちは素直に受け入れてくれた。
 「皆この団地に住んでいる奴らなんだぜ。お前も今日から俺たちに仲間だ。これからは一緒に遊ぼうぜ」
 「うん、よろしく」
  こうして一人ぼっちだった少年に友達ができ、その日から7人は何をするのも一緒に行動した。


 ある夏の暑い日のこと。
 リーダー格の少年が、みんなにある提案をした。
 「学校に行ってみたくねえか?」
 少年は、学校についてよく知らなかった。
 他の子どもたちは小学校はいつも行っているところとのことで、夏休みで誰もいない近くにある高校へ探検に行く、とのことだった。
 子供たちは興味津々で探検に出かけた。


 子供たちがやってきたのは、鳴神学園だった。
 リーダー格の少年の案内で、破れたフェンスを潜り抜けて校内に侵入した子供たちは、木造の旧校舎にやってきた。
 この頃、旧校舎はすでに立ち入り禁止だったが、入り口に立ち入り禁止のテープが貼られているだけで、子供たちが侵入するには簡単だった。
 リーダー格の少年は、「探検するにはぴったりの場所だろ?今から探検しよーぜ」と言った。
 嫌がる子供もいれば、乗り気の子供もおり、結局、子供たちは旧校舎に入ることにした。


 旧校舎の中は、昼間でも薄暗く、木の匂いに満ちていた。
 そして、子供たちが歩く度、床はぎいぎいと音を立てた。
 最初は、その音に怖がっていた子供たちだったが、だんだんと恐怖が薄れていき、好き勝手に遊び回り始めた。
 「これから、みんなで何かして遊ぼうぜ」とリーダー格の少年が言った。
 彼はどんな遊びをしたと思いますか?
 「かくれんぼしようぜ」
 リーダー格の少年がそう提案し、皆はかくれんぼすることになり、リーダー格の少年が鬼をかってでた。
 鬼が数を数える声と同時に、子供たちは散り散りに走り出し、それぞれが思い思いの場所に身を潜めた。
 少年は、近くの教室にあった掃除道具入れに身を隠すことにした。
 少年が道具入れのドアを閉めると、目の前には完全な闇が広がっていた。
 完全な闇の中で、少年はひたすら扉が開くまで待っていた。
 けれど、扉は一向に開かれることはなかった。
 それどころか、外からの声が一切聞こえてこなかったが、少年は扉が閉まっているからだと多い、さして気にも止めなかった。
 そうこうしている内に、少年はだんだんと眠くなってきて、そのままうとうとと眠りに落ちてしまった。
 次に目が覚めた時、少年は途端に怖くなり、「怖いよ!出して!!」とがむしゃらにあちこち叩いた。
 途端に扉が開いて、少年は勢いよく放り出されて、床に膝を強く打ち付けた。
 「痛いよぉ、お母さん・・・」
 少年のすすり泣く声が教室に響いたが、誰もそれを聞いている人はいなかった。
 少年が掃除用具入れから出た時には、外はすっかり日が落ち、空には丸い月が煌々と光っていた。
 少年は痛む膝をさすりながら立ち上がり、よろよろと廊下に出た。
 月明かりのみで照らされた廊下は、端まで光が届かず暗い闇が横たわっていた。
 少年は、泣きそうになるのを必死に堪えながら、一歩踏み出した。
 お母さんのところに帰りたい・・・その思いだけが少年を突き動かしていた。
 その時、前方の闇の中、さらにその闇よりも濃く、濃縮された漆黒の何かが少年に近づいてきていた。
 目を凝らしてみると、それを一本の腕で、なめらかに動きながらこちらに手招きしていた。
 「ねえ、僕、お母さんのところに帰りたいよ。僕をおうちにかえしてよ」と少年は、手に母親のところに帰りたいと訴えてみた。
 すると、手はぴたりと動きを止め、少年に囁いた。
 「ダメだよ。キミは、かだかくれんぼの途中だろ?見つけてもらわなければ帰れないよ」
 「じゃあ僕はどうしたらいいの?」
 「こっちへおいで。私と一緒に待とうじゃないか。見つけてもらえれば、キミはおうちに帰れるよ」
 少年は、その言葉を信じて、その漆黒の手を取った。


 「少年は、ずっと皆が来るのを待っていました。けど、いつまでたっても皆は、少年のことを探しに来てはくれませんでした」
 福沢「そんな、噓でしょ」
 新堂「お前、修一って、まさか」
 「誠にいちゃん、皆、どうして僕を探しに来てくれなかったの?」
 新堂「修一、違うんだ。俺たちはお前のことを探したんだ。でも、いくら探しても、お前は見つからなくて、だから先に帰っちまったもんだと思って、帰っちまったんだよ。決して、お前をさがしてなかったわけじゃねえ!」
 風間「そうさ、皆、お前のことをとても心配したんだ。本当だよ」
 風間さん・・・望にいちゃんが恐れおののいた目で、僕のことを見ていた。
 「僕知っているんだ。あの手が教えくれた。皆は僕がいなくなったことを、お母さんたちに言わなかったって」
 荒井「言っても信じてもらえないと思ったんですよ。旧校舎はしらみつぶしに調べましたし、神隠しなんて非現実的なことがあるわけないと思ってましたから。だから修一君は、かくれんぼに飽きて、どこかに行ってしまったと思ったんです」
 「僕はこの集会で誰かが僕の話をしてくれるんじゃないかって期待してたんだ。でも、皆は僕のことを欠片も話してくれなかった。皆、僕の事、忘れたかったんでしょ?なかったことにしたかったんでしょ?」
 細田「違う!みんなはどうか知らないけど、僕は修ちゃんのことを忘れたことないよ!だって、数少ない友達だったもの。けど、あのあと団地は取り壊されることになって、皆とも離ればなれになっちゃって、だから、気付くのが少し遅れちゃっただけだよ!」
 皆の言葉は嘘にまみれていた。皆から出るのは、取り繕った嘘ばかりだ。
 岩下「私たちをどうするの?」
 明美ねえちゃんがぼそっと呟いた。
 「どうもしないよ。皆の気持ちがわかったから、僕はもう行くよ」
 皆を背にして、坂上は歩き出した。


 部室を出ると、そこには見慣れた闇が広がっていた。そして、その暗がりの中から、漆黒の美しい手の持ち主が現れた。
 「ありがとう、死神さん。みんなにもう一度会わせてくれて」
 死神と呼ばれた黒い手の持ち主は、日野だった。
 「お友達に会えてよかったね」
 「うん、でも皆、僕のことを忘れてたんだよ、死神さん」
 黒い手は優しく僕を抱きしめた。
 「人間なんてそんなものさ。あいつらは忘れるようにできている生き物なんだ。自分を守るため、記憶さえ捻じ曲げてしまうんだ。これ以上、彼らと話をしてもキミが苦しくなるだけさ。還ろうか、私たちの居場所へ」
 「うん」
 手を繋いで僕らは、歩き出した。
 僕は、また還っていく。この常闇の深淵へと。



 エンディング№431:僕の還る場所
 エンディング数 38/657 達成度5%
 キャラクター図鑑 38/122 達成度31%
 イラストギャラリー 32/283 達成度11%


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 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


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 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
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 語り部6人に話が終わったのに、7人目はまだ姿を見せない。
 新堂に「どうするんだ?」と促された坂上。
  • もうしばらく待ちましょう
  • 新堂さんの意見を聞きたい
  • 帰りましょう
 
 シナリオ:うしろの正面


 「なあ、坂上。7人目は結局まだ来ねえけど、どうするんだよ」
 皆、待たされた不満が噴出したのか、好き勝手に文句を言い出した。
 岩下が席を立ち、つかつかとドアに向かって歩き始めたので、他の皆もそれに続いて席を立った。
 「待ってください」と坂上は皆を呼び止めた。
 「僕が話をします。七不思議は七話揃わないと、終わりませんから。皆さんに気に入ってもらえるような怖い話ができるように頑張りますので、どうか席に戻ってもらえないでしょうか」
 坂上の言葉に一同は顔を見合わせると、ぞろぞろと席に戻った。
 「皆さん、ありがとうございます。それで、最近僕が体験した話と、昔起きたとある話とどちらをご希望でしょうか」
 「へえ、お前は怖い話が苦手だったんじゃねえのか。それなのに、俺たちに選択させてくれるっていうのか?」
 「せっかくですので、よければ新堂さんが選んでいただけますか?」
 「よし、俺が聞きたいのは・・・」
 「これは僕の体験談です。僕でも皆さんが知らない怖い話を一つだけ知っています。その理由は、僕の話を聞けは理解していただけると思います」
 「今から1年ほど前、僕はまだ中学3年生でした。正確に言うと僕の中学で体験した話なのですが・・・・
 皆さんは、たった一人になってしまった時ってありませんか?
 普段はいつも人通りのある道なのに、突然人がいなくなり自分だけになってしまったってことってありませんか?
 それがもし学校で起きたとしたらどうしますか?
 例えば、休み時間にトイレに入る。いつもは誰かしらいるはずのトイレ。入って、ふと見ると誰もいない。
 変だなと思って用を済ませてトイレから出ると、今までたくさんの人がいたはずの廊下に誰もいない。そんな経験はありませんか?
 驚いて窓から校庭に目をやるとそこにはたくさんの生徒たちが遊んでいる。ほっとして廊下に目を戻すと、いつの間にかそこにはたくさんの人たちの姿がある。
 ほんの一瞬前に見た、誰もいない背景がまるで嘘のように、そこにはいつもの日常が動いている。そんな経験はありませんか?」
 坂上がそう話していると、荒井が聞いてきた。
「本当にそんなこと気にかけて日常を生活しているんですか?」
 「周りにいた人たちが、突然自分の視界から姿を消してしまう。そんなとき、僕はいつも思うんですよ。別の世界に迷い込んでしまった、と。そんなときは、大きな人通りを目指して歩くんです」


 とある住宅街を一人で歩いているときのこと、不思議なことに5分歩いても10分歩いても、誰にも出会わなかった。
 また誰もいない世界に迷い込んでしまったと思った坂上は、大通りを探すことにした。
 でも、その日に限って、大通りを見つからず、どこをどう歩いても似たような住宅街が現れるばかりで、完全に別の世界に取り込まれてしまった。
 焦った坂上は無我夢中で走り出し、見たこともない場所に迷い込んでしまった。
 住宅が並んでいるばかり光景が延々と続き、坂上はとある一軒の家の呼び鈴を押してみたが、返事は帰ってこなかった。
 試しに何軒もの呼び出しを鳴らしてみたが、どれも結果は同じだった。
 そんな時、住宅ではない建造物が坂上の視界に飛び込んできた。
 それは、学校だった。そう、この鳴神学園だった。
 すでに放課後になっている時間帯だったが、それでも誰もおらず、各教室や体育館も回ったが、人影さえも見つけることができなかった。


 坂上は、屋上へ行けばかなり遠くまで見通せるはずだと思い、屋上へ向かった。
 屋上から眺める光景は、いつもの日常だった。
 ここは僕らの暮らしている世界なんだ、と思うったら、とたんに疲れが出た坂上は、その場にへたり込んでしまい、空を見上げた。
 すると、空に浮かんだ巨大な目玉が、じっと坂上を見ており、坂上はそのまま意識を失ってしまった。


 気づくと、坂上は見覚えのある住宅街に立っていた。元の世界に戻ってきたのだ。
 翌日、病院にいった坂上は、ココロの病気と診断される。周りからふと人がいなくなるのは、自分の殻に閉じこもり、周囲を遮断するからとのこと。
 本当に人がいなくなるのではなくて、他人を拒絶したというきもちがあるために起こる錯覚で、坂上の頭の中の妄想を現実と勘違いしているとのこと。
 そして、妄想にしてあまりにもリアルな学校だったので、調べると、本当に鳴神学園は存在していた。だから、坂上はこの学校に入学した。
 そして、急に人がいなくなる症状は亡くなった代わりに、いつも空に目玉が浮かぶようになり、まるで坂上を監視しているみたいとのこと。


 「もし、誰かの視線を感じたなら、迷わず空を見上げてごらんなさい。そこには、あなたを監視する巨大な目玉が浮かんでいるかもしれませんよ」


 エンディング№430:いつも誰かに見られている
 エンディング数 38/657 達成度5%
 キャラクター図鑑 38/122 達成度31%
 イラストギャラリー 29/283 達成度10%


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 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
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 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75を見る
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 6人目は新堂のシナリオ:高木ババア→エンディング№001・002・004・005を見る(エンディング№03は7話目のエンディングの影響するので、あとでプレイします)


 語り部6人に話が終わったのに、7人目はまだ姿を見せない。
 新堂に「どうするんだ?」と促された坂上。
  • もうしばらく待ちましょう
  • 新堂さんの意見を聞きたい
  • 帰りましょう
 
 シナリオ:うしろの正面


 「なあ、坂上。7人目は結局まだ来ねえけど、どうするんだよ」
 皆、待たされた不満が噴出したのか、好き勝手に文句を言い出した。
 岩下が席を立ち、つかつかとドアに向かって歩き始めたので、他の皆もそれに続いて席を立った。
 「待ってください」と坂上は皆を呼び止めた。
 「僕が話をします。七不思議は七話揃わないと、終わりませんから。皆さんに気に入ってもらえるような怖い話ができるように頑張りますので、どうか席に戻ってもらえないでしょうか」
 坂上の言葉に一同は顔を見合わせると、ぞろぞろと席に戻った。
 「皆さん、ありがとうございます。それで、最近僕が体験した話と、昔起きたとある話とどちらをご希望でしょうか」
 「へえ、お前は怖い話が苦手だったんじゃねえのか。それなのに、俺たちに選択させてくれるっていうのか?」
 「せっかくですので、よければ新堂さんが選んでいただけますか?」
 「よし、俺が聞きたいのは・・・」
 「これは僕の体験談です。僕でも皆さんが知らない怖い話を一つだけ知っています。その龍は、僕の話を聞けは理解していただけると思います」
 「申し訳ありません。やはり、話すのはやめさせてもらいます。興味のない方をいらっしゃるようですし、どうやら自分の立ち位置を間違えてしまったようですね。なんとも歯切れの悪い形となってしまいましたが、これで集会を終わらせていただきたいと思います。皆さん、今日はどうもありがとうございました」


 翌日。
 「よう、日野。これから新聞部か?」
 「ああ、新堂。昨日はありがとうな。もうすぐ試合で忙しいのに、わざわざ協力してくれて」
 「いいってことよ。こちとら、いつも試合を取材してもらってんだ。ボクシング部を悪く言う連中も多いけど、お前が好意的は記事を書いてくれるから助かってる。俺にできることなら、いつでも協力は惜しまないぜ」
 「それで、どうだった?うちの可愛い後輩は喜んでたか?」
 「喜ぶっていうよりは、ビビッていたんじゃねえか?」
 「あいつをびびらせるなんて、お前らやるじゃないか。でも、可愛いからって手を出さないでくれよ」
 「手を出す?」
 「冗談だよ。何をやるにも一生懸命で、俺にちょろちょろとまとわりついてくるのさ。やっぱ、1年生ってのは初々しくていいよな!」
 「人にはそれぞれ愛の形ってのものがあるからな。だから別に俺は否定しねえけどよ。でも、俺にはそんな趣味はねえし、まったく手を出すつもりはないから安心してくれ。しかし日野、少しばかりお前を見る目が変わったぜ。俺にはそんな気はねえからな、はっきり言っとくぜ」
 「は?」
 「触るな!それ以上俺に近づくんじゃねえ、このゲス野郎」
 「俺はノーマルだぞ。どこから急にそんな発想が引き出されてくるんだ」
 「お前が自分ところの後輩を可愛いと思うのは自由だ。だが、俺は男に手を出すつもりはねえし、そんな趣味を平然と押し付けてくんじゃねえよ」
 「はあ、男?昨日七不思議の集会に行ったのは、1年に女子だぞ」
 「いや、来たのは男だ。1年の・・・確か坂上修一だ」
 「おいおい、俺が指名したのは倉田恵美って1年の女子だ。それに、坂上修一なんて名前の奴は新聞部にいないぞ」
 「ちょっと待てよ。俺たちは新聞部員でもない部外者に話していたのか?」
 「まさか倉田の奴、行くのが嫌になって代役を立てたんじゃないだろうな。あっ!!!!」
 「どうしたんだよ、日野」
 「悪いけど一緒に部室まで付き合ってくれないか」
 「ああ」
 「急ぐぞ!」


 新聞部の部室に入り、日野は棚に駆け寄ると、資料を探す。
 「なあ、日野、何をそんなに慌てているのか、いい加減に教えてくれてもいいだろ?お前がみているそれ、何なんだよ」
 「これは新聞部が刷った過去の新聞をまとめたものだ。・・・あった!」


 日野は、怪訝そうな顔をする新堂に資料を見せると、問題の箇所を指で指し示す。
 「おい、それじゃあ、坂上ってのは」
 「ああ、新聞部員さ。20年以上前の部員だけどね」
 「俺は確かにあいつに会った。いや俺だけじゃない。岩下も風間も、あの場にいた全員が坂上という男に話を聞かせている。でも、あいつは・・・」
 「20年前に死んでいる。理由は定かではないが、彼が死ぬ直前に書いたのが、この学校新聞に記されている鳴神学園の七不思議という記事なのさ。実はと言うと俺はこの新聞を読んだとき、今回の企画を思いついた。もともと七不思議の集会は、彼の企画なのさ」
 「じゃあ、昨日俺たちが話したのは幽霊だっていうのかよ!」
 「ただ、俺が聞き手役を頼んだ蔵って奴はちょっとイタズラ好きって言うかお茶目なんだよな。あいつのことだ、今回の聞き役を買って出て、この昔の資料を読んだんだろう。それで、わざわざ坂上修一という代役を用意した。もしくは、坂上修一という男子に変装したとか・・・」
 「お前、そんな下らねえ仮説をマジで言ってんのか?」
 「じゃあ、お前らは幽霊相手に話したって言うのか」
 「てめえ、俺にケンカ売る気か?」
 「お前、ちゃんと記事を読んだのか?」


 新堂は改めて記事に目を通した。
 「これって!」
 「お前たちが坂上修一に会っていたのならば、大変なことになるぞ。まさか、6話で終わらせた、なんてことはないよな?」
 「あいつ7話目を話すって言ったのに、俺はあいつの話を聞いてやらなかった。無理やり6話目で終わらせて帰っちまった」
 「・・・」
 「助かる方法はあるのかよ!」
 「落ち着けよ。倉田のイタズラかもしれないだろ。まずは倉田を探そう」
 「ああ、そうだな」


 そのとき、風もないのに掃除用部などを入れている縦長のロッカーのドアがゆっくりと開いていった。
 「うわああああ!!!」
 「く、倉田・・・」


 幅30センチほどの細長いロッカーの中に、倉田恵美は器用に押し込められていた。
 まるで体育座りをしたまま押しつぶされているような恰好で、手足は妙な方向に捻じ曲がっていた。
 よく見ると、首の周りに歪に皺がよじれている。
 すでに死んでいるはずの倉田の首がギリギチと不気味な音を発しながら回り始めた。
 首の周りについた捩れた模様はちょうど一回転首を捩じられてできたもののようだ。
 そして、空気の抜けた人形が生気を取り戻すように、妙な方向に捩れていた四肢がボキボキと音を立てて修復されていった。
 まもなく倉田は自力でロッカーの中から這い出してきた。
 ロッカーからみごっとに這い出してきた倉田は、焦点の合わない視線を日野に向けている。
 「今回も聞けなかった」
 おそらく、倉田に坂上が乗り移っているのだろう。死んでいる倉田がしゃべっている。
 しかし、それは聞き覚えのある倉田の声ではなく別人のものだった。
 「僕は、ただ怖い話を聞きたかっただけなんだ。それを学校新聞に載せたかっただけなんだ。7話集まって初めて学校の七不思議が完成するのに、6話しか集まらなかった」
 そんな独り言をつぶやきながら、倉田はゆっくりと近づいてきた。


 「なあ、お前。坂上だろ?」
 「お前、誰だ?」
 「俺は日野って言うんだ。今回の七不思議の集会を企画したのは俺だよ」
 「あれは僕の企画だ」
 「ああ、そうだ。でもあの企画は6話しか集まらなかったため、七不思議にならなかった。だから・・・」
 「そう、だから僕は、僕自身が7話目になることで責任を取った。20年前の新聞の7話目に書いてある通りさ」
 「わざわざ七不思議を完成させるためだけに自殺したっていうのか?」
 「僕のとって、あの記事を最高のものにすることは宿命だった。僕はあいにく七不思議の最後を締めくくる強烈な怖い話を知らなかった。だから、七不思議の最後を飾るには自分が死ぬことが一番だと思った。学校の怪談に取り憑かれて恐怖を感じながら自殺する人間の記録。それが7話目さ。そして、僕はその新聞を刷り上げたあと、この新聞部で首を吊って自殺した。だから、僕はあれからずっとこの新聞部にとどまっている。そう、僕は、見事に学校の怪談の一つになることができたのさ。そして、この部室にとどまり、入れ替わる新聞部員たちの話を聞いていた。いつか、僕の後を継いで七不思議の企画を立ててくれる人間が現れるのを。だから僕は、今回の七不思議を楽しみにしていた。それだわざわざ、この女の子の代わりに聞き役を務めることにした。それなのに、今回も6人しか来なかった。僕は7話目を話そうとしたのに、聞きたくないという奴がいた。お前がその一人だったよな」
 そういうと、倉田は、新堂を指さした。


 新堂「悪かった!聞くよ、今から7話目を聞くから」
 倉田「もう遅いよ。今回も七不思議の集会は失敗して終わったんだ。7人目がちゃんと来てたら、こんなことにはならなかったのにな」
 日野「待て!7人目はいた。ちゃんと来ていたんだぞ!」
 倉田「どこに?」
 日野「7人目は聞き役もかねた倉田恵美という女の子だったんだよ!お前が殺して乗り移ったその子が7人目だったんだよ!」
 倉田「僕は集会が始まる前に彼女を殺してロッカーに入れてしまったからね。どうりでいつまで経っても7人目が来なかったわけだ。でも、もうこの子は死んでしまったから、残念だけど7話目を話すことはできない」
 日野「じゃあ俺が話す。俺の話を聞いたらこんな場所に縛られずに成仏できるかもしれないぜ」
 倉田「お前は何か勘違いしているんじゃないか?7話目は僕が書くんだ。それに僕は成仏なんかしたくない。この新聞部の主として、ずっとずっと見守り続けるんだ。今回の7話目は、こんな話はどうかな?20年前に新聞部で首つり自殺した部員がいた。その部員が一生懸命に考えた企画を、日野って男が横取りしたのさ。でも、日野は自殺した部員の怒りを買って、殺されてしまう。そして、その死体を偶然見つけたボクシング部の主将は発狂してしまう。面白そうだろ?さあ、始めようか、学校であった怖い話の7話目を」


 エンディング№429:20年前の学校であった怖い話
 エンディング数 37/657 達成度5%
 キャラクター図鑑 38/122 達成度31%
 イラストギャラリー 28/283 達成度9%


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 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
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 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75を見る
 5人目は細田のシナリオ:トイレの恋→エンディング№270~272見る
 6人目は新堂のシナリオ:高木ババア→エンディング№001・002・004・005を見る(エンディング№03は7話目のエンディングの影響するので、あとでプレイします)


 語り部6人に話が終わったのに、7人目はまだ姿を見せない。
 新堂に「どうするんだ?」と促された坂上。
  • もうしばらく待ちましょう
  • 新堂さんの意見を聞きたい
  • 帰りましょう
 
 シナリオ:うしろの正面


 「なあ、坂上。7人目は結局まだ来ねえけど、どうするんだよ」
 皆、待たされた不満が噴出したのか、好き勝手に文句を言い出した。
 岩下が席を立ち、つかつかとドアに向かって歩き始めたので、他の皆もそれに続いて席を立った。
 「待ってください」と坂上は皆を呼び止めた。
 「僕が話をします。七不思議は七話揃わないと、終わりませんから。皆さんに気に入ってもらえるような怖い話ができるように頑張りますので、どうか席に戻ってもらえないでしょうか」
 坂上の言葉に一同は顔を見合わせると、ぞろぞろと席に戻った。
 「皆さん、ありがとうございます。それで、最近僕が体験した話と、昔起きたとある話とどちらをご希望でしょうか」
 「へえ、お前は怖い話が苦手だったんじゃねえのか。それなのに、俺たちに選択させてくれるっていうのか?」
 「せっかくですので、よければ新堂さんが選んでいただけますか?」
 「よし、俺が聞きたいのは・・・」
 「これは僕の体験談です。僕でも皆さんが知らない怖い話を一つだけ知っています。その理由は、僕の話を聞けは理解していただけると思います」
  • それでは、話しましょう
  • やっぱり、やめましょう
 「今から1年ほど前、僕はまだ中学3年生でした。正確に言うと僕の中学で体験した話なのですが・・・・
 皆さんは、たった一人になってしまった時ってありませんか?
 普段はいつも人通りのある道なのに、突然人がいなくなり自分だけになってしまったってことってありませんか?
 それがもし学校で起きたとしたらどうしますか?
 例えば、休み時間にトイレに入る。いつもは誰かしらいるはずのトイレ。入って、ふと見ると誰もいない。
 変だなと思って用を済ませてトイレから出ると、今までたくさんの人がいたはずの廊下に誰もいない。そんな経験はありませんか?
 驚いて窓から校庭に目をやるとそこにはたくさんの生徒たちが遊んでいる。ほっとして廊下に目を戻すと、いつの間にかそこにはたくさんの人たちの姿がある。
 ほんの一瞬前に見た、誰もいない背景がまるで嘘のように、そこにはいつもの日常が動いている。そんな経験はありませんか?」
 坂上がそう話していると、荒井が聞いてきた。
「本当にそんなこと気にかけて日常を生活しているんですか?」
  • はい、そうです
  • 始めは違いました
 「始めは僕もそんなこと気にしていなかったかもしれません。でも、あの出来事を切っ掛けに僕は誰もいない空間がとても恐ろしくなってしまったんです」


 1年ほど前の雨の日に放課後。
 靴箱で、朝方傘立てに突っ込んでおいた、坂上の傘がなくなっていた。
 仕方ないので教室においてあった、予備の置き傘を取りに戻った。
 3階にある自分の教室を目指して、2階から3階への階段を上がろうとしたとき、坂上は異様な違和感を覚えた。
 坂上の耳に自然と流れ込んでいた生活音がピタリと止まった。
 辺りを見るとさっきまでいたはずの人がどこにもいない。
 なのに、坂上は突然怖くなったので、慌てて人を探した。
 すると、2階から3階へと上がる階段の踊り場に、学生服を着た男子生徒が一人立っているのを見つけた。
 彼は奇妙なことに壁を向いて立っていた。しかも、踊り場の四つ角の隅にぴったりと体を寄せるようにして立っていた。
 階段の踊り場の角にぴったりとへばりつくように人が立っているという光景は、非日常的な違和感として坂上の目に飛び込んできた。
 次の瞬間、日常の雑踏音が聞こえ、3階から数名の女子生徒が小走りで降りてきた。
 改めて辺りを見回すと、そこにはいつもの学校で見かける当たり前の光景が広がっていたので、坂上は平常心に戻った。
 もう一度見直すと、彼は確かにそこに存在していた。
 坂上は、踊り場に佇む後ろ姿の彼は見ないように努め、そのまま3階まで駆け上がった。
 坂上は教室に置いてあった置き傘を手にしたあと、彼とは会いたくなかったので、別の階段から帰ることにした。


 それから1カ月ほどたった、ある日また坂上は同じような経験をした。
 坂上が母親とデパートへ行ったとき、母親は洋服を買いに特売場に向かい、坂上はほしいCDがあったので別の階に向かった。
 特売場のある階から階段を下りているとき、坂上は周りに誰もいないことと、踊り場の隅に一人の男性が立っていることに気づいた。
 Tシャツとジーパン姿の彼は、学校で出会った彼とはもちろん別人だと思うが、彼も同じようにぴったりと隅に体を押し込むように密着させ、立っていた。
 恐怖に襲われた坂上だったが、階段の下から一組の親子連れが上がって来たので、自分を取り戻し、CD売り場に行くことを諦め、特売場の母親を探しに行った。


 坂上が彼らのことをはっきりと意識するようになったのはあれからで、それからというもの、階段を見ると、必ず踊り場の隅を見るようになっていた。
 今までの2回の例に考えると、彼らは階段の踊り場に現れる、そしてその時坂上以外は誰もいないということだ。
 なので、坂上は周りに誰かいないかを常に気を配るようになった。人がいないということは、彼らが現れる危険信号のように思えたから。
 やがて、坂上は彼らの存在というよりも、彼らの行為自体に興味を持った。彼らは、あんなところに立って、いったい何をしているのだろう。
 ある日、家に誰もいないとき、坂上はこっそりと階段の踊り場の片隅に立ってみた。彼らが立っていたのと同じように、ぴったりと壁に体を押し付けるようにして、立ってみた。
 でも、何も起きなかった。
 当たり前だが、坂上は、自分のしていることがおかしくなり、一人でクスクスと笑ってしまった。
 それがきっかけて、坂上の気持ちは少し楽になり、階段を見ても普通に歩けるようになった。


 そんなある日、学校で彼と初めて会った階段の踊り場の隅に「あそこに僕の求めているものがある」と坂上は感で感じ、無意識のうちにふらふらと彼が立っていたあの隅に誘導されていった。
 坂上は誘われるまま、ゆっくりとその隅に立った。
 「このまま、ここに居続けていたい。許されるならば、僕はもうこの壁に寄り添って生きていきたい。このまま壁になってしまってもいい」と坂上は本気で願った。
 坂上はふっと現実に引き戻された。背後にとても危険な存在を感じた。
 その存在は、震える唇を坂上の右耳に近づけてつぶやいた。
 「そこは僕の居場所だから」
 坂上は、それが学生服の彼だと理解した。ここは、彼の場所なのだ。
 とっさに坂上がその場を退くと、学生服の彼はその隙間に滑り込んできた。
 その時の坂上の気持ちは、やっと自分が手に入れたものが、本当は他人のものだったという焦燥感だった。


 坂上はそのあとすぐに母親と一緒に行ったデパートに向かった。
 もしかしたら、あそこは彼のものじゃないかもしれないと思いながら。
 あの踊り場でも、学校で感じたものと同じものが待っていた。
 そして、周りに誰もいないことに気づいた。
 「もしかしたらこの場所は僕が立っても許されるんじゃないか」
 坂上が隅に立とうとしたら、背後に恐ろしいほどの殺気を感じたためすごすごと引き下がった。
 そして、それが当然だとでも言っているかのように、一人の男が隅に陣取った。やはりあの時の男だ。


 それからというもの、坂上は自分の場所を探すようになり、いくつもの場所を探し当てることに成功した。
 そして、いくつかのことがわかった。
 まず、人通りの多い場所であること。必ず、階段の踊り場だということ。そして、周りに誰もいないということ。
 しかし、残念なことに必ず、それらの場所には先客がいて、誰かが立っているか、坂上が立とうとすると背後に現れるのだ。
 もしかしたら、彼らは誰かを殺めることで自分の場所を手に入れたかもしれない。事実、そう思わせるような事件が起きた。


 去年の大晦日、図書館が火事になるという事件が起きた。
 誰もいないはずの休館日に火事があったのに、二つの死体が見つかり、真冬の怪談をして騒がれた。
 その図書館は、例の踊り場があった。
 結局、身元不明のまま無理心中という線でうやむやになってしまったが、例の場所のある建物が次々と火事になったりしたらどうなるのだろう。どの建物からも二つの死体が発見されたら・・・


 坂上はやっと幸いにも誰もいない自分の場所を見つけた。
 それは、この学校の旧校舎にあった。


 「僕は思い違いをしていたんです。人通りの多い場所にあるのではなく、あるいは死体が埋まっている場所とか。
 僕は自分のいるべき場所を見つけたのですから、この学校にとても満足していますよ。
 僕の話が本当かどうか、よければここにいる皆さんにそれを確認してもうらいたいんですよ。
 だって、旧校舎はこの夏休みに取り壊されるんですよね?
 僕は、その時生き残っている自信がないんですよ。きっと僕は旧校舎がなくなるとき、一緒にいなくなってしまうと思います。
 やっと見つけた僕の居場所。それがなくなるなんて、気が狂いそうなんです。僕の居場所で最期を迎えた方が幸せですよね。だから、皆さんにこの話をしたんです。
 もし旧校舎が取り壊されたとき、僕が死んだらきっとテレビのニュースでやるはずです。
 だから、確かめてください。僕が本当に死んだか。そして、死体はいくつ見つかったのか」


 エンディング№428:うしろの正面
 エンディング数 36/657 達成度5%
 キャラクター図鑑 38/122 達成度31%
 イラストギャラリー 27/283 達成度9%


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 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75を見る
 5人目は細田のシナリオ:トイレの恋→エンディング№270~272見る
 6人目は新堂のシナリオ:高木ババア→エンディング№001・002・004・005を見る(エンディング№03は7話目のエンディングの影響するので、あとでプレイします)


 語り部6人に話が終わったのに、7人目はまだ姿を見せない。
 新堂に「どうするんだ?」と促された坂上。
  • もうしばらく待ちましょう
  • 新堂さんの意見を聞きたい
  • 帰りましょう
 
 シナリオ:うしろの正面


 「なあ、坂上。7人目は結局まだ来ねえけど、どうするんだよ」
 皆、待たされた不満が噴出したのか、好き勝手に文句を言い出した。
 岩下が席を立ち、つかつかとドアに向かって歩き始めたので、他の皆もそれに続いて席を立った。
 「待ってください」と坂上は皆を呼び止めた。
 「僕が話をします。七不思議は七話揃わないと、終わりませんから。皆さんに気に入ってもらえるような怖い話ができるように頑張りますので、どうか席に戻ってもらえないでしょうか」
 坂上の言葉に一同は顔を見合わせると、ぞろぞろと席に戻った。
 「皆さん、ありがとうございます。それで、最近僕が体験した話と、昔起きたとある話とどちらをご希望でしょうか」
 「へえ、お前は怖い話が苦手だったんじゃねえのか。それなのに、俺たちに選択させてくれるっていうのか?」
 「せっかくですので、よければ新堂さんが選んでいただけますか?」
 「よし、俺が聞きたいのは・・・」
  • 最近あった話
  • 昔に起きた話
 「わかりました。皆さん、僕の話を聞いていただけますようでありがとうございます。改めまして、僕は1年E組の坂上修一と言います。どうぞ、最後までお付き合いしていただけると嬉しいです」


 昔、この付近に大きな団地があったが、老朽化が進んだため、10年くらい前に取り壊されてしまった。
 その団地にある男の子が住んでいた。
 彼はまだ、その団地に引っ越してきたばかりだったので、周りに友人と呼べる人間がおらず、いつも団地の隅にある古びたブランコで遊んでいた。
 そんなある日、誰かが彼に声を掛けてきた。
 「お前、一人で何してんだよ」
 彼に声を掛けてきたのは、男の子と近い歳の活発そうな少年だった。
 「俺たちと一緒に遊ばねえか?仲間にも紹介してやるよ」
 そう言って、彼は少年の手を引っ張って公園の茂みの中に連れて行った。
 彼に連れていかれた場所には、少年と近い年頃の子供たちが数人おり、思い思いに遊んでいた。  
 「こいつも今日から仲間だ」と紹介されると、他の子どもたちは素直に受け入れてくれた。
 「皆この団地に住んでいる奴らなんだぜ。お前も今日から俺たちに仲間だ。これからは一緒に遊ぼうぜ」
 「うん、よろしく」
  こうして一人ぼっちだった少年に友達ができ、その日から7人は何をするのも一緒に行動した。


 ある夏の暑い日のこと。
 リーダー格の少年が、みんなにある提案をした。
 「学校に行ってみたくねえか?」
 少年は、学校についてよく知らなかった。
 他の子どもたちは小学校はいつも行っているところとのことで、夏休みで誰もいない近くにある高校へ探検に行く、とのことだった。
 子供たちは興味津々で探検に出かけた。


 子供たちがやってきたのは、鳴神学園だった。
 リーダー格の少年の案内で、破れたフェンスを潜り抜けて校内に侵入した子供たちは、木造の旧校舎にやってきた。
 この頃、旧校舎はすでに立ち入り禁止だったが、入り口に立ち入り禁止のテープが貼られているだけで、子供たちが侵入するには簡単だった。
 リーダー格の少年は、「探検するにはぴったりの場所だろ?今から探検しよーぜ」と言った。
 嫌がる子供もいれば、乗り気の子供もおり、結局、子供たちは旧校舎に入ることにした。


 旧校舎の中は、昼間でも薄暗く、木の匂いに満ちていた。
 そして、子供たちが歩く度、床はぎいぎいと音を立てた。
 最初は、その音に怖がっていた子供たちだったが、だんだんと恐怖が薄れていき、好き勝手に遊び回り始めた。
 「これから、みんなで何かして遊ぼうぜ」とリーダー格の少年が言った。
 彼はどんな遊びをしたと思いますか?
  • かくれんぼ
  • 宝探し
 「宝探ししようぜ。誰かの持ち物を、持ち主に隠してもらって俺らがどこに隠したか探すんだ」とリーダー格の少年が言うと、子供たちは宝探しをすることに賛成した。
 よーし、じゃあ決まりだな。それど宝物だけど、お前らなにか持ってるか?」
 リーダー格の少年に促され、皆は自分のポケットを探ってみた。
 「あの、これはどうかな」
 そう言って、少年が持ち出したのは一つのオルゴールだった。
 そのオルゴールは、少年の父親の出張先のおみやげで、彼はそれをとても大切にしており、いつも肌身離さずポケットの中に忍ばせて、暇なときにはオルゴールの音色を聞いたりして、楽しんでいた。
 少年はせっかくなので、みんなにオルゴールの音色を聞かせてあげた。
 「いいんじゃないか。じゃあお前、これをどっかに隠して来いよ」
 リーダー格の少年に言われ、少年は自分の宝物を隠すために、旧校舎を歩き回った。
 少年は2階にある教室の窓際の机の中にオルゴールを隠すことにした。
 少年はオルゴールを隠し終わると、皆の元に戻った。
 「じゃあ、宝探し始めようぜ」


 皆は、少年が隠したオルゴールを探すため、それぞれが思い思いの場所を探し始めましたが、どこを探しても見つけることができませんでした。
 「俺たちの負けだよ。一体どこに隠したんだよ」
 少年はオルゴールが見つからなかった皆を得意そうに見ていた。
 「案内するね」
 少年は皆を引き連れて、自分がオルゴールを隠した場所へ案内した。


 「あれ、ない・・・」
 少年が2階の教室の窓際の机の中に手を入れてみたところ、どういうわけか隠したオルゴールがない。
 「本当にここに入れたのかよ。違うところに隠したのを間違えたんじゃねえのか」
 「どこ行っちゃったんだろ?」
 「ねえ、他の場所も探してみよう」
 子供たちは旧校舎を探し回ったが、オルゴールは見つからなかった。
 「そうだ、この中の誰かが盗ったんだろ!僕のオルゴールを!」
 「そんなことするわけねえだろ」
 「何でオルゴールが無いんだよ!返せ!僕のオルゴールを返せ!」
 少年はそう言うとリーダー格の少年に掴みかかった。
 「何するんだよ、離せ!」 
 リーダー格の少年は掴みかかった少年を突き飛ばした。
 「付き合ってらんねーぜ。可哀そうだからと思って、せっかく仲間に入れてやったのに、もうお前とは二度と遊んでやらなからな。皆、行こうぜ」
 「ボクを泥棒呼ばわりするなんて、とんでもないね」
 「皆で探して無かったんだからしょうがないじゃん」
 「そんなに大事なものなら、宝探しなんかに使わなければいいでしょ」
 子供たちは、自分たちを泥棒呼ばわりする少年を置いて、出て行ってしまった。
 一人残された少年は、一人でオルゴールを探し続けた。
 彼にとって、オルゴールはとても大事なものだった。今はもう死んでしまった父親からの最後の贈り物だったから・・・


 坂上「そして少年は、今でもオルゴールを探し続けているんです・・・」
 福沢「坂上君・・・そんな・・・」
 風間「君は、修一なのかい?」
 荒井「でも。彼はあの日以来、行方不明のはずでは・・・」
 坂上「僕は長い間探し続け、そして確信した。やっぱり、皆の中の誰かが嘘を吐いていたんだって。だから僕は待っていた。みんながここへ帰って来るのを。ほら、聞こえる・・・あのオルゴールの音色が・・・持ってるんじゃないか。ひどいなあ。僕は、ずっとそのオルゴールを探してたんだよ。ずっと。ずーーーーっと」
 皆はこわばった表情で坂上を見ていた。
 (そんな表情をするのは、後ろめたい気持ちがあるからだ。全部吐き出させて徹底的に探さないと)
 坂上は、皆を部室の壁まで追い詰めた。
 その時、細田が一気に駆けだした。
 「逃げるな!」
 坂上の言葉に、細田は体をビクっとこわばらせて、床に倒れ込んだ。
 坂上は、倒れてピクピクと震えている細田に馬乗りになると、彼の身体を仰向けにして、その腹の中に手を突っ込んだ。
 「あぎゃああああ!」
 豚が泣くような悲鳴をあげながら、細田がジタバタを暴れた。
 他の皆は、そんな細田を見つめながら、ただ呆然と立ち尽くしていた。
 肉を、骨を、臓物を、全てひっくり返して見たが、オルゴールは見つからなかった。
 空っぽになった細田を置いて、坂上は残りの皆に向き合った。
 福沢「本当に、持ってないのよ」
 坂上「ダメだよ、君たちの言葉はもう信じられない。僕がきちんと、全員を隅々まで調べさせてもらうよ」
 新堂「落ち着け、坂上。俺たちは偶然同じ学校に入ったのか?どうしてここにお前がいるんだよ。なんで日野は俺たちを集めたんだよ。お前ら、グルなのか?」
 坂上「新堂、お前はまだ気が付いていないのか?
 新堂「何に?」
 坂上「ここが地獄だってことさ。思い出せよ。みんなが帰ったあの後のことを」


 「もうお前と遊ばないって言っただろ!」
 「返せ!あれは僕の宝物なんだ!」
 「てめぇ、本当にぶっ殺すぞ!」
 車の音。


 「そうだ、俺たちは全員即死だった」
 「僕の宝物を盗んだお前らが天国に行けるわけはない。この無間地獄で、永遠に同じ地獄を繰り返す」
 「そうだ、思い出した。俺たちをひき殺した、あの運転手・・・」
 「まだ免許を取り立ての若い男だったよ。事故後、間もなく首吊り自殺をした。当然、地獄行きさ。あの日野貞夫という運転手はね。わかっただろう?お前たちが正直に告白するまで何度だって殺すよ。次でもう2801回目だ。全員殺したら、また僕たちはあの団地で出会ったところから始まる。そして何度も何度も繰り返される。終わらないから安心して死んでくれ」
 「正直に言うよ。あの日お前が、あまりにもオルゴールを大事にしていたから、つい面白くなって皆で示し合わせてあのオルゴールを隠したんだ。悪気はなかった。それにお前が泣くのが面白くて、つい本当のことを言いそびれてしまったんだ。すまなかった。本当のことを言ったんだから、もう許してくれよ」
 「じゃあ、僕のオルゴールはどこにあるの?」
 「それは、細田が隠したんだ。だからあいつが・・・」
 バラバラの肉塊となった細田の残骸を見て、新堂は泣きじゃくった。
 「お前が悪いんだぞ。お前が細田を殺すから・・・」
 「残念、また最初からだね、新堂」
 「やめて・・・」


 エンディング№427:ようこそ、無間地獄へ
 エンディング数 35/657 達成度5%
 キャラクター図鑑 38/122 達成度31%
 イラストギャラリー 26/283 達成度9%


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 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75を見る
 5人目は細田のシナリオ:トイレの恋→エンディング№270~272見る


 6人目は新堂誠を選択。
 シナリオ:高木ババア開始!


 新堂誠は3年D組の生徒。
「お前がどうして新聞部に入ったか教えてくれないか?」
  • なんとなく入りました
  • 前から憧れていました
  • ゲーム実況者になりたかったので
「ずいぶんと変わった部に憧れていたんたな、お前。何に興味を持つかは人それぞれだからな。
 それより俺みたいな奴が、こんな女子供が喜びそうな集会にいるのは場違いだって感じてんじゃねえか?」
 「言ってくれるじゃねえか、坂上。
 何せ、俺が自らそう言ったんだもんな。俺が何に興味を持つかなんて俺の勝手だ。
 それじゃあ、さっそく話を始めるとするか。ところで、この部屋、なんか怪しくねえか?
 霊ってのはよ、人間の気を敏感に察知するっていうからな。それでな、霊は恐怖心を持った奴の周りに集まるっていうじゃねえか。
 怖い話をしているとき、突然背筋にゾクって寒気が走る。あれはま、そいつの背中を霊が撫でてるんだぜ。
 坂上、お前、まさか怖がったりしてねえよな」
 「怖がっているのがお前じゃないとしたら、他の誰かが怖がっているのか?それを察知して霊が集まってきたのか?
 それとも、この霊たちは、誰も怖がっていないのに集まって来たのか?
 この霊たちは。これから起きる何かを予測して集まってきたことになる。わかるか?この集会で何かが起こるってことさ。
 それじゃあ、話を始めてやろう。噂話って知ってるか?口裂け女とか、人面犬、トイレの花子さんや、メリーさん。そういう噂、お前は馬鹿にしているか?」
 「信じるのは馬鹿らしい。かといって、心のどこかでは信じている自分がいる。そんなあやじやな感じってところか。
 でもよ、もし少しでも信じているなら、その心に従ったほうが身のためだぜ。」


 新堂のクラスメートに吉田達夫という男がいた。
 現実主義というか、アンチ・ロマンチストというのか、どにかく嫌な男だ。
 勉強はできたけど、それだけの男で、いつも気取っていて、殴ってやりたいタイプだった。
 吉田は、どんなに殴られようが絶対に抵抗しないが、きちんとそれを先生に報告していたので、いじめようとしてもいじめられない男だった。
 先生の間では、成績抜群で品行方正、先生には従順でなんでも従い、問題があるとすぐに報告するため、評判が良かった。
 吉田はそんな男だから、誰にも相手にされず、無視されていた。
 ところが吉田は、それを喜んでいるようだった。自分が選ばれた人間にでもなったつもりで、周りを見下しているのは見え見えだった。


 「お前はそんな奴には何かガツンと一発かましてやりたいと思うだろ?」
 「腹が立つ奴がいても、だんまりなのか?
 だとしたら、よほどの優等生か、逆に冷たい人間なんだな」


 そんな時、新堂はちょっとおもしろい話を聞いた。高木っていう名前のババアの話だった。
 そのババは、ませたガキが好きそうなフリルのついた真っ赤なロングスカートをはいている。
 足が隠れて地面を引きずるほどのロングスカートのため、高木ババアのスカートの裾はボロボロだった。
 そのババアは腰まである伸ばし放題の髪の毛をいつも垂らしていて、顔を隠している。
 その顔を見た人の話では、すげえ厚化粧をしており、あの顔を見たら、二度と忘れらないとのこと。
 そして、上は白のブラウスを着ているのだが、お姫様が着てるようなヒラヒラのついたかわいらしいブラウスなのだが、ずっと着続けているせいか、元の色がわからないぐらい薄茶色に変色していた。
 ところどころ穴もあいているし、ツギハギだらで、すんげえ臭い。
 そして、ものすごいスピードでピョンピョン飛びながら歩いていた。


「時速100キロで、ピョコピョコ飛び跳ねながら走る厚化粧をした薄汚ねえババア。そんな奴に追いかけられたら、お前どうする?
 お前、笑ったか?今、笑ったんじゃねえのか?」
「一瞬、お前が笑ったように見えたんだけどな。引き攣った笑い、って奴だったのか?」


 高木ババアが何でピョコピョコ飛び跳ねるのかは、片足がないからだ。
 なんでも、交通事故でトラックのタイヤに足を巻き込まれたらしいんだけど、そのとき家族も一緒にいて、息子夫婦に3人の孫、全員、即死だった。
 死体は原形をとどめておらず、ミンチみたいにグチャグチャになったらしい。
 トラックの運転手は酔っぱらっていたらしく、事故に気づかず、子供をタイヤに挟んだまま、10キロ以上走ったそうだ。
 それで高木ババアは発狂してしまい、その後、家族みんな死んだショックから立ち直れず、自宅の布団で、誰にも看取られずに死んだらしい。
 死後1カ月以上経って発見されたそうで、今現れる高木ババアは幽霊だ。
 幽霊だからこそ、時速100キロで走ることができるのだ。
 高木ババアが臭いのは死後1カ月以上経っているからで、あの服装は事故にあったときの服装とのこと。
 そして、高木ババアは、ある目的があって狙った奴の前に現れ、高木ババアに狙われると絶対に逃げられないため最後らしい。
 高木ババアは、最初は何気なく声をかけてくる。
 「身寄りのない年寄りの思い出話を聞いてくだされ」
 ついうっかり情けをかけて相手をしたら、もう最後だ。いきなり、あの時の事故の話を始めるのだ。
 「私には、人様のうらやむのうな家族がいましての。よくできた息子に、よくできた嫁。目に入れても痛くないほどのかわいい孫が3人。
 そりゃあもう、とても幸せな家族でした。仏様には毎日お礼を言いました。
 でも、ひどいもんです。仏様なんて、いやぁしません。私の家族はみんな死んでしまいました。
 交通事故でした。私を残して家族全員、トラックに轢かれちまったんでごぜえます」
 そんなこと言われたら、聞いているほうは、慰めないわけにはいかない。
 「その分、おばあさんが頑張って生きなきゃ」
 「ありがとうごぜえます。こんなババアに気を遣ってくださって。
 あんた様は、死んでいった家族たちのことがかわいそうだと思いますかのう?」
 「ええ」
 誰だって、反射的にそう答えるだろう。
 すると、高木ババアは、薄汚れたスカートをめくって、こう言う。
 「私しゃあ、そん時の事故で片足をなくしちまいました。私のなくなった片足、不憫だとは思いませんかのう?」
 (さあ、どうだ。お前の心は恐怖心でいっぱいだろう。さあ、おとなしく私に食われてしまうがいいよ)
 まるでそんなことを言っているように、醜く化粧されたシワだらけの顔をこっちに向けてニタニタと笑う。
 もう、走り出すしかない。
 走って走って、心臓が口からこぼれるほど走りまくって逃げる。
 そして、もうだめだ、走れない、と思って、ふらふらの足を休め、全身で息をして、ふっと顔を上げると、高木ババアがニタニタ笑いながら、目の前に立っている。
 「よくできた息子は、腹の上を裂かれて真っ二つ。内臓が飛び出て、どこにいったかわからなくなりましてのう。かわいそうだと思うなら、あんたの内臓をくださいな」
 また逃げる。逃げて、逃げて、逃げまくる。
 足が痙攣して転ぶ。
 後ろからゆっくりと足音が聞こえてきて、真後ろで止まる。
 「よくできた嫁は、両腕を轢き潰されてしにました。かわいそうだと思うなら、あんたの両腕くださいな。
 目に入れても痛くないほどかわいい3人の孫。
 一人は両足を潰されました。
 一人は首を潰されてしにました。
 そして、最後の一人は、タイヤに巻き込まれて体中の皮膚をひっぺがされて真っ赤になって死にました。
 家族はみんな、挽き肉みたいにグジャグジャになって、死んだんでごぜえます。
 かわいそうだと思うでしょう?
 だったら、あんたの体をくださいな」
 そして、首を絞め上げられ、ジ・エンド。
 死んだあと、死体は見つからない。全身は死んでいった家族に分け与えられるから。


 「この話を聞いた奴はよ、1週間以内に必ず高木ババアに会うっていうぜ。
 俺は、お前に話したんだからな。ここに集まっている残りの5人は関係ねえぜ。
 お前、笑っているのか?それとも、震えているのかよ。
 そう心配すんなよ。実は助かる方法もあるんだぜ」


 「助かる方法を知りたいか?」
 「高木ババアに会わないですむ方法、それはな・・・
 1週間以内に誰でもいいから10人以上に高木ババアの話をするんだ。
 それも高木ババアの話を知らない奴にだぞ。知っている奴に話しても、だめだからな。
 それを守れなかったら、お前は死ぬぜ。
 それでな、吉田にもこの話をしてやったんだよ」


 「なあ、吉田、ちょっとおもしろい話があるんだけど、聞いてくれねえか?」
 吉田は気のない素振りで聞いていたが、話が進むにつれ、新堂の話に耳を方群れるのがわかった。
 新堂が話し終えると、吉田は馬鹿にしたようにせせら笑った。
 「君って子供。もし信じてたら、かわいそうだなあ」
 「お前が信じるも信じないのも勝手だけでよお。高木ババアを見たからって、俺のせいにするんじゃねえぞ」
 吉田は吹き出した。
 「ぷぷっ!もし本当に会えたら、すぐに君に知らせてあげるからさ。
 じゃあね、僕、君と違って塾があるから」
 そういって吉田は荷物を片付けると帰ってしまった。


 「悪いが俺はよ、こういう噂は信じてるもんでな。
 俺が高木ババアに話を聞いたときは、急いで10人に話だぜ。
 それで、吉田はどうなったと思う?俺の話を信じて、ちゃんと10人に話したと思うか?」
 「お前の感が当たってるかどうかは、まあ続きを聞いてくれよ」


 次の日、吉田は別に何気なくふるまっており、別に誰かに話をする風もなかった。
 日曜日には新堂は、吉田があせっていると思って電話した。
 「君、馬鹿じゃないの?悪いけど、僕は高木なんてババアの話は忘れてたよ。君、頭が変なんじゃないの?一度、病院行ったら?
 あのさ、君が何を思おうが僕には関係ないけどね、大切な僕の休養日に邪魔だけはしないでくれる?」
 言うだけ言って、吉田は一方的に電話を切った。
 新堂は、吉田の慌てるところを見てみたかったが、吉田が死ぬかどうか見極めることにした。


 そして、いよいよ明日で約束の1週間が終わるという日になった。
 いつも他人を見下した態度をとっている吉田が、その日に限って妙にしおらしい。
 愛想笑いなんか浮かべて、すれ違う奴らにペコペコあいさつしている。
 今までが今までだから、誰も吉田なんか相手にしない。
 吉田は、何か話したそうにしているが、誰も聞かない。
 吉田が、高木ババアの話を気にしており、誰かに話したくて仕方ないのに、誰も聞いてくれないのが、新堂にとっておかしくてしかたがなかった。
 吉田は頭を下げながら何人かに話し始めるが、すぐに逃げられてしまう。
 新堂のクラスメートは、もうみんな高木バアアの話を知っているのだ。
 新堂がニヤニヤしながら吉田を見ていると、それに気づいた吉田が、今にも泣きそうな顔で新堂の側に駆け寄ってきた。
 「なあ、新堂君」
 吉田は、泣き出しそうな声を出し、新堂の手を握り締めてきた。
 「あの話は冗談だよね?」
 「何の話だよ、お前、俺と口聞きたくなかったんじゃなかったっけ?俺、お前の大事な時間を邪魔しちゃ悪いからよぉ」
 突然、吉田は土下座して新堂に謝った。
 「ごめんよ。僕が悪かったよ。だから許しておくれよ。
 僕のこと助けて!!」
 新堂は、これ以上しらばっくれるのもかわいそうになり、土下座する吉田を助け起こした。
 「そんな高木ババアが怖いんだったら、話せばいいじゃねえか」
 それを聞いた吉田は大声で泣き始めた。
 「うわあああん!!みんな知ってるんだもの。みんな高木ババアの話を知ってるんだよ!
 まだ3人しか話せてないんだよ。お願いだよ!死ぬのはいやだよ!」
 「3人って誰に話したんだよ?」
 「お父さんとお母さん、それから親戚のおばさん。
 学校のみんなも、塾のみんなも、誰も聞いてくれないんだ。聞いてくれそうになった連中も、みんな知ってるんだよ。高木ババアの話をさ」
 「先公は?お前、ずいぶんと気に入られてたじゃねえか」
 「馬鹿にして、僕の話をまじめに聞いてくれない。
 それでも無理に話そうとすると、怒鳴るんだよ。お前はいつから、そんな馬鹿な事を言う生徒になったんだって、まじめに心配そうな顔をするのさ。
 もう、だめだ。もう、僕は死んでしまう。お願いだ。助けてくれよ」
 「あんなの冗談さ。高木ババアなんているわけねえだろう」
 新堂は、吉田がかわいそうに見えたので、心にもないことを言ってしまった。
 「本当に、あれは嘘だったんだね!」
 「ああ、冗談だよ、気にすんな」
 「ありがとう!その一言で僕は救われるよ。本当にありがとう」
 吉田は、落ち着いて帰っていった。
 しかし、新堂は、吉田が早めに10人に話しておけばこんなことにならなかったんだ、と思っていた。


 そして約束の1週間目がやってきたが、吉田は学校に来なかった。
 恐ろしくなった新堂は、話をした責任を感じ始めた。
 そして、放課後、新堂は吉田の家に電話したら、吉田は家にいた。
 「なんだ君か。どうしたの?」
 「お前、今日学校休んだじゃねえか。何かあったのかと思ってよ」
 「あっははは、何言ってんの、君?あれは冗談だんだろう?いやあ、僕としたことがちょっと取り乱しちゃったよ。君みたいな下等な人間に騙されるところだった。
 今日は、ちょっと疲れたから休んだだけさ。別に君に心配してもらう必要はない。
 あ、そうそう、前にもう僕の家に電話しないでくれって言ったよね?もう電話、しないでくれる?
 それから、君がした高木ババアに話、明日になったら先生に報告しておくつもりだから、覚悟しておくんだね。
 君のような奴を愉快犯っていうん・・・」
 そこまで聞いた新堂は、受話器を叩きつけた。
 腹が立った新堂は、そこら辺のもののい当たり散らしたが、怒りは収まらない。
 仕方がないので、新堂は寝ることにした。


 電話のベルの音で、新堂は目覚めた。
 受話器を取ると、金切り声が聞こえてきた。
 「助けてくれよ、新堂君!!」
 電話の主は吉田だった。
 「ウソツキ、どうして嘘なんかつくんだよ。新堂君の責任だよ。僕が死んだら、新堂君の責任なんだ。どうしてくれるんだよ!
 高木ババアが出てきちゃったじゃないか!高木ババアが、あと6時間でお前を殺すっていうんだよ!殺されるよ!」
 「馬鹿言ってんじゃねえよ。俺はお前の時間を邪魔するつもりはないからよ」
 「お前の責任だ!あと6時間のうちに7人に話さないと俺は殺されるんだぞ!」
 「うるせえ!」
 そう言って新堂は、受話器を置いた。
 新堂が時計を見ると6時を回っていた。
 ちょうどその日、新堂の両親は法事で田舎に言っており、明日の朝まで家には、新堂一人きりだった。
 新堂は、念入りに戸締りをし、作り置きの夕食を食べた。
 8時を回ったころ、また吉田から電話があった。
 「見つからないよ!まだあと5人にも話なさきゃならないんだ!」
 「いい加減にしろ!」
 「いるんだよ!高木ババアが僕のことを見ているんだよ!どこに行っても追いかけてくるんだ」
 「死んじまえよ、クソ野郎!」
 新堂は、電話が壊れるかと思うほど、受話器を乱暴に叩きつけた。
 嘘をついているとは思えない雰囲気の吉田から恐怖を感じた新堂は、テレビのボリュームをいっぱいに上げた。
 何かほかのことを考えようとしても、吉田のことが浮かんで消えない新堂は、風呂に入ることにした。
 風呂に入っているときに、また電話のベルが鳴ったが、新堂は怖くて電話に出れなかった。
 ベルは20回ほどなってようやく切れたが、すぐにまたかかってきた。
 新堂は風呂を飛び出し、受話器をとってすぐに切った。
 それでも電話がかかってくるので、新堂は電話線を外した。
 そして、新堂はリビングのソファの上で足を抱えて、時計を見つめ、12時になるのをじっと待った。


 12時まであと5分ほどになったとき、「新堂」という声をともに、家のドアをぶち壊すような勢いでたたく音が聞こえた、
 吉田が、家にやって来たのだ。
 「新堂、もう時間がないんだ。俺は死ぬ!だから、お前も死ね!死んで責任をとりやがれ!」
 新堂は、急いで玄関に行き、中からドアを押さえつけた。
 「俺はなあ、道行く奴を呼び止めてまで、無理やり話を聞かせたんだよ!まるで狂人扱いさ!
 殴られもしなけどよぉ、話したよ!後ろには高木ババアがいるからよお!
 でも足りないんだよ!あと一人!もう時間がない。だから、お前を殺すんだ!」
 突然、ドアが激しく揺れて隙間に刃物の切っ先が垣間見えた。
 「新堂、お前を殺す!お前を生贄にして俺は助かるのさ!ひゃっはははは!」
 そして、吉田は諦めたのか、すぐに物音はしなくなった。
 その時、鼓膜が破れるようなものすごい音が鳴り響いた。リビンクからだった。
 新堂が目を向けると、リビングの一面を壁を覆っていた窓ガラスが粉々に砕け散っていた。
 「新堂!!」
 絨毯にまき散らされたガラスの破片の上に、土足の吉田が仁王立ちになっていた。手には包丁を持ち、体中から血を滴らせながら。
 顔は青く腫れあがって歪んでいた。無理やり見知らぬ通行人に高木ババアの話をしようとして殴られたのだろう。
 新堂は、吉田に殺される、と覚悟を決めた。
 その時、いきなり吉田が包丁を振り回しながら、見えない何かを必死に追い払うように、暴れ出した。
 吉田には高木ババアが見えているのだ。
 「やめろよ!もう少し時間をくれよ!こいつを殺してからにしてくれよ!ぎゃあ!!!」
 突然、吉田の腹が真一文字にパックリと割れた。
 吉田は苦しそうに目を細めると、ぱくぱくと口を開いた。
 「うわああ!」
 新堂は叫んで、階段を上がり、自分の部屋に逃げ込もうとした。
 「逃げるな」
 吉田は、新堂を追いかけてきた。
 足が震えてうまく階段を上がれず、つんのめった新堂の足首を、吉田の血まみれの手が掴んだ。
 新堂が慌てて振り返ると、吉田は新堂の足首を握りしめたまま、嬉しそうに包丁を振り上げていた。
 吉田の腹からは、腸がベロンとはみ出ており、ほかほかと湯気を立てていた。
 吉田は新堂めがけて包丁を振り下ろしたが、必死だった新堂は渾身の力を込めて足をけり出すと、見事吉田の腹に命中した。
 吉田はそのままもんどり打って、階段を真っ逆さまに転げ落ちて行った。
 腸が階段にぺちゃりと張り付いていたが、吉田は動いていた。
 「し・・・ん・・・どう・・・」
 ものすごい目で新堂を睨みつけるが、新堂は四つん這いになって這いずりながら階段を上がり、なんとか自分の部屋に逃げ込んだ。
 ドアの向こうから、ズルズルビチャビチャ階段を何かが這い上がってくる音が聞こえてくる。
 新堂は、鍵のないドアのノブに手をかけ、ドアが開かないように必死に体を踏ん張らせた。
 「新堂、開けろ。お前を殺してやんだからよぉ」
 そして、がりがりとドアを爪で引っかく音が聞こえる。
 「開けろ」
 突然、ドアを破って包丁を握った手を突き出てきた。
 包丁は、新堂の左腕の肉をそいだ。
 「新堂、見ぃつけた」
 その時、ドアに空いた穴から、汚れた白いブラウスを着た手が伸びてきた。
 高木ババアの手が、吉田の手を掴んだ。
 「やめてくれよ。もう少しであいつをのこと殺せるんだよ、うぎゃああ!」
 ドアの向こう側から吉田の悲鳴が聞こえてくるのと、穴に手が引きずり込まれるのはほとんど同時だった。
 そのあと一切の物音は聞こえなくなり、床には包丁だけが落ちていた。
 新堂が時計を見ると、針は12時を指していた。
 10分ほどして、新堂は慎重にゆっくりとあたりに気を配りながらドアを押し開いた。
 ドアの向こうに何もなかった。吉田の死体も、腹から引きずり出された腸も、血の跡さえも。
 痕跡といったら、ドアに空いた穴と、床に落ちた包丁だけ。
 新堂が1階に降りると、リビングの窓ガラスは割れたままで、カーテンが風にたなびいていた。
 そして、玄関に目をやると、そこにも包丁を立てた跡がくっきりと残っていた。
 確かに吉田は来たが、12時を過ぎると同時に忽然と姿を消してしまった。


 次の日、新堂はこっぴどく親に叱られた。
 本当のことを言っても信じてもらえないため、友達がきて大騒ぎしたって嘘をついて謝った。
 そして、必死に頼み込んで部屋に鍵をつけてもらった。


 学校にも吉田は来なかった。
 突然家でしてしまったそうで、行方不明になった。


 「そういえばお前、さっき吉田は期限に間に合わなかったって言ったよな。ご名答だ。なかなか鋭い勘をしてるじゃねえか。
 お前、俺の話、信じようが信じまいが勝手だけどよ。なんで、お前だけに話をしたのかわかるか?
 ここに集まった残りの連中は、もう高木ババアの話を知っているから、お前に話してんだ。
 どうして、わざわざこんな話をしたのか不思議なのか?悪く思わないでくれ、俺も必死なんだ。
 毎晩、吉田の野郎が俺の夢の中に現れんだよ。手足をちぎられ、内臓をそっくり抜かれた血まみれの吉田がよ。
 そんで、毎週10人に高木ババアの話しろって脅かすんだ。俺がその約束を守り続けなければ、俺のことを殺しにやってくるんだってよ
 俺、死ぬのは怖いからよ。たとえ誰にどう思われようと、俺はこの約束を守らなきゃなんねえ」
 「ヒヒヒ、面白い話でしたね。あの、せっかくですので少し付け加えさせてもらえますか」
 突然そう言って口をはさんだのは、さっき話をしてくれた荒井だった。
 「高木ババアの話は僕も知ってますし、1週間以内に10人以上に話しましたから、話さなかったときに何が起こるかは知りません。
 ただ僕は知っているんですよ。新堂さんが吉田さんに借金があったことを。50万円という多額の借金がね。
 ああ、借金というより恐喝って言うんでしたっけ?吉田さんは返さなければ学校や親にばらすって、ずいぶんと新堂さんに詰めよっていたそうですね。
 そんな吉田さんが、突然行方不明になって学校に来なくなった。偶然って怖いですね、ヒヒヒヒヒ」
 
 

 エンディング№005:吉田の真実
 エンディング数 34/657 達成度5%
 キャラクター図鑑 38/122 達成度31%
 イラストギャラリー 26/283 達成度9%

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 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75を見る
 5人目は細田のシナリオ:トイレの恋→エンディング№270~272見る


 6人目は新堂誠を選択。
 シナリオ:高木ババア開始!


 新堂誠は3年D組の生徒。
「お前がどうして新聞部に入ったか教えてくれないか?」
  • なんとなく入りました
  • 前から憧れていました
  • ゲーム実況者になりたかったので
「ずいぶんと変わった部に憧れていたんたな、お前。何に興味を持つかは人それぞれだからな。
 それより俺みたいな奴が、こんな女子供が喜びそうな集会にいるのは場違いだって感じてんじゃねえか?」
 「言ってくれるじゃねえか、坂上。
 何せ、俺が自らそう言ったんだもんな。俺が何に興味を持つかなんて俺の勝手だ。
 それじゃあ、さっそく話を始めるとするか。ところで、この部屋、なんか怪しくねえか?
 霊ってのはよ、人間の気を敏感に察知するっていうからな。それでな、霊は恐怖心を持った奴の周りに集まるっていうじゃねえか。
 怖い話をしているとき、突然背筋にゾクって寒気が走る。あれはま、そいつの背中を霊が撫でてるんだぜ。
 坂上、お前、まさか怖がったりしてねえよな」
 「怖がっているのがお前じゃないとしたら、他の誰かが怖がっているのか?それを察知して霊が集まってきたのか?
 それとも、この霊たちは、誰も怖がっていないのに集まって来たのか?
 この霊たちは。これから起きる何かを予測して集まってきたことになる。わかるか?この集会で何かが起こるってことさ。
 それじゃあ、話を始めてやろう。噂話って知ってるか?口裂け女とか、人面犬、トイレの花子さんや、メリーさん。そういう噂、お前は馬鹿にしているか?」
 「信じるのは馬鹿らしい。かといって、心のどこかでは信じている自分がいる。そんなあやじやな感じってところか。
 でもよ、もし少しでも信じているなら、その心に従ったほうが身のためだぜ。」


 新堂のクラスメートに吉田達夫という男がいた。
 現実主義というか、アンチ・ロマンチストというのか、どにかく嫌な男だ。
 勉強はできたけど、それだけの男で、いつも気取っていて、殴ってやりたいタイプだった。
 吉田は、どんなに殴られようが絶対に抵抗しないが、きちんとそれを先生に報告していたので、いじめようとしてもいじめられない男だった。
 先生の間では、成績抜群で品行方正、先生には従順でなんでも従い、問題があるとすぐに報告するため、評判が良かった。
 吉田はそんな男だから、誰にも相手にされず、無視されていた。
 ところが吉田は、それを喜んでいるようだった。自分が選ばれた人間にでもなったつもりで、周りを見下しているのは見え見えだった。


 「お前はそんな奴には何かガツンと一発かましてやりたいと思うだろ?」
 「腹が立つ奴がいても、だんまりなのか?
 だとしたら、よほどの優等生か、逆に冷たい人間なんだな」


 そんな時、新堂はちょっとおもしろい話を聞いた。高木っていう名前のババアの話だった。
 そのババは、ませたガキが好きそうなフリルのついた真っ赤なロングスカートをはいている。
 足が隠れて地面を引きずるほどのロングスカートのため、高木ババアのスカートの裾はボロボロだった。
 そのババアは腰まである伸ばし放題の髪の毛をいつも垂らしていて、顔を隠している。
 その顔を見た人の話では、すげえ厚化粧をしており、あの顔を見たら、二度と忘れらないとのこと。
 そして、上は白のブラウスを着ているのだが、お姫様が着てるようなヒラヒラのついたかわいらしいブラウスなのだが、ずっと着続けているせいか、元の色がわからないぐらい薄茶色に変色していた。
 ところどころ穴もあいているし、ツギハギだらで、すんげえ臭い。
 そして、ものすごいスピードでピョンピョン飛びながら歩いていた。


「時速100キロで、ピョコピョコ飛び跳ねながら走る厚化粧をした薄汚ねえババア。そんな奴に追いかけられたら、お前どうする?
 お前、笑ったか?今、笑ったんじゃねえのか?」
「一瞬、お前が笑ったように見えたんだけどな。引き攣った笑い、って奴だったのか?」


 高木ババアが何でピョコピョコ飛び跳ねるのかは、片足がないからだ。
 なんでも、交通事故でトラックのタイヤに足を巻き込まれたらしいんだけど、そのとき家族も一緒にいて、息子夫婦に3人の孫、全員、即死だった。
 死体は原形をとどめておらず、ミンチみたいにグチャグチャになったらしい。
 トラックの運転手は酔っぱらっていたらしく、事故に気づかず、子供をタイヤに挟んだまま、10キロ以上走ったそうだ。
 それで高木ババアは発狂してしまい、その後、家族みんな死んだショックから立ち直れず、自宅の布団で、誰にも看取られずに死んだらしい。
 死後1カ月以上経って発見されたそうで、今現れる高木ババアは幽霊だ。
 幽霊だからこそ、時速100キロで走ることができるのだ。
 高木ババアが臭いのは死後1カ月以上経っているからで、あの服装は事故にあったときの服装とのこと。
 そして、高木ババアは、ある目的があって狙った奴の前に現れ、高木ババアに狙われると絶対に逃げられないため最後らしい。
 高木ババアは、最初は何気なく声をかけてくる。
 「身寄りのない年寄りの思い出話を聞いてくだされ」
 ついうっかり情けをかけて相手をしたら、もう最後だ。いきなり、あの時の事故の話を始めるのだ。
 「私には、人様のうらやむのうな家族がいましての。よくできた息子に、よくできた嫁。目に入れても痛くないほどのかわいい孫が3人。
 そりゃあもう、とても幸せな家族でした。仏様には毎日お礼を言いました。
 でも、ひどいもんです。仏様なんて、いやぁしません。私の家族はみんな死んでしまいました。
 交通事故でした。私を残して家族全員、トラックに轢かれちまったんでごぜえます」
 そんなこと言われたら、聞いているほうは、慰めないわけにはいかない。
 「その分、おばあさんが頑張って生きなきゃ」
 「ありがとうごぜえます。こんなババアに気を遣ってくださって。
 あんた様は、死んでいった家族たちのことがかわいそうだと思いますかのう?」
 「ええ」
 誰だって、反射的にそう答えるだろう。
 すると、高木ババアは、薄汚れたスカートをめくって、こう言う。
 「私しゃあ、そん時の事故で片足をなくしちまいました。私のなくなった片足、不憫だとは思いませんかのう?」
 (さあ、どうだ。お前の心は恐怖心でいっぱいだろう。さあ、おとなしく私に食われてしまうがいいよ)
 まるでそんなことを言っているように、醜く化粧されたシワだらけの顔をこっちに向けてニタニタと笑う。
 もう、走り出すしかない。
 走って走って、心臓が口からこぼれるほど走りまくって逃げる。
 そして、もうだめだ、走れない、と思って、ふらふらの足を休め、全身で息をして、ふっと顔を上げると、高木ババアがニタニタ笑いながら、目の前に立っている。
 「よくできた息子は、腹の上を裂かれて真っ二つ。内臓が飛び出て、どこにいったかわからなくなりましてのう。かわいそうだと思うなら、あんたの内臓をくださいな」
 また逃げる。逃げて、逃げて、逃げまくる。
 足が痙攣して転ぶ。
 後ろからゆっくりと足音が聞こえてきて、真後ろで止まる。
 「よくできた嫁は、両腕を轢き潰されてしにました。かわいそうだと思うなら、あんたの両腕くださいな。
 目に入れても痛くないほどかわいい3人の孫。
 一人は両足を潰されました。
 一人は首を潰されてしにました。
 そして、最後の一人は、タイヤに巻き込まれて体中の皮膚をひっぺがされて真っ赤になって死にました。
 家族はみんな、挽き肉みたいにグジャグジャになって、死んだんでごぜえます。
 かわいそうだと思うでしょう?
 だったら、あんたの体をくださいな」
 そして、首を絞め上げられ、ジ・エンド。
 死んだあと、死体は見つからない。全身は死んでいった家族に分け与えられるから。


 「この話を聞いた奴はよ、1週間以内に必ず高木ババアに会うっていうぜ。
 俺は、お前に話したんだからな。ここに集まっている残りの5人は関係ねえぜ。
 お前、笑っているのか?それとも、震えているのかよ。
 そう心配すんなよ。実は助かる方法もあるんだぜ」


 「助かる方法を知りたいか?」
 「高木ババアに会わないですむ方法、それはな・・・
 1週間以内に誰でもいいから10人以上に高木ババアの話をするんだ。
 それも高木ババアの話を知らない奴にだぞ。知っている奴に話しても、だめだからな。
 それを守れなかったら、お前は死ぬぜ。
 それでな、吉田にもこの話をしてやったんだよ」


 「なあ、吉田、ちょっとおもしろい話があるんだけど、聞いてくれねえか?」
 吉田は気のない素振りで聞いていたが、話が進むにつれ、新堂の話に耳を方群れるのがわかった。
 新堂が話し終えると、吉田は馬鹿にしたようにせせら笑った。
 「君って子供。もし信じてたら、かわいそうだなあ」
 「お前が信じるも信じないのも勝手だけでよお。高木ババアを見たからって、俺のせいにするんじゃねえぞ」
 吉田は吹き出した。
 「ぷぷっ!もし本当に会えたら、すぐに君に知らせてあげるからさ。
 じゃあね、僕、君と違って塾があるから」
 そういって吉田は荷物を片付けると帰ってしまった。


 「悪いが俺はよ、こういう噂は信じてるもんでな。
 俺が高木ババアに話を聞いたときは、急いで10人に話だぜ。
 それで、吉田はどうなったと思う?俺の話を信じて、ちゃんと10人に話したと思うか?」
  • 話をした
  • 期限が間に合わなかった
  • 話さなかった
 「お前の感が当たってるかどうかは、まあ続きを聞いてくれよ」


 次の日、吉田は別に何気なくふるまっており、別に誰かに話をする風もなかった。
 日曜日には新堂は、吉田があせっていると思って電話した。
 「君、馬鹿じゃないの?悪いけど、僕は高木なんてババアの話は忘れてたよ。君、頭が変なんじゃないの?一度、病院行ったら?
 あのさ、君が何を思おうが僕には関係ないけどね、大切な僕の休養日に邪魔だけはしないでくれる?」
 言うだけ言って、吉田は一方的に電話を切った。
 新堂は、吉田の慌てるところを見てみたかったが、吉田が死ぬかどうか見極めることにした。


 そして、いよいよ明日で約束の1週間が終わるという日になった。
 いつも他人を見下した態度をとっている吉田が、その日に限って妙にしおらしい。
 愛想笑いなんか浮かべて、すれ違う奴らにペコペコあいさつしている。
 今までが今までだから、誰も吉田なんか相手にしない。
 吉田は、何か話したそうにしているが、誰も聞かない。
 吉田が、高木ババアの話を気にしており、誰かに話したくて仕方ないのに、誰も聞いてくれないのが、新堂にとっておかしくてしかたがなかった。
 吉田は頭を下げながら何人かに話し始めるが、すぐに逃げられてしまう。
 新堂のクラスメートは、もうみんな高木バアアの話を知っているのだ。
 新堂がニヤニヤしながら吉田を見ていると、それに気づいた吉田が、今にも泣きそうな顔で新堂の側に駆け寄ってきた。
 「なあ、新堂君」
 吉田は、泣き出しそうな声を出し、新堂の手を握り締めてきた。
 「あの話は冗談だよね?」
 「何の話だよ、お前、俺と口聞きたくなかったんじゃなかったっけ?俺、お前の大事な時間を邪魔しちゃ悪いからよぉ」
 突然、吉田は土下座して新堂に謝った。
 「ごめんよ。僕が悪かったよ。だから許しておくれよ。
 僕のこと助けて!!」
 新堂は、これ以上しらばっくれるのもかわいそうになり、土下座する吉田を助け起こした。
 「そんな高木ババアが怖いんだったら、話せばいいじゃねえか」
 それを聞いた吉田は大声で泣き始めた。
 「うわあああん!!みんな知ってるんだもの。みんな高木ババアの話を知ってるんだよ!
 まだ3人しか話せてないんだよ。お願いだよ!死ぬのはいやだよ!」
 「3人って誰に話したんだよ?」
 「お父さんとお母さん、それから親戚のおばさん。
 学校のみんなも、塾のみんなも、誰も聞いてくれないんだ。聞いてくれそうになった連中も、みんな知ってるんだよ。高木ババアの話をさ」
 「先公は?お前、ずいぶんと気に入られてたじゃねえか」
 「馬鹿にして、僕の話をまじめに聞いてくれない。
 それでも無理に話そうとすると、怒鳴るんだよ。お前はいつから、そんな馬鹿な事を言う生徒になったんだって、まじめに心配そうな顔をするのさ。
 もう、だめだ。もう、僕は死んでしまう。お願いだ。助けてくれよ」
 「あんなの冗談さ。高木ババアなんているわけねえだろう」
 新堂は、吉田がかわいそうに見えたので、心にもないことを言ってしまった。
 「本当に、あれは嘘だったんだね!」
 「ああ、冗談だよ、気にすんな」
 「ありがとう!その一言で僕は救われるよ。本当にありがとう」
 吉田は、落ち着いて帰っていった。
 しかし、新堂は、吉田が早めに10人に話しておけばこんなことにならなかったんだ、と思っていた。


 そして約束の1週間目がやってきたが、吉田は学校に来なかった。
 恐ろしくなった新堂は、話をした責任を感じ始めた。
 そして、放課後、新堂は吉田の家に電話したら、吉田は家にいた。
 「なんだ君か。どうしたの?」
 「お前、今日学校休んだじゃねえか。何かあったのかと思ってよ」
 「あっははは、何言ってんの、君?あれは冗談だんだろう?いやあ、僕としたことがちょっと取り乱しちゃったよ。君みたいな下等な人間に騙されるところだった。
 今日は、ちょっと疲れたから休んだだけさ。別に君に心配してもらう必要はない。
 あ、そうそう、前にもう僕の家に電話しないでくれって言ったよね?もう電話、しないでくれる?
 それから、君がした高木ババアに話、明日になったら先生に報告しておくつもりだから、覚悟しておくんだね。
 君のような奴を愉快犯っていうん・・・」
 そこまで聞いた新堂は、受話器を叩きつけた。
 腹が立った新堂は、そこら辺のもののい当たり散らしたが、怒りは収まらない。
 仕方がないので、新堂は寝ることにした。


 電話のベルの音で、新堂は目覚めた。
 受話器を取ると、金切り声が聞こえてきた。
 「助けてくれよ、新堂君!!」
 電話の主は吉田だった。
 「ウソツキ、どうして嘘なんかつくんだよ。新堂君の責任だよ。僕が死んだら、新堂君の責任なんだ。どうしてくれるんだよ!
 高木ババアが出てきちゃったじゃないか!高木ババアが、あと6時間でお前を殺すっていうんだよ!殺されるよ!」
 「馬鹿言ってんじゃねえよ。俺はお前の時間を邪魔するつもりはないからよ」
 「お前の責任だ!あと6時間のうちに7人に話さないと俺は殺されるんだぞ!」
 「うるせえ!」
 そう言って新堂は、受話器を置いた。
 新堂が時計を見ると6時を回っていた。
 ちょうどその日、新堂の両親は法事で田舎に言っており、明日の朝まで家には、新堂一人きりだった。
 新堂は、念入りに戸締りをし、作り置きの夕食を食べた。
 8時を回ったころ、また吉田から電話があった。
 「見つからないよ!まだあと5人にも話なさきゃならないんだ!」
 「いい加減にしろ!」
 「いるんだよ!高木ババアが僕のことを見ているんだよ!どこに行っても追いかけてくるんだ」
 「死んじまえよ、クソ野郎!」
 新堂は、電話が壊れるかと思うほど、受話器を乱暴に叩きつけた。
 嘘をついているとは思えない雰囲気の吉田から恐怖を感じた新堂は、テレビのボリュームをいっぱいに上げた。
 何かほかのことを考えようとしても、吉田のことが浮かんで消えない新堂は、風呂に入ることにした。
 風呂に入っているときに、また電話のベルが鳴ったが、新堂は怖くて電話に出れなかった。
 ベルは20回ほどなってようやく切れたが、すぐにまたかかってきた。
 新堂は風呂を飛び出し、受話器をとってすぐに切った。
 それでも電話がかかってくるので、新堂は電話線を外した。
 そして、新堂はリビングのソファの上で足を抱えて、時計を見つめ、12時になるのをじっと待った。


 12時まであと5分ほどになったとき、「新堂」という声をともに、家のドアをぶち壊すような勢いでたたく音が聞こえた、
 吉田が、家にやって来たのだ。
 「新堂、もう時間がないんだ。俺は死ぬ!だから、お前も死ね!死んで責任をとりやがれ!」
 新堂は、急いで玄関に行き、中からドアを押さえつけた。
 「俺はなあ、道行く奴を呼び止めてまで、無理やり話を聞かせたんだよ!まるで狂人扱いさ!
 殴られもしなけどよぉ、話したよ!後ろには高木ババアがいるからよお!
 でも足りないんだよ!あと一人!もう時間がない。だから、お前を殺すんだ!」
 突然、ドアが激しく揺れて隙間に刃物の切っ先が垣間見えた。
 「新堂、お前を殺す!お前を生贄にして俺は助かるのさ!ひゃっはははは!」
 そして、吉田は諦めたのか、すぐに物音はしなくなった。
 その時、鼓膜が破れるようなものすごい音が鳴り響いた。リビンクからだった。
 新堂が目を向けると、リビングの一面を壁を覆っていた窓ガラスが粉々に砕け散っていた。
 「新堂!!」
 絨毯にまき散らされたガラスの破片の上に、土足の吉田が仁王立ちになっていた。手には包丁を持ち、体中から血を滴らせながら。
 顔は青く腫れあがって歪んでいた。無理やり見知らぬ通行人に高木ババアの話をしようとして殴られたのだろう。
 新堂は、吉田に殺される、と覚悟を決めた。
 その時、いきなり吉田が包丁を振り回しながら、見えない何かを必死に追い払うように、暴れ出した。
 吉田には高木ババアが見えているのだ。
 「やめろよ!もう少し時間をくれよ!こいつを殺してからにしてくれよ!ぎゃあ!!!」
 突然、吉田の腹が真一文字にパックリと割れた。
 吉田は苦しそうに目を細めると、ぱくぱくと口を開いた。
 「うわああ!」
 新堂は叫んで、階段を上がり、自分の部屋に逃げ込もうとした。
 「逃げるな」
 吉田は、新堂を追いかけてきた。
 足が震えてうまく階段を上がれず、つんのめった新堂の足首を、吉田の血まみれの手が掴んだ。
 新堂が慌てて振り返ると、吉田は新堂の足首を握りしめたまま、嬉しそうに包丁を振り上げていた。
 吉田の腹からは、腸がベロンとはみ出ており、ほかほかと湯気を立てていた。
 吉田は新堂めがけて包丁を振り下ろしたが、必死だった新堂は渾身の力を込めて足をけり出すと、見事吉田の腹に命中した。
 吉田はそのままもんどり打って、階段を真っ逆さまに転げ落ちて行った。
 腸が階段にぺちゃりと張り付いていたが、吉田は動いていた。
 「し・・・ん・・・どう・・・」
 ものすごい目で新堂を睨みつけるが、新堂は四つん這いになって這いずりながら階段を上がり、なんとか自分の部屋に逃げ込んだ。
 ドアの向こうから、ズルズルビチャビチャ階段を何かが這い上がってくる音が聞こえてくる。
 新堂は、鍵のないドアのノブに手をかけ、ドアが開かないように必死に体を踏ん張らせた。
 「新堂、開けろ。お前を殺してやんだからよぉ」
 そして、がりがりとドアを爪で引っかく音が聞こえる。
 「開けろ」
 突然、ドアを破って包丁を握った手を突き出てきた。
 包丁は、新堂の左腕の肉をそいだ。
 「新堂、見ぃつけた」
 その時、ドアに空いた穴から、汚れた白いブラウスを着た手が伸びてきた。
 高木ババアの手が、吉田の手を掴んだ。
 「やめてくれよ。もう少しであいつをのこと殺せるんだよ、うぎゃああ!」
 ドアの向こう側から吉田の悲鳴が聞こえてくるのと、穴に手が引きずり込まれるのはほとんど同時だった。
 そのあと一切の物音は聞こえなくなり、床には包丁だけが落ちていた。
 新堂が時計を見ると、針は12時を指していた。
 10分ほどして、新堂は慎重にゆっくりとあたりに気を配りながらドアを押し開いた。
 ドアの向こうに何もなかった。吉田の死体も、腹から引きずり出された腸も、血の跡さえも。
 痕跡といったら、ドアに空いた穴と、床に落ちた包丁だけ。
 新堂が1階に降りると、リビングの窓ガラスは割れたままで、カーテンが風にたなびいていた。
 そして、玄関に目をやると、そこにも包丁を立てた跡がくっきりと残っていた。
 確かに吉田は来たが、12時を過ぎると同時に忽然と姿を消してしまった。


 次の日、新堂はこっぴどく親に叱られた。
 本当のことを言っても信じてもらえないため、友達がきて大騒ぎしたって嘘をついて謝った。
 そして、必死に頼み込んで部屋に鍵をつけてもらった。


 学校にも吉田は来なかった。
 突然家でしてしまったそうで、行方不明になった。


 「ここに集まった残りの連中は、もう高木ババアの話を知っているから、お前に話してんだ。
 どうして、わざわざこんな話をしたのか不思議なのか?悪く思わないでくれ、俺も必死なんだ。
 毎晩、吉田の野郎が俺の夢の中に現れんだよ。手足をちぎられ、内臓をそっくり抜かれた血まみれの吉田がよ。
 そんで、毎週10人に高木ババアの話しろって脅かすんだ。俺がその約束を守り続けなければ、俺のことを殺しにやってくるんだってよ
 俺、死にのは怖いからよ。たとえ誰にどう思われようと、俺はこの約束を守らなきゃなんねえ」」
 

 エンディング№004:高木ババア
 エンディング数 33/657 達成度5%
 キャラクター図鑑 38/122 達成度31%
 イラストギャラリー 26/283 達成度9%

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 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75を見る
 5人目は細田のシナリオ:トイレの恋→エンディング№270~272見る


 6人目は新堂誠を選択。
 シナリオ:高木ババア開始!


 新堂誠は3年D組の生徒。
「お前がどうして新聞部に入ったか教えてくれないか?」
  • なんとなく入りました
  • 前から憧れていました
  • ゲーム実況者になりたかったので
「ずいぶんと変わった部に憧れていたんたな、お前。何に興味を持つかは人それぞれだからな。
 それより俺みたいな奴が、こんな女子供が喜びそうな集会にいるのは場違いだって感じてんじゃねえか?」
 「ほう、怖いものしらずってぇか、直球じゃねえか、お前、気に入ったぜ。
 俺に面と向かってそんなこと言う奴は、久方ぶりたしなあ。
 はっきり言って俺は、こんな会に興味はなし。だが、新聞部の日野には、ちっとした借りがあってな。受けた恩を仇でかえすわけにはいかねえ。
 だから、義理を立てて奴の頼みを引き受けたんだ。
 それじゃあ、さっそく話を始めるとするか。ところで、この部屋、なんか怪しくねえか?
 霊ってのはよ、人間の気を敏感に察知するっていうからな。それでな、霊は恐怖心を持った奴の周りに集まるっていうじゃねえか。
 怖い話をしているとき、突然背筋にゾクって寒気が走る。あれはま、そいつの背中を霊が撫でてるんだぜ。
 坂上、お前、まさか怖がったりしてねえよな」
 「怖がっているのがお前じゃないとしたら、他の誰かが怖がっているのか?それを察知して霊が集まってきたのか?
 それとも、この霊たちは、誰も怖がっていないのに集まって来たのか?
 この霊たちは。これから起きる何かを予測して集まってきたことになる。わかるか?この集会で何かが起こるってことさ。
 それじゃあ、話を始めてやろう。噂話って知ってるか?口裂け女とか、人面犬、トイレの花子さんや、メリーさん。そういう噂、お前は馬鹿にしているか?」
 「そうかい。そんなの子供だましだよって鼻で笑ってんだな、お前は。だとしたら、不幸だな」


 新堂のクラスメートに吉田達夫という男がいた。
 現実主義というか、アンチ・ロマンチストというのか、どにかく嫌な男だ。
 勉強はできたけど、それだけの男で、いつも気取っていて、殴ってやりたいタイプだった。
 吉田は、どんなに殴られようが絶対に抵抗しないが、きちんとそれを先生に報告していたので、いじめようとしてもいじめられない男だった。
 先生の間では、成績抜群で品行方正、先生には従順でなんでも従い、問題があるとすぐに報告するため、評判が良かった。
 吉田はそんな男だから、誰にも相手にされず、無視されていた。
 ところが吉田は、それを喜んでいるようだった。自分が選ばれた人間にでもなったつもりで、周りを見下しているのは見え見えだった。


 「お前はそんな奴には何かガツンと一発かましてやりたいと思うだろ?」
 「腹が立つ奴がいても、だんまりなのか?
 だとしたら、よほどの優等生か、逆に冷たい人間なんだな」


 そんな時、新堂はちょっとおもしろい話を聞いた。高木っていう名前のババアの話だった。
 そのババは、ませたガキが好きそうなフリルのついた真っ赤なロングスカートをはいている。
 足が隠れて地面を引きずるほどのロングスカートのため、高木ババアのスカートの裾はボロボロだった。
 そのババアは腰まである伸ばし放題の髪の毛をいつも垂らしていて、顔を隠している。
 その顔を見た人の話では、すげえ厚化粧をしており、あの顔を見たら、二度と忘れらないとのこと。
 そして、上は白のブラウスを着ているのだが、お姫様が着てるようなヒラヒラのついたかわいらしいブラウスなのだが、ずっと着続けているせいか、元の色がわからないぐらい薄茶色に変色していた。
 ところどころ穴もあいているし、ツギハギだらで、すんげえ臭い。
 そして、ものすごいスピードでピョンピョン飛びながら歩いていた。


「時速100キロで、ピョコピョコ飛び跳ねながら走る厚化粧をした薄汚ねえババア。そんな奴に追いかけられたら、お前どうする?
 お前、笑ったか?今、笑ったんじゃねえのか?」
  • 笑った
  • 笑っていない
「どうした?声が震えているぜ?」


 高木ババアが何でピョコピョコ飛び跳ねるのかは、片足がないからだ。
 なんでも、交通事故でトラックのタイヤに足を巻き込まれたらしいんだけど、そのとき家族も一緒にいて、息子夫婦に3人の孫、全員、即死だった。
 死体は原形をとどめておらず、ミンチみたいにグチャグチャになったらしい。
 トラックの運転手は酔っぱらっていたらしく、事故に気づかず、子供をタイヤに挟んだまま、10キロ以上走ったそうだ。
 それで高木ババアは発狂してしまい、その後、家族みんな死んだショックから立ち直れず、自宅の布団で、誰にも看取られずに死んだらしい。
 死後1カ月以上経って発見されたそうで、今現れる高木ババアは幽霊だ。
 幽霊だからこそ、時速100キロで走ることができるのだ。
 高木ババアが臭いのは死後1カ月以上経っているからで、あの服装は事故にあったときの服装とのこと。
 そして、高木ババアは、ある目的があって狙った奴の前に現れ、高木ババアに狙われると絶対に逃げられないため最後らしい。
 高木ババアは、最初は何気なく声をかけてくる。
 「身寄りのない年寄りの思い出話を聞いてくだされ」
 ついうっかり情けをかけて相手をしたら、もう最後だ。いきなり、あの時の事故の話を始めるのだ。
 「私には、人様のうらやむのうな家族がいましての。よくできた息子に、よくできた嫁。目に入れても痛くないほどのかわいい孫が3人。
 そりゃあもう、とても幸せな家族でした。仏様には毎日お礼を言いました。
 でも、ひどいもんです。仏様なんて、いやぁしません。私の家族はみんな死んでしまいました。
 交通事故でした。私を残して家族全員、トラックに轢かれちまったんでごぜえます」
 そんなこと言われたら、聞いているほうは、慰めないわけにはいかない。
 「その分、おばあさんが頑張って生きなきゃ」
 「ありがとうごぜえます。こんなババアに気を遣ってくださって。
 あんた様は、死んでいった家族たちのことがかわいそうだと思いますかのう?」
 「ええ」
 誰だって、反射的にそう答えるだろう。
 すると、高木ババアは、薄汚れたスカートをめくって、こう言う。
 「私しゃあ、そん時の事故で片足をなくしちまいました。私のなくなった片足、不憫だとは思いませんかのう?」
 (さあ、どうだ。お前の心は恐怖心でいっぱいだろう。さあ、おとなしく私に食われてしまうがいいよ)
 まるでそんなことを言っているように、醜く化粧されたシワだらけの顔をこっちに向けてニタニタと笑う。
 もう、走り出すしかない。
 走って走って、心臓が口からこぼれるほど走りまくって逃げる。
 そして、もうだめだ、走れない、と思って、ふらふらの足を休め、全身で息をして、ふっと顔を上げると、高木ババアがニタニタ笑いながら、目の前に立っている。
 「よくできた息子は、腹の上を裂かれて真っ二つ。内臓が飛び出て、どこにいったかわからなくなりましてのう。かわいそうだと思うなら、あんたの内臓をくださいな」
 また逃げる。逃げて、逃げて、逃げまくる。
 足が痙攣して転ぶ。
 後ろからゆっくりと足音が聞こえてきて、真後ろで止まる。
 「よくできた嫁は、両腕を轢き潰されてしにました。かわいそうだと思うなら、あんたの両腕くださいな。
 目に入れても痛くないほどかわいい3人の孫。
 一人は両足を潰されました。
 一人は首を潰されてしにました。
 そして、最後の一人は、タイヤに巻き込まれて体中の皮膚をひっぺがされて真っ赤になって死にました。
 家族はみんな、挽き肉みたいにグジャグジャになって、死んだんでごぜえます。
 かわいそうだと思うでしょう?
 だったら、あんたの体をくださいな」
 そして、首を絞め上げられ、ジ・エンド。
 死んだあと、死体は見つからない。全身は死んでいった家族に分け与えられるから。


 「この話を聞いた奴はよ、1週間以内に必ず高木ババアに会うっていうぜ。
 俺は、お前に話したんだからな。ここに集まっている残りの5人は関係ねえぜ。
 お前、笑っているのか?それとも、震えているのかよ。
 そう心配すんなよ。実は助かる方法もあるんだぜ」


 「助かる方法を知りたいか?」
 「高木ババアに会わないですむ方法、それはな・・・
 1週間以内に誰でもいいから5人以上の右足を集めるんだ。お前が高木ババアの代わりをやればいいんだよ」
 (高木ババアは、本当にいるのか?)
  • いるわけない
  • きっといる
 (いるわけないさ。
 新堂さんは、僕を驚かそうとしてこんな作り話をしているんだ。)

 エンディング№002:高木ババアなんて怖くない
 エンディング数 32/657 達成度4%
 キャラクター図鑑 38/122 達成度31%
 イラストギャラリー 23/283 達成度8%


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 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


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 6人目は新堂誠を選択。
 シナリオ:高木ババア開始!


 新堂誠は3年D組の生徒。
「お前がどうして新聞部に入ったか教えてくれないか?」
  • なんとなく入りました
  • 前から憧れていました
  • ゲーム実況者になりたかったので
「ずいぶんと変わった部に憧れていたんたな、お前。何に興味を持つかは人それぞれだからな。
 それより俺みたいな奴が、こんな女子供が喜びそうな集会にいるのは場違いだって感じてんじゃねえか?」
  • そんなこと思っていません
  • はい、正直に言うと感じてます
  • 何に興味を持つのかは人それぞれです
 「それが本音なら、お前は肝っ玉が据わった男だな。まあ、たいていのやつら俺を怖がって、そういった上っ面の答えを返すんだ。お前の言葉が本物かどうか、これから試させてもらうぜ。
 それじゃあ、さっそく話を始めるとするか。ところで、この部屋、なんか怪しくねえか?
 霊ってのはよ、人間の気を敏感に察知するっていうからな。それでな、霊は恐怖心を持った奴の周りに集まるっていうじゃねえか。
 怖い話をしているとき、突然背筋にゾクって寒気が走る。あれはま、そいつの背中を霊が撫でてるんだぜ。
 坂上、お前、まさか怖がったりしてねえよな」
  • 怖いです
  • 別に怖くありません
 「そうか、怖いのか。正直でいいことだが、だったら、お前は霊の餌食だよ。霊に精神を食われないように、しっかりと自分を保つんだ。
 噂話って知ってるか?口裂け女とか、人面犬、トイレの花子さんや、メリーさん。そういう噂、お前は馬鹿にしているか?」
  • している
  • していない
  • 何とも言えない
 「そうか、お前は信じるのか。どうやら、お前の言葉は信じて良さそうだな」


 新堂のクラスメートに吉田達夫という男がいた。
 現実主義というか、アンチ・ロマンチストというのか、どにかく嫌な男だ。
 勉強はできたけど、それだけの男で、いつも気取っていて、殴ってやりたいタイプだった。
 吉田は、どんなに殴られようが絶対に抵抗しないが、きちんとそれを先生に報告していたので、いじめようとしてもいじめられない男だった。
 先生の間では、成績抜群で品行方正、先生には従順でなんでも従い、問題があるとすぐに報告するため、評判が良かった。
 吉田はそんな男だから、誰にも相手にされず、無視されていた。
 ところが吉田は、それを喜んでいるようだった。自分が選ばれた人間にでもなったつもりで、周りを見下しているのは見え見えだった。


 「お前はそんな奴には何かガツンと一発かましてやりたいと思うだろ?」
  • はい
  • いいえ
 「そう思うのが当然だ」


 そんな時、新堂はちょっとおもしろい話を聞いた。高木っていう名前のババアの話だった。
 そのババは、ませたガキが好きそうなフリルのついた真っ赤なロングスカートをはいている。
 足が隠れて地面を引きずるほどのロングスカートのため、高木ババアのスカートの裾はボロボロだった。
 そのババアは腰まである伸ばし放題の髪の毛をいつも垂らしていて、顔を隠している。
 その顔を見た人の話では、すげえ厚化粧をしており、あの顔を見たら、二度と忘れらないとのこと。
 そして、上は白のブラウスを着ているのだが、お姫様が着てるようなヒラヒラのついたかわいらしいブラウスなのだが、ずっと着続けているせいか、元の色がわからないぐらい薄茶色に変色していた。
 ところどころ穴もあいているし、ツギハギだらで、すんげえ臭い。
 そして、ものすごいスピードでピョンピョン飛びながら歩いていた。


「時速100キロで、ピョコピョコ飛び跳ねながら走る厚化粧をした薄汚ねえババア。そんな奴に追いかけられたら、お前どうする?
 お前、笑ったか?今、笑ったんじゃねえのか?」
  • 笑った
  • 笑っていない
「お前さっき、馬鹿げた噂話も信じているって言ったよな?あれは俺に話をさせるための演技だったのか。
 お前も吉田と同類だ。
 さっきの話、覚えているか?この部屋には、無数の霊が集まっているって話をだよ。
 吉田もいるぜ。そう、吉田はすでにこの世の人間じゃないからな。
 さあ、目を凝らしてみろよ。見えんだろ?大きく見開いた目玉をぎらつかせている、血まみれになった吉田の顔がよ。
 どうだ?見えたか?
 この集会が終わった後、吉田はお前に憑いていくみたいだぜ。
 お前が鳴神学園の七不思議に加わる日も、そう遅くなさそうだ」


 エンディング№001:吉田の執念
 エンディング数 31/657 達成度4%
 キャラクター図鑑 38/122 達成度31%
 イラストギャラリー 22/283 達成度7%


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 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75


 5人目は細田を選択!


 僕ね、今日のこの会をとっても楽しみにしてたんですよ。坂上君も楽しみにしてましたか?
  • 楽しみにしていた
  • 特に気にしていない
  • あまり乗り気ではなかった


 坂上君は立場的にみんなを盛り上げるべきだと思うけどなあ。そこまではっきり言われると、なんだかちょっと引いちゃうかも。
 それにしても、7人目はどうしちゃたんでしょうかねえ。
 迷惑するのは、坂上君なんですもんねえ。かわいそうに。
 あ、申し遅れました。僕は細田友春っていいます。2年C組です。
 あのう、坂上君って、友達とかいます?


 細田は、自分がデブだという自覚があるが、ダイエットをしてもどうしても食べたり、汗っかきですぐに喉が渇いてしまい、お茶よりもおいしいジュースを飲んでしまうため、どうしても痩せられないとのことで、小学生の頃から太っており、細田なのにデブと言われ続けていた。


 風間と岩下の話を聞いていれば、シナリオ:トイレの恋開始!


 細田が1年生の頃、友達がいなかった。
 原因は、太っていたからで、クラスの皆は、外見で人のことを判断するような人ばかりだった。
 細田が話しかけても、ニヤニヤと見下したような笑顔しか返してくれなかったで、細田はいつも一人でいた。
 そんな細田のお気に入りの場所はトイレの個室だった。
 学校はマンモス校で人が多いが、トイレだけは一人になれる場所だった。
 細田は授業中でも平気で抜け出して、トイレに入ってボーっとしていた。


 その日の放課後も、細田はトイレの中でボーっとしていた。
 突然、短い女性の悲鳴が聞こえてきて、それに続いてドンっという何か大きなものが落ちる音が聞こえた。
 声は隣の女子トイレの方から聞こえてきたようだった。


 悲鳴が聞こえたのが女子トイレだったの、細田は入って確認するのはちょっとと思い、知らんふりしようと思ったが、泣き声が聞こえてきた。
 細田は薄情な男ではなかったので、泣き声を聞き、ケガでもしているのではないかと思い、女子トイレの様子を伺ってみることにした。
 女子トイレの中に入ると、トイレの個室の開いたドアから女の子の足が見え、同時に女の子のすすり泣く声が聞こえた。
 どうやら女の子は、地べたに座り込んで泣いているようだ。
 「大丈夫?」と細田が女の子に声を掛けると、ビクっと体を震わせて、目をまん丸くさせて細田のことを見ていた。
 「あの、いきなり入ってきてごめんなさい。隣の男子トイレにいたら、悲鳴と鳴き声が聞こえてきたから心配になって」
 地べたに座り込んでいた女の子のすぐ近くには、ちぎれたロープがあり、脱ぎ捨てられた上履きの横には白い封筒が落ちていた。
 もしかしてこの子、自殺しようとしていたんじゃないか・・・
 「私、死のうと思ったの」
 突然、女の子がそんなことをしゃべった。
 「どうして自殺しようと思ったの?」
 細田の言葉を聞いた女の子は、泣くのをやめてぽつりぽつりと、その理由をしゃべり始めた。
 要約すると、彼氏に振られたからというのがおおまかな理由でした。付き合っていた彼氏に好きな人ができて、別れを切り出されてしまったそうだ。
 それで、生きることに絶望した女の子は死ぬことに決め、トイレのドア枠で首を吊ろうとしたが、ロープが切れ、結局未遂に終わってしまった。
 細田は必死に女の子を慰めた。
 「ありがとう、慰めてくれて、私は1年F組の室戸葵。あなたは?」
 「僕は1年C組の細田友春って言います」
 「そっか、結構近いクラスなんだね」
 そう言って室戸はふっと笑った。
 とりあえず、室戸は自殺を思いとどまってくれたようだ。
 「細田君は命の恩人だね」
 細田は女の子と話したことがほとんどなかったので、その時は相当ニヤケた間抜けな顔をしていただろう。
 それ以来、細田は室戸と友達になり、廊下ですれ違う時に、声をかけてもらったり、あいさつをするようになったが、周りは不思議そうに見ていた。


 室戸とあって1週間が過ぎようとした頃、放課後、いつものように一人で帰ろうとしている細田に、室戸が声を掛けた。
 「よかったら、いっしょに帰らない?」
 思いがけない室戸の提案に戸惑う細田。
 細田は女の子にそんなことを言われたことがなかったのだ。
 「細田君は、私と一緒に帰るのは嫌かな?」
 「嫌なわけあるもんですか」
 「本当?じゃあ一緒に帰りましょ」
 女の子と一緒に帰るなんて初めての細田は、緊張して何を話したか、あまり覚えていなかった。
 そして、ある角に差し掛かった時、室戸が小さく声を上げた。
 室戸が声を上げた方を見ると、鳴神学園の制服を着た一組のカップルが楽しそうに、道を歩いていた。
 室戸の顔色が一気に曇ったのがわかった。
 室戸は走り出すと、すぐ近くの路地に引っ込んでしまったので、細田は室戸を追いかけた。
 察しの悪い細田でも、もしかしたらさっきのカップルの男は、室戸の彼氏だった人じゃないかと気づいた。
 「こめんね、いきなり隠れたりして。さっき、前を歩いていた男の子、私の彼氏だったの。新しい彼女と歩いているのを見たら、何だかその場にいられなくて・・・私、このままじゃ学校にも行きたくないな」
 細田は悲痛な面持ちで訴える室戸を見て、何とかしてあげたいと思った。
 「何か自分に、協力できることはないかな?」
 「ありがとう、細田君」
 そして、室戸は細田にあることを頼んだ。


 坂上君、彼女は僕に何を頼んだと思う?


 「今日の夜、私と出会った新校舎のトイレに来てほしいの」と室戸はお願いしてきた。


 細田は家に帰っていろいろと考えた。
 彼女はなぜあんな場所に自分を呼んだのだろうか。
 しかし、答えは出なかった。
 何も考えられないまま、いつしか彼女との約束の時間が近づいてきました。


 坂上君、僕は彼女の言う通り、トイレに行ったと思う会?君なら、どうする?

 細田は行こうと思ってはいたが、もんもんと考えているうちに、いつの間にか居眠りをしてしまっていたらしく、気づいたら朝になっていた。
 細田は学校へ行き、朝一番に室戸に謝ろうと思い、彼女のクラスに寄った。
 「あのう、室戸さんはもう来てますか?」
 すると近くにいた室戸のクラスメイトが対応してくれた。
 「いいえ」
 「そうですか。もし来たら伝言をお願いできますか。細田友晴が謝罪していた、と」
 「それは、難しいかと思います」
 「え、伝言は嫌ですか?」
 「いえ、そういう意味じゃなくて。室戸さんは、1週間前に亡くなりましたから」
 「え?」
 「はい、だから伝言はできないんです」
 室戸は、細田と約束したあのトイレで1週間前に首を吊って死んでいた。
 遺書らしきものは見つからなかったが、警察は自殺を断定した。
 1週間前というと、ちょうど細田が彼女とであったあの日だった。
 細田は室戸と友達になり、廊下ですれ違う時に、声をかけてもらったり、あいさつをするようになったが、周りは不思議そうに見ていた。
 みんなが驚いていたのは、細田が室戸と歩いていたからではなく、一人で歩いていたのに、まるで女の子と一緒にいるかのように話をしていたからだったのだ。
 細田は室戸の幽霊と一緒に1週間もいた。
 後でわかったことだが、彼女は事あるごとにあのトイレで自殺未遂を繰り返していた。
 それに、彼女は虚言癖の持ち主で、日常的に嘘をつく人物としてクラスでも浮いた存在だったそうだ。
 思い起こせば、彼女はいつも一人で行動していたように思うし、室戸が話してくれた彼氏の話も嘘だった。



 「室戸さんは僕と同じで、独りぼっちだったんですよ。僕は何も知らず彼女の嘘に付き合わされていたんですよ。誰にも理解されないまま、死んでしまった室戸さん。もしもう少し早く僕と出会えていたら、もしかしたら友達になれたかもしれないのに。
 今も2階のトイレに入ると、女子トイレの方から小さな悲鳴と、何かが落ちる音、すすり泣く声が聞こえるんです。だから、僕はいつもあの2階のトイレを使うんです。そして音がするたびに女子トイレに行ってしまうんです。もしかしたら室戸さんに会えるんじゃないかと思って」


 エンディング№272:一人ぼっちの彼女
 エンディングリスト30/656 達成度4%
 キャラクター数37/112 達成度33%
 イラスト数 20/272 達成度7%


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 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75


 5人目は細田を選択!


 僕ね、今日のこの会をとっても楽しみにしてたんですよ。坂上君も楽しみにしてましたか?
  • 楽しみにしていた
  • 特に気にしていない
  • あまり乗り気ではなかった


 坂上君は立場的にみんなを盛り上げるべきだと思うけどなあ。そこまではっきり言われると、なんだかちょっと引いちゃうかも。
 それにしても、7人目はどうしちゃたんでしょうかねえ。
 迷惑するのは、坂上君なんですもんねえ。かわいそうに。
 あ、申し遅れました。僕は細田友春っていいます。2年C組です。
 あのう、坂上君って、友達とかいます?


 細田は、自分がデブだという自覚があるが、ダイエットをしてもどうしても食べたり、汗っかきですぐに喉が渇いてしまい、お茶よりもおいしいジュースを飲んでしまうため、どうしても痩せられないとのことで、小学生の頃から太っており、細田なのにデブと言われ続けていた。えn


 風間と岩下の話を聞いていれば、シナリオ:トイレの恋開始!


 細田が1年生の頃、友達がいなかった。
 原因は、太っていたからで、クラスの皆は、外見で人のことを判断するような人ばかりだった。
 細田が話しかけても、ニヤニヤと見下したような笑顔しか返してくれなかったで、細田はいつも一人でいた。
 そんな細田のお気に入りの場所はトイレの個室だった。
 学校はマンモス校で人が多いが、トイレだけは一人になれる場所だった。
 細田は授業中でも平気で抜け出して、トイレに入ってボーっとしていた。


 その日の放課後も、細田はトイレの中でボーっとしていた。
 突然、短い女性の悲鳴が聞こえてきて、それに続いてドンっという何か大きなものが落ちる音が聞こえた。
 声は隣の女子トイレの方から聞こえてきたようだった。


 悲鳴が聞こえたのが女子トイレだったの、細田は入って確認するのはちょっとと思い、知らんふりしようと思ったが、泣き声が聞こえてきた。
 細田は薄情な男ではなかったので、泣き声を聞き、ケガでもしているのではないかと思い、女子トイレの様子を伺ってみることにした。
 女子トイレの中に入ると、トイレの個室の開いたドアから女の子の足が見え、同時に女の子のすすり泣く声が聞こえた。
 どうやら女の子は、地べたに座り込んで泣いているようだ。
 「大丈夫?」と細田が女の子に声を掛けると、ビクっと体を震わせて、目をまん丸くさせて細田のことを見ていた。
 「あの、いきなり入ってきてごめんなさい。隣の男子トイレにいたら、悲鳴と鳴き声が聞こえてきたから心配になって」
 地べたに座り込んでいた女の子のすぐ近くには、ちぎれたロープがあり、脱ぎ捨てられた上履きの横には白い封筒が落ちていた。
 もしかしてこの子、自殺しようとしていたんじゃないか・・・
 「私、死のうと思ったの」
 突然、女の子がそんなことをしゃべった。
 「どうして自殺しようと思ったの?」
 細田の言葉を聞いた女の子は、泣くのをやめてぽつりぽつりと、その理由をしゃべり始めた。
 要約すると、彼氏に振られたからというのがおおまかな理由でした。付き合っていた彼氏に好きな人ができて、別れを切り出されてしまったそうだ。
 それで、生きることに絶望した女の子は死ぬことに決め、トイレのドア枠で首を吊ろうとしたが、ロープが切れ、結局未遂に終わってしまった。
 細田は必死に女の子を慰めた。
 「ありがとう、慰めてくれて、私は1年F組の室戸葵。あなたは?」
 「僕は1年C組の細田友春って言います」
 「そっか、結構近いクラスなんだね」
 そう言って室戸はふっと笑った。
 とりあえず、室戸は自殺を思いとどまってくれたようだ。
 「細田君は命の恩人だね」
 細田は女の子と話したことがほとんどなかったので、その時は相当ニヤケた間抜けな顔をしていただろう。
 それ以来、細田は室戸と友達になり、廊下ですれ違う時に、声をかけてもらったり、あいさつをするようになったが、周りは不思議そうに見ていた。


 室戸とあって1週間が過ぎようとした頃、放課後、いつものように一人で帰ろうとしている細田に、室戸が声を掛けた。
 「よかったら、いっしょに帰らない?」
 思いがけない室戸の提案に戸惑う細田。
 細田は女の子にそんなことを言われたことがなかったのだ。
 「細田君は、私と一緒に帰るのは嫌かな?」
 「嫌なわけあるもんですか」
 「本当?じゃあ一緒に帰りましょ」
 女の子と一緒に帰るなんて初めての細田は、緊張して何を話したか、あまり覚えていなかった。
 そして、ある角に差し掛かった時、室戸が小さく声を上げた。
 室戸が声を上げた方を見ると、鳴神学園の制服を着た一組のカップルが楽しそうに、道を歩いていた。
 室戸の顔色が一気に曇ったのがわかった。
 室戸は走り出すと、すぐ近くの路地に引っ込んでしまったので、細田は室戸を追いかけた。
 察しの悪い細田でも、もしかしたらさっきのカップルの男は、室戸の彼氏だった人じゃないかと気づいた。
 「こめんね、いきなり隠れたりして。さっき、前を歩いていた男の子、私の彼氏だったの。新しい彼女と歩いているのを見たら、何だかその場にいられなくて・・・私、このままじゃ学校にも行きたくないな」
 細田は悲痛な面持ちで訴える室戸を見て、何とかしてあげたいと思った。
 「何か自分に、協力できることはないかな?」
 「ありがとう、細田君」
 そして、室戸は細田にあることを頼んだ。


 坂上君、彼女は僕に何を頼んだと思う?


 「今日の夜、私と出会った新校舎のトイレに来てほしいの」と室戸はお願いしてきた。


 細田は家に帰っていろいろと考えた。
 彼女はなぜあんな場所に自分を呼んだのだろうか。
 しかし、答えは出なかった。
 何も考えられないまま、いつしか彼女との約束の時間が近づいてきました。


 坂上君、僕は彼女の言う通り、トイレに行ったと思う会?君なら、どうする?
  • 行く
  • 行かない

 細田は彼女との約束を果たすため、夜の学校へ向かった。
 鍵のかかっている校舎の中に忍び込めたのは、彼女が教えてくれたから。
 こっそりと人気のない校舎奥にある非常口の扉の鍵を開けておいてくれたので、細田はそこから中に入ることができた。
 トイレに入ると、中は真っ黒だった。
 細田は小声で室戸を呼んでみたが、反応はなかった。
 待ち合わせのトイレの個室の前に立っていると、「細田君」と背後から室戸の声が聞こえた。
 振り向くと、室戸はにこにこを笑っていた。
 「細田君、来てくれてありがとう」
 「うん、でも、一体トイレに呼び出して何をするの?」
 「ぜひ、細田君に協力してほしいことがあるの」
 彼女はそういうと、細田の前を横切りトイレの扉を開けた。
 「細田君、なんでも協力してくれるって言ってくれたよね?だから、私の代わりにここで死んでほしいの」
 「え?」
 最初、細田は彼女の言葉の意味が理解できなかった。
 「私ね、あの人が憎くて憎くてたまらないの。で、普通に殺すのは嫌。呪われてさんざんもがき苦しんだ挙句に死んでほしいの。そのためにはね、生贄を捧げる必要があるの」
 「生贄?」
 「そう、死んで」
 いつの間にか彼女の手には切り出しナイフが握られていた。
 そして躊躇なく、そのナイフを細田の腹に突き刺した。
 「うわああああ」
 細田はあまりの痛さに、思わず力いっぱいに彼女を突き飛ばした。
 すると、彼女は便器に頭を打ち付け、鈍い嫌な音がして、首があらぬ方向によじれてしまった。どうも首の骨が折れてしまったようだ。
 すでに彼女は動かなくなっている。どうやら、打ち所が悪かったようだ。
 細田の腹には切り出しナイフが突き刺さったままだが、刃渡りが短かったのと、細田の脂肪がぶ厚かったおかげで、細田は動けた。
 「細田君・・・生贄・・・死んで」
 「うわああああ」
 あらぬ方向に曲がった首をだらりとさせながら、室戸が動き始めた。
 「来るな、来るなよ」
 細田は腹に刺さっていた切り出しナイフを引き抜いて、やたらめったら振り回した。すると室戸に命中し、頬がざっくりと切れた。
 不思議なことに室戸の皮膚は発泡スチロールでも切るかのように抵抗なく切れた。そして、割れた頬がぱっくりと開き、その中から得体のしれない黒い塊が出てきた。
 それは、握り拳ほどの大きさで黒くて柔らかいイキモノだった。
 それは室戸の頬から這い出すと、ぺちゃりと床に落ちた。
 そいつはぷくぷくとした丸いフォルムで、小さく手足のようなものが4本生えていて、それを器用に動かしながら、便器を這い上ろうとしていた。
 そして、そいつはさかりのついた猫みたいに声を上げながら、鳴き始めた。見ると室戸のぱっくり割れた傷口からそいつが何匹もボロボロと出てきていた。
 そして、それが出てくるたびに室戸の体がしぼんでいった。
 細田はパニックになり、そいつを次々と踏みつぶした。潰すたびに、黒い液体をあたりにまき散らしながら、ネコにように鳴いた。
 一匹残らず踏みつぶすと、室戸はミイラのようにしぼんで動かなくなっていた。
 正気に戻った細田は、おなかに激痛が走った。
 ナイフで刺されたことを思い出し、傷口を押さえながらトイレを出たが、力尽きトイレの前の意識を失った。


 細田は気づくと病院のベッドにいた。
 細田がトレイで叫んでいたので、宿直の先生が様子を見に来て、倒れている細田を救出したのだった。
 警察の人が事情を聞きに来たが正直に言うしかない。
 「傷の形状からいって、自分で刺したとは思えないんだけど、誰に刺されたのかな?」
 「室戸葵さんです」
 「あのトイレでなかんっていた子かな?」
 「はい、そうです」
 「見間違いとか、思い違いじゃなくて?」
 「はい、そうですけど何か?」
 「おかしいな。彼女はね、1か月前に亡くなっているんだよ」
 「え?だって僕と彼女は1週間前にあのトイレで知り合ったんですから」
 「彼女の死体を検死したんだけれど、死後1か月は経っているんだよ。彼女、行方不明になって捜索願を出されていたんだよね。なんでも彼氏に振られたのがショックで悩んでいたらしい。それで1か月前にあのトイレで首を吊って自殺してしまったんだな。でも不思議なのは、1か月間もよく発見されなかったことだ。あの個室だけ、誰も使わなかったんだろうけど、それにしても普通臭いで分かりそうなもんだよな。それに死後1か月にしては状態がおかしいんだよ。まるで、遺体は何年も経過したようにミイラ化していたんだよな」


 細田は室戸と出会ってからの日のことを考えていた。
 細田は室戸と友達になり、廊下ですれ違う時に、声をかけてもらったり、あいさつをするようになったが、周りは不思議そうに見ていた。
 みんなが驚いていたのは、細田が室戸と歩いていたからではなく、一人で歩いていたのに、まるで女の子と一緒にいるかのように話をしていたからだったのだ。
 細田は室戸の幽霊と一緒に1週間もいた。
 細田はありのままに話をしたが、刑事には信じてもらえず、気が動転して現実と妄想がない交ぜになっていると笑われた。
 結局、謎のままあの事件は終わり、室戸がトイレで自殺したという結論だけが事実として伝わった。


 「僕は思うんですよ。室戸さんは自分を捨てた彼氏に復讐するために、あの黒いイキモノに自分の命を捧げたんじゃないでしょうか。だって彼女がただ自殺しただけなら遺体がミイラ化していたとか1か月も発見されなかったのは不自然じゃないですか。おそらく彼女は、あのトイレで自分の命を引き換えになにか邪悪なものを呼び出してしまった。そして、そいつと契約をしたんじゃないでしょうか。それが僕が見た気味の悪い黒いイキモノです。
 でも、室戸さんを捨てた彼って、いったい誰だったんでしょう。果たして復讐は成されたのか、それともまだ成されていないのか。
 僕ね、あのイキモノはまだ生きていると思うんです。きっと次の依り代を探していますよ」
 


 エンディング№271:呼び出されたイキモノ
 エンディングリスト29/656 達成度4%
 キャラクター数37/112 達成度33%
 イラスト数 20/272 達成度7%


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 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75


 5人目は細田を選択!


 僕ね、今日のこの会をとっても楽しみにしてたんですよ。坂上君も楽しみにしてましたか?
  • 楽しみにしていた
  • 特に気にしていない
  • あまり乗り気ではなかった


 坂上君は立場的にみんなを盛り上げるべきだと思うけどなあ。そこまではっきり言われると、なんだかちょっと引いちゃうかも。
 それにしても、7人目はどうしちゃたんでしょうかねえ。
 迷惑するのは、坂上君なんですもんねえ。かわいそうに。
 あ、申し遅れました。僕は細田友春っていいます。2年C組です。
 あのう、坂上君って、友達とかいます?


 細田は、自分がデブだという自覚があるが、ダイエットをしてもどうしても食べたり、汗っかきですぐに喉が渇いてしまい、お茶よりもおいしいジュースを飲んでしまうため、どうしても痩せられないとのことで、小学生の頃から太っており、細田なのにデブと言われ続けていた。えn


 風間と岩下の話を聞いていれば、シナリオ:トイレの恋開始!


 細田が1年生の頃、友達がいなかった。
 原因は、太っていたからで、クラスの皆は、外見で人のことを判断するような人ばかりだった。
 細田が話しかけても、ニヤニヤと見下したような笑顔しか返してくれなかったで、細田はいつも一人でいた。
 そんな細田のお気に入りの場所はトイレの個室だった。
 学校はマンモス校で人が多いが、トイレだけは一人になれる場所だった。
 細田は授業中でも平気で抜け出して、トイレに入ってボーっとしていた。


 その日の放課後も、細田はトイレの中でボーっとしていた。
 突然、短い女性の悲鳴が聞こえてきて、それに続いてドンっという何か大きなものが落ちる音が聞こえた。
 声は隣の女子トイレの方から聞こえてきたようだった。


 悲鳴が聞こえたのが女子トイレだったの、細田は入って確認するのはちょっとと思い、知らんふりしようと思ったが、泣き声が聞こえてきた。
 細田は薄情な男ではなかったので、泣き声を聞き、ケガでもしているのではないかと思い、女子トイレの様子を伺ってみることにした。
 女子トイレの中に入ると、トイレの個室の開いたドアから女の子の足が見え、同時に女の子のすすり泣く声が聞こえた。
 どうやら女の子は、地べたに座り込んで泣いているようだ。
 「大丈夫?」と細田が女の子に声を掛けると、ビクっと体を震わせて、目をまん丸くさせて細田のことを見ていた。
 「あの、いきなり入ってきてごめんなさい。隣の男子トイレにいたら、悲鳴と鳴き声が聞こえてきたから心配になって」
 地べたに座り込んでいた女の子のすぐ近くには、ちぎれたロープがあり、脱ぎ捨てられた上履きの横には白い封筒が落ちていた。
 もしかしてこの子、自殺しようとしていたんじゃないか・・・
 「私、死のうと思ったの」
 突然、女の子がそんなことをしゃべった。
 「どうして自殺しようと思ったの?」
 細田の言葉を聞いた女の子は、泣くのをやめてぽつりぽつりと、その理由をしゃべり始めた。
 要約すると、彼氏に振られたからというのがおおまかな理由でした。付き合っていた彼氏に好きな人ができて、別れを切り出されてしまったそうだ。
 それで、生きることに絶望した女の子は死ぬことに決め、トイレのドア枠で首を吊ろうとしたが、ロープが切れ、結局未遂に終わってしまった。
 細田は必死に女の子を慰めた。
 「ありがとう、慰めてくれて、私は1年F組の室戸葵。あなたは?」
 「僕は1年C組の細田友春って言います」
 「そっか、結構近いクラスなんだね」
 そう言って室戸はふっと笑った。
 とりあえず、室戸は自殺を思いとどまってくれたようだ。
 「細田君は命の恩人だね」
 細田は女の子と話したことがほとんどなかったので、その時は相当ニヤケた間抜けな顔をしていただろう。
 それ以来、細田は室戸と友達になり、廊下ですれ違う時に、声をかけてもらったり、あいさつをするようになった。


 室戸とあって1週間が過ぎようとした頃、放課後、いつものように一人で帰ろうとしている細田に、室戸が声を掛けた。
 「よかったら、いっしょに帰らない?」
 思いがけない室戸の提案に戸惑う細田。
 細田は女の子にそんなことを言われたことがなかったのだ。
 「細田君は、私と一緒に帰るのは嫌かな?」
 「嫌なわけあるもんですか」
 「本当?じゃあ一緒に帰りましょ」
 女の子と一緒に帰るなんて初めての細田は、緊張して何を話したか、あまり覚えていなかった。
 そして、ある角に差し掛かった時、室戸が小さく声を上げた。
 室戸が声を上げた方を見ると、鳴神学園の制服を着た一組のカップルが楽しそうに、道を歩いていた。
 室戸の顔色が一気に曇ったのがわかった。
 室戸は走り出すと、すぐ近くの路地に引っ込んでしまったので、細田は室戸を追いかけた。
 察しの悪い細田でも、もしかしたらさっきのカップルの男は、室戸の彼氏だった人じゃないかと気づいた。
 「こめんね、いきなり隠れたりして。さっき、前を歩いていた男の子、私の彼氏だったの。新しい彼女と歩いているのを見たら、何だかその場にいられなくて・・・私、このままじゃ学校にも行きたくないな」
 細田は悲痛な面持ちで訴える室戸を見て、何とかしてあげたいと思った。
 「何か自分に、協力できることはないかな?」
 「ありがとう、細田君」
 そして、室戸は細田にあることを頼んだ。


 坂上君、彼女は僕に何を頼んだと思う?


 「あの人の彼女を、呼び出してほしいの。私じゃあの人を呼び出すことはできないから、お願い、細田君」
 細田は室戸の頼みを聞くことにして、室戸の彼氏と今の彼女のことについていろいろと調査した。
 室戸の彼氏だった人は、サッカー部で注目される2年生で次期キャプテン候補の西澤仁志だった。
 西澤は、スポーツ特待生で、鳴神学園でも話題の有名人だった。
 西澤は、とにかく女性にモテモテでいつも女の子が周りに集まっているのに、特定の彼女はいないみたいだった。要するに、本命の彼女である室戸のことは、みんなには内緒にしているみたいだった。
 そして、今の西澤の彼女は1年生の姫乃愛良だったが、姫乃のことを同じクラスの人に聞いても、なんか答えをはぐらかされてしまい、今一つわからず、結局、名前以外、写真を見る限りとても美しいということだけしかわからなかった。
 普通に姫乃を呼び出すのことが細田には無理そうだったので、姫乃の持ち物を拝借して、それを餌に呼び出すことにした。
 女子が体育の時間を見計らい、細田は姫乃の机から高価そうな万年筆を拝借し、代わりに手紙を忍ばせた。
 「あなたの落とし物を拾いました。返したいので、放課後、屋上まで来てください」


 「放課後、この万年筆を取りに屋上に姫乃さんが来るから、そこで話をすればいいよ」
 細田が万年筆を渡しながら室戸にそう言うと、室戸はにっこり笑って「ありがとう、細田君」と言ってくれた。


 次の日、学校は大騒ぎになっていた。
 駐車場には何台もパトカーがとまっているし、テレビ局の中継車もいた。どうやら誰かが屋上から飛び降りて死んだ、と騒ぎになっていた。
 死んだのは姫乃だった。
 「まさか室戸さんが?」と思った細田は室戸を問いただすことにした。
 休み時間、室戸の教室に向かうと、細田に気づいた室戸は近づいてきた。
 「ここじゃなくて、どこか人気のないところで話しましょ」
 細田は、室戸に誘われるまま校舎裏にやってきた。
 「あの、姫乃さんのことなんだけど」
 口を開いた途端、室戸は細田の胸元に飛び込んできた。
 瞳に涙を溜めながら嗚咽混じりに、室戸はあの時の事の顛末を語り始めた。


 室戸が姫乃を呼び出したのは、西澤と別れてほしいと切り出すつもりだった。
 ところが姫乃は、室戸の話を聞こうともせず、万年筆を返せと迫ってきた。
 起こった姫乃から、髪の毛を引っ張られたり引っ掛かれたり暴力を受けて、もみ合っているうちに万年筆が屋上から落ちそうになり、それを取ろうと身を乗り出した姫乃は、そのまま落下した。


 「細田君、どうしよう・・・私のせいだわ」
 「いや、室戸さんのせいじゃないよ。僕が万年筆を持って行ったりしなければ」
 「いいえ、細田君は悪くない。元はといえば渡した細田君に頼んだことよ」
 「室戸さん、僕は絶対誰にも言わないよ。約束する。これは二人だけの秘密だよ」
 細田の言葉を聞いた室戸は、安心したようにやさしい笑みを浮かべてくれた。
 「二人だけの秘密、ありがとう、細田君」


 姫乃の事件は、しばらくの間、学校を賑わせていたが、1か月もするば何事もなかったかのように、いつもの学園生活が戻ってきた。
 なぜならば、あれは自殺として片づけられたわけなので。
 姫乃は家庭に複雑な事情を抱えていたそうで、だから自殺したんだろうって。
 でも、西澤だけは、話題が沈静化して行くに従って、だんだん塞ぎこむようになった。
 そんな西澤を励ましていたのは室戸だった。
 室戸が西澤といい雰囲気になっていくにつれ、ある噂が目立つようになっていった。
 それは、死んだ姫乃を見た、という噂だった。
 なんでも見た生徒の話だと、部活で遅くなった帰りに姫乃が飛び降りて死んだ場所で、彼女が佇んでいるのを目撃したとい言うのだ。しかも、彼女の表情はとてつもない怒りに満ちていたそうだ。
 細田も見たし、目撃例は日に日に増えていき、校内は再び姫乃の話題でもちきりになった。


 そんなある日、担任の先生に掃除当番を命じられた細田は、焼却炉にゴミを捨てるため校舎裏に向かった。
 そこで、誰かの泣き声が聞こえてきたので、細田がのぞいてみると、それは室戸だった。
 「室戸さん、どうしたの?具合でも悪いのかい?」
 「西澤さんが、やっぱり、姫乃さんのことが気になるって・・・私とは付き合えないって・・・」
 そう言って、室戸はわっと泣き出した。
 姫乃の一件以来、室戸は親身になって西澤に尽くした。
 西澤もそんな献身的な室戸の態度に、だんだんと室戸に接する態度が、かつて付き合っていたいたときのように戻っていった。
 そして室戸は思い切って「私たち、やり直さない?」と西澤に言ったが、彼は首を横に振った。
 「死んだ姫乃さんに申し訳ない、だからお前とは付き合えない」と。
 「西澤さんの中には、まだあの女の影がいるのよ!」
 そう言った室戸の顔を見たとき、室戸の瞳は爛々と輝き、はっきりと憎悪の炎が見てとれた。
 細田は、そんな彼女の表情をとてもキレイだと思った。そう細田は室戸に恋をした。


 坂上君、君ならどうしますか?


 細田は結局告白できなかった。
 「ごめんよ、力になれなくて」
 「ううん、そんなことないわ。細田君は、十分いい人だと思うわ」
 細田は、室戸に言われたセリフを噛みしめながら、帰宅した。恋人にはなれなくても、友達ではいられるはずだ。それに秘密の約束がある。


 室戸とのやり取りから数日後、細田は室戸を元気づけるために遊園地のチケットを用意した。
 でも、その日の学校ではなぜか室戸の姿が見えず、結局チケットを渡せないまま下校となった。
 彼女はどこに行ってしまったんだろう、と細田がそんなことを思いながら公園に差し掛かった時、見慣れた人影を見つけた。
 何やら室戸と西澤が激しく言い争いをしているようだった。
 細田は好奇心から、二人に気づかれないようそっと近づき、公園の茂みに隠れた。
 どうやら、室戸は西澤に、また付き合ってほしい、とお願いしているようだった。
 「何度言われても、もう俺は、お前の気持ちには答えられないんだ」
 「姫乃さんは、もう死んだんだから。いつまでも過去の人影を引きずっていたらダメよ!」
 「怖いんだよ。愛良が夢に出て切るんだ。あなたを一生離さないって、俺の耳元でささやくんだ。お前と一緒にいると特にそれがひどいんだ。きっと、あいつ、まだ成仏してないんだと思う。お前に俺も一緒にいると、愛良の霊に何をされるかわからないぞ」
 「私は大丈夫。私が一番辛いのは、あなたに嫌われることだから。あなたに嫌われたら、私生きていけないもの。だから姫乃さんの霊なんて、怖くない。私があなたを守るわ」
 「葵、お前、なんでそんなに俺にこだわるんだよ。俺以外にも、他に男はいっぱいいるんじゃないか。お前ならかわいいし、他にいくらだって」
 「西澤さんじゃなきゃダメなの!それがわからないの?他の人でもよかったら、こんなに苦しい思いなんかしないよ」
 その言葉に打たれたのか、西澤は室戸に向き直ると泣いている室戸の肩に優しく手を置いた。
 「泣くなよ」とその手で、室戸の瞳の涙をぬぐった。
 そのまま、二人は顔を寄せ合い、キスをした。
 二人のキスを目撃して、動揺した細田は物音を立ててしまい、、室戸に気づかれてしまった。
 「誰?」
 「あの、その、ごめんさない」
 「細田君」
 細田はどうしていいかわからず、そのまま走り出してしまった。
 「おい、あいつ、葵の知り合いじゃないのか?追わなくていいのか?」
 「あんなデブ、どうでもいいわ」


 背中越しに刺さった言葉の重みで、細田は少し走ったところで、膝をついてしまった。
 いい人いいっていうのは、良いとは違う、どうでもいい人って意味だったのだ。
 そんなとき、細田の脳裏にあることが思い出された。それは秘密の約束だった。
 姫乃の一件は、室戸が嘘をついているかもしれないということだ。
 細田は、その足でそのまま警察に行き、あの日の出来事のすべてを話した。


 次の日、細田は警察の事情聴取で呼び出された。
 細田は、何か罪に問われるのではないかと心配したが、何も罰せられなかった。
 ただ室戸に関しては詳しくいろいろ聞かれたことと、、姫乃の遺体には自殺にしては不可解な点がいくつもあったことから、警察は殺人事件として追っていた、ということを教えてもらった。


 運命の日がやってきのは翌日の放課後だった。
 「来ないで!」
 顔を上げてみると、屋上の柵から身を乗り出した室戸の声だった。
 その近くには、刑事らしい中年の男性が2人、焦った様子で室戸を必死に説得していた。
 おそらく昨日の話を聞いた警察が、今日になって室戸に事情聴取をしに来たのだろう。
 「なんで皆、私と西澤さんの邪魔をするの!」
 大勢の野次馬が周りに集まってくる。
 「葵、お前何やっているんだ!」
 気づくと、細田の隣で西澤が焦った表情で、室戸に声を掛けていた。
 「西澤さん、きゃあ!」
 「葵!!」
 突然、室戸が足を踏み外して地面に落ちかけた。かろうじて腕1本で床を持ち、体を支えている状態だ。
 屋上に待機していた刑事たちは、急いで室戸の元に駆け寄り、引き上げるために柵を乗り越えようとしていた。
 その時、細田は見てしまった。
 屋上の柵を越えたわずかな縁の部分から、凄まじい形相で室戸をにらんでいる姫乃の姿を・・・
 「いやあ!」
 悲鳴を上げた室戸の表情から察するに、彼女にも姫乃の霊が見えていたのだろう。
 「愛良・・・」
 西澤からもそんなつぶやきが聞こえてきた。少なくとも、室戸、西澤、細田には、姫乃の姿がはっきりと見えていた。
 「来ないで!悪いのはあんたよ。あんたが全部悪いんでしょうが!」
 室戸は姫乃から逃げようと必死になっていたが、姫乃の霊は彼女が支えている腕に嚙みついた。
 室戸の悲鳴が聞こえ、ゆっくりと彼女の体は宙に舞うと、次の瞬間地面に叩きつけられた鈍い音がした。そして、地面には室戸を中心に血だまりが広がっていった。


 室戸が死んだことによって、事件の真相は永遠に闇に包まれていしまった。
 でも、細田には何となく、室戸が姫乃を突き落とし、命を奪われた姫乃が彼女に復讐したということが、わかった。
 姫乃と室戸、付き合っていた2人を亡くした西澤はひどく憔悴していた。
 事件の成り行きをいった彼の周りの外野たちは、彼女たちの気持ちを弄んで2人と付き合った西澤を攻めた。


 あの事件から1週間ほど経ったある日、細田は西澤から声を掛けられた。
「聞きたいことがあるだけだ。ちょっと、こっちに来い」
 細田は校舎裏に連れていかれた。
 「お前、あの事件のこと、何か知っているんだろう?全部話してくれよ」
 西澤は事件について何も知らないようでした。ただ短期間の間で、彼女だった2人が屋上から飛び降りて死んだのだ。
 「僕は何も知りません。室戸さんとは知り合いなだけで、今回の事件にかんしては僕は何もしらないんです」
 西澤はその場でうなだれた。
 「夢で2人が出てくるんだ。俺の枕元に立って何か言いたそうな顔で、俺のことをずっと見てるんだよ。それが毎晩続くんだ。俺はもう気が狂いそうだ。あいつら、俺に一体、何をしてほしいんだ」
 「西澤さん、現場に行ってみたらどうです?彼女たちが死んだ現場に行って、彼女たちの霊に直接聞いてみたらいいと思います」
 「あの場所に愛良と葵はまだいるのか?お前には、それが見えるのか?」
 「ええ、僕には霊感があるんですよ。彼女たちは、飛び降りた地面に根を張るように、ずっと佇んているです。そして、一日でも早く成仏できるのを待っているんですよ。多分、彼女たちを成仏させられのは西澤さんしかいないと思います」
 「そうか、俺はどうしたらいいんだ?」
 本当を言うと、細田には2人の霊は見えなかったが、妙な予感がした。きっと彼が行けば2人は出てきてくれるんじゃないかって。


 その日の夜、細田と西澤は校門で待ち合わせをして、あの場所へと向かった。
 「何もおきないじゃないか」
 「一度呼んだくらじゃ何も起きませんよ。でも西澤さんが心を込めて呼びかければ、きっと出てきてくれると思います」
 「あ、愛良、葵・・・」
 すると、西澤の言葉に呼応するように、姫乃と室戸の姿で青白いシルエットが浮かび上がった。
 「教えてくれ、お前たちは俺にどうしてほしいんだよ?」
 「私たちのどちらか一人を選んで。どっちがあなたの彼女か。そして口づけしてほしいの。そうしたら、成仏できる」
 西澤はおびえながらも、彼女たちに近づき、2人の顔を交互に見た。
 西澤は、覚悟を決めたのか、室戸の方に歩み寄った。
 その時、姫乃がいきなり目を見開いて、ものすごい形相で西澤をにらんだ。
 西澤が思い直したのか、姫乃へ顔を近づけた。
 でも、今度は、室戸がものすごい形相で西澤のことを見つめた。
 どちらかにキスしようとすると、また一方か呪い殺さんばかりの表情で、西澤のことをにらんできりがない。
 業を煮やしたのか、姫乃と室戸の霊は、それぞれ反対方向から西澤の腕をぐいぐいと引っ張った。
 「助け・・・」
 西澤は苦痛に顔をゆがめながら、細田に助けを求めたが、どうすることもできない。
 彼女たちは、西澤の腕を力任せにぐんぐんと引っ張る。
 ボキっと鈍く嫌な音が聞こえてきた。
 引っ張りすぎて腕の関節が外れたのだ。
 「痛いよ、やめてくれ!」
 いつしか腕から血が吹き出し、みしみしと肉がちぎれる音が聞こえます。
 まるで、戦国時代の拷問の牛裂きの形のようだ。両手両足を荒縄で牛に括り付け、それぞれ別の方向に思いっきり後ろ走らせるという。
 「あがぎゃあああ!!!」
 彼の悲痛な叫びとともに、両腕は夥しい血を噴き出しながらもげてしまった。両腕をもがれた西澤は血に塗れ、体をぴくぴくと痙攣させていた。
 室戸と姫乃の霊は、そんな西澤を見ながら悲しそうな顔をして、ふっと消えてしまった。
 校庭には腕をもがれて西澤と、ちぎれた両腕だけが残った。
 西澤は死んでおらず、苦しそうに涙とよだれを垂らしながら、のたうちまわっていた。
 「助けを呼んできてくれ、細田」
 細田は、その場にしゃがんで、じーっと西澤を見ていた。
 女の子にモテても、決して幸せじゃないんだ。だから、やっぱり一人でいるのが正しいんだ。そうやって細田は自分に言い聞かせた。
 みじめにのたうちまわる西澤を見ることで、細田は初めて優位に立てた気がした。
 「どうして?早く助けてくれよ」
 「きゃー、怖い、助けて」
 これだけ観察すればもう十分だと納得した細田は、大声で叫んで逃げ出した。
 逃げながら細田は、こぼれ出る笑いを隠せなかった。


 西澤さんが、あの後一人で立ち上がって助けを呼びに行き、助かった。
 何とか一命は取り留めたが、話は支離滅裂。自殺した女の子に両腕を奪われた。自分のことを取り合いになって、腕を引っ張ったらそのままちぎれてしまった。でも彼女たちは成仏できた。
 ねえ、誰も信じる?そんな面白い話。
 これで僕の話は終わりだよ。



 「ありがとうございました」
 坂上は姫乃と室戸の霊はその後どうなったんだろう、と考えながらふと視線をドアに向けたとき、ドアの隙間、ほんの数センチ開いた隙間から、青白い顔をした女の顔がこちらをじっと見つけていた。そして、目が合うと、その顔はしゅっとドアの奥に引っ込んでしまった。
 「見たんだね」
 細田がにやけた顔を坂上を見る。
 「あれはね、室戸さんの霊だよ。あの事件の後から気づくと、いつもどこでもどんな場所でも、ありとあらゆる隙間から彼女が僕のことを見ているんだ。もしかしたら、僕が秘密をしゃべったことを怒っているのかもしれない。そして、西澤さんがあんな目に遭うように仕向けたこと。でも、僕は幸せなんだ。だって西澤さんじゃなくて、ずっと僕だけのことを見てくれているんだものね。僕さ、モテないからさ。この際、相手が生きていようが死んでいようが関係ないの。たとえ悪霊だっていいじゃない?うふ、うふふ」


 エンディング№270:トイレの恋
 エンディングリスト28/656 達成度4%
 キャラクター数37/112 達成度33%
 イラスト数 18/272 達成度6%


拍手[0回]


 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75


 5人目は細田を選択!


 僕ね、今日のこの会をとっても楽しみにしてたんですよ。坂上君も楽しみにしてましたか?
  • 楽しみにしていた
  • 特に気にしていない
  • あまり乗り気ではなかった


 坂上君は立場的にみんなを盛り上げるべきだと思うけどなあ。そこまではっきり言われると、なんだかちょっと引いちゃうかも。
 それにしても、7人目はどうしちゃたんでしょうかねえ。
 迷惑するのは、坂上君なんですもんねえ。かわいそうに。
 あ、申し遅れました。僕は細田友春っていいます。2年C組です。
 あのう、坂上君って、友達とかいます?
  • 多いほう
  • あまりいない
  • 早く話を進めてください


 細田は、自分がデブだという自覚があるが、ダイエットをしてもどうしても食べたり、汗っかきですぐに喉が渇いてしまい、お茶よりもおいしいジュースを飲んでしまうため、どうしても痩せられないとのことで、小学生の頃から太っており、細田なのにデブと言われ続けていた。


 風間と岩下の話を聞いていれば、シナリオ:トイレの恋開始!


 細田が1年生の頃、友達がいなかった。
 原因は、太っていたからで、クラスの皆は、外見で人のことを判断するような人ばかりだった。
 細田が話しかけても、ニヤニヤと見下したような笑顔しか返してくれなかったで、細田はいつも一人でいた。
 そんな細田のお気に入りの場所はトイレの個室だった。
 学校はマンモス校で人が多いが、トイレだけは一人になれる場所だった。
 細田は授業中でも平気で抜け出して、トイレに入ってボーっとしていた。


 その日の放課後も、細田はトイレの中でボーっとしていた。
 突然、短い女性の悲鳴が聞こえてきて、それに続いてドンっという何か大きなものが落ちる音が聞こえた。
 声は隣の女子トイレの方から聞こえてきたようだった。
  • 女子トイレに入ってみた
  • 知らんふりをした


 細田は薄情な人間ではなかったので、女子トイレの様子を伺ってみることにした。
 女子トイレの中に入ると、トイレの個室の開いたドアから女の子の足が見え、同時に女の子のすすり泣く声が聞こえた。
 どうやら女の子は、地べたに座り込んで泣いているようだ。
 「大丈夫?」と細田が女の子に声を掛けると、ビクっと体を震わせて、目をまん丸くさせて細田のことを見ていた。
 「あの、いきなり入ってきてごめんなさい。隣の男子トイレにいたら、悲鳴と鳴き声が聞こえてきたから心配になって」
 地べたに座り込んでいた女の子のすぐ近くには、ちぎれたロープがあり、脱ぎ捨てられた上履きの横には白い封筒が落ちていた。
 もしかしてこの子、自殺しようとしていたんじゃないか・・・
 「私、死のうと思ったの」
 突然、女の子がそんなことをしゃべった。
 「どうして自殺しようと思ったの?」
 細田の言葉を聞いた女の子は、泣くのをやめてぽつりぽつりと、その理由をしゃべり始めた。
 要約すると、彼氏に振られたからというのがおおまかな理由でした。付き合っていた彼氏に好きな人ができて、別れを切り出されてしまったそうだ。
 それで、生きることに絶望した女の子は死ぬことに決め、トイレのドア枠で首を吊ろうとしたが、ロープが切れ、結局未遂に終わってしまった。
 細田は必死に女の子を慰めた。
 「ありがとう、慰めてくれて、私は1年F組の室戸葵。あなたは?」
 「僕は1年C組の細田友春って言います」
 「そっか、結構近いクラスなんだね」
 そう言って室戸はふっと笑った。
 とりあえず、室戸は自殺を思いとどまってくれたようだ。
 「細田君は命の恩人だね」
 細田は女の子と話したことがほとんどなかったので、その時は相当ニヤケた間抜けな顔をしていただろう。
 それ以来、細田は室戸と友達になり、廊下ですれ違う時に、声をかけてもらったり、あいさつをするようになった。


 室戸とあって1週間が過ぎようとした頃、放課後、いつものように一人で帰ろうとしている細田に、室戸が声を掛けた。
 「よかったら、いっしょに帰らない?」
 思いがけない室戸の提案に戸惑う細田。
 細田は女の子にそんなことを言われたことがなかったのだ。
 「細田君は、私と一緒に帰るのは嫌かな?」
 「嫌なわけあるもんですか」
 「本当?じゃあ一緒に帰りましょ」
 女の子と一緒に帰るなんて初めての細田は、緊張して何を話したか、あまり覚えていなかった。
 そして、ある角に差し掛かった時、室戸が小さく声を上げた。
 室戸が声を上げた方を見ると、鳴神学園の制服を着た一組のカップルが楽しそうに、道を歩いていた。
 室戸の顔色が一気に曇ったのがわかった。
 室戸は走り出すと、すぐ近くの路地に引っ込んでしまったので、細田は室戸を追いかけた。
 察しの悪い細田でも、もしかしたらさっきのカップルの男は、室戸の彼氏だった人じゃないかと気づいた。
 「こめんね、いきなり隠れたりして。さっき、前を歩いていた男の子、私の彼氏だったの。新しい彼女と歩いているのを見たら、何だかその場にいられなくて・・・私、このままじゃ学校にも行きたくないな」
 細田は悲痛な面持ちで訴える室戸を見て、何とかしてあげたいと思った。
 「何か自分に、協力できることはないかな?」
 「ありがとう、細田君」
 そして、室戸は細田にあることを頼んだ。


 坂上君、彼女は僕に何を頼んだと思う?
  • 彼氏を呼び出してほしい
  • 彼女を呼び出してほしい
  • わからない


 違います。彼氏と顔を合わすのもつらいんですよ。


 「あの人の彼女を、呼び出してほしいの。私じゃあの人を呼び出すことはできないから、お願い、細田君」
 細田は室戸の頼みを聞くことにして、室戸の彼氏と今の彼女のことについていろいろと調査した。
 室戸の彼氏だった人は、サッカー部で注目される2年生で次期キャプテン候補の西澤仁志だった。
 西澤は、スポーツ特待生で、鳴神学園でも話題の有名人だった。
 西澤は、とにかく女性にモテモテでいつも女の子が周りに集まっているのに、特定の彼女はいないみたいだった。要するに、本命の彼女である室戸のことは、みんなには内緒にしているみたいだった。
 そして、今の西澤の彼女は1年生の姫乃愛良だったが、姫乃のことを同じクラスの人に聞いても、なんか答えをはぐらかされてしまい、今一つわからず、結局、名前以外、写真を見る限りとても美しいということだけしかわからなかった。
 普通に姫乃を呼び出すのことが細田には無理そうだったので、姫乃の持ち物を拝借して、それを餌に呼び出すことにした。
 女子が体育の時間を見計らい、細田は姫乃の机から高価そうな万年筆を拝借し、代わりに手紙を忍ばせた。
 「あなたの落とし物を拾いました。返したいので、放課後、屋上まで来てください」


 「放課後、この万年筆を取りに屋上に姫乃さんが来るから、そこで話をすればいいよ」
 細田が万年筆を渡しながら室戸にそう言うと、室戸はにっこり笑って「ありがとう、細田君」と言ってくれた。


 次の日、学校は大騒ぎになっていた。
 駐車場には何台もパトカーがとまっているし、テレビ局の中継車もいた。どうやら誰かが屋上から飛び降りて死んだ、と騒ぎになっていた。
 死んだのは姫乃だった。
 「まさか室戸さんが?」と思った細田は室戸を問いただすことにした。
 休み時間、室戸の教室に向かうと、細田に気づいた室戸は近づいてきた。
 「ここじゃなくて、どこか人気のないところで話しましょ」
 細田は、室戸に誘われるまま校舎裏にやってきた。
 「あの、姫乃さんのことなんだけど」
 口を開いた途端、室戸は細田の胸元に飛び込んできた。
 瞳に涙を溜めながら嗚咽混じりに、室戸はあの時の事の顛末を語り始めた。


 室戸が姫乃を呼び出したのは、西澤と別れてほしいと切り出すつもりだった。
 ところが姫乃は、室戸の話を聞こうともせず、万年筆を返せと迫ってきた。
 起こった姫乃から、髪の毛を引っ張られたり引っ掛かれたり暴力を受けて、もみ合っているうちに万年筆が屋上から落ちそうになり、それを取ろうと身を乗り出した姫乃は、そのまま落下した。


 「細田君、どうしよう・・・私のせいだわ」
 「いや、室戸さんのせいじゃないよ。僕が万年筆を持って行ったりしなければ」
 「いいえ、細田君は悪くない。元はといえば渡した細田君に頼んだことよ」
 「室戸さん、僕は絶対誰にも言わないよ。約束する。これは二人だけの秘密だよ」
 細田の言葉を聞いた室戸は、安心したようにやさしい笑みを浮かべてくれた。
 「二人だけの秘密、ありがとう、細田君」


 姫乃の事件は、しばらくの間、学校を賑わせていたが、1か月もするば何事もなかったかのように、いつもの学園生活が戻ってきた。
 なぜならば、あれは自殺として片づけられたわけなので。
 姫乃は家庭に複雑な事情を抱えていたそうで、だから自殺したんだろうって。
 でも、西澤だけは、話題が沈静化して行くに従って、だんだん塞ぎこむようになった。
 そんな西澤を励ましていたのは室戸だった。
 室戸が西澤といい雰囲気になっていくにつれ、ある噂が目立つようになっていった。
 それは、死んだ姫乃を見た、という噂だった。
 なんでも見た生徒の話だと、部活で遅くなった帰りに姫乃が飛び降りて死んだ場所で、彼女が佇んでいるのを目撃したとい言うのだ。しかも、彼女の表情はとてつもない怒りに満ちていたそうだ。
 細田も見たし、目撃例は日に日に増えていき、校内は再び姫乃の話題でもちきりになった。


 そんなある日、担任の先生に掃除当番を命じられた細田は、焼却炉にゴミを捨てるため校舎裏に向かった。
 そこで、誰かの泣き声が聞こえてきたので、細田がのぞいてみると、それは室戸だった。
 「室戸さん、どうしたの?具合でも悪いのかい?」
 「西澤さんが、やっぱり、姫乃さんのことが気になるって・・・私とは付き合えないって・・・」
 そう言って、室戸はわっと泣き出した。
 姫乃の一件以来、室戸は親身になって西澤に尽くした。
 西澤もそんな献身的な室戸の態度に、だんだんと室戸に接する態度が、かつて付き合っていたいたときのように戻っていった。
 そして室戸は思い切って「私たち、やり直さない?」と西澤に言ったが、彼は首を横に振った。
 「死んだ姫乃さんに申し訳ない、だからお前とは付き合えない」と。
 「西澤さんの中には、まだあの女の影がいるのよ!」
 そう言った室戸の顔を見たとき、室戸の瞳は爛々と輝き、はっきりと憎悪の炎が見てとれた。
 細田は、そんな彼女の表情をとてもキレイだと思った。そう細田は室戸に恋をした。


 坂上君、君ならどうしますか?
  • 告白する
  • 告白しない


 告白するなら今しかないと、細田は一大決心で、室戸に言った。
 「僕じゃだめかな?」
 「ごめんさない、でも、私、細田君は、いい人だと思うわ」
 細田は、室戸に言われたセリフを噛みしめながら、帰宅した。恋人にはなれなくても、友達ではいられるはずだ。それに秘密の約束がある。


 室戸とのやり取りから数日後、細田は室戸を元気づけるために遊園地のチケットを用意した。
 でも、その日の学校ではなぜか室戸の姿が見えず、結局チケットを渡せないまま下校となった。
 彼女はどこに行ってしまったんだろう、と細田がそんなことを思いながら公園に差し掛かった時、見慣れた人影を見つけた。
 何やら室戸と西澤が激しく言い争いをしているようだった。
 細田は好奇心から、二人に気づかれないようそっと近づき、公園の茂みに隠れた。
 どうやら、室戸は西澤に、また付き合ってほしい、とお願いしているようだった。
 「何度言われても、もう俺は、お前の気持ちには答えられないんだ」
 「姫乃さんは、もう死んだんだから。いつまでも過去の人影を引きずっていたらダメよ!」
 「怖いんだよ。愛良が夢に出て切るんだ。あなたを一生離さないって、俺の耳元でささやくんだ。お前と一緒にいると特にそれがひどいんだ。きっと、あいつ、まだ成仏してないんだと思う。お前に俺も一緒にいると、愛良の霊に何をされるかわからないぞ」
 「私は大丈夫。私が一番辛いのは、あなたに嫌われることだから。あなたに嫌われたら、私生きていけないもの。だから姫乃さんの霊なんて、怖くない。私があなたを守るわ」
 「葵、お前、なんでそんなに俺にこだわるんだよ。俺以外にも、他に男はいっぱいいるんじゃないか。お前ならかわいいし、他にいくらだって」
 「西澤さんじゃなきゃダメなの!それがわからないの?他の人でもよかったら、こんなに苦しい思いなんかしないよ」
 その言葉に打たれたのか、西澤は室戸に向き直ると泣いている室戸の肩に優しく手を置いた。
 「泣くなよ」とその手で、室戸の瞳の涙をぬぐった。
 そのまま、二人は顔を寄せ合い、キスをした。
 二人のキスを目撃して、動揺した細田は物音を立ててしまい、、室戸に気づかれてしまった。
 「誰?」
 「あの、その、ごめんさない」
 「細田君」
 細田はどうしていいかわからず、そのまま走り出してしまった。
 「おい、あいつ、葵の知り合いじゃないのか?追わなくていいのか?」
 「あんなデブ、どうでもいいわ」


 背中越しに刺さった言葉の重みで、細田は少し走ったところで、膝をついてしまった。
 いい人いいっていうのは、良いとは違う、どうでもいい人って意味だったのだ。
 そんなとき、細田の脳裏にあることが思い出された。それは秘密の約束だった。
 姫乃の一件は、室戸が嘘をついているかもしれないということだ。
 細田は、その足でそのまま警察に行き、あの日の出来事のすべてを話した。


 次の日、細田は警察の事情聴取で呼び出された。
 細田は、何か罪に問われるのではないかと心配したが、何も罰せられなかった。
 ただ室戸に関しては詳しくいろいろ聞かれたことと、、姫乃の遺体には自殺にしては不可解な点がいくつもあったことから、警察は殺人事件として追っていた、ということを教えてもらった。


 運命の日がやってきのは翌日の放課後だった。
 「来ないで!」
 顔を上げてみると、屋上の柵から身を乗り出した室戸の声だった。
 その近くには、刑事らしい中年の男性が2人、焦った様子で室戸を必死に説得していた。
 おそらく昨日の話を聞いた警察が、今日になって室戸に事情聴取をしに来たのだろう。
 「なんで皆、私と西澤さんの邪魔をするの!」
 大勢の野次馬が周りに集まってくる。
 「葵、お前何やっているんだ!」
 気づくと、細田の隣で西澤が焦った表情で、室戸に声を掛けていた。
 「西澤さん、きゃあ!」
 「葵!!」
 突然、室戸が足を踏み外して地面に落ちかけた。かろうじて腕1本で床を持ち、体を支えている状態だ。
 屋上に待機していた刑事たちは、急いで室戸の元に駆け寄り、引き上げるために柵を乗り越えようとしていた。
 その時、細田は見てしまった。
 屋上の柵を越えたわずかな縁の部分から、凄まじい形相で室戸をにらんでいる姫乃の姿を・・・
 「いやあ!」
 悲鳴を上げた室戸の表情から察するに、彼女にも姫乃の霊が見えていたのだろう。
 「愛良・・・」
 西澤からもそんなつぶやきが聞こえてきた。少なくとも、室戸、西澤、細田には、姫乃の姿がはっきりと見えていた。
 「来ないで!悪いのはあんたよ。あんたが全部悪いんでしょうが!」
 室戸は姫乃から逃げようと必死になっていたが、姫乃の霊は彼女が支えている腕に嚙みついた。
 室戸の悲鳴が聞こえ、ゆっくりと彼女の体は宙に舞うと、次の瞬間地面に叩きつけられた鈍い音がした。そして、地面には室戸を中心に血だまりが広がっていった。


 室戸が死んだことによって、事件の真相は永遠に闇に包まれていしまった。
 でも、細田には何となく、室戸が姫乃を突き落とし、命を奪われた姫乃が彼女に復讐したということが、わかった。
 姫乃と室戸、付き合っていた2人を亡くした西澤はひどく憔悴していた。
 事件の成り行きをいった彼の周りの外野たちは、彼女たちの気持ちを弄んで2人と付き合った西澤を攻めた。


 あの事件から1週間ほど経ったある日、細田は西澤から声を掛けられた。
「聞きたいことがあるだけだ。ちょっと、こっちに来い」
 細田は校舎裏に連れていかれた。
 「お前、あの事件のこと、何か知っているんだろう?全部話してくれよ」
 西澤は事件について何も知らないようでした。ただ短期間の間で、彼女だった2人が屋上から飛び降りて死んだのだ。
 「僕は何も知りません。室戸さんとは知り合いなだけで、今回の事件にかんしては僕は何もしらないんです」
 西澤はその場でうなだれた。
 「夢で2人が出てくるんだ。俺の枕元に立って何か言いたそうな顔で、俺のことをずっと見てるんだよ。それが毎晩続くんだ。俺はもう気が狂いそうだ。あいつら、俺に一体、何をしてほしいんだ」
 「西澤さん、現場に行ってみたらどうです?彼女たちが死んだ現場に行って、彼女たちの霊に直接聞いてみたらいいと思います」
 「あの場所に愛良と葵はまだいるのか?お前には、それが見えるのか?」
 「ええ、僕には霊感があるんですよ。彼女たちは、飛び降りた地面に根を張るように、ずっと佇んているです。そして、一日でも早く成仏できるのを待っているんですよ。多分、彼女たちを成仏させられのは西澤さんしかいないと思います」
 「そうか、俺はどうしたらいいんだ?」
 本当を言うと、細田には2人の霊は見えなかったが、妙な予感がした。きっと彼が行けば2人は出てきてくれるんじゃないかって。


 その日の夜、細田と西澤は校門で待ち合わせをして、あの場所へと向かった。
 「何もおきないじゃないか」
 「一度呼んだくらじゃ何も起きませんよ。でも西澤さんが心を込めて呼びかければ、きっと出てきてくれると思います」
 「あ、愛良、葵・・・」
 すると、西澤の言葉に呼応するように、姫乃と室戸の姿で青白いシルエットが浮かび上がった。
 「教えてくれ、お前たちは俺にどうしてほしいんだよ?」
 「私たちのどちらか一人を選んで。どっちがあなたの彼女か。そして口づけしてほしいの。そうしたら、成仏できる」
 西澤はおびえながらも、彼女たちに近づき、2人の顔を交互に見た。
 西澤は、覚悟を決めたのか、室戸の方に歩み寄った。
 その時、姫乃がいきなり目を見開いて、ものすごい形相で西澤をにらんだ。
 西澤が思い直したのか、姫乃へ顔を近づけた。
 でも、今度は、室戸がものすごい形相で西澤のことを見つめた。
 どちらかにキスしようとすると、また一方か呪い殺さんばかりの表情で、西澤のことをにらんできりがない。
 業を煮やしたのか、姫乃と室戸の霊は、それぞれ反対方向から西澤の腕をぐいぐいと引っ張った。
 「助け・・・」
 西澤は苦痛に顔をゆがめながら、細田に助けを求めたが、どうすることもできない。
 彼女たちは、西澤の腕を力任せにぐんぐんと引っ張る。
 ボキっと鈍く嫌な音が聞こえてきた。
 引っ張りすぎて腕の関節が外れたのだ。
 「痛いよ、やめてくれ!」
 いつしか腕から血が吹き出し、みしみしと肉がちぎれる音が聞こえます。
 まるで、戦国時代の拷問の牛裂きの形のようだ。両手両足を荒縄で牛に括り付け、それぞれ別の方向に思いっきり後ろ走らせるという。
 「あがぎゃあああ!!!」
 彼の悲痛な叫びとともに、両腕は夥しい血を噴き出しながらもげてしまった。両腕をもがれた西澤は血に塗れ、体をぴくぴくと痙攣させていた。
 室戸と姫乃の霊は、そんな西澤を見ながら悲しそうな顔をして、ふっと消えてしまった。
 校庭には腕をもがれて西澤と、ちぎれた両腕だけが残った。
 西澤は死んでおらず、苦しそうに涙とよだれを垂らしながら、のたうちまわっていた。
 「助けを呼んできてくれ、細田」
 細田は、その場にしゃがんで、じーっと西澤を見ていた。
 女の子にモテても、決して幸せじゃないんだ。だから、やっぱり一人でいるのが正しいんだ。そうやって細田は自分に言い聞かせた。
 みじめにのたうちまわる西澤を見ることで、細田は初めて優位に立てた気がした。
 「どうして?早く助けてくれよ」
 「きゃー、怖い、助けて」
 これだけ観察すればもう十分だと納得した細田は、大声で叫んで逃げ出した。
 逃げながら細田は、こぼれ出る笑いを隠せなかった。


 西澤さんが、あの後一人で立ち上がって助けを呼びに行き、助かった。
 何とか一命は取り留めたが、話は支離滅裂。自殺した女の子に両腕を奪われた。自分のことを取り合いになって、腕を引っ張ったらそのままちぎれてしまった。でも彼女たちは成仏できた。
 ねえ、誰も信じる?そんな面白い話。
 これで僕の話は終わりだよ。



 「ありがとうございました」
 坂上は姫乃と室戸の霊はその後どうなったんだろう、と考えながらふと視線をドアに向けたとき、ドアの隙間、ほんの数センチ開いた隙間から、青白い顔をした女の顔がこちらをじっと見つけていた。そして、目が合うと、その顔はしゅっとドアの奥に引っ込んでしまった。
 「見たんだね」
 細田がにやけた顔を坂上を見る。
 「あれはね、室戸さんの霊だよ。あの事件の後から気づくと、いつもどこでもどんな場所でも、ありとあらゆる隙間から彼女が僕のことを見ているんだ。もしかしたら、僕が秘密をしゃべったことを怒っているのかもしれない。そして、西澤さんがあんな目に遭うように仕向けたこと。でも、僕は幸せなんだ。だって西澤さんじゃなくて、ずっと僕だけのことを見てくれているんだものね。僕さ、モテないからさ。この際、相手が生きていようが死んでいようが関係ないの。たとえ悪霊だっていいじゃない?うふ、うふふ」


 エンディング№270:トイレの恋
 エンディングリスト28/656 達成度4%
 キャラクター数37/112 達成度33%
 イラスト数 18/272 達成度6%


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 今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る


 4人目は荒井を選択!


 荒井昭二は2年B組の生徒。


 「よくある七不思議の話をしても面白くないでしょう?そうは思いませんか?」


  • よくある七不思議で結構です
  • そうですね
  • 友達の話はどうですか?


 「そうだ、人間の探求心について話をするというのはいかがですか。僕はね、享年の夏休みに面白い体験をしたのですよ。
 普通の日常を過ごしているだけでは、なかなか体験できない経験なのですが、あなたは、そういう体験は貴重だと思いますか」




 「その通りです。何事も体験してみなければわからないものです。
 しかし、やってみなければわからないからこそ、貴重な体験というのはあるのですよ。
 突然ですが、あなた、アルバイトをしたことはありますか?うちの学校で禁止されているのは重々承知ですよ。
 でもね、そんな規則を破ってまでしたいことってあるでしょう?
 例えばアルバイトを禁止されていても、何故するのでしょう?
 小遣いが少なくて自分の欲しいものが買えないからではなく、家計を助けるためにやむなくする場合もあるでしょう。
 知人が病気や事故に遭い、その手伝いをしなければならなくなった、そんな理由もあるでしょう。
 罰せられるとわかっていて、校則を破る行為をあなたは愚かだと思いますか?
 僕は愚かな人間ですから、勝てないんですよ、興味という欲望にね。
 思えば、恥の多い生涯を送ってきました。ところでね、坂上君なら、校則を破ってもいいと思いますか?」




 「そう言ってもらえると僕も話しがいがありますよ。
 それでは、ほんの小さな欲望をさえ抑えることができなかった愚かな僕が体験した話を聞いてください」


 去年、新井が1年生だった夏休みに、当時のクラスメイトだった中村晃久から悩み事を相談された。
 「僕は今とても困っているんだ。実はね、親戚が青森で牧場を経営しているんだけど、人手が足りないから手伝いにこないかと誘われているんだ。でも、学校はアルバイトが禁止されているだろ?だから困っているんだよ」
 「アルバイトは禁止されていますが、手伝いは禁止されていないでしょう?それに親戚ならなおさらでしょう?親戚の家に遊びに行って、家業の手伝いをしたらお小遣いを貰えたということはよくあるんじゃないですか?」
 「確かに荒井君のいう通りだよね。普通なら、そう簡単に考えれば何も悩む必要はないよね」
 「何か行きたくない理由でもあるのですか?」
 「ちょっと一人では行きにくいっていうか、場所が場所だけに特殊な環境だからさ。そうだ、荒井君、一緒に行こうよ。1日5千円は出すって言ってたよ。宿泊費や食費は掛からないんだ。三食ついて1か月間のアルバイトだから、かなり稼げると思うよ。みんなに聞こえちゃったかな。まあ、考えといてよ。返事は今度でいいから、じゃあ」


 「坂上君なら、このアルバイトをしたいと思いますか?」


  • やりたい
  • やりたくない
  • 他のバイトを探す


 「なるほど、あなたは僕と同じ選択をするのですね。僕も他のバイトを探すことにしたんですよ」→シナリオ:いみぐい村開始!


 荒井は夏休みのほとんどまるまるをアルバイトに費やすのは、あまりにも分の悪い賭けだと感じたので、後日、中村の申し出を断った。
 中村の申し出を断ったものの、荒井の中ではアルバイトを体験してみたいという気持ちが強く残っていた。
 校則で禁止されている行為を通じて、何か非日常的で好奇心で満たされる体験をしてみたいと、思ったからだ。
 手始めに、アルバイトの求人雑誌を見てみることにしたが、ページをめくれどありきたりな仕事なかりで、まったくそそられるものがない。
 バイト募集のチラシは掲示板にも目を通すうようにしたが、やはりこれといって興味の惹かれる奇特なものはなかった。
 よくよく考えてみれば、非日常を得られる変わった仕事が、すぐに目につくような場所で募集しているわけがなかった。
 中村の誘いを無碍にしたことを少し後悔し始めていた時、クラスメイトの袖山勝が休み時間に話しかけてきた。
 袖山は、当時荒井と同じサッカー部で仲良くしていた。


 「荒井君、アルバイト探しているの?」
 「どこで聞いたの?」
 「中村君がクラス中に牧場でもアルバイトを誘いまわっていてね。そのとき荒井君が彼の申し出を断ったことを聞いたんだ。『荒井君はもっと割のいいバイトがいいに違いない』って中村君は言ってたよ。もしかしたら彼の言う通り、良い働き口を探しているのかと思ってね」
 「別にお金の所為で中村君の話を断ったわけじゃないよ。ただ僕はもっと自分がやりたいことをしたいだけなんだ」
 「うん、荒井君はそういう人だと思っていたよ。だから君が気に入りそうなとっておきの話を持ってきたんだ。
 今度、僕の遠い親戚の住むいみぐい村というところでお祭りがあるんだ。その手伝いを募集しているらしいだけど、興味ないかな。祭り自体は2日間で、準備を入れて3日間手伝ってほしいんだって」
 祭りと聞いた荒井は、よくある縁日のイメージが浮かんだが、『とっておき』というほどのものではないように感じた。
 荒井の顔から落胆を読み取った袖山は、「祭りと言っても夏祭りにような露店が出るにぎやかなものじゃないよ。どちらかというと、民族的はものさ。昔ながらの儀式をして神様を祀る、厳かな祭りだって」と続けた。
 「なんでも50年前に途絶えていたものを村おこしのために復活させるらしい。村には人も少ないし、その次はいつ祭りを開催できるかわからないんだってさ」
 「つまりその祭りを見るのは、今年が最後のチャンスからもしれないってことかい?」
 「そうなるね。どんな手伝いをするか、詳しいことは行ってみないとわからないんだけど、もちろん報酬も出るらしいよ」
 半世紀も途絶えていた祭りをこの目で無ることができるなんて、非常に価値のあることだと荒井は感じた。
 この機会を逃すと、もう一生こんな体験をできないかもしれない。アルバイトは校則で禁止されていることは、どうでもよくなっていた。
 仮に校則を破って咎められようとも、祭りを見るついでに少し手伝いを頼まれただけ、と主張すればいいだけだ。
 「どうだい?」
 「もちろんぜひとも行きたいけれど、僕のような部外者が手伝っても大丈夫なの?」
 「問題ないよ。さっきも言った通り、村おこしのための祭りだからね。いろんな人に知ってほしいし、人手も少ないから友達を呼んでくれないかと親戚から言われたんだ」
 荒井は、袖山から詳しい日時と村の場所を聞きながら、何十年も前に繰り広げられていたのであろう素朴で厳格な祭礼の儀を頭に思い浮かべていた。


 夏休みに入り、約束の日になった。両親には友人と旅行に行くと伝えて、二泊三日分の荷物をバッグに詰め、荒井は袖山と駅で待ち合わせをして電車に乗り込んだ。
 袖山から聞いたいみぐい村という名前と村の場所から、事前に祭りのことを調べようと、何度も図書館に足を運んだが、荒井が欲しい情報はまったく出てこなかった。


 「一緒に来てくれてありがとう。実は親戚といってもほとんど会ったことのない人だから、一人で行くのは心細かったんだ」
 荒井と袖山は、他愛のない話をしながら目的地へ向かっていた。
 数時間電車に乗ったあと、荒井たちはひっそりと佇む無人駅に降りた。その駅で降車したのは荒井たちしかしなかった。
 荒井たちは、駅の近くから出る小さなバスに急いで乗った。目的の場所まで向かうバスは日に2本しかないので、これを逃すと大変なことになる。
 バスには乗客は乗っていませんでした。
 バスの運転手が物珍し気に見て、少し微笑んだ。「
 「お客さんたち、どこまで行くの?」
 「いみぐい村まで。祭りの手伝いに行くんです」
 「あそこはいいとこだよ、けどお祭りなんであったかなあ」
 久しく執り行われていなかった祭りですから、知られていなくても不思議ではない。
 バスが進む間、人はおろか他の車とも一切すれ違いません。
 目的のバス停まで30分ほどバスは山道を進み、いよいよいみぐい村にたどり着いたときは、日は西側に傾きかけていた。


 バス停では、袖山君の親戚夫婦が出迎えてくれていた。
 袖山「お久しぶりです。わざわざ迎えに来ていただいてありがとうございます」
 おじ「遠いところからよく来たね」
 おば「久しぶりねえ、勝君。前にあったときはうんと小さかったものね。あなたはお友達の荒井君かしら?」
 荒井「初めまして、荒井昭二と申します。3日間よろしくお願いいたします」
 年齢は初老に入りかけた頃だろうか。二人とも柔和で優しそうな人でした。
 バス停の周りには一面の畑が広がっており、まるで毛並みの良い緑の絨毯が敷き詰められているように立派な野菜が育っていた。
 背の高い建物なんて一つもなく、見上げた先にあるのは遠くまでつらなく山々と高い青空だけで、とても美しいものだった。


 バス停からしばらく歩いた先、トマトが多く実る畑に囲まれた二人の家があった。
 昔ながらの木造建築で、鍵を使わずそのまま玄関の扉か開いていたので、荒井たちは驚いた。
 この村には家に鍵をかける習慣がないようだった。盗られるものは何もないし、盗みを働くような悪人は村にいないからという理由だそうだ。
 2階に客用の部屋があるから自由に使ってね、と夫妻は行ってくれたので、荒井たちは荷物を置いて、夫妻の待つ1階へ降りた。
 「来てもらってすぐで悪いんだが、さっそく祭りの手伝いをしてもらってもいいかな?」と、色の濃いお茶を出しながらおじさんは申し訳なさそうに言いました。
 村で採れる葉を煮出して作ったものらしく、一口飲むとすっきりとした味わいが広がった。


 この近くにある村の寄り合い場で準備は行われいるとのことで、親戚夫婦は村の紹介がてらに連れて行ってくれた。
 寄り合い場はいみぐい村自治会館と書かれた札が掛けられた場所で、他の家より少し大きいくらいの民家だった。
 玄関の靴箱はすでにいっぱいになっており、荒井たちはそこへ靴をそろえて入れた。
 中に入ると、大きな広間になっており、何やら作業をしている20人ほどの老人たちが、一斉に振り返って荒井たちを見たが、若者は一人はいなかった。
 「おやあ、君らが手伝いに来てくれた子たちか?ありがとうねえ」と一人のおじいさんが微笑みながらそう言った。
 彼らは口々に労いの言葉を言い、笑いかけてくれた。
 曰く、都会から離れたこの村では過疎化が進み、若い人のほとんどは村から出て行ってしまっているようです。
 手伝いの内容は、銅で作られた小さな鈴に、編み込まれた紐を通りて吊り下げるというものです。
 鈴は親指大の小さなものでしたが、祭りで使うものだと聞くと、なんとなしに神秘的なものであるかのように見えた。
 鈴に通す紐の編み込み方は、周りの老人方に教えてもらった。数世紀前から村に伝わる独特な編み方だそうだが、近年になるにつれだんだんと簡略化されて、荒井たちでもできるものだった。
 その鈴を何百個ほどこしらえていくのです。量を思うと気の遠くなる作業だった。
 よく見ると、広間には鈴を作る班とは別に、何やらお面を作る班もいるようだった。
 お面班の方を盗み見ると、老人たちは木彫りの四角い面に絵の具と筆で青い化粧を施しているところだった。
 「すみません、この鈴とあのお面は、いったい祭りにどうやって使うのですか?」と荒井は近くで作業しているおばあさんに尋ねた。
 「これかい?これはね、神様をお呼びするための鈴なのよ。お面は、神様を安心させてあげるためのものだね」
 「それは、この村の神様ということでしょうか?」
 「そうそう、この村の名前の由来にもなったいみぐい様を呼ぶためのものでねえ。久しぶりのお祭りだから、失礼のないようにしなくちゃね」
 それを聞いた荒井は、木彫りのお面を被りながら鈴を一心不乱に鳴らす村人たちの姿を想像した。


 あなたはどう感じますか?
 都会と比べて不便なところはありますが、住民がみな家族同然のように仲が良くて、温かみがある村を。
 閉塞的と言えるかもしれませんが、裏を返せば一つ一つの繋がりが密ということなのです。
 坂上君は、今までの話を聞いてこの村をどう思いましたか?




 おや、そうですか。坂上君は、あまりそそられないのですね。
 ですが、僕はあそこで貴重な体験ができましたから、やはり行って良かったと思っていますよ。


 荒井はさっきのおばあさんに再び質問をした。
 「いみぐい様とはどんな神様なのですか?どんな姿をしているのでしょうか」
 「そりゃあもう、口では表せないほどの美しさだよ。
 あんたらもいみぐい様のお姿を見たらそう思うに違いないよ。私も最後に見たのは50年前だからねえ、楽しみで楽しみで仕方ないよ」
 周りの老人たちも彼女に続いて頷き始めました。
 「一度見たら忘れられない美しさじゃ」
 「もう一度お姿を拝見できるなら、もう死んでも後悔はない」
 「ありがたや、ありがたや」と、ついに泣き出す老人もいるほどだった。
 荒井たちが困惑していると、次第にぎり、ぎりぎり・・・という何かを擦るような音が聞こえてきた。
 それは歯ぎしりの音だった。周りにいる老人たちがみな、歯を食いしばり、すり合わせているのだった。
 その時、広間の壁にかけられた古時計がぽーん、ぽーんと17時を告げた。
 その音に、村人たちは我に返ったようで、ハッと顔を上げ、「もうこんな時間かぁ」と誰かが言い、元の通り、穏やかな空気があたりを包んだ。


 その後、荒井たちは作り上げた鈴とお面を祭り会場までもっていくことになった。
 寄り合い場からでたときはすでに夕暮れ時になっていた。
 みんなで袖山のおじが運転するトラックの荷台に、鈴とお面を入れた段ボールを詰め込んだ。
 すべての段ボールを運び終わり、トラックが出発するときには、もう夕日が沈みそうな頃合いだった。
 荒井、袖山、おじの3人一緒にトラックに乗り込み、祭り会場へと向かった。
 おばは夕食の支度があるので家に戻った。

 祭り会場は、寄り合い場から車で10分ほどの距離にあった。
 そこでままた数十人ほどの老人たちが、テントや小さな舞台の設営など、明日に向けて準備を行っている最中だった。
 「村長、こっちの道具の準備は終わりました。設営は順調ですか?」
 「おう、会場の方はなんとかなるだろう、ただいくらこっちの首尾がうまくいっても『あちら』がな」
 おじに促されて、村長と呼ばれた老人に挨拶すると、村長は豪快に笑った。
 「おお、わざわざ来てくれた子たちか、ありがとうな。
 どうだ、この村は?都会と比べるとなんもないところだが、ゆっくりしていってくれ。なんならずっといてくれると嬉しいな」
 荒井は、「先ほど言っていた『あちら』とはなんのことでしょうか」と尋ねた。
 「実はな、祭りの2日目、つまり明後日だが、いみぐい様を模したものを使った催しをしようと思っていてなあ。なかなかいみぐい様の美しさが再現できないもんで、四苦八苦しとるんだ」
 袖山も会話に加わり、「寄り合い場にいた人たちも言っていたんですが、いみぐい様はとても美しいそうですね」と言った。
 「そうだ、あの美しさを前にしては誰も何も言えなくなる」
 「それは是非とも見てみたいです、ねえ荒井君」
 「そうだね」と荒井は答えた。
 今日はもう暗くなるからと準備は中断し、鈴とお面を詰めた大量のダンボールは会場の簡易テントの下に運び込むことにしたが、荒井たちはへとへとだった。
 一方老人たちはきびきびと動いている。
 荒井は、「元気の秘訣はなんですか?」と近くで一息ついているおじいさんに尋ねた。
 おじいさんは「そうだなあ、やっぱりいみぐい様をいつも拝んでいるおかげだろうな」と答えた。
 それを聞いた荒井は、いみぐい様の姿見たくてたまらなくなっていた。


 その後、残りの準備は明日の互選中にしようということになり、荒井たりはおじの家に帰った。
 晩御飯は、おばが作ったカレーで大変おいしいものだったが、一つだけおかしなところがあった。
 おじ夫婦はスプーンでカレーを口に運ぶ際、二人とも口をできるだけ動かさずに食べるのです。
 もちろんまったく口を開けずに食べることができないので、ほんの少し唇を開き、その隙間から吸うようにして食べており、ずず、ずず、と吸う音が荒井たちの耳の届いていた。
 一頬ばりカレーを口に含んだ後、また口をできるだけ動かさず、歯ですりつぶすようにして咀嚼し、時折、歯が必要以上に擦れ合う不快な音も聞こえてきた。
 ひどく食べにくそうにしており、食事時間はとても長いもので食べ終わる頃には、料理は冷めきってしまったいた。
 荒井たちはお風呂に入り、もやもやとした気持ちのまま寝入ってしまった。


 翌日の午前中、荒井たちが会場に着いたこるには、もうほとんどの村人たちが集まっていた。
 休憩をはさみつつ、午後からいよいよ待ちに待った祭りが始まった。
 祭りの開催について村長の簡単な挨拶が終わったあと、舞台の上に神輿が運ばれてきた。
 その神輿の中に、一人一人が昨日用意した鈴をいみぐい様の感謝の気持ちをともに入れていく、というのが儀式の概要だった。
 神輿の屋根の部分が取り外しのできる蓋になっており、そこから中へ順番に鈴を入れ行く。
 荒井の番になり、鈴を入れるため神輿を覗き込むと、多くの鈴が詰め込まれていた。
 鈴を投げ込んでから、目をつむり手を合わせる。
 その時、ふと、いみぐい様はよそ者である自分たちのことをどう思っているのだろう?と疑問がわき、目を開けると、神輿の中に虫の卵がびっしりと詰まっていた。
 思わず後ずさりした荒井に、大丈夫と袖山が声を掛けてきた。
 我に返った荒井は、もう一度神輿の中を見ると、鈴が敷き詰められているだけだった。
 荒井の次に袖山が神輿に向かっているときに、隣にいた老人が「なんか見たんか?」と荒井に話しかけてきた。
 「いいえ、何も」と荒井が答えたが、老人は「何が見えた?」と荒井が何か見てしまったことを前提にした質問をしてくる。
 荒井は内心腹立たしい気持ちになりながら、「いいえ、何も」と答えた。
 袖山は特に何事もなく戻ってきた。


 やがて鈴でいっぱいになった神輿は、村人たちが担ぎ、村中をゆっくりと回っていった。
 先頭にたった村長が、いみぐい様への祝詞のようなものを歌い上げ、荒井たちは神輿のあとを歩いた。
 村人たちは神輿を担ぐ役を交代していき、荒井も担がせてもらった。
 ところで神輿とは本来、普段は神社灘のおわす神様が、祭りの際一時的にその身を移すとされるものだ。ですから、今このときにいみぐい様は神輿の中にいらっしゃるということなのだ。


 時折休憩を織り交ぜつつ、村を一周するころには、夕方近くになっていた。
 会場に戻り、今日はここで解散ということになった。
 二日目への英気を養うという名目のもと、今日は広場で軽い宴会が開かれるとのことだった。
 休憩をしていると、村長から「すまんが、ちょっといいか?明日の準備で少し見てほしいもんじょがあってな。悪いが、うちの蔵まで来てくれないか?」と声を掛けられた。


 村長の家は。この村の中央付近にある、小高い丘の上にあった。
 大きな蔵の扉には、重厚な閂がかかっていた。
 玄関には鍵をかける風習がないとのことから、よほど重要なものが保管されているのだろうと察せられた、
 閂を開くと、中から果物を存分に腐らせたかのような甘みのある悪臭が漂ってきて、袖山は「なんだかいい香りがするね」と言って、ふらふらと進もうとしていた。
 村長に言われるがまま、荒井たちは奥へ奥へと進んでいった。
 やがて蔵には似つかわしくない鉄格子が嵌め込まれているのが見えてきた。その向こうには人が一人寝泊りできるスペースがあろ、まるで座敷牢のようだった。
 そこで何かが蠢いていました。姿は人ですが、腕と足は針金のように黒みががってやせ細り、腹部だけが異様な丸みを帯びていた。唇は糸で固く縫われており、ほとんど開けないようにされていた。
 最も異様なのは目で、頭部に大きく膨らんだ複眼を3つ持っていた。
 それもただの複眼ではなく、人間の眼球が何十個も集まっており、その一つ一つがあらゆく方向に忙しく動いていた。
 そいつは、細長い手をすり合わせ、落ち着きなく体を震わせて、無理やり閉じられた口からあぎりぎりとい不快な歯ぎしりの音が漏れ出ていた。


 「美しいだろ。これがいみぐい様だ」と村長が後ろで言った。
 荒井が振り返ると、村長は昨日鈴と一緒に作ったお面を被っていた。
 「いみぐい様を作り出すのは本当に難しい。以前から50年もかかってしまったが、なんとか完成したよ。
 多くの個体がここまで大きくなる前に死んでしまうんでな。
 とにかく、これでこの村はまだしばらく安泰だ。どうだ?このお姿は。いままで見たこともない美しさだろう。
 そうだ、このお面を被ってくれ。
 これがないといみぐい様は我々のことを怖がってしまう」
 村長は自分のつけているものと同じお面を手渡してきてが、荒井は従う気にはなれない。
 「明日の祭でお披露目するつもりだったんだが、君達には早くみせてあげたくてな。わざわざ遠くから来てくれたお礼だよ」
 荒井は醜悪なフォルムに辟易としていたが、袖山はそうではないようで、「なんて綺麗なんだろう」と言って。お面をつけて食い入るようにいみぐい様を見つめていた。
 「荒井君も近くで見てみなよ!凄すぎて言葉が見当たらない」
 「袖山君、本当に美しいと思っているの?」
 「何を言っているんだよ。荒井君こそどうしたんだい、いみぐい様の前でそんな顔をしてはいけないよ」
 荒井にはどうしても虫の化け物にしか見えないのに、他の人には別の姿が見えているのだろうか?
 村長は、「遅くならんようにな」と言って蔵を出て行ってしまった。
 「袖山君、もう行こう。それにこの村からも早くでしょう。ここはちょっとおかしいよ」
 「どうしてそんなことを言うんだよ。お祭りは明日もあるんだよ」
 「だって、それはどう見ても化け物・・・」
 「いみぐい様に対して失礼なことを言うなよ!」
 「わかった、僕だけでも帰るよ。袖山君も、何かあったらすぐ帰った方がいい」
 「そうしなよ。みんなには僕が謝っておくからさ」
 悪臭にも耐えかねて、荒井はその場にお面を置いて蔵を出た。
 この臭いはいみぐい様から放たれる一種のフェロモンのようなものだろう。それに袖山は囚われてしまったようだった。


 荒井は荷物を取りにおじの家に戻った。
 そして、バスの最終便の時間が迫っているので、足早に家を出た。
 村はずれの停留所にやってきたバスに乗り込むと、来た時と同じ人が運転手を務めており、こちらを覚えていたらしく、「おや、お友達はどうしたんだい?」と驚いたように聞いてきた。
 「もう少し、この村にいるようです。ずいぶん居心地がいいそうで」
 「そうかぁ、ここはいい村だからねえ」
 「・・・そうですね」
 そうして、荒井は一人でいみぐい村を離れた。


 「袖山君ですが?残念ながら、彼はまだ帰ってきてません。よっぽどあの村が気に入ったのでしょうね。
 後日、袖山君の両親のもとに『夏休み中ずっと滞在することになったから、心配しないで』と電話がかかってきたらしいですよ
 奇妙なことに、電話の向こうから袖山君の声に混じって、まるで歯ぎしりのような音が聞こえてきていたらしいです。
 それから、夏休みが明けても袖山君が帰ってくることはありませんでした。心配した彼の両親がいみぐい村に向かうと、それにはもう誰もいなかったようですよ。
 いくらくまなく探し回っても、村にある家や畑はそのままに、人間だけが忽然と消えてしまったみたいだったと
 もちろん警察に相談し、捜索隊も組まれましたが、結局何一つわからずじまいで、今も未解決事件として捜査されています。
 去年ニュースでも取り上げられた話題ですから、あなたたちも見たことがあるのではないですか?
 そうそう、村人は消えてしまいましたが、広場に放置された神輿の中から、謎の卵が大量に見つかったそうです。そのどれもが孵化した状態でね
 辺りには腐った果物のような臭いが漂っていたそうです。僕はいみぐい様の復讐だと思っています。
 あの生き物のことなんて何もわからないのですが、僕が見た時のあれの目は、自分を閉じ込めている村人への怨念が込められたものに見えましたから
 坂上君、おかしいのは袖山君だったのでしょうか、それとも僕だったのでしょうか?
 あの村の人たちは奇妙なところはありましたが、僕らに対しては悪い人ではありませんでした。
 どちらかというと、途中で手伝いを放り出して逃げ帰った僕こそ礼儀の欠けた悪い奴でしよう。
 実は、僕はまたあの村に行きたいと思っているんですよ。その時にいみぐい様が僕の目にどう映るのか。
 あれは美しいと思えたとき、はじめて袖山君と仲直りでいる気がするんです。もうあの村に行っても誰もいないんですけどね。
 これで僕が体験した不可思議な夏の話は終わりです。興味があれば、今度いみぐい村までご案内します」


 エンディング№75:忌身喰様
 エンディング数27/656 達成度4%
 イラスト数17/272 達成度6%


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